「人生の転機」をどう乗り越えるか(後編)ー転機を乗り越えるため「4Sシステム」のご紹介ー
(本日のお話 3700字/読了時間5分)
■こんにちは。紀藤です。
昨晩は大学院での最後の授業。
1週間後に口頭試問を残すのみで、
問題がなければ卒業となります。
(たぶん・・・)
振り返るとこの大学院生活は
まさに自分にとっての「転機」でもありました。
、、、ということで、
やや強引に今日のテーマに
接続させていただきますが、
本日のお話も、先日に続き
「人生の転機(後編)」
としてキャリアの学びについて
おすそわけさせていただければと思います。
それでは早速まいりましょう!
タイトルは
【「人生の転機」をどう乗り越えるか(後編)
ー転機を乗り越えるため「4Sシステム」のご紹介ー】
それでは、どうぞ。
■私事ですが、
もうすぐ2歳の子供がいます。
その子供が通っている
毎月の保育園通信にて
園長先生から毎月のメッセージが
A4の半分くらいのスペースに書かれています。
この内容が素晴らしく、
いつも季節に応じて示唆に富むメッセージなのです。
例えば、
12月にはサンタさんと
プレゼントお話にかけて
「望むものが手に入るとは限らない。
そうした学びもまた大事である」
と両親、子供の
どちらにも配慮したメッセージでありました。
■そして、今月1月のメッセージ。
そこには、
「新年の始まりと年を重ねること」
を題材に書かれていました。
内容は以下のようなお話でした。
”子どもたちは
年を重ねるごとに出来る事が増えていく。
一方、私(園長先生)は
年を重ねるごとに出来る事が減っていく。
この違いは哀しいものも感じますが、
年齡を重ねることの深さを感じる”
、、、
というようなお話。
■これらのメッセージを見て、
「ああ、まさにこれぞ転機・・・」
としみじみ感じておりました。
そう、
中年期以降のテーマとは
得るものがばかりではないのです。
”喪失や葛藤”
というテーマも多いにあるのです。
例えば
役職定年として
自分の役割を”手放す”こともある。
あるいは若いときには考えていなかった
健康、介護問題、死別だってある。
あるいは長く勤めていれば
突然の失業などもありうる。
■そうした転機は、
航海における「波」のようなものです。
「小波」に遭遇したように、
足元がふらつく程度で乗り切れる
”転機”もあれば、
激しい「大波」で、
船の中がメチャクチャになり
マストが折れたりするような
”転機”もあるかもしれません。
もっとリアルに言えば、
「予想外の嵐への遭遇」として
大波に次ぐ大波がやってきて、
ボロボロになっていたときに、
まだ更に波がやって来て転覆寸前・・・
ということもあり得ます。
■これを現実世界として
キャリアの書籍から引用させていただくと、
こんな風に表現されていました。
”失業した人が
離婚や親の病気に遭遇するなど、
転機の最中にいる人は、
しばしば他の転機も体験することになる。
これに対処するのは極めて難しくなる。”
(※引用:渡辺三枝子(編著)(2018)『新版 キャリアの心理学[第2版] キャリア支援への発達的アプローチ』.ナカニシヤ出版 p194)
、、、おそろしいです。
でも、そういうのは
多いにある、ということです。
■まさに、
望むものであれ
望まないものであれ
「起こる時は起こる」
というのが、
「人生の転機」です。
そして、起こってしまったからには
対応せざるを得なくなります。
ただ、私たちは
生きていかなければいけません。
ゆえに、その都度都度、
波に対処できるよう、
戦略と行動を考える必要もあるし、
なにかあった時の準備も
考えておく必要もあります。
■転機には、
以下の「転機の3つの種類」があるとされます。
1、予測していた転機(anticipated transitions)
2、予測していなかった転機(unanticipated transitions)
3、期待していたものが起こらなかった転機(non-event transitions)
準備のためには、
上記の3つの観点を持つことが必要であり、
それぞれ整理ができておくと
事前の準備も、起きたときの対処もしやすくなります。
また思うに、
できる限り「予測している転機」として
準備が整えられたようが、
対応はしやすいと考えられます。
備えあれば、憂いなし、です。
(転機が来る時は重なるそうなので
結局憂いはありそうですけど、、、)
■そして、転機は
以下のプロセス」で起こる、
と言われています。
それは
「1)転機の始まり」
「2)転機の最中」
「3)転機の終わり」
という3段階です。
これも理解をしておくと
自分の置かれた状況を理解しやすくなります。
*
まず、
「1)転機の始まり」では、
これまでの自分の
アイデンティティを保持しながら
新しい役割、人間関係、
日常生活、考え方の中で、
「コツを覚える」ことを行おうとします。
そこから進んで、
「2)転機の最中」になると、
これまでの自分と、
新しい環境に馴じもうとする中で
どっちつかずの状況を体験し、空虚と混乱が訪れます。
迷い、戸惑が訪れます。
そうして、
「3)転機の終わり」を迎えると、
役割の終わり、人間関係の終わりなどで
その転機から離脱をしていくことになります。
その結果、キャリアの発達や、
あるいは自分のアイデンティティの変容が起こることも
あり得るのでしょう。
■そして、そんな転機のプロセスに
対応するためにどうすればよいのか?
