リーダーシップの「開発準備」にまつわる理論と質問
(本日のお話 3321字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
三連休の中日から、
愛知の実家に来ております。
父も母も姉も慌ただしく活動して、
机を卓球台にしたりしてわちゃわちゃ動き、
そして突然昼寝するのを見て、
自分も大きくなっても同じことしているなあ、
とふと省みて、家族の習性なのようなものって
あるのかもなあ、と感じた次第。
妻の実家とは、まるで雰囲気が違うのですよね。
*
さて、本日のお話です。
先日よりお届けしております、
「組織におけるストレングス・ベースの
リーダーシップ・コーチング」
『Strength-Based Leadership Coaching in Organizations
An Evidence-Based Guide to Positive Leadership Development』
について、本日もお届けしたいと思います。
本日は
「第7章 組織における
ポジティブなリーダーシップ開発のためのコーチング(前編)」
でございます。
どんどん具体的な話になってまいりましたので、
職場で「ストレングス・ファインダー」などを
導入されている皆さまにも、参考になりやすい話になってくるのでは、
と思います。
それでは早速まいりましょう!
タイトルは、
【リーダーシップの「開発準備」にまつわる理論と質問】
それでは、どうぞ。
■研修やワークショップを行う中で
”温まっている雰囲気のもの
冷めている雰囲気のもの”
があると感じます。
”温まっている”というのは、
参加する側も「準備」が整っており、
「自分自身も変わっていきたい」と思い、
自分自身向き合っていく気持ちがあり、
組織として経営も上司も、
その活動を支援しよう、
となっている状態です。
一方、”冷めている”というのは、
参加する側は「なんでやるのわからない」し、
「自分も変わりたいとは思っていない」し、
自分自身に向き合うのとか勘弁つかまつるという感じで
組織として、経営や上司も、
その活動に関心がなく、自分ごととなっていない
みたいな状態でしょうか。
■こと個人が自分で
研修やワークショップに参加をするときは、
皆、自分の意志で、
身銭を切って参加しているので、基本
「温まっている」
状態です。
非常に熱意もあります。
ただ、組織においては
温まっているか冷めているのかは、
差があると感じます。
■そして、
今回のご紹介する章において、
そんな「ポジティブリーダーシップ開発の準備」について
こんなことが語られていました。
以下、ご紹介いたします。
(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
<1,組織におけるポジティブリーダーシップ開発の前に確認しよう>
◯ポジティブ・リーダーシップ開発(ストレングス・ファインダーなど)を
用いたコーチングは、必ずしも良いとは限らない。
◯ゆえに、個人と組織の両方が、
強みベースのアプローチに対する準備が出来ているかどうかを
判断することから始めること
◯その組織で暗黙的、及び明示的なリーダーシップモデルと
(こういうリーダーシップ像がよい、とされているもの)
整合するかどうかを確認すること
<2,「開発への準備」についての理論>
◯「開発の準備」とは何か?
・「開発の準備」とは「リーダーシップの役割をより効果的に惹きつけるために、
新しいより複雑な考え方に焦点を当て、それを意味づけ、発展させる能力と同期の両方」
と定義されている(Avolio,2010)
・「開発の準備」はリーダーシップ開発を成功させるための
前提条件とされている。
・ゆうえに変化と開発に対する準備ができているかを
リーダーシップ開発プロセス前に評価すべきである
◯「開発の準備」に関する理論 ~変化のプロセス~
・変化のプロセス とは以下のステップを踏む。
「変化の段階」に関する文献より(Prochaska and DiClemente,1982)
1)前熟考(変化の必要性に気づかない)
2)熟考(変化について考える)
3)準備(変化を起こす準備をする)
4)行動(必要な行動を実際に行う) という順番を経ていく
・ゆえに、変化の必要性に気づいていない場合、
その準備から始めていくことがポイントになる。
<3,「開発の準備」が出来ているかを確認する質問>
変化への対応力(開発の準備ができているか)を評価するための、
典型的な質問として次のようなものがある。
◯個人の準備のための質問
Q、リーダーシップを高めるために、大変な経験をする準備はできていますか?
