ピアノの演奏を簡単にする研究
(本日のお話 2764字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は、対面でのコーチング研修の実施。
また夜は大学院の授業でした。
*
さて、本日のお話です。
ここ2年くらいの趣味がピアノです。
リモートワークが主体ですと、
間に息抜きとして勝手がよく、
ピアノを練習してから
タッチタイピングをすると、
正確かつ、スピードが早くなるという、
業務の生産性向上という副効果もついてきます。
そして、そんなことから、
月1でピアノのレッスンに通っており、
1日20-30分、練習をしております。
来年はショパンの革命なる曲を
発表会で演奏予定です。
*
そんな中、先日のレッスンで、
ピアノの先生から
「リズム練習をしたほうがいいですよ」
(=付点をつけて、音の長さを変えて弾く練習のこと)
と言われました。
そこで、ふと、
「はて?そもそもリズム練習ってなんだろうか?
やる意味とは?」
が気になって調べてみました。
そうしたところ、ある論文、
『リズム学習を考慮したピアノ演奏学習支援システムの設計と実装』
https://www.fun.ac.jp/~yoshi/doc/201304_IPSJ_Rhythm.pdf
というものが検索に引っかかり
何気なく読んでみたところ
「学習する」という行為について考えさせられ
勉強になりました。
、、、ということで、本日は
少しマニアックな話ではありますが、
皆様にその論文からの学びと気づきを
ご共有させていただければと思います。
それではまいりましょう!
タイトルは、
【ピアノの演奏を簡単にする研究】
それでは、どうぞ。
■ピアノを弾く、という行為は、
いくつかの技術の複合、
とされています。
・譜読み
・正確な打鍵
・適切な運指(指使い)
・リズム(打鍵および離鍵のタイミング)
・打鍵の強弱
・テンポ(楽曲の速さ)
・両手を独立して動かす
、、、などなど。
■私は小学生の頃に
ピアノを習っていたので、
(初級レベルでしたが)
・譜読み
・両手を独立して動かす
くらいは出来ていましたが、
大人になってから、
これらの技術を習得しようとすると、
相当に骨が折れることは想像に難くありません。
ゆえに、せっかく始めても、
基礎技術の習得に時間がかかりすぎて
途中で挫折してしまう、
いくつもの技術を同時進行で身につけることは敷居が高く
曲の完成までの道のりが見えずに断念してしまう、
練習しては忘れ、練習しては忘れ、という
習熟効率の低さから挫折する、
というピアノ学習者は後を絶たないようです。
(よくわかります、、、)
■そんな中、上述でご紹介した論文
竹川佳成(2013)
『リズム学習を考慮したピアノ演奏学習支援システムの設計と実装』
なるものの中で、
「ピアノ演奏の習熟を高める
学習支援システム」
について研究をしており、
過去の関連研究、
並びに本論文で新しい学習支援システムを提案し、
実際に検証したところ上達の速度が有意に高かった、
という結果が出たそうです。
■ちなみに、
過去のピアノ学習支援による
関連研究はこんな話があるそうです
**
<ピアノ学習支援のこれまでの研究たち>
・ビデオや音声による模範演奏の指示
・演奏者の演奏データを解析し、
改善点をテキストなどで指示をする支援
・演奏中にリアルタイムの支援として
打鍵すべき鍵盤、運指、手本映像を表示する
キーボード、ソフトウェアによる支援
・磁力を用いた触覚フィードバックにより
リズムを学習できるシステム
・蓄積した演奏データから演奏者の苦手な奏法を割り出し、
集中的にトレーニングをするシステム
**
、、、ビデオや音声による
模範演奏の指示については
まあ、わかります。
でも、その他、
・演奏者の演奏データの解析
・磁力を用いた触覚フィードバック(!)
など、こんなものもあるのか、、、
と驚かされます。
■そして、上記の論文において、
それらの研究を踏まえて、
以下のようなシステムを作ったそうです。
(ここから)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<ピアノ学習支援システムの内容>
1)プロジェクタを利用して、
実際の鍵盤上にカラフルな図や文字を表示させる
2)カメラを使って、
演奏者の運指(指使い)を認識する
その上で
3)打鍵情報を示し、次に引く鍵盤を輪郭で囲む
(→プロジェクタで投影させる)
4)運指情報について、運指番号を表示する
(→これもプロジェクタで投影)
5)鍵盤上部に、現在演奏している付近の楽譜を示す。
(→弾いている鍵盤と楽譜の音符を線で繋いで表示)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(ここまで)
その他にも細かな支援があるのですが、
それらの学習支援のシステムを使い、
五線譜の楽譜がほとんど読めない鍵盤経験歴のない
大学生、大学院生9名に実験をしたそうです。
曲目はモーツァルトの「トルコ行進曲」です。
・30分間、同支援システムを使いながら
訓練をしてもらうパターン
・自由に練習をしてよいと指示したパターン
にて比較を行ったところ、
システムの支援を行ったほうが、
・打鍵ミスの数が有意に減った
・リズムミスの数が有意に減った
という結果になった、
とのことでした。
■さて、この結果を見て思い出したのは、
Youtubeのあるピアノの先生が言っていた言葉です。
「間違えた方法で何度も練習しても、
間違ったやり方が定着するだけ」
、、、と。
確かにその通りで、
少なくともプロを目指していない
趣味でのピアノの練習の大半は、
”正確な動きで反復して
指に動きをなじませる作業”
だと思います。
■学習としては、
「反復学習」であり、
正しい方法で正しく繰り返せば
最短距離でゴールに近づくことができる、
となるのでしょう。
、、、とすると、
そこに様々な試行錯誤は
実はあまり必要ではなく、
”正しいパターンを、
効率よく身につけられるような手段を選ぶ”
ほうが効果が高い、と言えるのだろうな、
と感じたのでした。
■これはハイウェッツのいう、
『適応課題』と『技術課題』
の違いに分類して取り組むと、
わかりやすいようにも思います。
実際の仕事では、
『適応課題』:
”既存の方法で一般的に解決ができない
複雑で困難な問題(adaptive challenge)”
が多くあります。
それは関係性の中で生じる問題などで、
解決策が明確になく、難しい問題です。
一方、
『技術的課題』は
”既存の知識・方法で解決できる問題”
とされ、技術やリソースで
解決をする事ができる問題である、
といいます。
■仕事においては、
「適応課題(既存の方法で解決できない関係性の課題)を
技術的課題(既存の知識や技術)で対処しようとして、
ドツボにはまる」
パターンの方が多いと言われますが、
逆もまた然りで、
(それこそピアノの演奏のように)
「技術的課題(既にわかっている手法)があるならば
それは既存の知識を総動員すればよい」
とも言えるでしょう。
■、、、となんだか話が、
広がってしまいましたが、
いろんな研究者が、
学習を支援する様々なアイデアを
考えてくれているので、
それらのものを最大限活用するのが、
大事なんだな、と思った、
というお話でした。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の名言>
どんな芸術家でも最初は素人だった。
エマーソン
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