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3096号 2022年8月13日

「LMX理論」とは何か(後編)ー関係構築の3ステップー

(本日のお話 3556字/読了時間4分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は、早朝から12キロのランニング。

また、大学にて
大学院の課題やプロジェクト研究など。
夜は同じく大学院の同期と懇親会でした。



さて、本日のお話です。

昨日、関係性に注目するリーダーシップ理論
「LMX理論」のご紹介をいたしました。

※昨日のメルマガはこちら↓↓
https://1lejend.com/b/detail/HSfoIRnMfw/4266955/

今日は”後編”として、
LMXを構築する際の3ステップについて
皆さまにご紹介して参りたいと思います。

ちなみにキーワードは
「感情」でございます。

それでは早速まいりましょう!

タイトルは

【「LMX理論」とは何か(後編)ー関係構築の3ステップー】

それでは、どうぞ。

※ちなみに本文で「LMX」という用語が連発します。
(Leader Member Exchange=リーダーとメンバーの交換関係)
「リーダーとメンバーの関係」という意味で読み替えて
ご認識いただければと思います。

■LMX(=Leader Member Exchange)。

「リーダーとフォロワーの関係性」に注目した
リーダーシップとお伝えしました。

早速ですがそもそも”関係性”とは
いかにして生まれるのでしょうか?

身近な状況で想像してみると

・ミーティングで共に過ごした時間の多さ、とか

・同じ目標を追いかけた共通体験、とか

・それとも、新橋のガード下の
居酒屋で共にグチをこぼしあった時間
(これは昭和の香りがしますが(汗))

、、、などなど

その”関係性”が生み出されるきっかけは、
日常の様々な部分に存在していると思えます。

■そんな中、
Cropanzano(2017)らが

LMXにおいて

”感情的な出来事”
(Affective Event)

がリーダーとメンバーの関係性を深める、
と述べておりました。

そのお話に説得力を感じるとともに、
実用的な内容でもあるな、と思ったのでした。

※今日の参考論文はこちら:
Cropanzano, Russell, Marie T. Dasborough, and Howard M. Weiss. 2017.
“Affective Events and the Development of Leader-Member Exchange.” AMRO 42 (2): 233–58.
(感情的な出来事とLMXの発展)

■では、この論文、
どんなお話なのでしょうか?

まず、この論文では

『感情的事象理論(Affective Event Theory)』

というものを土台に話を深めています。
(なんだか必殺技みたいなネーミング)



これ、なんとなくわかる気がしますが、
「感情」とは関係性を作る上で重要なものであります。

曰く

”関係性とは、その感情的なトーンについて
お互いが関連する経験での感情や感覚を理解しないと、
ほとんど理解できない”(Ferris,2009)

とのことで、要は

ある出来事の中から生まれる感情を
お互いに理解し合うことが関係性を深めてくれる、

というのは、自分に置き換えると、
わかる気がしますね。

(あの夏、一緒に旅行に行った経験が、
2人の仲を深めた、、、とか)

■”出来事”が起これば、
”個別の感情”も変化します。

そして人は誰かの感情に影響を受けます。

相手への感情の”伝染”や
相手の感情への”同調”も生まれ、
それがお互いに「関係性」に影響を及ぼすことになる。

ゆえに、厳密にいえば上述で語った

・ミーティングで共に過ごした時間の多さ

・同じ目標を追いかけた共通体験

・それとも、新橋のガード下の
居酒屋で共にグチをこぼしあった時間

なども、その時間そのものではなく
その中に含まれる

”感情的な出来事”(Affective Event)

があるからこそ、
お互いの関係性を深めるわけです。

■、、、と、理論の土台である
「感情」と「出来事」の重要性についてお伝えしました。

では、具体的に、
リーダーとメンバーの関係性に注目した「LMX理論」に活用するには、
リーダーは何に気をつければよいのでしょうか?



ポイントは、LMXが発展する
3つの段階に注目してみることです。

その3つの段階と、
上記でお伝えした”感情的事象理論”を含め

どのように影響し合うのか、
以下整理をしてみました。

(ここから)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<感情的事象理論に基づいたLMX発展の3つの段階>

◯ステップ1)役割分担(Role taking)

・感情の”伝染”がポイント。
・リーダーがメンバーとのLMX関係の可能性を引き出す段階
・「リーダーの感情表現」が関係構築に役立つ

◯ステップ2)役割形成(Role making)

・感情の”同調”がポイント。
・ダイアド(二者間)での感情的な出来事の積み重ねがLMXの質を形成する段階
・「メンバーの感情の誘発」が関係構築に役立つ

◯ステップ3)役割定着(Role routinization)

・段階:感情の”誘発”がポイント。
・安定した関係が築かれる段階
・相対的なリーダーとメンバーの関係が感情を誘発する段階
(質が高い/質の低い関係を見て、そこから感情が誘発される。例:優越感、疎外感等)

