「LMX理論」とは何か(後編)ー関係構築の3ステップー
(本日のお話 3556字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は、早朝から12キロのランニング。
また、大学にて
大学院の課題やプロジェクト研究など。
夜は同じく大学院の同期と懇親会でした。
*
さて、本日のお話です。
昨日、関係性に注目するリーダーシップ理論
「LMX理論」のご紹介をいたしました。
※昨日のメルマガはこちら↓↓
https://1lejend.com/b/detail/HSfoIRnMfw/4266955/
今日は”後編”として、
LMXを構築する際の3ステップについて
皆さまにご紹介して参りたいと思います。
ちなみにキーワードは
「感情」でございます。
それでは早速まいりましょう!
タイトルは
【「LMX理論」とは何か(後編)ー関係構築の3ステップー】
それでは、どうぞ。
※ちなみに本文で「LMX」という用語が連発します。
(Leader Member Exchange=リーダーとメンバーの交換関係)
「リーダーとメンバーの関係」という意味で読み替えて
ご認識いただければと思います。
■LMX(=Leader Member Exchange)。
「リーダーとフォロワーの関係性」に注目した
リーダーシップとお伝えしました。
早速ですがそもそも”関係性”とは
いかにして生まれるのでしょうか?
身近な状況で想像してみると
・ミーティングで共に過ごした時間の多さ、とか
・同じ目標を追いかけた共通体験、とか
・それとも、新橋のガード下の
居酒屋で共にグチをこぼしあった時間
(これは昭和の香りがしますが(汗))
、、、などなど
その”関係性”が生み出されるきっかけは、
日常の様々な部分に存在していると思えます。
■そんな中、
Cropanzano(2017)らが
LMXにおいて
”感情的な出来事”
(Affective Event)
がリーダーとメンバーの関係性を深める、
と述べておりました。
そのお話に説得力を感じるとともに、
実用的な内容でもあるな、と思ったのでした。
※今日の参考論文はこちら:
Cropanzano, Russell, Marie T. Dasborough, and Howard M. Weiss. 2017.
“Affective Events and the Development of Leader-Member Exchange.” AMRO 42 (2): 233–58.
(感情的な出来事とLMXの発展)
■では、この論文、
どんなお話なのでしょうか?
まず、この論文では
『感情的事象理論(Affective Event Theory)』
というものを土台に話を深めています。
(なんだか必殺技みたいなネーミング)
*
これ、なんとなくわかる気がしますが、
「感情」とは関係性を作る上で重要なものであります。
曰く
”関係性とは、その感情的なトーンについて
お互いが関連する経験での感情や感覚を理解しないと、
ほとんど理解できない”(Ferris,2009)
とのことで、要は
ある出来事の中から生まれる感情を
お互いに理解し合うことが関係性を深めてくれる、
というのは、自分に置き換えると、
わかる気がしますね。
(あの夏、一緒に旅行に行った経験が、
2人の仲を深めた、、、とか)
■”出来事”が起これば、
”個別の感情”も変化します。
そして人は誰かの感情に影響を受けます。
相手への感情の”伝染”や
相手の感情への”同調”も生まれ、
それがお互いに「関係性」に影響を及ぼすことになる。
ゆえに、厳密にいえば上述で語った
・ミーティングで共に過ごした時間の多さ
・同じ目標を追いかけた共通体験
・それとも、新橋のガード下の
居酒屋で共にグチをこぼしあった時間
なども、その時間そのものではなく
その中に含まれる
”感情的な出来事”(Affective Event)
があるからこそ、
お互いの関係性を深めるわけです。
■、、、と、理論の土台である
「感情」と「出来事」の重要性についてお伝えしました。
では、具体的に、
リーダーとメンバーの関係性に注目した「LMX理論」に活用するには、
リーダーは何に気をつければよいのでしょうか?
*
ポイントは、LMXが発展する
3つの段階に注目してみることです。
その3つの段階と、
上記でお伝えした”感情的事象理論”を含め
どのように影響し合うのか、
以下整理をしてみました。
(ここから)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<感情的事象理論に基づいたLMX発展の3つの段階>
◯ステップ1)役割分担(Role taking)
・感情の”伝染”がポイント。
・リーダーがメンバーとのLMX関係の可能性を引き出す段階
・「リーダーの感情表現」が関係構築に役立つ
◯ステップ2)役割形成(Role making)
・感情の”同調”がポイント。
・ダイアド(二者間)での感情的な出来事の積み重ねがLMXの質を形成する段階
・「メンバーの感情の誘発」が関係構築に役立つ
◯ステップ3)役割定着(Role routinization)
・段階:感情の”誘発”がポイント。
・安定した関係が築かれる段階
・相対的なリーダーとメンバーの関係が感情を誘発する段階
(質が高い/質の低い関係を見て、そこから感情が誘発される。例:優越感、疎外感等)
※参考:Cropanzano, Russell, Marie T. Dasborough, and Howard M. Weiss. 2017.
