部下を育てる「9つの促進行動」 ~マネジャーと職場学習の研究から学ぶ~
(本日のお話 2560文字/読了時間3分)
■おはようございます。紀藤です。
昨日は終日、中堅社員の方向けの、
ストレングス・ファインダー研修のDAY2でした。
強みにフォーカスをしたアプローチを
マネジャーの方も含めて学び、実践することで
「心理的安全性を確保するとともに、
チーム内の相談行動を増やそう」
という趣旨で実施をいたしましたが、
皆様のやってみようという気持ちを感じられ、
嬉しく感じました。
皆様の現場での実践を
切に応援しております!
また夕方から10キロのランニング。
*
さて、本日のお話です。
コーチング研修をやっていて
しばしば耳にするお話が
「”挑戦行動の促し”は難しい」
という声です。
話に耳を傾ける(=傾聴)はできても、
背中をぐっと押すような行動は
ちょっと躊躇してしまう。
様々な組織のマネジャーが
同じようなことを語られている、
と(私の経験則ですが)
感じております。
今日はこのお話に関連して、
一つ興味深い論文がございましたので
その内容について皆様に
ご紹介させていただければと思います。
それでは早速参りましょう!
タイトルは、
【部下を育てる「9つの促進行動」 ~マネジャーと職場学習の研究から学ぶ~】
それでは、どうぞ。
■話に耳を傾けることはできるけど、
「何かやってみよう!」
と提案することは躊躇する。
この感覚、お持ちの管理職、
(あるいは外部支援者のコーチなどでもあっても)
決して少なくないのでは、と思います。
”受け止める”という行為は、
そこに拒否や否定などはなく、
こちら側のスタンスの問題なので、
比較的徹底することはできますが、
こちらから挑戦の促しをする、
背中を押すとなると、
相手の心理的抵抗感を想像し
プレッシャーを与えてしまうのでは、、、
などと不安になることも
あるのかもしれません。
■そんな前置きの上、
こんな論文がございます。
それは
『ラインマネジャーと職場学習 ーボランタリー組織から学ぶー』
(Beattie(2006).
Line managers and workplace learning:Learning from the voluntary sector.)
という論文です。
どういった事が
書かれているかといいますと、
ざっくり以下のようなお話です。
**
(研究の背景)
・人材育成のために職場学習が重要。
そこには公式学習(研修・トレーニング等)と
非公式学習(チーム開発、知識共有)等がある。
・特に非公式学習において
ラインマネジャーが果たす役割・責任は大きい。
・ただ、これまでの研究において
マネジャーが果たす人材開発の役割について
「マネジャーの行動」に焦点を当てたものが少ない。
(研究の目的)
・ラインマネジャーが
どのような”学習支援策”を行っているのか明らかにする。
(研究の方法)
・子供やてんかん患者などを扱ったソーシャルケア慈善団体と
社会福祉団体におけるラインマネジャーを対象に
研究者が3週間滞在し、参加者を観察した。
・また60名のキーパーソンに半構造化インタビューを行い、
データを分析した
**
というお話です。
■そして、その結果わかったことは、
「9つの促進行動(Facilitative Behavior)」が
あることがわかりました。
そして、その9つは階層性があり、
・多くのマネジャーがやっていること(観察頻度:多い)
・経験あるマネジャーのみがやっていること(観察頻度:少ない)
と段階があった、とのこと。
ということで以下、
9つの行動をまとめてみます。
(ここから)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<マネジャーの部下への促進行動>
※観察頻度が少ないもの(実践難易度が低いもの)から
レベル1→レベル9(実践難易度が高い)で整理します
◯レベル1:「配慮(Caring)」
・サポートする、励ます
・親しみやすい、安心させる
・コミットしている、関わってくれる、共感する
◯レベル2:「情報提供(Informing)」
・知識の共有
・情報発信
◯レベル3:「プロフェッショナルである(Being professinal)」
・ロールモデル(模範)となる
・基準を設定する
・計画と準備をする
◯レベル4:「アドバイス(Advising)」
・教える
・コーチングをする
・ガイドする、カウンセリングする
◯レベル5:「評価する(Assesing)」
・フィードバックを提供する
・承認を与える
・育成ニーズを把握する
◯レベル6:「思考する(Thinking)」
・反射的・展望的思考
(過去に起こったこと、起こりうることを
時間をかけて考える)
◯レベル7:「権限委譲する(Empowerment)」
・任せること
・信頼すること
◯レベル8:「他者を育成する(Developing Developer)」
・従業員の技能/知識の習得を促す
・他者の育成につなげる
◯レベル9:「挑戦を促す(Developing Developer Challenging)」
・他者を刺激し、知識やスキルを獲得するよう促す
・他者を刺激し、ストレッチさせる
※Beattie(2006).Line managers and workplace learning:Learning from the voluntary sector.
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(ここまで)
■さて、見てみていかがでしょうか。
マネジャーの皆さまは
ご自身の行動と照らし合わせて
共通するところや、相違するところなど
考えられた方もいらっしゃるかもしれません。
*
この論文曰く
「配慮する(レベル1)」
「情報提供する(レベル2)」
「プロフェッショナルである(レベル3)」
などは基礎レベルであり、
殆どのマネジャーがやっていた一方、
「権限委譲(レベル7)」
「挑戦させる(レベル9)」
などは、観察される頻度も少なく
管理職として出世し、経験を積むことで
見られるようになる行動である、
とのことでした。
■もちろんこの論文も
ある2つの組織を切り出したものであり、
全てに当てはまるとは限りません。
またボランタリーセクターとのことで
営利を目的とした組織ではないため、
この内容が営利を主目的とした民間組織とも、
やや置かれている状況が違うかもしれません。
論文の中でも、
”資本主義企業の内部にある、
「短期的な成果を求める文化」を
これまでの研究は過小評価しているのでは?”
(=資本主義社会における営利企業は
能力開発よりも業績を求めてしまう圧力が
どうしてもかかってしまう)
とも述べられています。
■とはいいつつ、
人の育成を支援する上で
これらの9つの行動は
共通するものも感じますし、
「マネジャーが行う
支援行動の種類と難易度」
について示唆を与えてくれるようにも感じます。
■そしてコーチング行動で
”聞くことはできるけど
背中を押すような行動が難しい”
という話にも
レベル1:配慮する
レベル9:挑戦させる
という違いと似たものを感じ、
興味深く思った次第です。
そして色々なパターンの支援行動、
できるようになると幅も広がりそうですね。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
本日も皆さまにとって、素晴らしい1日となりますように。
==========================
<本日の名言>
ほんものの上司と部下は、
互いを管理の苦痛から解放している。
全てを把握し、全てを支配するなんていう役割は放棄してね。
デイル・ドーデン(米国の実業家・作家/1950-)
==========================