※参考:Cropanzano, Russell, Marie T. Dasborough, and Howard M. Weiss. 2017.
“Affective Events and the Development of Leader-Member Exchange.” AMRO 42 (2): 233–58.
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(ここまで)

とのこと。

■上記、繰り返しになりますが

リーダーとメンバーの関係が出来始めた「初期段階」では、
1)役割分担が起こり、

感情の”伝染”がポイントで
リーダーからの感情表現が関係構築に役立つ。

そして、「中期段階」では
2)役割形成が起こり

感情の”同調”がポイントで、
共通体験と、感情的な出来事を積み重ねが役立つ。

そして「後期段階」では
3)役割定着が起こり、

感情の”誘発”がポイントになる。
どんな関係かは安定してくる一方、
その関係の質の高低が”お互いの感情を誘発”する

としています。

伝染→同調→誘発、
こうした感情のやり取りの方向性の違い、
その頻度の違いなどが、

段階によって変わってくるところを
記述しているところが興味深いです。

■そして論文内では、

それぞれの感情についても、
詳しく述べています。

例えば、

「ステップ1)役割分担」の段階では、
「ポジティブな感情」についてこう語ります。

・リーダーが、幸福・喜びの感情を表現すると
それが、メンバーの幸福・喜びを促進する傾向がある

・その感情が、”感情的な出来事”となり、
LMXの質を向上させることができる

(ちなみに、メンバーの感情的共感度が高いほど
その効果は高くなる)

・LMXを発展させるには、
リーダーはポジティブな感情表現をすることは役に立つ

とのこと。

なるほど、ポジティブな感情は
メンバーに伝染するから、感情表現をしたほうがが良いのか、、、。



一方、「ネガティブな感情」については
こう語っています。

・リーダーが、怒りや悲しみなどのネガティブな感情を表現すると
それが、メンバーの怒り・悲しみなどを促進する傾向がある

・怒り、悲しみが感情的な出来事にあり
LMXの質を”低下”させる

とのこと。

ネガティブな感情はあんまりよくないのか、、、

と思いきや、こうも語ります。

ただし、ダイアド(二者間)外の、
外部に向けて”共通の怒り・悲しみ”を表現した場合は、
感情的な出来事がLMXの質の向上に作用する、

とのこと。

要は、鬼退治の桃太郎軍団みたいなものでしょうか。
「鬼ゆるさん!やっつけるぞ!」→「結束高まる」
という作用もあるようです。

なので、感情の質も、
単純にネガティブ=良くない、
という話でもないようです。

■そして「ステップ2)役割形成」の段階では

”感情のリズム”がお互いの感情を誘発する

と言います。

曰く、

・ポジティブな感情の相互同調は、
LMXの質の向上に作用する といい一方、

・ネガティブな感情の相互同調は
LMXの質の低下に作用する

といいます。

■最後に「ステップ3)役割定着」の段階では、

”LMXの差異”が
ポジティブorネガティブな感情を誘発する

といいます。

役割定着すると、自分と周りのメンバーの比較が始まります。
すると、優越感、妬みなども当然生まれます。

曰く、

・自分はリーダーとのLMXが比較的高い、とメンバー思うと
リーダーに対する感謝などポジティブな気持ちが生まれる。
そしてLMXの質は更に向上する

といい一方、

・自分はリーダーとのLMXが比較的低い、とメンバーが思うと
リーダーに対する怒り、嫌悪、軽蔑などのネガティブな気持ちが生まれる。
そしてLMXの質は更に低下する

そうです。

うーん、人って難しい。。。
でも、こういうことなのですよね。

なので、LMXの質の高低に差を付けすぎないよう
リーダーは気を遣う必要がある、

とも言えるのかもしれません。

■、、、と、

LMXの発達の3つの段階と、
それにまつわる”感情”について
整理をさせていただきました。

こう見てみると、

「関係性には感情が関わっている」

と改めて思いますし、

特にメンバーが共感度が高い人、
感情を大切にする人であれば、
なおのこと大切にすることが重要なのでしょう。

そしてその過程で、

”リーダー自身がポジティブな感情を積極的に表現すること”
(感謝、喜びなどの表現)

あるいは

”(お互いの関係以外への)悲しみや怒りなどに共感する”

ことはドライないい方かもしれませんが、
メンバーとの関係を深める大切な手段にもなりえますし、

そうであるならば、積極的に活用することも
大切である、ともいえそうです。

■仕事ではもちろん、
チームの共通の目標に向かって
必要なアクションをしていくことが求められます。

ただ、そのために
リーダーがメンバーに影響を与えることも必要であり、
その中で関係性を紐解いたのが「LMX理論」です。

そしてLMX(相互の関係)を発展させるために
”感情”はとても重要な要素である、

そのことを理論から紐解いたところに
この論文の面白さを感じた次第でございます。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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<本日の名言>

われわれは、
自分に関心を寄せてくれる人々に関心を寄せる

プブリウス・シルス
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