頼母子講と金融業界のお話 ―組織風土にはルーツがあるー
(本日のお話 2605字/読了時間3分)
■おはようございます。紀藤です。
昨日は顧問として関わらせていただいている
ある金融業界の人事の部長との会食でした。
その中で聞いた話がとても勉強になり、
銀行の歴史を知りつつ、経営学についても考えさせられる
実に含蓄あふれる時間でございました。
今日はそのお話からの学びを
皆様にご共有させていただければと思います。
それでは早速まいりましょう!
タイトルは
【頼母子講と金融業界のお話 ―組織風土にはルーツがあるー】
それでは、どうぞ。
■冒頭から話が脱線しますが(汗)
「社会関係資本」が大事と言われることがあります。
人生100年時代と言われて久しくなった昨今、
長い人生を泳いでいくための
武器となる資本の一つが社会関係資本と言われます。
平たく言えば、
”人とのご縁、繋がり”
のことですね。
■新しい機会は多くの場合
「人」を媒介してもたらされるもの。
多分本を読んでいるだけでは
新しい世界へのきっかけになっても、
実際に開くことには直接繋がることはありません。
現在、縁あって、
人事部門のコンサルとして
関わらせていただいている会社も、
もともとは大学院の仲間からの紹介でした。
そしてご縁は本当に大事にしたい、
と改めて思うのでした。
■、、、とそんなご縁で生まれた
某金融機関の方とのお食事。
金融業界のリアルな話も
たくさん聞くことができて、
実に興味深い時間なのでした。
■詳細は言えない話もあるのですが、
そのお酒の席のお話で、
「地方銀行の歴史」
の話が出たのですが
それが、
「われわれの銀行と、
競合の銀行の文化はどのように違うのか?
そしてそれはなぜか?」
という問いについての答えに
つながっていた、というお話。
■例えば、
自分たちの銀行には、
真面目で素直な人が多い。
しかし、他行は
いわば野武士のような(!)
戦闘系の人が多い。
はて、これはなぜそうなのか。
同じ地域で、そして同じ業界。
なのに、この違いはなぜ生まれるのか?
、、、その理由を語るに当たって
こんなお話をしてくれました。
それが
『頼母子講(たのもしこう)』
という金融期間のルーツにも触れるお話です。
■頼母子講。
この言葉の意味は
以下のように解説されています。
***
「頼母子講(たのもしこう)」とは
金銭の融通を目的とする民間互助組織。一定の期日に構成員が掛け金を出し、
くじや入札で決めた当選者に一定の金額を給付し、全構成員に行き渡ったとき解散する。
鎌倉時代に始まり、江戸時代に流行。頼母子。無尽講。(goo辞書より)
***
とのこと。
鎌倉時代に始まった、
金銭の融通を目的とした金融の仕組みで、
「頼む」「母」「子」という
言葉からも連想されるように、
”仲間での助け合い”
を主にする庶民のための
金銭の融通の仕組みです。
■そしてこれは
「無尽講」とも呼ばれました。
この仕組みが転じて
戦前には一定の掛け金を集め、
掛金者に金銭以外の財産給付(物品無尽)をする
「無尽会社」ができました。
昭和20年代には
多数の無尽会社が存在していましたが、
その後、1951年の相互銀行で
無尽会社は「相互銀行」へと転換します。
主に中小企業を顧客対象として業務を行い
無尽から発展した相互掛金を主な商品として扱うのが相互銀行です。
そしてその後、1968年には
相互銀行は「第二地方銀行(普通銀行)」へと転換し、
そして今に至ります。
現在、この第二地方銀行は37行存在しています。
■この話から「地方銀行」には
ルーツがあることがわかります。
・第一地方銀行=現在63行 ※愛知県を除く46都道府県にある
そして、
・第二地方銀行=現在37行 ※相互銀行から発展
という形になっていますが、
同じ地方銀行でもルーツが違うわけです。
そしてその歴史があって現在があるわけですから、
現在にも影響していることは想像されます。
■そして、
「われわれの銀行と、
競合の銀行の文化はどのように違うのか?
そしてそれはなぜか?」
の話に戻しますと、
お伝えした
”頼母子講の歴史”が影響しているのでは?
という話になるわけです。
「庶民のための相互扶助の頼母子講(無尽講)」
↓
「無尽会社」
↓
「相互銀行」
↓
「普通銀行」
という辿ってきた背景。
そこには、富裕層の投資ではなく
一般庶民が生きるために必要であるお金を
扶助するという文脈につながります。
■素人ですが、金融でも
様々なサービスがあることは理解しています。
そして貸し倒れリスクが少ない
富裕層では金利は低く、
リスクが大きい個人の金利は高い。
これは国でも個人でも同じです。
そしてリスクが大きい
個人・法人を対象としてきたのか、
それとも少ない個人・法人を
対象としてきたのかによって、
培われる社風、
組織人員のパーソナリティやスキルも
図らずも影響を受けてくるものです。
■ちょっと話がズレますが、
私が一時期ハマっていた漫画で
『ナニワ金融道』という金融屋の
漫画がありました。
闇金ではないですが、
かなりギリギリの取り立てをする漫画。
そこで登場するエピソードは
なかなか激しいものばかり。
「これからやで。あいつを追い込むのは」
「誰から回収しますんや」「ええの押さえとりますがな、へへへ」
みたいなやり取りで
庶民からお金を取り立てる様子は
上品にやっていては
とてもじゃないけれど出来ない仕事だ、、、
などと思ったのでした。
■と、話が少しそれましたが
何がいいたいかというと
「組織の文化もルーツがある」
こと、そして
「その文化と戦略は連動しているもの」
というのが、話を聞きながら
考えさせられたのでした。
経営戦略論で
『戦略は組織に従う』 by アンゾフ
という考え方と
(理想の戦略を理想の組織で実行するのではなく、
組織に合わせた戦略に修正することが大切という考え)
『組織は戦略に従う』 byチャンドラー
(変化する環境に適応する戦略を策定し、
その戦略を実行するために最適な組織にしていかねばならないという考え)
がありますが、
人事の方が語られていた
「他行は野武士のような強さがある」
「他行は低所得者向けの金利が高い領域の割合が高い」
という話から、前者の
「戦略は組織に従う」
ものだな、、、などと話を聞きながら
ぼんやりと考えていたのでした。
■、、、と、
社会関係資本の話から
頼母子講と銀行のルーツの話
経営戦略の話
と話がなんだか拡散してしまいましたが
こうした事を考える機会というも
やはり「人」との出会いからもたらされ、
かつ普段接しない、
違う世界の人と話をするからこそ
気付かされるものだということをひしと感じた次第でございます。
飲み会の席だからこそ得られるお話も、
実に多いものですね。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の名言>
外国人との交流を通して、彼らの考え方と
私の受けた教育には大きな違いがあることを発見し、
外にはまったく別の世界があるのだということを理解した。
ジャック・マー
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