「働くことの意味」の研究(1) ー自己実現は一部の人の娯楽かもしれないー
(本日のお話 2928文字/読了時間4分)
■おはようございます。紀藤です。
昨日日曜日は読書、
ならびに10キロのランニングなど。
また1件の打ち合わせでした。
*
さて、本日のお話です。
先日、大学院の課題の中で
「働くことの意味」に関する論文を読んだのですが、
その内容が個人的にツボで、
仕事に関する考え方が少しラクになったような、
あるいは教養が深まったような、
そんな感覚を覚えて、嬉しく感じたのでした。
ということで、本日はそのお話について、
皆さまに学びと気づきをご共有させていただければと思います。
それでは早速まいりましょう!
タイトルは
【「働くことの意味」の研究 ー自己実現は一部の人の娯楽かもしれないー】
それでは、どうぞ。
■のっけから話が変わりますが(汗)
今月のハーバード・ビジネス・レビューで
こんなことが書いてありました。
ホワイトカラーとブルーカラーが
何を優先するかについて語られている話です。
(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
<ホワイトカラーとブルーカラー>
ルーズベルト大学を退官した
ジャック・メツガー元教授は2つの階級の違いを
次のように説明する。
*
ブルーカラー労働者は
「存在」と「所属」を優先して
現在を生き、
ホワイトカラー労働者は
「達成」と「何になるか」を優先して
未来を夢見る。
*
ブルーカラー労働者は
目の前のニーズを満たす「仕事」を重視し、
ホワイトカラー労働者は
将来、よりよい生活を送るための「キャリア」を重視する。
※「中間」を探る ー階級をめぐる新たな視点
ハーバード・ビジネス・レビュー 2022年6月号 P139
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)
、、、とのこと。
■同じ「仕事」でもそこに付随する”意味”に
ブルーカラー労働者が、
「存在」と「所属」、「現在」を重視するのに対し、
ホワイトカラー労働者が
「達成」と「何になるか」、
そして「将来のキャリア」を重視する。
言われてみると
確かにそんな感覚はあると思いますが
改めて言葉にしてみると
なるほどな、、、と思わされました。
■さて、そんな背景も踏まえて、ですが
こんな内容の論文に出会いました。
『On the meaning of work: A theoretical integration and review』
([日本語訳]働くことの意味について:理論的統合とレビュー)
Rosso, Dekas, Wrzesniewski(2010)
この論文は、
・「働くことの意味や意義がどこから発生するのか」について
全体像を説明するレビュー論文
です。
「働くことの意味」について、
これまで様々な研究者が探求をしてきましたが、
その研究の全体像をこの論文で伝えてくれており、
働くことの意味というテーマについて
概観することができます。
■全部を語ると大変長くなってしまうので、
内容を説明してみたいと思います。
ちょっと乱暴なまとめなので、
読みづらいかもしれませんが、
先述のホワイトカラーとブルーカラーの方が
重視するものの違いとの類似点を見つつ読むと、
なるほどなあ、と感じる内容かと思います。
(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
<「働くことの意味」の源泉の4軸>
(1)自己(=自分の価値観などから働く意味を見出す)
◯価値観:
・「望む状態を働くことによって実現できるはず!」
と思うことが働くことの意味づけになる。
◯動機:
・仕事と自分の大事にしたいことが一致していると
動機(内発的モチベーション)が高まり、働く意味の源になる。
◯信念:
・人によって働く上での”信念”は以下のように違う。
仕事=経済的な手段
仕事=キャリアアップや名声、地位を得るためのもの
仕事=それ自体が目的であり、世界をより良い場所にする天職
(2)他者(=他者とのつながりで働く意味を見出す)
◯同僚:
・同僚と親密な対人関係を持つことで、
自分のアイデンティティを強化し、働く意味を持つ
◯リーダー:
・職場のリーダーが働くことの意味や価値を説明し、
それに感化されることで仕事を意味深いものと考えるようになる
◯グループ:
・職場のコミュニティとつながっているという感覚(心理的同一性)により
仕事に意味を覚える。特にグループに魅力がある、自慢できると意味は増す。
◯家族;
・家族から経済的な欲求が高まると
仕事が”経済的な意味”を持つようになる可能性が高くなる。
