「統合的人生設計」ってなんだ?! ー仕事と人生を統合するための”ひとつの問い”ー
(本日のお話 3080字/読了時間3分)
■おはようございます。紀藤です。
昨日は日曜日は、午前中、
大学院のランニング部の開催。
早朝から10キロのランニングでした。
またお昼からは家族と公園へ。
フライドポテトを食べました。
*
さて、本日のお話です。
本日も先週に引き続き、
「キャリア」の学びについて
皆様にご共有させていただきたいと思います。
本日のテーマは、
”仕事と人生を統合する「統合的キャリア発達」”
なるものです。
それでは早速まいりましょう!
タイトルは
【「統合的人生設計」ってなんだ?!
ー仕事と人生を統合するための”ひとつの問い”ー】
それでは、どうぞ。
■今でこそ、
”ワークライフバランス”
という言葉は、
身近なものになりました。
これもある意味、
「仕事と生活のバランス」という意味で、
今日のテーマの
「仕事と人生の統合」という
ニュアンスを感じる言葉とも感じられます。
■ただ、
「バランス」と「統合」というのは、
よくよくみると、違ったニュアンスです。
統合とは、
あちらかこちらかではなく
あちらもこちらも、
というもっと深い部分での連結を意味します。
例えば、
”「自分の仕事」が、
自分の充足にもなっているし
家族の幸せにもなっているし、
社会のためにもなっている。”
これは「統合されている」
という状態と言ってよいのかもしれません。
そんなふうな「統合」を
見せかけではなく本当に
意図して創ることができたのであれば、
仕事と人生が連結しており
充足感を感じさせてくれそう、
と思えそうです。
■さて、今日ご紹介するキーワードは
『統合的人生設計』
(ILP=Integrative Life Planning)
とは、まさにそんなお話です。
カンセリング心理学を専門とする
ミネソタ大学の心理学部名誉教授である
サニィ・ハンセン氏が提唱しました。
■ではこの「統合的人生設計」とは
どのような意味なのでしょうか。
以下のように定義されています。
(ここから)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『統合的人生設計』とは(ILP=Integrative Life Planning)
・人生やキャリア設計への包括的なアプローチ。
仕事を他の生活上の役割との関係の中で、
または人生の中で捉える。
***
○「統合的人生設計」という概念は、
ー 生命(体、心、精神)
ー 生活上の役割(愛、学習、労働、余暇、市民生活)
ー 文化(個人およびコミュニティの)
ー ジェンダー(男女双方にとっての個の充足及び結合性)
ー コミュニティ(地域全体と地域)
ー 考え方(合理的と直感的)
ー 知り方(量的と質的)
ー 個人的なこととキャリアの連携
といった様々な側面を包含する。
○「統合的人生設計」という概念は、
ー「個々人は各人の決定が人類や環境全体にもたらす影響を考慮すべき」
と考えている。
○「統合的人生設計」という概念は、
ー劇的な変化が一人ひとり、家族、コミュニティ、国家
さらには地球を揺るがしている大きな世界や状況を描写し、
他方で、キャリアという世界、私達自身の私的経験や物語、
あるいはクライアントの物語といった部分も描写する、とする。
※引用:渡辺三枝子(編著)(2018)『新版 キャリアの心理学[第2版] キャリア支援への発達的アプローチ』.ナカニシヤ出版 p208-209
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(ここまで)
とのこと。
■なるほど、なにやら壮大です。。。
ただ、概念的な話ではありますが、
大切なことを語っている用に思いました。
私なりに噛み砕いてみると、
こういうことかな、と思いました。
・”仕事と人生を統合する”こと
(=統合的人生設計)には深い意味がある。
・当然、組織の役割と、
家庭の役割のバランスをとる
(ワークライフバランス)もその一歩かもしれない。
・しかし、少し視点を広げると
個人の中でのもっと広い統合がある。例えば
ー やりがいとの”統合”
ー 学びや成長との”統合”
ー考え方や価値観との”統合”
という個人の生命・役割との統合などである。
・さらに視点を広げると、
社会に所属し生きる人間として
