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3256号 2023年1月21日

「人生の転機」をどう乗り越えるか(後編)ー転機を乗り越えるため「4Sシステム」のご紹介ー

(本日のお話 3700字/読了時間5分)

■こんにちは。紀藤です。

昨晩は大学院での最後の授業。

1週間後に口頭試問を残すのみで、
問題がなければ卒業となります。
(たぶん・・・)

振り返るとこの大学院生活は
まさに自分にとっての「転機」でもありました。

、、、ということで、

やや強引に今日のテーマに
接続させていただきますが、

本日のお話も、先日に続き

「人生の転機(後編)」

としてキャリアの学びについて
おすそわけさせていただければと思います。

それでは早速まいりましょう!

タイトルは

【「人生の転機」をどう乗り越えるか(後編)
ー転機を乗り越えるため「4Sシステム」のご紹介ー】

それでは、どうぞ。

■私事ですが、
もうすぐ2歳の子供がいます。

その子供が通っている
毎月の保育園通信にて

園長先生から毎月のメッセージが
A4の半分くらいのスペースに書かれています。

この内容が素晴らしく、
いつも季節に応じて示唆に富むメッセージなのです。

例えば、
12月にはサンタさんと
プレゼントお話にかけて

「望むものが手に入るとは限らない。
そうした学びもまた大事である」

と両親、子供の
どちらにも配慮したメッセージでありました。

■そして、今月1月のメッセージ。

そこには、

「新年の始まりと年を重ねること」

を題材に書かれていました。

内容は以下のようなお話でした。

”子どもたちは
年を重ねるごとに出来る事が増えていく。

一方、私(園長先生)は
年を重ねるごとに出来る事が減っていく。

この違いは哀しいものも感じますが、
年齡を重ねることの深さを感じる”

、、、

というようなお話。

■これらのメッセージを見て、

「ああ、まさにこれぞ転機・・・」

としみじみ感じておりました。

そう、
中年期以降のテーマとは
得るものがばかりではないのです。

”喪失や葛藤”

というテーマも多いにあるのです。

例えば

役職定年として
自分の役割を”手放す”こともある。

あるいは若いときには考えていなかった
健康、介護問題、死別だってある。

あるいは長く勤めていれば
突然の失業などもありうる。

■そうした転機は、

航海における「波」のようなものです。

「小波」に遭遇したように、
足元がふらつく程度で乗り切れる
”転機”もあれば、

激しい「大波」で、
船の中がメチャクチャになり
マストが折れたりするような
”転機”もあるかもしれません。

もっとリアルに言えば、
「予想外の嵐への遭遇」として
大波に次ぐ大波がやってきて、
ボロボロになっていたときに、
まだ更に波がやって来て転覆寸前・・・

ということもあり得ます。

■これを現実世界として

キャリアの書籍から引用させていただくと、
こんな風に表現されていました。

”失業した人が
離婚や親の病気に遭遇するなど、

転機の最中にいる人は、
しばしば他の転機も体験することになる。

これに対処するのは極めて難しくなる。”

(※引用:渡辺三枝子(編著)(2018)『新版 キャリアの心理学[第2版] キャリア支援への発達的アプローチ』.ナカニシヤ出版 p194)

、、、おそろしいです。

でも、そういうのは
多いにある、ということです。

■まさに、

望むものであれ
望まないものであれ

「起こる時は起こる」

というのが、
「人生の転機」です。

そして、起こってしまったからには
対応せざるを得なくなります。

ただ、私たちは
生きていかなければいけません。

ゆえに、その都度都度、
波に対処できるよう、
戦略と行動を考える必要もあるし、

なにかあった時の準備も
考えておく必要もあります。

■転機には、
以下の「転機の3つの種類」があるとされます。

1、予測していた転機(anticipated transitions)

2、予測していなかった転機(unanticipated transitions)

3、期待していたものが起こらなかった転機(non-event transitions)

準備のためには、
上記の3つの観点を持つことが必要であり、

それぞれ整理ができておくと
事前の準備も、起きたときの対処もしやすくなります。

また思うに、

できる限り「予測している転機」として
準備が整えられたようが、
対応はしやすいと考えられます。

備えあれば、憂いなし、です。

(転機が来る時は重なるそうなので
結局憂いはありそうですけど、、、)

■そして、転機は

以下のプロセス」で起こる、
と言われています。

それは

「1)転機の始まり」

「2)転機の最中」

「3)転機の終わり」

という3段階です。

これも理解をしておくと
自分の置かれた状況を理解しやすくなります。



まず、

「1)転機の始まり」では、

これまでの自分の
アイデンティティを保持しながら

新しい役割、人間関係、
日常生活、考え方の中で、
「コツを覚える」ことを行おうとします。

そこから進んで、

「2)転機の最中」になると、

これまでの自分と、
新しい環境に馴じもうとする中で
どっちつかずの状況を体験し、空虚と混乱が訪れます。

迷い、戸惑が訪れます。

そうして、

「3)転機の終わり」を迎えると、

役割の終わり、人間関係の終わりなどで
その転機から離脱をしていくことになります。

その結果、キャリアの発達や、
あるいは自分のアイデンティティの変容が起こることも
あり得るのでしょう。

■そして、そんな転機のプロセスに
対応するためにどうすればよいのか?

