今週の一冊『承認とモチベーション』(後半)
(本日のお話 3032字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日も引き続き、愛知県の実家にて夏休み。
父母姉と私妻息子で古旅館に宿泊でした。
*
さて、本日のお話です。
昨日「今週の一冊」の前半を
ご紹介させていただきました。
本日も後半を続けてまいります。
それでは、早速まいりましょう!
タイトルは、
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『承認とモチベーション』(後半)
太田 肇(著)
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でございます。
■昨日のメルマガでは
・「承認」(ほめること、認めること)は、なぜ切なのか、
・そして承認にはどのような効果があるのか、
についてお伝えさせていただきました。
※詳細はこちら ↓↓
『承認とモチベーション』(前半)
https://1lejend.com/b/detail/HSfoIRnMfw/4280197/
■ちなみに、復習までに
承認には大きく以下の「5つの効果」がある、
というお話ございました。
**
【承認の5つの効果】
1)組織のパフォーマンス向上
2)モチベーションアップ
3)離職の抑制
4)メンタル・ヘルスの向上
5)不祥事の抑制
**
はい、色々あります。。
■そして、
これまでの先行研究や理論を整理すると、
「承認」は以下の2つのプロセスで
「モチベーション」に影響を与える
というお話もおつたえしました。
■まず1つ目のプロセスが、
(1)「承認」→「自己効力感」→「内発的モチベーション」
という、
・承認により、
・自分の能力に自信が生まれ
・その行為、そのものを楽しめるようになる
という流れです。
そして、2つ目のプロセスが、
(2)「承認」→「期待理論」→「外発的モチベーション」
であります。
・承認され成果が認められると
・報酬がもらえるという”期待”が高まり
・報酬による外発的モチベーションが高まる
という流れでした。
上記の2つは相互に絡み合っているため、
明確にわけることはできないのですが、
「承認はモチベーションに影響している」
のは間違いなさそうである、とのこと。
■しかし、
理論から「そうだと思われる」と
実験から「そうであった」の間には
やはり”隔たり”があります。
そして、今回「後半」では、
その隔たりを解き明かすべく、
公益法人、派遣会社、病院など、
合計5つの組織対して、実証研究をしました。
ここが「見どころ」となるのです。
(前置きが長くなりました)
■具体的には、
上司や同僚からの「承認がある/ない」のそれぞれの場合で
組織成果に対してどのような影響があるのかを
定量調査により明らかにする、
という試みをです。
■研究の方法としては
以下のようなプロセスで行いました。
組織によって少し違うのですが、
その中の実例を以下、ご紹介いたします。
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<研究の方法>
・被験者を決めて、合計2回アンケート調査を行った。(N=400程度)
・被験者の上司の一部には、第1回目と第2回目の間で、
「承認の大切さ/承認の具体的方法」についてトレーニングを行った。
・そして「ここ2ヶ月の間に承認があったか」を被験者に問うた
(つまり「承認あり群」と「承認なし群」をわけた)
・そして、「承認あり群」「承認なし群」のそれぞれで、
「自己効力感」「仕事コミットメント」「内発的モチベーション」
「評価・処遇への満足」「昇進意欲」「組織コミットメント」
「職場における影響力の知覚」の結果
がどのように変化したのかを統計的に調査した。
**
という内容です。
■そして、これらの研究の結果から
わかったことは結論は、端的に以下でした。
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<結論>
【上司からの承認が「自己効力感」「満足感」を高める】
・承認の明白な効果が証明されたのは、「自己効力感」「評価・処遇への満足度」であった。
概括的にいえば、「承認は個人の意識や態度に望ましい変化をもたらす」といえる。
・特に、4社の研究のうち、企業の正社員については、
「上司の部下に対する承認が、部下の自己効力感を高めること」が明らかになった。
・また自己効力感を高めるためには
「できるだけ具体的な事実や、客観的な情報に基づいて承認すること」が有効である。
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とのこと。
つまり、やっぱり予想通り、
『「承認」は研究結果からも効果あり』
といえる、ということのようです。
■ただ、しゃんしゃん、ハイ終わり!
