魔法の杖はない?!「理論のバウンダリー」を知る
(本日のお話 2182字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は3件のアポイント。
その他、論文の読み進めなど。
*
さて、本日のお話です。
引き続き、夏休みの期間に
大学院の集中授業に参加しております。
その際に学んだ
『理論のバウンダリー(境界)を知る』
というお話が、
脳内に刺さっております。
言われてみれば至極納得の話。
なのですが、意外と見落としているし
それを知らないと、痛い目を見ることもある
大切な内容だと感じております。
、、、ということで、
本日は上記の内容について、
皆さまに学びと気づきをご共有させていただければと思います。
それでは早速まいりましょう!
タイトルは、
【魔法の杖はない?!「理論のバウンダリー」を知る】
それでは、どうぞ。
■「金槌を持つと、全部釘に見える」
なんて格言がありますね。
”使えそうな武器(知識など)を持つと、
全部それで解決したくなる”
という比喩として使われます。
例えば、
・コーチングを学んだら、
なんでもかんでもコーチングで解決したくなる とか、
・ストレングス・ファインダーを学んだら
なんでもかんでも強みで解決したくなる とか
・その他、◯◯を学んだら、
何でもかんでも◯◯でなんとかしたくなる、
というように。
ちなみに◯◯には、
7つの習慣、SL理論、サーバントリーダーシップ、
色々と当てはめることができます。
(うーん、耳が痛い・・・)
■学んだものがパワフルなツールで、
かつ、それが自分にとって
納得できるものであるほど、
知識やツールに対する信頼、
そして愛情があればあるほど
それらに何でもかんでも解決策を委ねてしまう、
という傾向、ありがちではなかろうか。
そんなことを自戒を込めて思うわけです。
(、、、が、皆さまいかがでしょうか)
■そんな前置きの上で、
ここ数日の大学院の授業で論文を読み解く際に、
先生から問われていた質問がありました・
それが、
「この論文の”強みと限界”は何ですか?」
という問いでした。
■論文の”強みと限界”。
「強み」というと、わかりやすいです。
・この論文で何が明らかにされたのか?
・この論文は実践にどのように活かすことができるのか?
大切な問いであり、
問われることは、ごく当然に感じます。
*
一方、「論文の限界」とは何か。
何を意味し、なぜ問われる必要があるのでしょうか?
その理由ですが、結論、
”理論には必ず”限界”があるから”
なのです。
ゆえに、この理論は、
どのような条件下で適用できるものなのか?
(=境界条件(バウンダリーコンディション))
を明確にする必要がある、
というわけです。
■例えば、ですが
リーダーシップの理論で
「変革型リーダーシップ」
という、世界的に支持されている
代表的な理論があります。
1990年から、2012年までの
リーダーシップに関する論文で
30%以上がこの理論に関わることであった、
という超人気の理論。
※変革型リーダーシップについてはこちら↓
https://www.courage-sapuri.jp/backnumber/9758/
しかし、それくらい支持されている
「変革型リーダーシップ」だったとしても、
やっぱり限界があります。
34カ国57000人以上の従業員を対象としたメタ分析によると
”変革型リーダーシップの行動の価値は、
西欧や北米などの先進国では限定的である一方、
アフリカ、中東、南米、東南アジアの一部で最も効果的である”
(Crede,Jong,&Harms,2019)
という批判(限界)が述べられています。
ゆえに、
「すべての国において有効であるとみなされない可能性」が
示唆されており、
言い換えるならばここでは
「文化的な要素が境界条件
(バウンダリー・コンディション)の一つ」
といっても良いかと思います。
つまり、どんなときでも
必ず当てはまるわけではない(少なくともそういう意見がある)
ということ。
■あるいは、「コーチング」もそう。
コーチングについても、
人気の考え方なので、色々と適用したくなります。
でも、やっぱり”境界条件”のようなものはあります。
例えば、
”アンコーチャブル(コーチング不可能)な
クライアントの条件”
として、こんな条件が挙げられています。
1,話を聞けない人
2,約束(時間・行動)を守らない人
3,信頼関係を築けない人
4,常に否定的に考える人
5,思考や感情をコントロールできない人
6,過度に依存性が高い人
7,攻撃的な人
8,治療が必要な精神疾患のある人
(出江,2006)
これもコーチングの限界を指しており、
境界条件(バウンダリーコンディション)と
同義であると言ってもよいでしょう。
■これらのことから思うこと。
それは、
「どんなとき、どんな状況でも
必ず効く”魔法の常”は存在しない」
ということ。
抽象度を思い切り上げて、
時間軸も思い切り伸ばした
”思想的な黄金律”
(=正しいことをすれば報われる)
のような話になると、
それは科学的な理論とは別になり、
多くの人にも当てはまるじゃないか、となるかもしれません。
しかし、論文で取り上げられる
反証可能である科学的な理論であれば
当然ある程度の時間的・空間的範囲内での
理論になっているわけであり、
そうするとそれが機能する条件も、
当然存在するのは自然の話です。
■とすると
「どんな理論(それを応用させたツールを含め)も限界がある」
と思ったほうが、
一つの登り方(理論やスキル)に囚われすぎず
別の見方に、柔軟になることができて、
結果的に現場や実践にも役立てることができるのでは、
そんなことを思ったのでした。
■反省ではありますが、私も一時期、
力を入れて学んでいたスキルについて
「システムコーチングすごい、、、!」
と真剣になるあまり、
とにかく全部システムコーチング、
となっていたときがありました。
、、、がやっぱり今思うと、
それが効果を発揮する条件、
そうではない条件はあったように
振り返り思います。
ゆえに、
・どんな時にその理論やツールが活きるのか?
・何がその理論やツールの限界なのか?
これらの”強みと限界”
を言葉として認識しておくことで、
現実的な活用が可能になるのだろう、と思います。
改めて
”境界条件(バウンダリーコンディション)”
常に意識をしておきたい、と思った次第。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の名言>
いつか空の飛び方を知りたいと思っている者は、まず立ち上がり、
歩き、走り、登り、踊ることを学ばなければならない。
その過程を飛ばして、飛ぶことはできない。
フリードリヒ・ニーチェ
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