組織における「協力行動」を考える(前編) ー短期/長期の支援行動とメンタリングー
(本日のお話 3014字/読了時間5分)
■おはようございます。紀藤です。
昨日は、朝から大学院の仲間との
月1のランニング部の開催でした。
コツコツと続けておりますが
着々と参加者も増えており、
コミュニティとして形ができているのが
とても嬉しい限りです。
ランニングは、身体面にも精神面にも、
そして人間関係にも良い影響があると
改めて実感した朝でした。
*
さて、本日のお話です。
引き続き、論文を読み進めていますが、
先日の先生からの指摘で、
”職場には様々な「支援行動」が存在している。
それにはどんなものがあるのか?”
という問いを頂きました。
それに関して調べていたところ、
ある興味深い論文を見つけました。
今日はそこからの学びについて、
皆様にご共有させていただければと思います。
それでは早速まいりましょう!
タイトルは
【組織における「協力行動」を考える(前編) ~短期/長期の支援行動とメンタリング~】
それでは、どうぞ。
■仕事において、
あるいは仕事以外にコミュニティにおいても
”協力の大切さ”
は、あえて声に出すほどでもない大切なことである、と
認識されている人も少なくないかと思います。
しかしながら一方、
「自分の仕事はこの範囲ですので」
「いや、自分の仕事をやってればいいじゃないですか」
「ジョブディスクリプション(職務記述書)にないものはやりません」
という意見もありますし、
それはそれとして理屈としては通るわけです。
ゆえに組織の文化から、
協力は必要だとされているけれども
積極的に行う人もいれば、
行わない人もいるわけです。
(強制するものでもないため)
■、、、と考えると、
そもそもこの「協力行動」ってなんだ?
「協力行動」にはどのようなものがあるのか?
そして、どういう時にそれらが発動するのか?
についても、非常に奥が深そうな感じがします。
*
そんな中、以下のような論文で
「組織における協力行動」について書かれていました。
『組織における協力行動のマネジメント:
仕事の設計がメンタリング行動と向社会的モチベーションに与える影響.』
麓仁美(2019).
この中で、
・「協力行動/支援行動」とはなにか
・組織の中の「2種類の支援行動」
・支援行動における「メンタリング」
というストーリーで
このあたりの流れが整理されていました。
■以下、まとめでございます。
(ここから)
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<1,協力行動、支援行動とはなにか>
◯「協力行動(協調的行動)」の定義
・「他者の仕事が円滑に進むように手伝ったり,
情報を伝えたりするような,職場における他者の仕 事の成果に有効な影響を持つ行動」のこと(鈴木,2018)
◯「支援行動」の定義
・「他者に利益をもたらすことを意図した向社会的,促進的,協力的な行動」のこと(Grant & Pati,2012)
ーーーー
<2,組織の中の「2種類の支援行動」>
◯短期的な支援行動
・「職場での業務や仕事の円滑な遂行」を目的としたもの
・組織が生き残るため、効率性を高めるためには
メンバーに自発的/革新的行動を取ってもらうことが必要であるとした。
その中の自発的/革新的行動の中に同僚への支援や援助が含まれている(Katz&Kahn(1978))
・それらの行動を概念化したものが、
組織市民行動や向社会的組織行動、組織的自発性、文脈的業績という概念とされる。
(その中の下位次元に、「支援行動」が用いられてきたが、
今では支援行動を1つの概念として扱う研究も多い)
◯中長期的な支援行動
・「個人のキャリアや発達、成長、学習を促すこと」を目的としたもの
このような中長期的な 支援行動はキャリア発達論の Levinson(1978)を起源とする
・中年期のキャリアの発達課題で重要なものが「他者のキャリアを支援する行動」とされている(Levinson,1978)
・それらの他者のキャリアを支援する行動が「メンタリング」という概念になり、研究蓄積が行われている。
ーーーーー
<3,中長期的な支援行動としての「メンタリング」>
◯メンタリングとは
・「メンターによるプロテジェ(メンターを受ける側)に対する支援行動」のこと
メンター=若者が大人の世界や仕事の世界を渡っていくのを助ける、より経験を積んだ年長者(もともとの意味)
プロテジェ=メンタリングを受ける側の個人
◯メンタリングの機能
・「キャリア的機能」と「心理・社会的機能」の2つの主要な機能に分類することができる
*「キャリア的機能」とは,
「仕事のコツや組織の内部事情を学び,組織における昇進に備える」ための支援である(Kram,1988)
以下の5つの下位次元で構成される
1)スポンサーシップ 2)推薦と可視性 3)コーチング 4)保護 5)やりがいのある仕事の割り当て
*「心理・ 社会的機能」とは
「専門家としてのコンピテンス,アイデンティティの明確さ,有効性を高める」為の支援である(Kram, 1988)
以下の4つの下位次元で構成される
1)役割モデリング 2)受容と確認 3)カウンセリング 4)交友
◯メンタリングが重要な理由
・個人のキャリアにおける支援行動の重要性が高まっているため
・また支援を受ける側、行う側双方にメリットがあるため
*支援を受ける側のメリット
・昇進や給与といった客観的なキャリアの成功,キャリア満足や在職の意思といった主観的なキャリアの成功には,
支援者の有無や支援の量が影響を与えていることを明らかにしている
*支援を行う側のメリット
・行う側の昇進や給与と言った客観的な成功と職務満足や組織コミットメントと言った主観的な成功にも関係している
※参考:麓仁美(2019)
“組織における協力行動のマネジメント:
仕事の設計がメンタリング行動と向社会的モチベーションに与える影響.”
組織科学 53 (2): 43–56.
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)
■さて、いかがでしょうか。
論文から読み解くと、
その構造がわかりやすくなり、
整理された感覚がします。
私が個人として
まとめながら思ったことは、
以下2点でございました。
*
まず1つ目が、
”「支援行動」を分けて考えるとわかりやすい”
ということ。
・短期的な支援行動(業務の遂行)に対する支援と
・中長期的な支援行動(キャリアの発達、成長)に対する支援
という考え方です。
確かに、目先の仕事はとても重要です。
現在進行中のプロジェクトにおいて、
より効果的、効率的に行えるように、
個別に指導する必要もあれば、助け合う支援は必須です。
同時に、組織成員の中長期的な成長を考える上での支援も、
やはり必要になってくると思うわけです。
(まさに、やりがいある仕事の割り当てなど)
同時に、これは当時のキャリアの文脈が
社内における垂直型のキャリアを前提としている気もしますが、
未だ重要な概念であると思います。
そして2つ目が、
”なぜこの施策が必要なのか、という
「ストーリー」が大切”
ということです。
おそらく、職場でもコーチングやメンタリングなど
導入している企業も少なくないと思いますが、
なぜこれが必要なのか、
それはどんな大きな考え方があって、
どうしてコーチングなりメンタリングにつながるのか、
というストーリがなければ
人を巻き込む上で説得力を持ちえません。
それらについて、本日ご紹介の論文は
とてもわかり易く、勉強になるな、
と感じたのでした。
■ということで、本日はここまでとなります。
論文の後半では
・「メンタリングを行う動機」
・組織における「メンタリング行動のマネジメント」
について深掘りがなされているので、
こちらについては明日に続けてまいります。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
本日も皆さまにとって、素晴らしい1日となりますように。
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<本日の名言>
自分をごまかして妥協するのは簡単だ。
でも成功したかったら、人より少しだけ厳しくなければ、
少しだけ余分に努力しなければ駄目だ。
トニー・グウィン(米国のプロ野球選手)
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