そのために「人生の転機」の研究者でもある
シュロルスバーグは、
『個人の転機を乗り越える「4つのS」』
なるものを提唱しています。
曰く、この「4つのS」の内容を吟味することで
・転機の対処に活用できそうな資源
・脆弱な資源
をそれぞれ明らかにすることができ、
転機を乗り越えることに資する
としております。
*
ということで以下、
ご紹介させていただきます。
(情報が凝縮されているので、
お時間がない方はサラリとお目通しくださいませ)
(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【個人の転機を乗り越える「4つのS」】
<(1)Situation(状況)>
a,引き金(何が転機をもたらしたか)
b,タイミング(転機は、社会的に時宜に合ったものか、早いか遅いか
c,コントロール(転機のうち自分でコントロール出来る部分はどの部分か)
d,役割の変化(転機は、個人の役割の変化を引き起こすものか9
e,期間(長く続くものか一時的なものか)
f,過去の経験(過去に同様な転機を経験したことがあるか)
g,ストレスの程度(転機にともなうストレスの程度)
h,アセスメント(その状況を前向きに捉えているか、後向きに捉えているか)
<(2)Self(自己)>
a,個人的(人口統計的)な特徴
ー社会経済的地位
ー性(ジェンダー)
ー年齡と人生段階
ー健康状態
ー民族性
b,変化対処に関係のある心理的資源
ー自我発達段階(自律的に対処できるか)
ー物の見方/楽観主義(楽観主義者かどうか。まだ半分もあるor半分しかない、どちらか)
ー自己効力感(自分の努力で結果に影響を与えられると感じているか)
ーコミットメント(意味や目的を感じているか)
ー価値観・精神性・回復力(立ち直るための性格を有しているか)
<(3)Support(周囲の援助)>
a,転機を乗り越えるために望んでいる
「好意(賞賛・尊敬・愛情)」「肯定」「助力」を
周りから得られているか
b,広い範囲で援助を受けられるか
(配偶者、親族、友人、同僚、同業者、組織など)
c,サポート資源の中で、転機によって失う、弱体化するものはあるか
(失業や離婚で失う友人関係等)
<(4)Strategies(戦略)>
・ストレスに対処するためには以下の3つの対処がある。
a,状況を修正するように働きかける戦略
(=直接、問題に働きかけるなど)
b,問題の持っている意味を変える
(=物の見方、捉え方を変えるなど)
c,ストレスをマネジメントできるよう対応する
(=リラクゼーションなど)
(Pealin & Scholler, 1978)
※引用:渡辺三枝子(編著)(2018)『新版 キャリアの心理学[第2版] キャリア支援への発達的アプローチ』.ナカニシヤ出版 p196-198
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)
とのこと。
■さて、いかがでしょう。
文字がつまりすぎていて
わけがわからない、、、
と言われそうですが(汗)
一つずつ噛みしめるように見ていくと、
「個人の転機において
確認をしておいたほうがよいことが
実に丁寧に分類されている」
と、私は感じました。
人が転機に置かれたとき、
1)状況把握をする
2)その上で適切な行動をする
というステップが必要です。
■しかし、転機の只中にいるときは
おそらく感情(特に不安など)が前に来てしまう。
すると今の状況を冷静に見極めることが
難しくなることが予測されます。
そうしたときに、「4つのS」
すなわち、
1)Situation(状況)
2)Self(自己)
3)Support(周囲の援助)
4)Strategies(戦略)
で書かれたの一つ一つの項目を
丁寧に紐解いていくこと。
そうすることで
今できる「転機への対処」が
特定されていくイメージが湧きます。
(シュロルスバーグは
この4つのSは「キャリアの支援者」が
確認する項目としています)
■転機は誰もの訪れるもの。
ゆえに、その転機のメカニズム
・転機の3つのプロセス
(=転機の始まり/最中/終わり)
・転機に対応するためには
どのようなことを整理する必要があるのか
(=4Sシステム)
などを理解することで
上手に乗り切れる(可能性が高まる)
そんなことを感じた次第です。
人生という航海において、
不安もありますが
起こりうる転機に備えつつ
乗り越え、旅を楽しんでいきたい、
そんなことを感じた次第です。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の明言>
ある人に合う靴も、
別の人には窮屈である。
あらゆるケースに適用する人生の秘訣などない。
ユング
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