エグゼクティブコーチングに影響を与える4つの要素 ~論文「エグゼクティブ・コーチング研究の批判的レビュー」より~
(本日のお話 2900字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日金曜日は終日、外部パートナーとして
関わらせていただいている人事の皆様へのコーチングなど。
*
さて、本日のお話です。
先日より「エグゼクティブ・コーチング」の
レビュー論文(先行研究のまとめ)について
ご紹介してまいりました。
ちなみに、ご紹介してきたものは
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
Feldman, Daniel C., and Melenie J. Lankau. 2005.
“Executive Coaching: A Review and Agenda for Future Research.”
Journal of Management 31 (6): 829–48.
(エグゼクティブ・コーチング :レビューと今後の研究の課題)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
と「2005年」の論文となります。
※バックナンバーはこちらから↓
エグゼクティブ・コーチングとはなにか(前編)https://1lejend.com/b/detail/HSfoIRnMfw/4295368/
エグゼクティブ・コーチングとはなにか(後編)https://1lejend.com/b/detail/HSfoIRnMfw/4296179/
*
今日も同じく
「エグゼクティブ・コーチング」のレビュー論文のご紹介をいたします。
「2011年」に発表された以下論文について、
皆様に学びをご共有できればと思います。
===========================
Passmore, Jonathan, and Annette Fillery-Travis. 2011.
”A Critical Review of Executive Coaching Research: A Decade of Progress and What’s to Come.”
Coaching: An International Journal of Theory, Research and Practice 4 (2): 70–88.
(エグゼクティブ・コーチング研究の批判的レビュー:10年の進展と今後の展望)
===========================
それでは早速まいりましょう!
タイトルは、
【エグゼクティブコーチングに影響を与える4つの要素
~論文「エグゼクティブ・コーチング研究の批判的レビュー」より~】
それでは、どうぞ。
■さて、本日ご紹介する論文は、
「過去のエグゼクティブ・コーチングに関する先行研究をまとめ、
今後の研究のための基礎を提供する」
ことを目的としたレビュー論文です。
この論文は、以下の大きく
3つのセクションにわかれています。
1)コーチング研究の歴史
(研究が加速した過去10年間、100年の研究の推移)
2)コーチングの影響研究
(コーチングの性質、コーチの行動、クライアントの行動、人間関係の観点から)
3)今後の研究の方向性についての考察
でございます。
■私が一番興味深い、と思ったところは、
「2)コーチングの影響研究」の部分です。
ゆえに、本日はその部分を中心に
ご紹介したいと思います。
その前に、
「1)コーチングの研究の歴史」について
ざっくりお伝えすると、こんな事が書かれていました。
・コーチングの影響の最初の論文は1937年だった
↓
・1940年代になって消えた。そしてずっと消えたまま(研究なし)。
↓
・1990年代に研究が復活した
↓
・2001年にKampa-Kokesch & Andersonによるコーチング研究の画期的なレビューが発表される
↓
・コーチングの研究が加速して今にいたる
とのこと。
コーチングの研究が100年近くあるといっても、
研究の動きが盛んになったのはごく最近のようです。
■そして
「3)今後の研究の方向性について」
本論文で語られていることは
”これからの研究では
成果(ROI=投資対効果)に対する効果を
確立された研究方法にて行うことが期待される”
とのことでした。
具体的には、
”2021年までに、世界中の研究者が、
コントロール、異なる条件への参加者の無作為割付、プラセボ介入を含む2つ以上の条件を用い、
コントロールの介入なし、コーチングの介入と並んで、
50~100の大規模サンプルサイズ研究(各グループのサンプルサイズが 60人以上)を完了することを期待している”
とのことでした。
■さて、そんなコーチング研究において
2011年時点においてわかった
「2)コーチングの影響研究」
のお話が、実用的な内容で
