「ポジティブ or ネガティブ、どちらのフィードバックが効果的なのか?」の研究
(本日のお話 2776字/読了時間3分)
■おはようございます。紀藤です。
昨日は2件のアポイント。
また夜からは大学院関連の勉強会への参加。
その他10キロのランニングでした。
*
さて、本日のお話です。
仕事をする上で、
”上司からのフィードバック”というのは、
部下のパフォーマンスを向上させる
重要なコミュニケーションとして知られています。
曰く、「フィードバック」とは、
”産業組織心理学の中で、
45年間主要な研究領域であり続けている”
(Cascio & Aguinis,2008)
だそう。
ずいぶん長らく注目されている領域なのですね。
(知りませんでした)
その中で、
「上司からのポジティブorネガティブなフィードバックが
部下にどのような影響を与えるのか?」
についての研究があり、
その内容が、実践的で、発見もあり、
部下を持つ多くの方にお伝えしたい内容だな、
と思いましたので、
本日はその論文の内容と学びを、
皆さまにご共有させていただければと思います。
それでは早速まいりましょう!
タイトルは
【「ポジティブ or ネガティブ、どちらのフィードバックが効果的なのか?」の研究】
それでは、どうぞ。
■上司ー部下間の
コミュニケーションにおいて、
良くも悪くも、
”フィードバック”をする必要があることは
ままあるものです。
たとえば、
問題行動、改善してほしい行動があれば、
「耳の痛いこと」を伝えるときもあります。
いわゆる、”ネガティブなフィードバック”です。
同時に、望ましいこと、ポジティブな影響をもたらしたときなど、
「良いところを伝える」ときもあります。
いわゆる、”ポジティブなフィードバック”です。
どちらも、とても大事な
フィードバック行動です。
■そんなフィードバックについて、
このような論文がございます。
それは、
『ポジティブおよびネガティブ・フィードバックが
部下のコミットメントおよび成長満足感に与える影響
:上司に対する信頼による媒介効果の検討』(繁桝江里.2017)
なるもの。
まさに、このお題
・ポジティブ・フィードバックと
ネガティブ・フィードバックの影響度の違い
を分析しておりまして、
その結果が興味深いものでした。
■では、一体どんな研究を行い、
どんな結果になったのでしょうか?
以下、ざっくりとポイントを抜粋しつつ、
概要をまとめてみます。
(ここから)
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【論文まとめ】
<研究のテーマ>
・「良いところを指摘する」ポジティブなフィードバック(PF)と
「悪いところを指摘する」ネガティブなフィードバック(NF)が
部下に与える効果の違いを解明すること
<研究の方法>
◯対象者
・システム会社、コンサルティング会社の合計4社
・20-40代の正社員 475名に質問紙調査を行った。
◯調査項目
・上司のPF頻度とNF頻度を聞く
(例:あなたの直属の上司が、あなたの仕事上のスキルなどについて、良いところや悪いところを指摘することは、それぞれどれくらいありますか?)
・および、「上司に対する信頼」「上司に対する信頼性」「部下のコミットメント」「部下の成長満足感」の4項目を聞く
(※前提となる先行研究)
・「信頼」の先行条件として「信頼性」がある。
「信頼性」には、以下3つの側面がある
ー能力(ability):上司の職務遂行における能力や専門性
ー誠実性(integrity):一貫性のある行動をすること
ー慈善性(benevolence):上司が部下の幸福のために行動すること
(Burke,2007)
・また既にわかっている先行研究として以下がある。
ーフィードバック頻度はポジティブ/ネガティブ共に多いほうが、部下のパフォーマンスを高め。
ー上記の効果は、「上司に対する信頼」「フィードバック重要性の認知」によって媒介される
ーポジティブフィードバック(PF)はネガティブ・フィードバック(NF)より効果が強い。
(Earley,1986)
<上記を踏まえた仮説>
1,ポジティブ・フィードバック(PF)は「上司の信頼性」の”3つの要素全て(能力・誠実性・慈善性)”を高める
2,ネガティブ・フィードバック(NF)は「上司の信頼性」の”能力への信頼性”のみ高める
3,「上司の信頼性」が「上司に対する信頼」に影響を与え、
上司に対する信頼は「部下の成長満足感」「部下のコミットメント」という成果変数に影響を与える。
4,よってポジティブ・フィードバックのほうが、部下の成長満足感、部下のコミットメントへの影響が高い
<結果>
・研究結果から、上記1~4まで全て「支持」された
※繁桝江里(2017)『ポジティブおよびネガティブ・フィードバックが部下のコミットメントおよび成長満足感に与える影響
:上司に対する信頼による媒介効果の検討』
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(ここまで)
とのことでした。
■さて、いかがでしょうか。
「A→B」という単純な構造ではなく、
(ポジティブフィードバック→成果に繋がる)
「A→B→C→D」というように、いくつかの要素を媒介した形になるため
(ポジティブ・フィードバック→上司の信頼性向上→上司の信頼向上→部下の成長満足/コミットメント」
すこし混乱させてしまったかもしれません。
■ただ、なかなか興味深いと思うのです。
ネガティブなフィードバック、
いうなれば、
「キミのここが良くない。
なぜならば・・・」
といわれたとしたら、
その影響として、改善点を明確に指摘した、
”上司の「能力」への信頼性”は高まりそうです。
*
しかし、ポジティブなフィードバックは
それ以上に影響が大きい、ということ。
ここが注目ポイントかと思うのです。
「キミのここが良く出来ていたと思う。
なぜならば・・・」
と言われたとすると、
その上司に対して「信頼性」の3次元全て、すなわち、
ー能力(ability):上司の職務遂行における能力や専門性
ー誠実性(integrity):一貫性のある行動をすること
ー慈善性(benevolence):上司が部下の幸福のために行動すること
が高まるというわけです。
ポジティブなフィードバックによって、
能力だけではなく、部下のことを思っている、
ということも伝わる。
、、、と、思うと、単純かもしれませんが、
「ポジティブなフィードバクのほうがお得」
と思えてきます。(、、、がいかがでしょう)
■我々は、自分に対しても他者に対しても
「出来ていないこと」に目が行きがちなこと、
しばしばあるようにも思います。
確かにこれまでも、
改善型アプローチ、すなわち
何が出来ていないかに注目して
それを埋めるというマネジメントが
主流であったように思います。
「良いところに注目してばかりだと
相手が図に乗るのではないか」
「努力しなくなるのではないか」
という意見も聞くことがありますが、
上記の研究からわかったこと、
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ポジティブフィードバックにフォーカスすることは
1)上司の信頼性を全面的に高め、上司への信頼を高められる
2)ひいては、部下の成長満足、コミットメントも高められる
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ことを見ると、とはいえ
ポジティブフィードバックを中心にしたほうが
色々と良い影響があると言えそうです。
ということで、
ポジティブフィードバック”だけ”とは言わずとも
これらの影響は考慮することも大切なのだろうな、
と思った次第です。
ご参考になれば幸いです。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の名言>
おまえの心を明るく楽しくしようと思うならば、
ともにくらす人々の長所を思え
アウレリウス
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