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2990号 2022年4月29日

「死のアウェアネス理論」から思う、”質的研究法”の価値

(本日のお話 2009文字/読了時間3分)

■こんにちは。紀藤です。

最近、「質的研究法」なる授業が始まって、
それに関する本を読んでいるのですが、

非常に興味深く、

「こういう世界があるんだなあ」

と感銘を受けておりました。

今日はそのお話からの
学びと気付きを、皆さまにご共有させて
いただければと思います。

それでは早速まいりましょう!

タイトルは

【「死のアウェアネス理論」から思う、”質的研究法”の価値】

それでは、どうぞ。

■昨年、

『量的研究法』

というものを
大学院で学びました。

量、つまり

”統計手法”

を用いた研究手法です。

たとえば数百、数千という
大規模なアンケート調査の結果から、

・40代男性にはこういう傾向があるね、とか、
・この地域にはこういう特徴があるようだ、等を

「回帰分析」「相関分析」等の手法を用いて
数字の結果から要因間の関連性を
明らかにしていく、というものです。

■全体の傾向を
数字で見ることができるため、
非常にわかりやすく、説得力もあります。

一方、

5:とてもそう思う ~  1:全くそう思わない

では計れない心境のようなものは
人にはあるもの。

その、3.5とか4.5のような
間の回答が”ないもの”として
切り捨てられてしまうのがデメリット

とも言われています。

■さて一方、『質的研究法』。

これは、

・インタビュー
・フィールドワーク

などを用いて、

個のプロセスを見ていく
手法であると言われています。

全体の傾向を知ることには
向いていない一方、

・その人がどういう心理プロセス経て
変容していったのか

などを現場の”こと語り”を通じて
理論化することができる、

という手法のようです。

■この質的研究法も

なんだかいっぱいあって、
全部を正しく理解しようとすると、
めまいがしそうな感じなのですが、

(KJ法、エスノグラフィー
GTA、TEM、SCAT
ライフライン法、、、とかもう呪文です(汗))

・ただインタビューして
気づいたことをまとめる

ではなく、

・インタビューをして、
”理論化するためのお作法”に
したがって行うことで汎用可能な理論になる

というのが質的研究法に
含まれる一つの特徴のよう。

(勉強中なので、だいたいこんな感じ、、、
ということでご認識ください)

■その中で、

質的研究法のある手法
(GTAと呼ばれるもの)

を用いて、

『死のアウェアネス理論』(1965)

なるものが社会学者のグレイザーとストラウスに
よって分析されたのですが

その内容、結果が
質的研究法の意義を感じさせられるように
思えたのでした。



ちなみに、こんな内容です。

テーマが重たい内容でありますため、
ご理解の上読み進めくださいませ。

(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

<「死のアウェアネス理論」の概要>

◯分析内容

・6つの病院でフィールドワークを行った

・入院中のがん終末期の患者・家族と
周囲の医療関係者がどのような相互行為を
行っているのかを分析した

◯わかったこと

・患者自身は病名を告知されているのか、
告知されていなくても、患者側が感じ取っているのか、
という認識の違いにより、周囲の医療関係者との相互行為の
あり方が異なっている

◯発見された概念

1)「閉鎖認識」:
間近に迫った患者の死をスタッフは知っていても
患者自身は知らない状態

2)「疑念認識」:
自分は死ぬのではないかと患者は疑っているのに
周りの人々は患者が疑念を抱いてるのをしりつつも、
敢えてそれを打ち消そうとする

3)「相互虚偽」:
患者の死がもはや避けられないことを
本人もスタッフも共に知っているのに、
お互いに知らないふりをする

4)「オープン認識」:
患者の死が避けられないことをスタッフ、患者双方が
知っていて、かつ双方がそれを認め合う、
ただし曖昧さもまとわりつく

※若林(2015)「グラウンデット・セオリー・アプローチ ー労働研究への適用可能性を探る」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)

、、、という内容。

■ここで私が思ったのが、

「”人のこと語り”を
このように理論化していくのだ」

という発見が1つ。

そして、それは限定的な
とある場面を理論化したとしても、

「人のパターンを理解し、
未来に繋げられる知恵になる」

のでは、ということでした。

■誰もが、人生は一回で、

そして初めて出会った出来事、
それがインパクトがあるものであればあるほど、

当事者も周りも混乱し、
先が見えない思いにとらわれることも
あるように思います。

ただ、全員が全員、
完全に一致せずとも、

「人間の心理、行為として
共通するものもある」

のだと思います。

まさに「死のアウェアネス理論」が
フィールドワークを通じて、
それらを分析したように。

■そして、

未知の体験について、

「質的研究」

は過去の先人たちの経験を
”人のこと語り”等を通じて分析し、理論にし
先々の人に役立てる事ができるとしたら

実に興味深く、意義深い
研究方法なのだ、、、

と感じたのでした。

■人の人生から学べることがある。

それを”研究法”として
追求しているこの方法が

実に興味深い!

と思った次第です。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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<本日の名言>

まわりを見渡し、自分に何ができるか考え、
それを実行したならば、前へ進むことができる。

ローザ・パークス(米国の公民権運動活動家/1913-2005)

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