最も興味深いと感じております。
早速、本論文で語られていたことを
以下にまとめてみたいと思います。
先日ご紹介したエグゼクティブ・コーチングの論文(2005)と
照らし合わせると、共通点と相違点が見えてきます。
それでは早速見てまいりましょう。
(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【コーチングの定義とステップ】
<コーチングの広義の定義>
「ファシリテーター(コーチ)と参加者(クライアント)の間のソクラテス式対話で、
ファシリテーターが用いる介入の大半は、
参加者の自己認識と自己責任を刺激することを目的とした公開質問」である。
<コーチングプロセスの6つの一般的な段階>
1.正式契約
2.関係構築
3.アセスメント
4.フィードバックとリフレクション
5.目標設定
6.実施と評価
※文献レビューにより、一連の異なるコーチングプロセスを惹かうし、
すべての公表されたモデルの一部である6つの一般的な段階として特定した。
***
【コーチングの影響研究】
<a)コーチングの性質の要素>
■コーチングの5つの主要なアプローチ
1,心理療法
2,行動主義的
3,個人(人間)中心
4,認知療法
5,システムオリエンテッド
(Feldman&Lankau,2005)
*
<b)コーチ側の要素>
■コーチの重要な3つの能力
1,自己認識
2,コアコーチング能力
3,コーチング関係の倫理と管理に関する理解
(Jarvis,Lane&Fillery-Travis,2006)
※ただ、それ以外の要素も定義されている。例えば
・心理学の大学院トレーニング
・ビジネスの経験
・コーチとしての評判
・傾聴スキル
・プロ意識(知性・誠実さ・機密性・客観性)
(Wasylyshyn,2003)
*
<c)クライアント側の要素>
■「学習意欲」が大事
・CIPDの研究( Caley et al, 2002)において、
学習効果に影響を与える最も重要な要因の1つとして「学習意欲」が確認された。
・変化に対する準備は、成果を予測する上で最も重要な要因である。
・ゆえにクライアントの学習意欲はとても重要である。
<d)コーチとクライアントの関係の要素>
■「コーチとクライアントの関係の質」が重要
・コーチングの成功に貢献すると考えられている一貫した要因
・効果的なコーチの最も高い得点の特徴は「クライアントと強いつながりを形成する能力」である
・「共感、暖かさ、治療関係などの共通因子は、
専門的な治療介入よりもクライアントの アウトカムと高い相関を示すことが示されています」。
(Lambert & Barley, 2002)
※Passmore, Jonathan, and Annette Fillery-Travis. 2011.
”A Critical Review of Executive Coaching Research: A Decade of Progress and What’s to Come.”
Coaching: An International Journal of Theory, Research and Practice 4 (2): 70–88.
(エグゼクティブ・コーチング研究の批判的レビュー:10年の進展と今後の展望)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)
■さて、いかがでしょうか。
私の個人的な感想としては、まず
・「コーチングの一般的な6つのステップ」がわかりやすい
(=先日ご紹介した4ステップよりも明確にわけられていて、
かつ現実のプロセスに即していると感じます)
そして2点目は、
・コーチングの影響を
「a)コーチングの性質の要素」「b)コーチ側の要素」
「c)クライアント側の要素」「d)コーチとクライアントの関係の要素」
と分けて考えることで、コーチングの効果を高める指標が明確になっている
と感じました。
■その他、重複しているところもままあり、
そこはそこで、復習にもなり、
重要なポイントとして理解できました。
改めて同じ分野のレビュー論文でも、
その先行研究を用いて、
どのように定義づけるのか
どのように一般化するのか
どのような課題を導き出すのか
という「料理の仕方」は研究者によっても
違うことを感じさせられます。
そしてそれらを複数見ることで、
思考を深める機会になる、と感じます。
ということで、本日も
「エグゼクティブ・コーチングの論文まとめ」
お届けさせていただきました。
ご参考になれば幸いです。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
==========================
<本日の名言>
ものごとを正しく見るには、たった1つのやり方しかない。
ものごとの全体を見ることだ。
ジョン・ラスキン
==========================