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今週の一冊『「対話と決断」で成果を生む 話し合いの作法』

今週の一冊『「対話と決断」で成果を生む 話し合いの作法』

3118号 2022年9月4日

(本日のお話 2805字/読了時間4分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日土曜日は、朝から大学院のプロジェクト。
クライアント組織への介入(コーチング導入研修)の実施。

また午後からは、大学院のメンバーと論文の情報交換。
その後、月1で通っているピアノのレッスンなど。



さて、本日のお話です。

毎週日曜日は、お勧めの一冊をご紹介する
「今週の一冊」のコーナー。

今週の一冊は、

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『「対話と決断」で成果を生む 話し合いの作法』

中原 淳 (著)


========================

でございます。

■私が小学校6年生のとき、

「クラスの運動会の旗のデザインを皆で決める」

という場面がありました。

それに対して

”1人1つずつアイデアを
書いて持ってくる”

なるお題が出されました。
正直、それなりに重たい宿題でした。

■締切後のクラス会で、黒板にずらっと
A4で書かれた40枚のイラストが並びました。

「じゃあ、多数決で取りましょう」

と学級委員か先生が発言し、
一人一票ずつ投票をしていきました。

その場に流れていた、
人気投票的な空気が印象的でした。

その時クラスの人気者だった人が書いた
何かのアニメキャラクターに決まりました。

、、、未だに脳裏に焼き付いているのが
特に話し合いもないまま、

「全く投票されなかった自分の絵と、
敗れ去った数々の絵たち」

でございました。

■子供心ながら、その背景にあった様々な思いを想像し、
なんだか虚しい思いを感じました。

(ああ、自分のアイデアは全く聞かれることなく
こうして人気者に決まっていくのだ)

そう思った記憶があります。

■「もしも」ではありますが、その時に、

・なぜその絵を書いたのか?
・何が良くてその絵にしたのか?

という思いや背景などの
「話し合い」がなされていたら、

そのような”虚しさ”は
感じなかったのかもしれません。

一言で言えば、
そこに足りなかったものとは

まさに今回の書籍でテーマとして挙げられている

『話し合い』

であったのではないか、、、、

約30年の時を経て、
そのことを思い出させられました。

■、、、と前置きが
ものすごく長くなってしまいましたが、

きっと私と親しい体験をした人
(意見が封殺される、取り入れられない切ない思いをした人)
は少なくないのでは、と思います。

あるいは今まさに、
職場でも体験をしている人も
いるのではないでしょうか。

■職場では、生産性や効率という声のもと、
様々な意思決定が行われます。

その中には、

・「小さな声」を封殺して進める

・権力の大きさに依存し合意をとって
とりあえず決定をして進める

・効率や生産性というお題目の元に、
話し合いを割愛して、納得がないままに進める

・あるいは話し合いはされるけど
特に決定はされずグタグタで終わる

などなど、様々な事象が起こります。

■そして、悪気なく
そういったことが起こってしまうことが積もることで、

誰もが意見を言わなくなる、
同調をして、アイデアが広がらなくなる。

そして当事者意識もなくなり、
結局、望まない結果になっていく、、、。

そんなことがどこそこで起こっているようです。

■そしてこれは「個人の課題」ではなく
「社会が抱える課題」とも言えます。

なぜならば、
まさに著書で語られているように、

私たちは「話し合いの作法」を
学んだことがないから。

話すことは誰でもできるし、
ファシリっぽいこともできたりするので、
そんなものだ、と思ってしまうのかもしれません。

■そんな中に必要とされているのが、
今回ご紹介させていただいている書籍、

『「対話と決断」で成果を生む 話し合いの作法』

でございます。



忙しく、慌ただしい日々の中では

「そもそも、なぜ私たちは
”話し合い”を行わなければいけないのか?」

などを考えることは少ないのかもしれません。

しかし、皆で一歩立ち止まって

「話し合いが、私たちに
どのような成果と未来をもたらしてくれるのか?」

を考えることは、短期でなく、
中長期的な私達の将来を考えるために、
必要なことだと感じます。

■本書から引用させていただくと、

「話し合いが必要とされている背景」について
以下3点述べられています。

1、我々は「不確実な世界」を生きる事になること
(答えがない中で知恵を絞る必要がある)

