「OJT」ってそもそもなんだ? ー演繹的OJTと帰納的OJTー
(本日のお話 2194字/読了時間3分)
■おはようございます。紀藤です。
昨日は健康診断。
また1件のコーチング。
その他、ランニング10キロでした。
*
さて、本日のお話です。
先日、大学院のメンバーと
授業で話をしていたときに、
「OJTって、どこまでのことを
意味するのだろうね?」
とふとした疑問が話題に上がりました。
確かに、仕事上
「OJT(On the job training)」
とは言葉上、しばしば使うものの
・具体的に何を指すのか?
・コーチング、メンタリング、アドバイス等の行動とは、
一体何が違うのか?
など、よくわかっていないな、と
疑問に思ったのでした。
*
そんな中、先日読んでいた論文
『育て上手のマネジャーの指導方法 ー若手社員の問題行動とOJT』 松尾睦(2013)
において、
上記について解説されている箇所があり、
「へー、なるほどなあ」と勉強になったのでした。
、、、ということで、今日は
「OJTって何か?」について
意外と考えたことがない(私のような)方向けに、
OJTの歴史と、
OJTの2パターン
について学びのおすそわけをさせていただければと思います。
それでは早速参りましょう!
タイトルは
【「OJT」ってそもそもなんだ? ー演繹的OJTと帰納的OJTー】
それでは、どうぞ。
■OJT。
皆さまの組織でも「OJT」、
行っていらっしゃる方は少なくないのでは、
と思います。
正式には、
「OJT」(=On the job training)
ということで、直訳すると
”職場において行われる訓練”
となります。
■このOJTが
多くの組織で利用されているのは、
いくつか理由があるようです。
アカデミックな観点では、
”成人の能力開発の7割が
職務上の直接経験で決まる”
(Lombardo and Eichinger 2010)
と言われており、
先輩社員がOJT、
職場における教育を行うことは
現場で若手社員の経験を促す重要な機会になる、
なのでOJTは有効、と言えます。
OJT、大事なのですね。
■さて、すこし余談ですが
「OJTの歴史」を紐解くと、興味深いルーツがあります。
そして、それが今に影響していることが感じられます。
*
そもそもOJTの研究は
第一次世界対戦時に遡るそう。
もともとは先日ゆうの造船所で行われていた
職業訓練の一つがOJTでした。
生産現場の人材育成を効率的に実施する指導方法、
それが以下の4ステップ(つまりOJTの原型)だったそうです。
こんな内容です。
「1)見せる(show)」
:学習者が何をすべきかデモンストレーションする
「2)説明する(tell)」
:学習者がすべきことと、なぜそうしなければならないかを説明する
「3)行う(do)」
:学習者に仕事をやらせてみる
「4)チェックする(check)
:学習者が正しく実行しているときは褒め、改善すべき点をフィードバックする
(Dooley 2001; Rothwell and Kazanas 2004)。
とのこと。
■これを行うことで、
OJTのいくつかの利点が得られました。
・訓練と実践が密接に結びついていること
・職務上のスキルを効果的に学習できる
・低コストである
・必要なタイミングで実施できる
・現場で行われるため訓練効果の移転がスムーズである
(can Zolingen et al 2000)
平たくいえば、
「できる限り手間なく、
効率的に従業員を育てられる」
というわけですね。
かつ別のOJT研究によれば、
OJTによって
・従業員の組織コミットメントや生産性を高めたり、
・離職を防止する効果がある
との結果も示されています。
そんなことを思うと、
OJTが職場の教育で選ばれているのには
しかるべき理由があるんだな、と思えます。
■ただ、このようなOJT。
造船所のようにやっていれば
今の時代も人が育つかといえば、
そんなこともありません。
これが歴史と現実の違いです。
そんな中、Lohman(2001)が
「OJTには2パターンある」といっており、
この分け方が個人的にも実にしっくりきたのです。
そして今、OJTってなんだ?
どこまで、何をすればいいんだ?
と迷える方(?)に
ヒントになるのでは、とも思います。
こんなわけ方です。
(ここから)
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<演繹的OJT と帰納的OJT>
◯演繹的OJT:
→トレーナー(教える側)が戦略・ルール・手続きを説明し,
さまざまな状況に適用させる。
*「クローズドタスク(=仕事のプロセスが明確に決められている仕事)」において
演繹的OJTが用いられる
◯帰納的OJT:
→トレーニー(教わる側)が曖昧な問題を解決し、
その中から自らが仮説を発見し、それを新しい状況に適用することを
トレーナー(教える側)が支援する形をとる。
*「オープンタスク(=仕事の手続きや流れが明確に決められていな異複雑な仕事)において
帰納的OJTが行われることが多い
Lohman (2001)
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とのこと。
■演繹的OJT(答えがあるOJT)と、
帰納的OJT(答えがないOJT)。
確かに、言われてみればそうなのです。
OJTといったときに、
もちろん先輩社員が、
その経験から答えを知っていることもある。
時代も取り巻く環境も、
刻一刻と変わっており、そんな中
「このときはこうするんだよ」
と言える仕事なぞ、
言ってしまえばごく一部になっている、
とすら思えます。
特にホワイトカラーの仕事など、
まさにそんな感じです。
(使うツールも毎年変わることもあります)
■そんな中で、
元々のOJTのルーツにあった
造船所のOJTプロセス
”見せる→説明する→行う→チェックする”
が出来るかといえば、そんなことはなく
先輩だからといって手取り足取り、
全部答えを教えられるわけではない、、、
そんな時代に私たちは働いている、
この前提を理解することは、
若手育成においても重要かと思います。
(当たり前っちゃ当たり前ですが、
でも「正しい答えがあるのでは」症候群で
悩むトレーナー&トレーニーはまだまだいる気もしています)
■そして、
「帰納的OJT」
すなわち答えがない問題について
・トレーニー(教わる側)が曖昧な問題を解決し、
・その中から自らが仮説を発見し、
・それを新しい状況に適用することをトレーナー(教える側)が支援する
ために何が必要なのか。
ここで、
『コーチング』
が登場してくる、となるわけです。
■、、、と、
普段(おそらく)考えない
「OJT」なる言葉について
論文を参考にさせていただきながら
紐解いてみました。
その言葉が意味することは、一体何か?
どのような要素が含まれているのか?
こういったことを、
先人の研究者たちは丁寧に考察し、
分類分けをしてくれています。
その思考をなぞることによって、
自分の思考も整理され、より深くそのテーマを
理解できるようにも思えます。
「わかることは、わけること」
ともいいますが、
改めてそんなことを感じた次第です。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の名言>
人は自分自身については暗闇の中にいるのも同然です。
自分を知るには、他人の力がひるようなのです。
カール・グスタフ・ユング(スイスの精神科医/1875-1961)
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