Q、このリーダーシップ開発プロセス(LDP)に取り組む動機はなんですか?
Q、このプロセスによって、リーダーとしての自分の考え方がどう変わりますか?
Q,開発を維持・支援するためのリソースは何でしょうか?
Q,今回のLDPに参加するにあたり、どのような目標を立てましたか?
Q,自分の成長に必要なフィードバックを、周囲にどのように促しますか?
◯組織の準備に関する質問
Q、ストレングス・ベースのアプローチと既存のリーダーシップ開発の考え方は、どのように整合していますか?
Q、リーダーシップ開発についての一般的な考え方はなんですか?成長型ですか?それとも、固定型ですか?
Q、エグゼクティブ・リーダーシップ・チームは支援者ですか? 参加していますか?
Q、このプロセスは社内でどのようにサポートされますか?
Q、現在、他に競合する変革の取り組みはありますか?
Q、このプロセスは、学習と開発のフレームワークにどのように結合されるのでしょうか?
<4,ステークホルダーの準備はできているか?>
リーダーシップ開発におけるコーチングが効果的であるためには、
コーチ、コーチー(被指導者)、組織の3つの要素が一致していることが必要である。
◯コーチー(被指導者):
・被指導者がどの程度プロセスにコミットしているか?
準備ができているか? リソースを持っているか?
自己開発の経験はどうか?自分の開発に責任を持っているか?
◯ラインマネジャー:
・彼らのリーダーシップスタイルはコーチングアプローチに適合しているか?
変化に対して敏感か?被指導者に対してどの程度のサポートをしているか?
被指導者との関係の質はどうか?など
◯人事スポンサー:
・被指導者が人材プールのどこにいるのか?組織の人材への考え方はどこか?
ラインマネジャーと人事スポンサーの利害は一致しているか?
守秘義務の境界はどこに置くのか?
他の人材開発の機会とどのように関連しているか?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)
とのこと。
■さて、見てみていかがでしょうか?
ふーん、まあ、
「開発の準備」って大事なのね。
個人も組織も、
取り巻く人も、準備ができていないと、
上手くリーダーシップ開発も機能しないのね。
ということが、
なんとなく理解いただけたのであれば、
と思いますし、実際に行っていることは、
その通りの内容です。
■しばしば引用される言葉として
”馬を水飲み場まで連れて行くことはできても、
水を飲ませることはできない”
というイギリスのことわざがあります。
(原文:You can take a horse to the water,but you can't make him drink)
要は
他人に機会を与えることはできても、
実際に実行するかどうかは自分次第
というお話ですが、
この開発準備はまさにその内容です。
■こと「組織」において
教育を従業員に提供する場合、
投資対効果が考えることが求められます。
とすると、
水飲み場に連れて行っても、
水を飲まなさそうな状況で施策を敢行しても、
効果は薄い、だからオススメしない
というのは最もだと思います。
ゆえに、この
「開発準備」という観点において、
・誰に対して
・どれくらいの労力をかけて
・どのくらいのアウトプットを目指すのか
を考えることは、一つ、
重要な要素かな、と思います。
■、、、ただし、
この話は西欧の雇用慣行で
記載をされているため、
キャリアに対しての考え方が
日本とは違っているとも感じます。
会社の意向に沿った広範の異動を含む要望に答え
年功的に評価されてきた伝統的な日本企業では、
そもそも「自分で自分を開発する」という概念が
育ちづらかったという背景もあるかと思います。
(滅私奉公、みたいな時代でしょうか)
ゆえに、「開発準備の有無」で
片付けることができない文化や歴史的な問題も
背景にありそうですが
それを踏まえても、
”「開発の準備」が
個人、そして組織にできていないと
リーダーシップ開発も機能しづらい”
という点は考慮しておくことは
大切なのだろう、
と思った次第です。
うーん、書いてみても、
難しいもんだいだなあ、、、と思いましたが、
そんな視点もある、ということで
ご参考になれば幸いです。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の名言>
未熟なうちは成長する。
成熟すれば、あとは衰えるだけだ。
レイ・クロック
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