“Affective Events and the Development of Leader-Member Exchange.” AMRO 42 (2): 233–58.
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(ここまで)
とのこと。
■上記、繰り返しになりますが
リーダーとメンバーの関係が出来始めた「初期段階」では、
1)役割分担が起こり、
感情の”伝染”がポイントで
リーダーからの感情表現が関係構築に役立つ。
そして、「中期段階」では
2)役割形成が起こり
感情の”同調”がポイントで、
共通体験と、感情的な出来事を積み重ねが役立つ。
そして「後期段階」では
3)役割定着が起こり、
感情の”誘発”がポイントになる。
どんな関係かは安定してくる一方、
その関係の質の高低が”お互いの感情を誘発”する
としています。
伝染→同調→誘発、
こうした感情のやり取りの方向性の違い、
その頻度の違いなどが、
段階によって変わってくるところを
記述しているところが興味深いです。
■そして論文内では、
それぞれの感情についても、
詳しく述べています。
例えば、
「ステップ1)役割分担」の段階では、
「ポジティブな感情」についてこう語ります。
・リーダーが、幸福・喜びの感情を表現すると
それが、メンバーの幸福・喜びを促進する傾向がある
↓
・その感情が、”感情的な出来事”となり、
LMXの質を向上させることができる
↓
(ちなみに、メンバーの感情的共感度が高いほど
その効果は高くなる)
↓
・LMXを発展させるには、
リーダーはポジティブな感情表現をすることは役に立つ
とのこと。
なるほど、ポジティブな感情は
メンバーに伝染するから、感情表現をしたほうがが良いのか、、、。
*
一方、「ネガティブな感情」については
こう語っています。
・リーダーが、怒りや悲しみなどのネガティブな感情を表現すると
それが、メンバーの怒り・悲しみなどを促進する傾向がある
↓
・怒り、悲しみが感情的な出来事にあり
LMXの質を”低下”させる
とのこと。
ネガティブな感情はあんまりよくないのか、、、
と思いきや、こうも語ります。
ただし、ダイアド(二者間)外の、
外部に向けて”共通の怒り・悲しみ”を表現した場合は、
感情的な出来事がLMXの質の向上に作用する、
とのこと。
要は、鬼退治の桃太郎軍団みたいなものでしょうか。
「鬼ゆるさん!やっつけるぞ!」→「結束高まる」
という作用もあるようです。
なので、感情の質も、
単純にネガティブ=良くない、
という話でもないようです。
■そして「ステップ2)役割形成」の段階では
”感情のリズム”がお互いの感情を誘発する
と言います。
曰く、
・ポジティブな感情の相互同調は、
LMXの質の向上に作用する といい一方、
・ネガティブな感情の相互同調は
LMXの質の低下に作用する
といいます。
■最後に「ステップ3)役割定着」の段階では、
”LMXの差異”が
ポジティブorネガティブな感情を誘発する
といいます。
役割定着すると、自分と周りのメンバーの比較が始まります。
すると、優越感、妬みなども当然生まれます。
曰く、
・自分はリーダーとのLMXが比較的高い、とメンバー思うと
リーダーに対する感謝などポジティブな気持ちが生まれる。
そしてLMXの質は更に向上する
といい一方、
・自分はリーダーとのLMXが比較的低い、とメンバーが思うと
リーダーに対する怒り、嫌悪、軽蔑などのネガティブな気持ちが生まれる。
そしてLMXの質は更に低下する
そうです。
うーん、人って難しい。。。
でも、こういうことなのですよね。
なので、LMXの質の高低に差を付けすぎないよう
リーダーは気を遣う必要がある、
とも言えるのかもしれません。
■、、、と、
LMXの発達の3つの段階と、
それにまつわる”感情”について
整理をさせていただきました。
こう見てみると、
「関係性には感情が関わっている」
と改めて思いますし、
特にメンバーが共感度が高い人、
感情を大切にする人であれば、
なおのこと大切にすることが重要なのでしょう。
そしてその過程で、
”リーダー自身がポジティブな感情を積極的に表現すること”
(感謝、喜びなどの表現)
あるいは
”(お互いの関係以外への)悲しみや怒りなどに共感する”
ことはドライないい方かもしれませんが、
メンバーとの関係を深める大切な手段にもなりえますし、
そうであるならば、積極的に活用することも
大切である、ともいえそうです。
■仕事ではもちろん、
チームの共通の目標に向かって
必要なアクションをしていくことが求められます。
ただ、そのために
リーダーがメンバーに影響を与えることも必要であり、
その中で関係性を紐解いたのが「LMX理論」です。
そしてLMX(相互の関係)を発展させるために
”感情”はとても重要な要素である、
そのことを理論から紐解いたところに
この論文の面白さを感じた次第でございます。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の名言>
われわれは、
自分に関心を寄せてくれる人々に関心を寄せる
プブリウス・シルス
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