コーチングをする側とされる側の切ないギャップ ~コーチングと従業員満足度・パフォーマンスの研究より~
(本日のお話 2356文字/読了時間4分)
■おはようございます。紀藤です。
先日より大学院にて
「マネジリアルコーチング論」なる授業が始まり、
それに伴って、良質なコーチングの論文を
先生からご紹介頂く機会を得ました。
コーチングについて、
携わっている管理職、コーチの方もいれば
そうではない方もいるかと思いますが、
なかなかに興味深い内容です。
「あー、人ってこういうもんだよね」
と思わず考えてしまいました。
今日はそんな論文の中からの学びを、
皆さまにご紹介させていただければと思います。
それでは早速まいりましょう!
タイトルは
【コーチングをする側とされる側の切ないギャップ
~コーチングと従業員満足度・パフォーマンスの研究より~】
それでは、どうぞ。
■「コーチング行動は、
部下の従業員満足度に影響を与えるのか?」
このことについて調査をした論文があり、
この内容がなかなかに興味深いものでした。
この研究の目的は、
1,職場においてコーチングがどの程度行われているか
2,上司のコーチング行動と、従業員の職務満足度やパフォーマンスの関連はどうなのか
について調査をした論文です。
※参考論文: Ellinger(2003)『Supervisory coaching behavior employee satisfaction and warehouse』
■ちなみに調査対象は、
倉庫配送センターの約400名に対して
行われました。
ちなみに、なぜ
「倉庫配送センター」なのかというと、
倉庫作業員の報酬は低く、
年間の離職率が100%を超える(!)ことも
しばしばだからだそう。
過酷な労働の割に、
人の育成には時間が割かれていない。。。
そんな現状に対して
この研究は意義深いものだろう、
とのことで行ったとのことでした。
■研究の内容としては
1)コーチングに関する文献を徹底的に調査。
ビジネスシーンに適したコーチング行動を特定
2)模範的なマネジャーがどのように従業員をコーチしているのか
研究結果に基づいた「8項目のコーチング行動尺度」を開発
3)18の配送センターの従業員(438名)と、その上司(67名)に、
それらのコーチング行動の有無についてアンケートを実施
4)結果をデータ分析し、
コーチング行動と、従業員満足度の関係を調査した
というのがざっくりしたお話。
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※ちなみに、
「研究結果に基づいた上司のコーチング行動」
は、以下の8つになります。
<1)例え話・事例>
「部下が学ぶために、例え話やシナリオ、事例を使っている」
<2)視野の拡大>
「部下が全体像を把握するために、視野を広げるように促している」
<3)フィードバック提供>
「部下に対して、建設的なフィードバックを行っている」
<4)フィードバック募集>
「部下の役に立つように、部下からのフィードバックを募っている」
<5)リソースの提供>
「部下がより効果的に仕事をこなせるよう、リソースを提供している」
<6)考えさせる質問>
「部下が問題を解決するために、解決策を提示するのではなく、質問をする」
<7)期待値の設定と伝達>
「部下に期待を共有し、その期待が組織の大きな目標に繋がることの重要性を伝えている」
<8)相手に踏み込み視点を変える>
「様々な視点を持ってもらうために、従業員と一緒にロールプレイグをしている」
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■さて、では上記のような
「コーチング行動」を上司がとった結果、
部下の従業員満足度は
どのように変化をしたのでしょうか?
*
結論、データ分析を行った結果、
『従業員の職務満足度とパフォーマンスと
コーチング行動には相関があった』
ことがわかりました。
比較する要素として、その他の項目、
たとえば、
・従業員の給与
・職務についてからの時間
・教育レベル
などの影響も調べましたが、
職務満足度やパフォーマンスに対して
予測する変数ではありませんでした。
ゆえに、なお一層、
「コーチング行動」が
職務満足度やパフォーマンスにプラスの影響を与える」
と言えるとのことで、
この研究からすると、
コーチング行動を行うことは
マネジャーにとってもとても大切な行為である
と言えそうです。
■、、、が話はここでは終わりません。
個人的に一番おもしろいなあ、と思ったのが、
『上司と部下の認識が違うこと』
でございました。
どういうことかというと、
上記の8つのコーチング行動について、
上司には、
「”あなた”は、◯◯のコーチング行動を、行っているか?」と聞き、
部下には、
「”あなたの上司”は、◯◯のコーチング行動を、行ってくれているか?」と聞き、
比べてみるのです。
「7:強くそう思う ~ 1:強くそう思わない」にて聞いたところ、
こんなギャップが生まれる結果になりました。
**
例えば、
「上司は自分のパフォーマンスとスキルを向上させるために、
仕事に関連する学びの機会を把握できるよう、
積極的に支援してくれますか?」
部下の回答は平均「3.81」。
対して、上記の行動を
”自分自身がやっているか?”という回答について
上司の回答は平均「5.52」
でした。
そして、他の項目も同じように
ギャップがあったのでした。
■この事実から
何が言えそうかというと、
「自分はやっているつもりでも
相手には伝わっていない(可能性がある)」
と言うことが一つ、
そして、
コーチング行動は従業員の職務満足度とパフォーマンスに
プラスの影響を与えることがわかっていつつ、
このようなギャップが上司と部下に生じている傾向が
あるのであれば、
「上司はより意識して、
コーチング行動を実施していくこと」
でちょうどバランスが取れる、
とも言うことができそうです。
■この現象、まさに家庭でもあるやつです。
「俺/私ばかり、いつも家事やってるよ・・・」
と自分がやっていることばかり
大きく見えてしまうところ、
実際にやっている率を冷静に見てみると、
さほど行動していなかった、
みたいなことでしょうか
(自戒を込めて汗)
■効果があることだからこそ、
事実を見て、現場に活用できるように
なりたいものだな、と思った次第です。
コーチングの世界は
まだまだ広そうです。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
本日も皆さまにとって、素晴らしい1日となりますように。
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<本日の名言>
他の人に一生懸命サービスする人が、
最も利益を得る人間である。
カーネル・サンダース(1890-1980)
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