かというと、もう少し細かく見ると、
別の観点から見えてくることもあるようです。
例えば、
「職業による承認の効果の違い」
です。
具体的には、
【「看護師」の場合、”顧客(患者)からの承認”は効果が薄い】
という研究結果です。
*
曰く、こういうことだそう。
・企業で働く事務、営業、サービスなどの一般従業員は、
職業社会学上「ノン・プロフェッショナル(非専門職)」である。
・彼/彼女らの特徴は、組織の中で評価され、
そこで有形無形の報酬を受け取ることに価値をおく「組織人」である。
顧客からの評価が上司による評価にも反映されるため、
従業員は”顧客の評価に敏感”である。
・よって「顧客からの承認」が(評価に繋がるという意味でも)
「仕事の充実感やモチベーション」に繋がる
となります。
対して、「看護師」はどうか?
・職業社会学上、「プロフェッショナル(専門職)」となり、
専門的な技術を提供する形になる。
・そして専門家は、顧客(患者)に対して「情報の非対称性」があるため、
顧客は、そのサービスの品質を判断することができない。
・となると、評価できるのは”同僚や上司”になる。
・よって、顧客の感謝の声を伝えた承認があっても、
それが「自己効力感」につながらない、という結果になる
とのこと。
■すなわち「承認」も
・その職業がどういったものなのか
・誰からの、どういったものなのか、
によって影響してくるという、
人の心の細やかさを感じさせられる結果になるようです。
■と色々と書いてしまいましたが、
「承認」を上手に活用し、
モチベーション向上に繋げるポイントを、
以下まとめて締めくくりたいと思います。
(ここから)
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<「承認」を、持続的なモチベーションにつなげるポイント>
Point1)「正確な情報」のフィードバックを行うこと
・承認によって、自己効力感が高まるプロセスのためには
”自分の能力や成果などについての正確な情報のフィードバック”が前提条件になる。
・不正確な情報が与えられると効果がないばかりか、
逆にモチベーションを低下させる原因になるかもしれない。
・ゆえに、職場で上司が部下をほめたり認めたりする場合には、
『部下の長所や個性、能力の伸びなどを示す指標』
『組織への貢献度を表す数値や事実』
『顧客から届いた感謝の声』など
具体的な事実や客観的な情報に基づいて行うことがポイントになる。
Point2)重要な目的/目標とリンクさせること
・高水準のモチベーションを長期的に引き出すには、
承認が「昇給や昇進、キャリア・アップ、社会的な地位や威信の獲得」といった
目的・目標と何らかの形でリンクしていることが必要である。
・給与据え置きや、役職ポストの不足による
モラルダウンを補う目的で、承認によって動機づけを図ろうとする風潮も見られる。
それは楽しく仕事をさせたり、職場の雰囲気を明るくしたりする短期的効果はともかく、
部下から高水準で持続的なモチベーションを引き出すには限界があることを自覚すべきである
(人間関係施策が流行った時に、仕事内容や待遇を改善せず
ねぎらいの言葉だけでやる気を出させようとすることを
「巧妙な操りの手段である」と非難されることがありました)
Point3)属的等による効果の差異を考える
・承認による効果も、以下の2つの視点から差異がある。
・まず「(1)職種による差異」である。
これは、医師や研究者などの準拠集団が所属組織の外にあるプロフェッショナルに対して、
組織として直接承認し、動機付けることは難しい。
そのため、組織としては間接的な承認(専門家社会で活躍し承認される機会を与える、支援する)
ほうが彼らの動機づけには効果的といえる
・次に「(2)年齢による差異」である。
承認の効果は中高年者より若年者のほうが大きい。
若年者の早期離職も問題になっているため、特に承認する機会を増やすことが求められる。
・最後に「ほめると図にのる」等の問題もある。
副作用としての影響を考えるために、
ーパフォーマンスの高い人たちには、能力、業績、貢献度をそのままほめる、
ーパフォーマンスの低い人たちには、仕事のどの部分が優れている、この点は評価に値すると限定的な範囲で褒める等で評価をする
※参考・引用:太田肇(2011)『承認とモチベーション』.同文館出版 P170-180
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(ここまで)
以上となります。
■一言で「承認」といっても、
その影響は実に繊細ですし、
ただ表面的に褒めていても、
いずれ見透かされてしまうのでしょう。
そういった意味で、
「承認」は対話や雰囲気の潤滑油として
機能する短期的な側面はあるにせよ、
その効果を最大化させるためには
組織においての承認については
形として見えるようにする必要もあるのだろう、
と考えさせられた次第です。
承認、深い世界でございます。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<今週の一冊>
『承認とモチベーション』(後半)
太田 肇(著)
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