そのために「人生の転機」の研究者でもある
シュロルスバーグは、

『個人の転機を乗り越える「4つのS」』

なるものを提唱しています。

曰く、この「4つのS」の内容を吟味することで

・転機の対処に活用できそうな資源
・脆弱な資源

をそれぞれ明らかにすることができ、
転機を乗り越えることに資する

としております。



ということで以下、
ご紹介させていただきます。

(情報が凝縮されているので、
お時間がない方はサラリとお目通しくださいませ)

(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【個人の転機を乗り越える「4つのS」】

<(1)Situation(状況)>

a,引き金(何が転機をもたらしたか)
b,タイミング(転機は、社会的に時宜に合ったものか、早いか遅いか
c,コントロール(転機のうち自分でコントロール出来る部分はどの部分か)
d,役割の変化(転機は、個人の役割の変化を引き起こすものか9
e,期間(長く続くものか一時的なものか)
f,過去の経験(過去に同様な転機を経験したことがあるか)
g,ストレスの程度(転機にともなうストレスの程度)
h,アセスメント(その状況を前向きに捉えているか、後向きに捉えているか)

<(2)Self(自己)>

a,個人的(人口統計的)な特徴
ー社会経済的地位
ー性(ジェンダー)
ー年齡と人生段階
ー健康状態
ー民族性
b,変化対処に関係のある心理的資源
ー自我発達段階(自律的に対処できるか)
ー物の見方/楽観主義(楽観主義者かどうか。まだ半分もあるor半分しかない、どちらか)
ー自己効力感(自分の努力で結果に影響を与えられると感じているか)
ーコミットメント(意味や目的を感じているか)
ー価値観・精神性・回復力(立ち直るための性格を有しているか)

<(3)Support(周囲の援助)>

a,転機を乗り越えるために望んでいる
「好意(賞賛・尊敬・愛情)」「肯定」「助力」を
周りから得られているか

b,広い範囲で援助を受けられるか
(配偶者、親族、友人、同僚、同業者、組織など)

c,サポート資源の中で、転機によって失う、弱体化するものはあるか
(失業や離婚で失う友人関係等)

<(4)Strategies(戦略)>

・ストレスに対処するためには以下の3つの対処がある。

a,状況を修正するように働きかける戦略
(=直接、問題に働きかけるなど)

b,問題の持っている意味を変える
(=物の見方、捉え方を変えるなど)

c,ストレスをマネジメントできるよう対応する
(=リラクゼーションなど)

(Pealin & Scholler, 1978)

※引用:渡辺三枝子(編著)(2018)『新版 キャリアの心理学[第2版] キャリア支援への発達的アプローチ』.ナカニシヤ出版 p196-198
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)

とのこと。

■さて、いかがでしょう。

文字がつまりすぎていて
わけがわからない、、、

と言われそうですが(汗)

一つずつ噛みしめるように見ていくと、

「個人の転機において
確認をしておいたほうがよいことが
実に丁寧に分類されている」

と、私は感じました。

人が転機に置かれたとき、

1)状況把握をする
2)その上で適切な行動をする

というステップが必要です。

■しかし、転機の只中にいるときは
おそらく感情(特に不安など)が前に来てしまう。

すると今の状況を冷静に見極めることが
難しくなることが予測されます。

そうしたときに、「4つのS」
すなわち、

1)Situation(状況)
2)Self(自己)
3)Support(周囲の援助)
4)Strategies(戦略)

で書かれたの一つ一つの項目を
丁寧に紐解いていくこと。

そうすることで
今できる「転機への対処」が
特定されていくイメージが湧きます。

(シュロルスバーグは
この4つのSは「キャリアの支援者」が
確認する項目としています)

■転機は誰もの訪れるもの。

ゆえに、その転機のメカニズム

・転機の3つのプロセス
(=転機の始まり/最中/終わり)

・転機に対応するためには
どのようなことを整理する必要があるのか
(=4Sシステム)

などを理解することで
上手に乗り切れる(可能性が高まる)

そんなことを感じた次第です。

人生という航海において、
不安もありますが
起こりうる転機に備えつつ
乗り越え、旅を楽しんでいきたい、

そんなことを感じた次第です。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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<本日の明言>

ある人に合う靴も、
別の人には窮屈である。
あらゆるケースに適用する人生の秘訣などない。

ユング

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