関係が薄いメンバーほど、関わると効果が高い?! ー論文『リーダーシップ介入の効果に対するLMXの調整効果』より
(本日のお話 3054字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
さて、本日のお話です。
先日、「LMX理論」について
お話をさせていただきました。
内容は、「LMX」とは、
リーダーとフォロワーの交換関係であり、
この交換されているものが
金銭などの報酬を超えたもの、
すなわち、
”信頼や敬意、努力”
などを交換するような
質の高い関係だと、
組織における高いパフォーマンス、
フォロワーは多くのチャンスを獲得し
職務満足度にも繋がる
、、、というお話でした。
※昨日のお話はこちら↓
LMX理論とは何か ー「リーダーとメンバーの交換関係」が影響を与えるものー
https://1lejend.com/b/detail/HSfoIRnMfw/4376613/
*
本日はこのLMX理論を
もうちょっと深掘りして
論文から興味深いものを一つ、
ご紹介させていただければと思います。
それでは早速まいりましょう!
タイトルは
【関係が薄いメンバーほど、関わると効果が高い?!
ー論文『リーダーシップ介入の効果に対するLMXの調整効果』】
それでは、どうぞ。
■「上司」の影響は大きいものです。
部下にとって
上司の目は気になるものです。
例えば、
「XXさんは、
他のメンバーには優しいのに
自分に対しては厳しい」とか、
「自分は、
個別で声をかけられることはあまりない。
多分、目をかけられてはいないのだろう」
と思ってしまう部下も
やっぱりいて然るべきですし、
それは当人の心理に
何かしらの影響を与えるものです。
■上司と部下も、
人間対人間ですから、
聖人君子のように
誰にも別け隔てなく、、、
というのはやっぱり難しいですし、
そうすることが是とも限りません。
ただ、LMX理論から言えば、
「自分が上司は、質の高い関係」なのか
(=LMX理論で言えば、イン・グループ)
「自分は上司は、業務的な関わりのみの関係」なのか
(=LMX理論でいえば、アウト・グループ)
は、仕事の成果にも影響することは
わかっているわけです。
■では、
「LMXのが低い人」に対して
マネジャーがリーダーシップ介入(1on1など)をすると、
どのような影響があるのでしょうか?
このことについて研究した論文で、
『リーダーシップ介入の効果に対するLMXの調整効果』
原題:Scandura, Terri A., and George B. Graen.(1984).
”Moderating Effects of Initial Leader–member Exchange Status on the Effects of a Leadership Intervention.”
The Journal of Applied Psychology 69 (3): 428–36.
というものがありました。
この研究、興味深い内容で、
「LMXが低い従業員と
LMXが高い従業員を比べたときの
リーダーシップ介入効果の差」
を調べた研究です。
先に、結果からお伝えしまうと、
”LMXが相対的に低い従業員は、
リーダーシップ加入に、より肯定的に反応した”
ことがわかりました。
■以下論文の詳細について
ポイントを見てみたいと思います。
(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
論文まとめ『リーダーシップ介入の効果に対するLMXの調整効果』
<論文の目的>
・ダイアド間のLMXの状態が
リーダーシップ介入の効果に及ぼす影響を検討すること。
***
<論文の仮説>
*仮説1:
LMXの質が低いメンバーは、質の高いメンバーに比べ、
リーダーシップの介入により、総合的な職務満足度に対してよりポジティブな効果を示すだろう
*仮説2:
当初LMXの質が低かったメンバーは、リーダーシップの介入により、
当初質が高かったメンバーより上司満足度に対してよりポジティブな効果を示すだろう
*仮説3:
LMXの質が低いメンバーは、質の高いメンバーと比較して、
リーダーシップの介入によって生産性により大きな影響を受けるだろう
***
<論文の研究方法>
・対象者はコンピュータ処理に従事する従業員83名
・BeforeーAfterで行う実証実験
・1週目(Before)と26 週目(After)で、
小グループと直属の上司に質問票を配布する。
・そして、26週間にわたり週単位で生産性を測定する。
・参加者は、作業単位によって2つの条件のいずれかに割り当てられた。
