「同僚からの支援」は仕事満足度にどのような影響を与えるのか? ー正社員2505人への調査からわかったことー
(本日のお話 2082字/読了時間2分)
■おはようございます。紀藤です。
昨日は朝から大学院の論文の記述。
午後からはレゴを活用した
キャリアづくりのワークショップへの参加でした。
参加者はほとんどレゴシリアスプレイの
ファシリテーターの資格保持者でしたが、
他者の考えられたプログラムへの参加は有意義で
幅が広がる感覚がします。
勉強になりました。
*
さて、本日のお話です。
現在、「職場内支援」について
改めて整理をしております。
その中で
「同僚からの支援(coworker support)」
についてある論文を読みました。
今日はその内容からの学びについて
皆様にご共有させていただければと思います。
それでは早速まいりましょう!
タイトルは
【「同僚からの支援」は仕事満足度にどのような影響を与えるのか?
ー正社員2505人への調査からわかったことー】
それでは、どうぞ。
■仕事には様々なストレスがつきものです。
仕事への要求
それに伴うプレッシャー
仕事の複雑さ
役割の過重性
意志決定が自由でない
、、、
そんな職務設計に関わるものもあれば
人間関係のストレス
圧迫的な上司
難しい部下
など周辺の環境にも
影響してそのストレスは増減します。
■そして、これらの
仕事のストレスを緩和させたり、
仕事の満足度を高める要因の一つに
「職場の社会的関係」
が挙げられています。
そして上記に関連し、
『社会的支援』(ソーシャル・サポート)
として1980年代以降
社会科学の文献において
広く掲載されるようになったそう。
そして
・「職場の社会的関係」は
従業員の職務満足度、生産性、幸福度に
大きく貢献する可能性がある(Hodson,1997)
・「ソーシャル・サポート」は
ストレス要因や緊張を効果的に緩和する
と言われ、注目されてきたそうです。
■一方、そんな社会的支援の中で、
あまり注目されてこなかったものがありました。
それが、
「同僚からの支援」
(coworker support)
です。
そしてこの同僚からの支援について
・同僚からの支援には
どのようなもの(性質)があるのか?
・同僚からの支援が
仕事満足度に及ぼす影響とは何か?
について調べた論文があります。
論文のタイトルは
邦訳「やりがいのない仕事 、同僚からのサポート、仕事のやりがい バッファリング仮説の検証」
ロリ・J・デュカルム ウェスタット他(ケント州立大学)
Ducharme, Lori J., and Jack K. Martin. 2000.
“Unrewarding Work, Coworker Support, and Job Satisfaction: A Test of the Buffering Hypothesis.”
Work and Occupations 27 (2): 223–43.
というものです。
■この調査によると、
米国の2505名の正社員を対象に
”同僚からの社会的支援と
(ストレスへの)緩衝効果”
を調査をしました。
*
2点、私が印象に残った
論文のポイントをお伝えすると、
以下のことを述べています
まず1つ目は
「社会的支援の主要な4タイプ」
についてです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
< 社会的支援の主要な4タイプ>House & Kahn, 1985
a)感情的支援:
受容され大切にされているという感情を受け手に与える
b)情報的支援:
アドバイスやガイダンスの提供を行う
c)道具的支援:
特定のニーズに対応する物質的援助を伴う
d)社会的仲間:
一緒に何かをする人を持つ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
とのこと。
そしてこの中でも
「a)感情的支援」 「c)道具的支援」の2つの区別は
明確に認識されているようです。
そして「a)感情的支援」は、
”日常的に”声掛けなどで提供され、
「b)道具的支援」は
”特定の状況で”ストレスに対応する場合にのみ
必要とされる、
といわれています。
つまりサポートにも種類がある、
ということですね。
■では、これらの社会的支援を含めて
同僚からの支援は
実際に仕事の満足度やストレスに
どのような影響を与えるのでしょうか?
それが2つ目の論文で
注目したいと思ったポイントです。
まず社会的支援を
以下のように尺度としました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<ソーシャル・サポート(社会的支援)項目>
◯感情的支援
・同僚はあなたのことを本当に心配している
・同僚を身近に感じることができる
・同僚はあなたに個人的な関心を寄せている
・同僚から評価されていると感じる
・同僚があなたに友好的である
◯道具的支援
・あなたが休んでいる間、同僚が補ってくれる
・あなたの同僚は、仕事を成し遂げるのに役立っている
・同僚が仕事の悩みについて有益なアドバイスをしてくれる
・同僚がいつもと違う仕事の悩みを相談にのってくれる
・同僚が協力してくれる
(因子負荷量が 0.50を超える項目)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そして様々なモデルから検証し
わかったこととして3点あります。
1)(同僚による)社会的支援は
すべての労働者の仕事満足度を一様に高める
2)感情的支援と道具的支援をわけることで
このプロセスの影響について理解を深めることができる
ここまでは予測(期待)通りです。
しかし最後の3つ目は興味深いです。
3)感情的支援と道具的支援は
いずれも仕事ストレスが仕事満足度に及ぼす
マイナスの影響を緩和しない
とのこと。
すなわち、
”2つの支援は仕事満足度を高める。
ただし、仕事ストレスを緩和させず
仕事ストレスの経験による仕事の満足度には影響を与えない”
というそうです。
実に興味深いです。
■曰く、論文でのディスカッションでは
社会的支援の項目での
・「道具的支援」の項目は一般化されすぎている
・異なる職業の具体的ニーズに対応できていない可能性
(例:消防士、客室乗務員、新聞記者では道具的支援の意味が異なる)
の調整は今後の課題として残る、
ということです。
■ということで、本日は
「社会的支援」そして
「同僚からの支援」
についての論文をご紹介いたしました。
支援もいくつかわけることで
見えることがあり興味深いですね。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
本日も皆さまにとって、素晴らしい1日となりますように。
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<本日の名言>
私たちは皆、助け合いたいと思っている。
人間とはそういうものだ。相手の不幸ではなく
お互いの幸福によって生きたいのだ。
チャールズ・チャップリン
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