2,我々は「多様性」を乗り越える必要があること、
(増え続ける多様性の中、話し合いを通じて、共生・協調する必要がある)

3,我々は「民主主義」を守っていかなければならないこと
(言葉で伝え合い、わかり合える部分を探していかなければいけない)

こう見てみると、立ち止まり、
時間軸を未来に移して考えてみると

「話し合い」を学んでいく必然性が
否応なく腹落ちさせられるように感じます。

(特に「民主主義」のくだりなどは
本当にそのとおりだな、、、と考えさせられました。
下手をすると、本当に最悪の望まないことになる可能性もある、
とも感じます。このあたりは、ぜひ著書にて)

■そしてその上で、私たちは

「”話し合い”について学んできていないし、
深く考える機会もない」

という事実に気づき、

”「よい話し合い」とは何か?”を
定義を含めて考えること、

そして、それを実現するために

理論だけでははなく、
実践知を知ることが必要になります。

■本書においては
「話し合い」の構成要素を

”「対話」と「決断」”

という2つの軸に分けて

・対話とは何か、
・何を目指して行われるのか、
・議論や雑談と何が違うのか、
・対話によって得られる成果とは何か、

を明確にし、お互いの意見を存分に出し尽くし、
そして共有するための理論と技術を整理するとともに、

「陥りがちな落とし穴」や、
「あるあるケーススタディ」、
「良き対話を促す技術」などを

実践に移すためのヒントが存分に描かれています。

■そしてありがちな「対話だけ終わる」
(そして成果につながらない)を避けるために、

対話した内容を合意し、
行動に促すための『決断』についても示されています。

例えば、「決断の5つのルール」として

1,メリット・デメリットを明らかにする
2、多数決に安易に逃げない
3,「誰が決めるか」を決める
4,「いつ決めるか」を決める
5,「どのように決めるか」を決める

などなど。

■私が率直に思ったのは、

”ものすごく実践的である本”

という感想でした。

様々な場面で、

「対話が大切」
「お互いの合意が大切」

という意見や話はたくさん聞きます。

しかし、その話の多くは

・抽象的すぎて、
具体的にどうすればいいのかわからない

・対話だけでフォーカスされており
現場での成果を繋げるのに十分でない(ぬるい感じがする)

・つまづきポイントや、
具体的なアクションの選択肢がない

などで結局、何をしたらよいのかわからない、、、
という印象を持つものも少なくありませんでした。

■ただ、今回ご紹介の著書では

”「話し合い」=「対話」+「決断」”

と定義し、

理論と科学に基づきつつも、
実際に現場で活用されることを目指し、

そしてその先に、

日本社会が対話できる
未来が待っているように、

という大いなる願いが込められた、
一冊のように感じます。

■そして、この本で書かれていることが、

社会の中心、つまり政治や
あるいは職場の中枢で行われるようになり、

それが共通の「お作法」として
一般的な考え方になったとしたら、

今なんとなく世の中を覆っている、
「話して無駄だから、もう言わないでおこう」
という諦念が少しずつ晴れるのかもしれません。

それには時間がかかるかもしれませんが、

乱暴な力で意見を封殺せず
それぞれの意見と、それを表現しようとする努力の必要性を
皆が認識をすることが当たり前になったとしたら、
きっとより良い未来が待っていると思います。

そしてそのための指針を与えてくれる一冊、
と感じた次第でございます。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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<今週の一冊>

『「対話と決断」で成果を生む 話し合いの作法』

中原 淳 (著)

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