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3184号 2022年11月9日

コーチングにおける関係づくりと、成果には関係があるのか? ー論文『成功するリーダーシップ・コーチングの関係構築』よりー

(本日のお話 2858字/読了時間3分)

■おはようございます。紀藤です。

昨日は7名の個別コーチング。
並びに1件のアポイントと会食でした。



さて、本日のお話です。

昨日も「コーチング」についての
論文をご紹介させていただきました。
本日も続けたいと思います。

今日ご紹介の論文は、

『成功するリーダーシップ・コーチングの関係構築ー
リーダーシップ・コーチング・プログラムにおけるマッチング基準の影響の検討』

Boyce, Lisa A., Jackson R. Jeffrey, and Laura J. Neal. 2010.
”Building Successful Leadership Coaching Relationships: Examining Impact of Matching Criteria in a Leadership Coaching Program.”
International Journal of Management & Enterprise Development 29 (10): 914–31.

でございます。

端的に内容をお伝えすると、

「コーチとクライアントの関係が
コーチングの成果にどのような影響を与えるか」

というお話であり、

結論は、

「関係構築のプロセスは
コーチングの成果に影響を与えますよ」

という内容です。

それでは詳細を見てまいりましょう!

タイトルは、

【コーチングにおける関係づくりと、成果には関係があるのか?
ー論文『成功するリーダーシップ・コーチングの関係構築』よりー】

それでは、どうぞ。

■コーチングは
”対話を通じてクライアントの成長を支援する”
プロセスと言われます。

ゆえに、直感的には

「コーチとクライアントの関係は
成果に影響しそうだな」

という感じはします。

■しかしながら
”コーチとクライアントの関係”なんて定義しても、

果たして「関係」とは具体的に何を指すのか?
は意曖昧です。

例えば、
『マッチング』という観点もあります。
この研究の項目を例にあげると

◯共通性:
・年齢、立場、経験、趣味などが近いか

◯相性:
・行動の好みが近いこと
例えば、結果重視かプロセス重視か、
学習スタイルが似ているか

◯信頼性(経験と能力):
・クライアントが大事だと思っている能力を
コーチが持っているのか

という「コーチとクライアントの関係」の測り方も
考えられるのかもしれません。

■また別の切り口では

『関係性の”プロセス”』

という観点もあります。
例えば

◯ラポール:
コーチとクライアントの相違点を減らし、
類似点を拡大する。相互理解や好感を高めること

◯信頼感:
・サポート的で偏見がない、
しかしクライアントに挑戦することもできるという
相互信頼があること

◯コミットメント:
・コーチング体験に関連した
クライアントとコーチの献身。
この関係における責任を果たすという相互の保証が含まれる

などもあります。

■そして上記のような

・マッチングや
・関係性のプロセスが

「コーチングの成果」

にどのような影響を与えるのか?

を調べたというのが今回の論文の研究です。

■さて、では詳細ですが
どんな内容になったのか。

ざっくりとおまとめすると
以下のような事が書かれております。

(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【論文まとめ】
”成功するリーダーシップ・コーチングの関係構築
リーダーシップ・コーチング・プログラムにおけるマッチング基準の影響の検討”
(リサ・ A・ボイス他,2010)

<目的>
・クライアント・コーチ関係の影響に関する理解を深めること。
そのために、クライアント・コーチの「1)マッチング基準」「2)関係性プロセス」
とコーチングの成果を検討する

<研究方法>
・対象:アメリカ軍士官学校の任意の対象者 74組。
・方法:パートナーになる前と移行後の段階で収集データを分析。
「1)マッチング基準」と「2)関係性のプロセス」が成果に与える影響を検討する。

具体的には、マッチング基準で共通性が高いペアの実験群と
ランダムでペアわけをした対照群で結果の差異を図る

<仮説>

◯仮説1:
共通性、相性、信頼性で系統的にマッチングされたクライアントとコーチのペアの個人は、
ランダムに割り当てられた個人よりもコーチングの成果を肯定的に評価し、
(a)コーチングの満足度や有用性が高い
(b)リーダーシップパフォーマンスの有効性が高い
(c)コーチングプログラムがより好ましく感じられる

◯仮説2:
関係性のプロセスがコーチングの成果を予測する。
例えば、ポジティブなラポール、信頼、コミットメントは、クライアントとコーチの
(a)コーチング満足度
(b)リーダーシップパフォーマンス
(c)プログラム成果をより高めることにつながる。

※仮説3-5もありますが省略します

<具体的な測定方法>

(説明変数)
1)マッチング基準
・共通性:18項目(性別、民族、学歴、趣味・関心事など)
・相性:18項目(Leadership Questionnaireでタスク/感情、人/仕事などの嗜好を図る)
・信頼性:20項目(リーダーシップ能力を図る)

2)関係性のプロセス
・ラポール:クライアントへ2項目、コーチへ2項目で測定
(例:コーチ/クライアントと強いつながりを感じた)
・信頼感:クライアントへ1項目、コーチへ1項目
(「私はコーチとコーチングプロセスを信頼していた」「クライアントは正直で率直だった」)
・コミットメント:3項目
(私のコーチは私の個人的なリーダーシップ開発にコミットしていた)

(成果評価項目)

◯コーチングに対する満足度
(満足度:コーチングの経験に満足している、
効用:投資した時間と労力に価値があったと思う)

◯パフォーマンス
(例:コーチング経験の結果、私はより効果的にリーダーシップ活動を行うことができるようになった
コーチング経験の結果、私はどのようにリーダーシップを維持するか学んだ)

◯組織的成果
(例:全体として、これは質の高いプログラムである)

<研究の結果>
・「1)マッチング基準」は、コーチングの成果に影響がなかった
(=系統的にマッチされたクライアント-コーチ対の間に有意差が見られなかったことから,
「仮説1」は支持されなかった)

・「2)関係性のプロセス」は、コーチングの成果に影響があった
(=クライアントが評価した「ラポール、信頼、コミットメント」はコーチング成果に高い相関が認められた
=コーチが評価した「ラポール、信頼、コミットメント」はコーチングに高い相関は認められなかった)

※Boyce, Lisa A., Jackson R. Jeffrey, and Laura J. Neal. 2010.
”Building Successful Leadership Coaching Relationships: Examining Impact of Matching Criteria in a Leadership Coaching Program.”
International Journal of Management & Enterprise Development 29 (10): 914–31.
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)

とのこと。

■この結果をみて
興味深いなあ、と思ったことが2つあります。

まず1つ目が、

”マッチング(共通性、相性、信頼)などが高くても
コーチングの成果には影響がない”自分

という事実です。

曰く、類似性は、関係プロセスの
序盤には効果的に続くものの、

異質性があったほうがコーチングの成果は
高まるという結果もあるそうです。

つまり、

「似ているからといって
良い成果になるわけではない」

というのは、

違いを尊重する大切さ
異質性からもたらされる気づき、

などの示唆を感じました。

(この話は、コーチング関係だけではなく、
他の人間関係においても、かもしれません)

■そして2点目は

”クライアントが認知する
関係性のプロセス(ラポール、信頼感、コミットメント)が重要”

ということです。

関係性とは、もちろん
コーチとクライアントの両者が歩み寄って
作り出すものです。

ただ、今回の結果では

「コーチングの成果を予測するものは
クライアントがどう感じているか」

であったというところは、
注目に値する、と感じました。

相手(クライアント)がどう思うか、
が大事なのですね。

ご参考になれば幸いです。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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子供たちは、大人の話ではなく
大人のあり方によって教えられる。

ユング(スイスの精神科医)

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