今週の一冊『承認とモチベーション』(前半)
(本日のお話 1618字/読了時間2分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日より、夏休みということで
愛知県の旅館にきております。
父、母、姉と
妻、私、息子での温泉旅行ですが、
ゆるりとした時間が流れております。
リフレッシュって大事ですね。
*
さて、本日のお話です。
毎週日曜日はお勧めの一冊をご紹介する
「今週の一冊」のコーナー。
今週の一冊は、
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『承認とモチベーション』(前半)
太田 肇(著)
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です。
今回の一冊は、少しじっくり
掘り下げたいと思いましたので、
前半・後半
で分けてお伝えしたいと思います。
■「承認」=ほめること、認めること
を意味します。
この「承認」、
コーチングでも重要なキーワードであり
また私たちが働く上でも、
大切な行為のようです。
■少し話が回り道になりますが
「働く意味」のお話について
少し触れてみたいと思います。
たとえば、働くひとに
「何のために働いているのか?」
と問うてみると、おそらく
その回答の大多数として
”金銭”
と答える人はかなり多いかと思われます。
その理由は、
・金銭は人格と切り離された中立的なものであること
・金銭は定量化して見えやすい(具体的なモノである)
・金銭は生活のために必要なものである
ことなどの便宜的な理由から、
「人は金銭のために働く」
という仮定が生まれた、
と考えられるそう。
■、、、ただ、
ここで立ち止まって考えてみたいのです。
本当に
「金銭の”ため”に働いているのか?」
、、、と。
間違いなく、それ以外の理由も
多々あることを感じます。
もし金銭の”ため”なら、
報酬がよければそれでOK、
離職も少ない、となるでしょう。
そして、生産性やパフォーマンスも
もらえる金銭が高ければ、高まる、
と想定されます。
しかし、現実はそうはなっていません。
あるいは過去の研究からも、
それとは矛盾する結果が出ています。
(ホーソン実験等)
■人は、働くことに関して
金銭以外の様々な意味を
動機づけとして見出しており
その中の動機づけの
中心的なものの一つが、
”面白い、楽しい、嬉しい”
という感情である、
と本書では述べています。
そして
「どんなときに嬉しいと感じたか?」
という質問をアンケートや
インタビューを通じて行った結果によると
おおざっぱにほぼ半数が、
”周囲から認められたり、
褒められたりしたとき”
に嬉しい、と感じるそうです。
まさに「承認されたとき」です。
■、、、ということで、
少し遠回りになりましたが
働くことを、
お金のためではなく
「承認されたい人(承認人)」
という重要な観点もあるのではないか、
という議題を投げかけています。
■さて、
そんな重要な意味をもつ「承認」。
その効果について、
【承認の5つの効果】
について同書でまとめています。
どんな内容なのでしょうか。
以下、簡単に整理いたします。
(ここから)
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【承認の5つの効果>
<1)組織のパフォーマンス向上>
・組織成員のモチベーションアップが仕事の成果を高める。
・良い仕事が称賛されることで、成員の仕事が生産的な方向に導かれていくため、
職場の雰囲気や人間関係が良くなり、それが生産性を高める
<2)モチベーションアップ>
・ハーズバーグの研究によると、「承認」は動機づけ要因の一つになる。
昇進や昇給といった外発的動機づけも要因も、「承認」と結びついている。
・仕事の楽しさや面白さ、成長、自己実現、達成なども
多くの場合、背後に「承認」が働いている。
(ただし、このプロセスは説明されていないため、本書で検討)
<3)離職の抑制>
・日本での大量退職の理由を、追跡調査で調べたところ、
その理由は金銭ではなく、多忙なため上司や先輩が認めてくれなかったことを
理由としてあげる者が大半であった。
・離職した教師と、離職しなかった教師を比較したところ、
離職しなかった教師の多くは、「同僚からの承認」が行われていたところに特徴があった。
・ハーズバーグの研究では承認は「動機づけ要因」に分類されているが、
「衛生要因」としての要素もかなり含んでいることがわかる。
<4)メンタル・ヘルスの向上>
・看護師を対象に行った研究によると、
”他人からの承認が自己効力感の重要な構成要素”だということが
明らかになっている(小野,2007)
・そして自己効力感が高い人は比較的低い人よりストレスが低く、
うつ状態や不安が少ない傾向が見られる(鈴木,2002)
・自己効力感がバーンアウト(燃え尽き症候群)の抑止に
効果があるという先行研究もある(久保,2004)
<5)不祥事の抑制>
・不祥事の抑制にも承認が一定の効果を持つのでは、と考えられている。
理由として、「職務的自尊心」を持つ人は違反をしにくい、という(岡野,今野,2006)
・「職務的自尊心」と定義された因子の因子負荷量が高い質問を見ると
「自分の職業が社会的に認められている」「人々の役に立っている」「自分の働きが同僚や上司に認められる」など
まさに承認そのものを意味する内容が含まれている。
・よって、承認が職務的自尊心を高め、
不祥事の抑制に繋がる可能性がある、と考えられる。
※参照:太田肇(2011)『承認とモチベーション』.同文館出版 P38-45
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(ここまで)
とのこと。
こうして並べてみると、
承認の効果を改めて
考えさせられるように思います。
■とはいいつつ、
プラスの側面だけではなく
「承認の逆効果」
もあります。
その代表的なものは
『アンダーマイニング効果』です。
アンダーマイニング効果とは、
仕事そのものに動機づけられているときに
(=内発的モチベーションがあるときに)
金銭などの外的報酬を与えられると
内発的モチベーションが下がる場合がある、
というデシらの研究でわかったことです(Deci,1975)
*
これまでそれ自体が楽しくて
無料でやっていたことでも
お金(外的報酬)をもらうようになってしまうと
その外的報酬がなくなったときに、
なんとなくやる気が下がってしまう、
モチベーションが下がってしまう、、、
という作用のことです。
■つまり、
「承認」は金銭と同じとは言わずとも、
外的報酬のような性格を持ちうる、
ということ。
そして、
「褒められる」ことを目的として
仕事を行うようになってしまうと、
自分からその行為を楽しむ
内発的モチベーションが低下する可能性もある、
となるわけです。
■ゆえに、
承認の逆効果の可能性を知りつつ、
「承認」を使う事が重要である、
といえそうです。
では具体的に、
どうすればよいか?
当然ながら
「自分を思い通りに操るに褒めている」と
思われてはNGです。
たとえ「承認」が
外的報酬としての色を持っていたとしても、
「有能感」や
「自己決定の情報」(自分で決めていると感じられること)
に繋がるのであれば
それは「自己効力感」へと繋がり、
内発的モチベーションを高める、
ということがわかっています。
■ゆえに、「承認」は
『相手の能力に対する自信を高める』
ことが重要であり、
相手の行為が
どのような業績、貢献、
能力の証明につながっているのかを
具体的な事実、客観的な情報に基づいて
伝えることがポイント、
となるようです。
■、、、ということで、
前半はここまで。
後半は、この「承認」について
具体的に組織で行った実験がありますので、
そのお話をご紹介させていただければと思います。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<今週の一冊>
『承認とモチベーション』(前半)
太田 肇(著)
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