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3253号 2023年1月18日

変幻自在のキャリア ープロティアン・キャリアー とはなにか(前編)

(本日のお話 1954字/読了時間2分)

■こんにちは。紀藤です。

さて、本日のお話です。

本日も引き続き、
「キャリア」についての学びを、
皆様におすそ分けさせていただければと思います。

本日は、

『プロティアン・キャリア』
(=変幻自在のキャリア)

がテーマです。

それでは早速まいりましょう!

タイトルは、

【変幻自在のキャリア ープロティアン・キャリアー とはなにか(前編)】

それでは、どうぞ。

■ギリシャ神話に
「プロテウス」という神様がいます。

プロテウスは

火にもなり、
水にもなり、

何にでも変幻自在に
姿を変えることができました。

そこから転じて、

社会や経済の変化に対応しながら、
自らを変えていくことができるキャリアを

『プロティアン・キャリア』

と、ダグラス・ホールは名付けました。

いわゆる、
「キャリアにおける自律」と近い考え、
ともいわれています。

■さて、

なぜこの考えが
注目されるようになったのでしょうか?

実は、この考えが出てきたのは、

1980年代の産業社会における
構造変革が背景にあります。

”個人と会社組織の心理的契約が
「従来の長期にわたる関係」から、
「短期的な、貢献と利益による関係」へと変わったから”

であるといいます。

■心理的契約とは、
「暗黙の期待」を意味します。

これまで従業員は会社に対して
「長く雇ってくれること」を暗に期待し、

会社は従業員に
「長く雇用し続けること(終身雇用)
その代わり転勤や異動を受け入れること」を
暗に期待していました。

そんな、お互いへの
「暗黙の期待」がこれまではあったのが、

”終身雇用はもう無理”

となったことにより、

長期での関係ではなく
短期的な「貢献と利益」という
暗黙の期待に代わって行った、

というわけです。

もちろん、上記は

米国における変化であり、
日本と同じとは言えません。

ただ、同じ流れの線上にはいる、
といってよいかと思います。

■これはいわゆる、
「100年時代」とも言い換えられる話かと。

組織の寿命よりも
個人のキャリアの寿命の方が長くなった、

そんな今の時代だからこそ、

「個人が変わり続けること」

が求められているし、

そうしたほうが生き残る可能性が
高くなっていく時代でもある、

ともいえそうです。

そしてそのために役立つ考え方が

「プロティアン・キャリア」

と言う、そんなお話です。

■ちなみに、

この考え方を提唱した
ダグラス・ホールの理論の軸には、
以下の2つがありました。

1)キャリア発達の最終的な目標は”心理的成功”である

2)キャリアは”人間関係における相互学習”の中で発達していく

とのこと。

※引用:渡辺三枝子(編著)(2018)『新版 キャリアの心理学[第2版] キャリア支援への発達的アプローチ』.ナカニシヤ出版 p.181

■まず1)ですが、

キャリアの目標は
心理的成功、と述べています。

つまり、

「あくまでも本人が
自分自身でキャリアで成功したと思えること」

と言っている点が特徴です。

しばしば、
”キャリアアップ”という言葉が
転職市場で使われることがあります。

これは能力を向上させ、
経歴を高めることを意味しますが、
必ずしもキャリアの成功を意味しません。

(これはコンサルが作った造語で
そもそもキャリアの研究に
キャリアアップという考えはない、
と聞いたことがあります)

市場の中でいう
履歴書に書ける経歴を高めたとしても、
それが本人にとって、
”成功”と言えるかどうかはわかりません。

■ホールの理論では、

キャリアの心理的成功とは

1,キャリアにおける使命と自信を通じた目的意識に動機づけられ、
(これこそが自分がやるべき仕事である、と思えること)

2,そのための努力を通じて、

3,その結果としての心理的成功、そして客観的成功を得ること、

としています。

「あくまでも、成功の基準は
自分の内側にある」

このことが重要なのですね。

■そして、2)の

”キャリアは人間関係における
相互学習の中で発達していく”

についてですが、
「相互学習」という考えも特徴です。

例えば、
上司と部下という関係。

これは部下だけが、
上司から学ぶだけではなく、

上司も部下との関わりの中で、
自らのマネジメントのあり方などを
相互に学んでいきます。

あるいは、
同僚から学ぶということだってあるし、

組織外の学びの場から
学ぶことも大いにあります。

人は人から学び、
そしてキャリアを発達させていくのです。

■「プロティアン・キャリア」を取り巻く
ホールの理論をまとめますと、

1)産業社会の変化とともに
会社と個人の心理的契約が変わった世の中で

2)キャリア発達の最終目標である
「個人の心理的成功」を達成するために

3)人間関係における相互学習を含めて
自らを発達させていく

というお話でした。

■では実際に、

このプロティアンキャリアを
促進させるためにどのような要素が必要なのか。

このことについては
明日に続けたいと思います。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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<本日の明言>

怠慢は魅力的に見えるけど、
満足感を与えてくれるのは働くことよ。

アンネ・フランク

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