・家族から(仕事をしていることに関する)賞賛、尊敬、愛を表現し、
正しいと肯定することで、仕事に対する肯定的な意味が高まる。
(働くパパ、カッコイイ!みたいなので働く意味づけUP)
(3)仕事の背景(=仕事にどんな背景があるか)
◯職務のデザイン:
・仕事の自律性、技能の多様性、課題の重要性が高く
目的意識や他者へのポジティブな影響が促進されるように仕事によって
働くことの意味が高まる。
◯組織の使命:
・組織のミッションが、働く意味の源になる
(企業理念への共感が意味づけになる)
◯経済的状況:
・収入が不十分な人にとっては”仕事の経済的価値”は顕著になる。
経済的苦境に陥ると仕事の潜在的価値(自己実現、コミュニティ、社会的価値など)を軽視し、
仕事の顕在的価値(金銭的報酬など)を優先する傾向がある。
◯仕事以外の領域:
・仕事以外の趣味などに意味を見出す人は
それらに関連した活動を仕事に取り入れる。
(趣味=読書ならそれを仕事にできないだろうか、というようなイメージ)
(4)スピリチュアリティ
・スピリチュアリティとは、
崇高な力、導く力、エネルギー、信念体系など
神聖なものと繋がりを求める願望である。
・スピリチュアルな従業員は、
仕事上の活動を高い目的や意味に関連する、
自分よりも大きな何かであるという解釈をする。
・仕事上の行動を思いやり、奉仕、超越という
スピリチュアルな観点から見ている。
※Rosso, Dekas, Wrzesniewski(2010)
"On the meaning of work: A theoretical integration and review"
([日本語訳]働くことの意味について:理論的統合とレビュー)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)
■、、、さて、いかがでしょうか。
(やっぱり読みづらい、ですかね苦笑)
要は、
”働く上で人はそこに
様々な意味を求めている”
ということです。
「収入など、経済的価値」を
”働くことの意味”とする人もいれば、
「キャリアアップ、名声、地位」を
”働くことの意味”とする人もいる。
あるいは、
「人とのつながり(所属)」を
”働くことの意味”として求める人もいれば、
「組織のミッション」への共感が
”働くことの意味”に繋がる人もいる。
はたまた、
仕事以外のことのほうがより大切で、
それらを仕事に取り入れるか、と考える人もいる。
■まさに、
”「働くことの意味」とは実に広い!”
と感じずにはいられません。
同時に、人それぞれ
「働くことの意味って違うんだよな」
と思いますし、
このように色んな働くことの意味を眺めると
こうあるべき、とどれか一つの考え方に
縛られる必要もないのかもしれない…
とも思います。
■例えば、私の場合、
「仕事を通じて自己実現をする事が大事」
「社会をより良くすべき(社会貢献)」
等の「働くことの意味」に
多少よっている、と感じます。
おそらくそれは人・組織に関わる仕事であるため、
そういった傾向があるように感じますし、
今のところ経済的困窮、とはなっていないため、
自己実現など、潜在的な働く価値に目を向ける余裕がある、
とも言えるかもしれません。
■ただし、自分が定義する「働くことの意味」も、
今回の論文で言えば、それらの全体像のごく一部
例えば、
・価値観/信念/組織の使命
に言及しているに過ぎず、
あくまで全員がそう思っているわけではないことを
理解する必要がある、と感じたのでした。
その他にも、人によって
・経済的状況による手段、
・他者と繋がりを得る方法、
・自分の能力の証明、
など、何を重視するかは人それぞれであり、
「働くことの意味」を幅広く理解することで
自分の価値観を押し付けず、
他者の働く意味を理解しつつ、
そこに色を持たせずに接することができる、
そんなことも感じます。
自分の無意識のバイアスを
自覚させてくれた論文のように感じた次第でございます。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
本日も皆さまにとって、素晴らしい1日となりますように。
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<本日の名言>
若者を確実に堕落させる方法がある。
違う思想を持つ者よりも
同じ思想を持つ者を尊重するように指導することである。
フリードリヒ・ニーチェ(ドイツの哲学者/1844-1900)
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