リーダーシップ介入条件とし、65をリーダーシップ介入条件を設定した。
◯「実験群」に行ったこと
・LMXの実験群のマネージャーは、
2時間のセッションを6週間にわたって6回受講した
(研修の目的)
・マネージャーが部下との関係における
ポジティブな要素とネガティブな要素を徹底的に分析し、
それに基づいて行動できるようにすること
(研修内容)
・アクティブ・リスニングのスキルトレーニング(2時間)、
・相互期待交換(2時間)
・リソース交換(2時間)、
・マンツーマンセッションの実践(4時間)
(研修後に行ったこと)
・トレーニングに続く実際の介入は、
マネージャーとメンバーとの1対1の会話を30分前後かけて行った
・会話で行うことは以下のことだった
(a)メンバーの仕事、上司の仕事、仕事上の関係について、
各人の不満、懸念、期待について話し、議論する時間を持つ
(b)”アクティブリスキング”のスキルを使い
部下が懸念している課題について注意深くなること
(c)マネージャーは、提起された問題に対して、
自分の枠組みを押し付けることを控えること
(d)マネージャーは、自分自身の仕事、
メンバーの仕事、そして彼らの仕事上の関係について、
自分自身の仕事への期待をいくつか共有すること
◯「対照群」に行ったこと
・プラセボ対照群では、マネージャーが、
職務の充実、業績評価、意思決定、コミュニケーションに関する
一般的なインプットを2時間のセッションに3回参加した
**
◯研究の方法
*被説明変数:
・生産量(1人が1週間に完成させた仕事の総数)
・仕事の満足度(給与、安全、社会的側面、上司、成長機会の5つの側面)
*調整変数:
・LMX尺度
***
<結果/わかったこと>
・LMXの質がリーダーシップ介入の効果を調整するという仮説が支持された
(仮説1~3が支持された)
・26週間にわたる研究期間中に、介入対象者は
より高いパフォーマンスを発揮するようになった。
・特にリーダーシップ介入は、
LMXが低いメンバーに対して最も効果的であった。
※参考:『リーダーシップ介入の効果に対するLMXの調整効果』
原題:Scandura, Terri A., and George B. Graen.(1984).
”Moderating Effects of Initial Leader–member Exchange Status on the Effects of a Leadership Intervention.”
The Journal of Applied Psychology 69 (3): 428–36.
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)
とのこと。
■さて、いかがでしょうか。
たいへん興味深いです。
1984年の論文ですが
ここで実験群で用いられている
「リーダーシップ介入」の内容が、
まさに現在も取り入れられている
「1on1」における内容と実に似ています。
そしてこの論文は
全体的な結論としてこう述べていました。
”リーダーシップの介入による効果は広範囲に及ぶ。
その中で、最も影響を受けるのは、
質の低い交流を行っている従業員であると考えられる。
・実際、リーダーシップの介入により、
ハードな生産性が19%改善された。
・この改善により、
年間500万ドル以上のコスト削減が見込まれた”
とのこと。
■リーダーシップ介入は
(やっぱりですが)
全般的にポジティブな影響がある。
今回の実験で語られたような
・お互いの関係、不満や課題などを話す時間を設ける
・アクティブリスニング(傾聴)
・自分の考えを押し付けない
・自分の期待を伝える
このような「1on1」の時間は
やっぱり有用であり、
加えて特に
「LMXの質が相対的に低い人」に
効果があるというのは、興味深いです。
■鶏が先か、卵が先か、
という観点のように
・関係がよいから1on1をやるのではなく
・1on1をやるから関係がよくなる
という作用もあるように思います。
この研究は「LMXの調整効果」ではありますが、
リーダーシップ介入の効果についても
考えさせられるものでした。
LMXの理論とまた影響を知ることで
メンバーの生産性や満足度を高めるヒントに
なりそうだ、と感じた次第です。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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ゴルダ・メイア
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