ー 文化との”統合”
ー コミュニティーとの”統合”
というコミュニティや文化との統合もある
・さらに更に視点を広げると、
社会から個人が影響を”受ける”という方向性もあれば
個人が社会に影響を”与える”という方向性もある
、、、そんな風に
個人のつながりが社会を構成し、
その中の一部が自分であるという
繋がりを感じるような考えです。
■すなわち
”統合的人生設計”とは、
1)個人の様々なアイデンティティ(役割)の統合
2)影響を与え合う個人と社会の統合
という考えを含んでいるのかな、
と(私は)理解をいたしました。
■そしてハンセンは、
「統合的人生設計」における
”6つの重要な人生課題”を示しています。
以下の6つです。
(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【キャリア発達と変化するライフ・パターンのための6つの重要課題】
(1)グローバルな状況を変化させるためになすべき仕事を探す
・地域や地球規模で我々が直面している問題を解決するために
創造性を発揮してなすべき仕事に取り組むこと。
(2)人生を意味ある全体像の中に織り込む
・人間のもつ役割や発達(社会性、知性、肉体、精神、感情など)を
包含してキャリアを考えること。
(3)家庭と仕事の間を結ぶ
・役割や人間関係を新たな視点で捉えること。
男女が平等のパートナーとして協力し合うこと。
(4)多元性と包括性を大切にする
・人種、性別、年齢、障害、信念、言語、宗教など
様々な違いを意識し、様々な視点からものをみること。
(5)個人の転機(transition)と組織の変革にともに対処する。
・個人が自分自身、家庭、組織における
変化の担い手になること。
(6)精神性(spirituality)、人生の目的、意味を探究する。
・精神性とは宗教的な意味ではなく、
「一人ひとりが自分の意味を理解する中核そのもの」としており、
そこから意味を探究すること。
※引用:渡辺三枝子(編著)(2018)『新版 キャリアの心理学[第2版] キャリア支援への発達的アプローチ』.ナカニシヤ出版 p210-211
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(とのこと)
■これまた壮大です。
「グローバルな状況を変化させるための
仕事を探す」
なので、個人一人ひとりの影響を
信じているようにも伺えます。
*
サニィ・ハンセンが述べる以下の言葉には
その課題認識を表れているようにも思います。
(ここから)
「個人主義的かつ
民主的な情報社会のなかで
いまだに個人の満足のために
仕事を見つけることに焦点を当てるばかりで、
”共通の善(the common good)”のために
個々の才能を使うということにはあまり焦点を当てていない」
、、、と。
■もちろん、まずは自分。
ただもしその中で、
「個々の才能を社会に活かす」という
観点を持ちながら意思決定をしたら、
そこにはある種の変化が生まれるようにも思います。
我々が、
個人のキャリアを考えると同時に、
”社会の担い手”としての役割も
「統合」していくこと。
そして、そのために、
以下の”問い”が役に立つといいます。
***
<統合的人生設計のための問い>
Q、自己の充足と社会の向上を伴った
意味のある包括的なキャリア・パターンを開発していくために、
この人生課題をどのように利用し続ければよいだろうか?
***
、、、と。
■我々の生きる社会は、
いつの時代にも課題があります。
今でも、
・LGBTQ
・職場におけるハラスメント
・多様性への対応
・持てるものと持たざるものの格差の広がり
・生涯におけるキャリア発達の概念の登場
・仕事における精神性を重視する傾向
などなどもそうでしょう。
そんな社会課題と
自分の人生課題を「統合」して
キャリアを描こうとしてみること。
そんなことも大切な問いの一つである。
そんなことを思った次第です。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の名言>
人間は金銭を相手に暮らすのではない。
人間の相手はつねに人間だ。
アレキサンドル・プーシキン
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