マネジャーの仕事とは何か? ~マネジャーの役割10項目まとめ/1975年度マッキンゼー賞受賞論文から紐解く~
(本日のお話 2998文字/読了時間4分)
■おはようございます。紀藤です。
昨日は1件の個別コーチング。
その他3件のアポイントでした。
また夕方からは10キロのランニング。
*
さて、本日のお話です。
現在、大学院の研究の過程で
「マネジメント」についての論文を、
読み進めております。
その中で、
「マネジャーが持つ10の役割」
について定義しているお話を知りました。
それは、マネジャーの皆様にとっても、
自身の役割を内省する参照枠として役に立つものである
と感じましたので、本日はその論文について、
皆様にご紹介させていただければと思います。
それでは参りましょう!
タイトルは、
【マネジャーの仕事とは何か? ~マネジャーの役割10項目まとめ/1975年度マッキンゼー賞受賞論文から紐解く~】
それでは、どうぞ。
■マネジャーの役割とは何か?
かなり広く、
定義するのも難しそうなこのテーマ。
これからのプロジェクトに
大いに必要になってきそうなので、
全体像を調べるに当たって、
現在、立教大学大学院にて
師事しております先生の著書、
『増補版 駆け出しマネジャーの成長論 7つの挑戦課題を「科学」する』(中公新書ラクレ)
中原淳(著)
を読んでおりました。
■そうしたところ、
「マネジャーの役割の10項目」
という話が紹介されており、
読みつつ、なるほどなあ、、、と
納得しておりました。
その内容について、
ここでそのままご紹介すると、
大学院生として
「もうちょっと頑張れよ」とツッコミが
入りそうな気がしてしまいましたので(汗)
もうちょっと掘り下げて、
今日はその基となった論文
『マネジャーの職務:その神話と事実の隔たり』
(Mintzberg,H.(2003) マネジャーの職務:その神話と事実との隔たり
Diamond Harvard Business Review,January 2003,pp.54-70)
の内容を元に、
皆様にご共有させていただければと思います。
■ちなみに、この論文は、
1975年に書かれたものですが、
当時「マッキンゼー賞受賞論文」とされたもので、
(どれくらいそれがすごいのかわかりませんが)
その内容も、色褪せることなく本質的な記述がされている
と私は感じました。
*
ということで、以下論文の内容を
簡単にまとめてみたいと思います。
(ここから)
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{論文『マネジャーの職務:その神話と事実の隔たり』のまとめ}
【研究の背景】
・これまで「マネジャーは何をしているのか?」という根本的な問いかけをしてこなかったのでは。
・これに対する適切な答えがなければ、どのようにしてマネジメントを教える事ができるのか。
・本稿の意図は、「役に立つマネジャーの仕事の説明」に読者を案内することである。
【調査方法】
・対象:アメリカ国内の中からコンサルタント会社、技術系会社、病院、消費材関連会社、学校の5人のCEOを対象とした。
(それぞれ働いている国は、アメリカ、カナダ、スウェーデン、イギリス)
・方法:「組織的観察」という手法を使い、一人ひとりを一週間、徹底的観察した。
仕事の特質と職務内容の両者についてデータが把握できるように手法を考案した。
多種多様なマネジャーたちが、どのように自分の時間を使うのかについて観察し、それをまとめた。
【研究でわかったこと】
・マネジャーは組織単位に対するフォーマルな権限を付与されており、
その権限は「3つの対人関係上の役割」をもたらし、「3つの情報上の役割」が生まれる。
そして「4つの意思決定における役割」を生み出す。
【マネジャーの役割 10項目のまとめ】
<対人関係における役割>
1)看板的役割: 組織単位の長として、各種儀式にまつわる義務を果たす。
(例:顧客をランチに誘う、工場に視察に訪れたVIPをもてなすなど)
2)リーダー的役割: 組織に属する人々の仕事に対して責任を負う。社員の士気を高め、鼓舞し、組織の目標と合致させる必要がある。
3)リエゾン的(つなぎ的)役割: 自分の部下だけでなく、担当組織外にいる他の人々に時間を割き、円滑にする。
<情報にかかわる役割>
4)監視役: 常に情報を求めて自分の周囲の動きを探り、部下に質問し、情報を手に入れる。
5)散布者: 自分が保有している情報のいくつかを部下たちに伝える。部下同士が互いに接触しやすいように情報の橋渡しをする。
6)スポークスマン(代弁者): 情報を組織の部外者に送り届ける。自分の担当する組織をコントロールする人々に情報を流し、満足させる。
(例:職長が現場の作業プロセスを工場長に理解してもらう、等)
<意思決定に関する役割>
7)企業家: 自発的に変革を起こす。組織を改善し、変化する状況に適応させる。新しいプロジェクトを指導させ、古いものを廃棄する。
8)妨害排除者: マネジャーのコントロールを超えた、何らかの圧力に対処する。
(例:ストライキ、有力な顧客の倒産、外部環境のプレッシャーに対応する、など)
9)資源配分者: 組織の誰が何を受け取るのかを決める。組織内のヒト・モノ・カネを組織目標に役立つように適切に配分する。
10)交渉者: 契約や苦情を含めった重要な交渉に対して責任を持つ。
(Mintzberg,H.(2003) マネジャーの職務:その神話と事実との隔たり
Diamond Harvard Business Review,January 2003,pp.54-70)
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(ここまで)
■さて、いかがでしょうか?
やや言葉の表現が
分かりづらいところがありますが、
・「対人関係」に関する役割
・「情報」に関する役割
・「意思決定に関する役割」
と分けてみると
”自分がどのような役割を果たせているか/いないか?”
をマネジャーの皆様にとっては
内省するツールにはなりうるかのではないか、
と思います。
■そして著者のミンツバーグ氏は曰く、
・10の役割はどれも分離できるものではない。
・どの役割も必要であり、全体のフレームワークから取り出した場合、
マネジャーとしての職務は無傷ではいられない。
とのこと。
例えば、
リエゾン(つなぎ)的に外部と接触する機会を役割として果たさなければ、
外部情報が不足します。
すると、部下の必要とする情報を伝達することもできなくなりますし、
外部環境を反映した適切な意思決定をすることもできなくなります。
するとマネジャーとしての役割を
果たすことができなる、
とのこと。
■また、部門の特性に応じて、
”「マネジャーの10の役割」にも傾向が出る”
とも語っています。
例えば、
・セールス・マネジャー= 対人関係の役割に多くの時間を費やす
(マーケティング活動が、外交的性質が強いため)
・生産マネジャー= 意思決定の役割に多くの時間を費やす。
(効率よく仕事が流れることに関心があるため)
・スタッフ部門マネジャー= 情報面の役割に多くの時間を費やす
(組織内の他部門にアドバイスする部門をマネジメントするため)
というように。
■つまり、外部環境、
期待されていることにより、
10の役割の比重も変わってきます。
これらを統合してミンツバークは
“マネジャーの能力は、
「仕事に関する洞察力」によって
大きく左右される“
といいます。
ゆえに、マネジャーは
・職務のプレッシャーとジレンマを
いかによく理解し、対応できるかにかかっている
・自分の仕事について内省できるマネジャーは
その職務をうまくこなすことができる。
と述べています。
■こう見てみると、
本当に世のマネジャーの皆様は
大変な仕事をされている、
と感じます。
まさにジレンマだらけ。
そんなマネジャーの皆様の
一助として今日の論文まとめが参考になれば、
とまとめつつ、思った次第でございます。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の名言>
知識は、われわれが天に飛翔する翼である。
ウィリアム・シェイクスピア(イギリスの劇作家/1564-1616)
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