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3074号 2022年7月22日

「ポジティブ or ネガティブ、どちらのフィードバックが効果的なのか?」の研究

(本日のお話 2776字/読了時間3分)

■おはようございます。紀藤です。

昨日は2件のアポイント。
また夜からは大学院関連の勉強会への参加。
その他10キロのランニングでした。



さて、本日のお話です。

仕事をする上で、
”上司からのフィードバック”というのは、

部下のパフォーマンスを向上させる
重要なコミュニケーションとして知られています。

曰く、「フィードバック」とは、

”産業組織心理学の中で、
45年間主要な研究領域であり続けている”
(Cascio & Aguinis,2008)

だそう。

ずいぶん長らく注目されている領域なのですね。
(知りませんでした)

その中で、

「上司からのポジティブorネガティブなフィードバックが
部下にどのような影響を与えるのか?」

についての研究があり、

その内容が、実践的で、発見もあり、
部下を持つ多くの方にお伝えしたい内容だな、
と思いましたので、

本日はその論文の内容と学びを、
皆さまにご共有させていただければと思います。

それでは早速まいりましょう!

タイトルは

【「ポジティブ or ネガティブ、どちらのフィードバックが効果的なのか?」の研究】

それでは、どうぞ。

■上司ー部下間の
コミュニケーションにおいて、

良くも悪くも、
”フィードバック”をする必要があることは
ままあるものです。

たとえば、

問題行動、改善してほしい行動があれば、
「耳の痛いこと」を伝えるときもあります。
いわゆる、”ネガティブなフィードバック”です。

同時に、望ましいこと、ポジティブな影響をもたらしたときなど、
「良いところを伝える」ときもあります。
いわゆる、”ポジティブなフィードバック”です。

どちらも、とても大事な
フィードバック行動です。

■そんなフィードバックについて、
このような論文がございます。

それは、

『ポジティブおよびネガティブ・フィードバックが
部下のコミットメントおよび成長満足感に与える影響
:上司に対する信頼による媒介効果の検討』(繁桝江里.2017)

なるもの。

まさに、このお題

・ポジティブ・フィードバックと
ネガティブ・フィードバックの影響度の違い

を分析しておりまして、
その結果が興味深いものでした。

■では、一体どんな研究を行い、
どんな結果になったのでしょうか?

以下、ざっくりとポイントを抜粋しつつ、
概要をまとめてみます。

(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【論文まとめ】

<研究のテーマ>

・「良いところを指摘する」ポジティブなフィードバック(PF)と
「悪いところを指摘する」ネガティブなフィードバック(NF)が
部下に与える効果の違いを解明すること

<研究の方法>

◯対象者
・システム会社、コンサルティング会社の合計4社
・20-40代の正社員 475名に質問紙調査を行った。

◯調査項目

・上司のPF頻度とNF頻度を聞く
(例:あなたの直属の上司が、あなたの仕事上のスキルなどについて、良いところや悪いところを指摘することは、それぞれどれくらいありますか?)

・および、「上司に対する信頼」「上司に対する信頼性」「部下のコミットメント」「部下の成長満足感」の4項目を聞く

(※前提となる先行研究)

・「信頼」の先行条件として「信頼性」がある。
「信頼性」には、以下3つの側面がある
ー能力(ability):上司の職務遂行における能力や専門性
ー誠実性(integrity):一貫性のある行動をすること
ー慈善性(benevolence):上司が部下の幸福のために行動すること
(Burke,2007)

・また既にわかっている先行研究として以下がある。
ーフィードバック頻度はポジティブ/ネガティブ共に多いほうが、部下のパフォーマンスを高め。
ー上記の効果は、「上司に対する信頼」「フィードバック重要性の認知」によって媒介される
ーポジティブフィードバック(PF)はネガティブ・フィードバック(NF)より効果が強い。
(Earley,1986)

<上記を踏まえた仮説>

1,ポジティブ・フィードバック(PF)は「上司の信頼性」の”3つの要素全て(能力・誠実性・慈善性)”を高める

2,ネガティブ・フィードバック(NF)は「上司の信頼性」の”能力への信頼性”のみ高める

3,「上司の信頼性」が「上司に対する信頼」に影響を与え、
上司に対する信頼は「部下の成長満足感」「部下のコミットメント」という成果変数に影響を与える。

4,よってポジティブ・フィードバックのほうが、部下の成長満足感、部下のコミットメントへの影響が高い

<結果>

・研究結果から、上記1~4まで全て「支持」された

※繁桝江里(2017)『ポジティブおよびネガティブ・フィードバックが部下のコミットメントおよび成長満足感に与える影響
:上司に対する信頼による媒介効果の検討』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)

とのことでした。

■さて、いかがでしょうか。

「A→B」という単純な構造ではなく、
(ポジティブフィードバック→成果に繋がる)

「A→B→C→D」というように、いくつかの要素を媒介した形になるため
(ポジティブ・フィードバック→上司の信頼性向上→上司の信頼向上→部下の成長満足/コミットメント」

すこし混乱させてしまったかもしれません。

■ただ、なかなか興味深いと思うのです。

ネガティブなフィードバック、
いうなれば、

「キミのここが良くない。
なぜならば・・・」

といわれたとしたら、
その影響として、改善点を明確に指摘した、
”上司の「能力」への信頼性”は高まりそうです。



しかし、ポジティブなフィードバックは
それ以上に影響が大きい、ということ。
ここが注目ポイントかと思うのです。

「キミのここが良く出来ていたと思う。
なぜならば・・・」

と言われたとすると、
その上司に対して「信頼性」の3次元全て、すなわち、

ー能力(ability):上司の職務遂行における能力や専門性
ー誠実性(integrity):一貫性のある行動をすること
ー慈善性(benevolence):上司が部下の幸福のために行動すること

が高まるというわけです。

ポジティブなフィードバックによって、
能力だけではなく、部下のことを思っている、
ということも伝わる。

、、、と、思うと、単純かもしれませんが、
「ポジティブなフィードバクのほうがお得」
と思えてきます。(、、、がいかがでしょう)

■我々は、自分に対しても他者に対しても

「出来ていないこと」に目が行きがちなこと、
しばしばあるようにも思います。

確かにこれまでも、
改善型アプローチ、すなわち

何が出来ていないかに注目して
それを埋めるというマネジメントが
主流であったように思います。

「良いところに注目してばかりだと
相手が図に乗るのではないか」

「努力しなくなるのではないか」

という意見も聞くことがありますが、

上記の研究からわかったこと、

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ポジティブフィードバックにフォーカスすることは

1)上司の信頼性を全面的に高め、上司への信頼を高められる

2)ひいては、部下の成長満足、コミットメントも高められる
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ことを見ると、とはいえ

ポジティブフィードバックを中心にしたほうが
色々と良い影響があると言えそうです。

ということで、

ポジティブフィードバック”だけ”とは言わずとも
これらの影響は考慮することも大切なのだろうな、

と思った次第です。

ご参考になれば幸いです。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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<本日の名言>

おまえの心を明るく楽しくしようと思うならば、
ともにくらす人々の長所を思え

アウレリウス
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