「人生めっちゃ満足」より「まあ満足」のほうが収入が高い ーウェルビーイングの研究論文よりー
(本日のお話 2242字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は社会人教育事業をしている会社様への
ストレングス・ファインダー研修の実施でした。
*
さて、本日のお話です。
先日、興味深い論文を見つけました。
そのタイトルは、
『The Optimum Level of Well-Being: Can People Be Too Happy?』
(日本語訳:ウェルビーイングの最適なレベル :人は幸福になりすぎることがあるのか?)
Oishi, Shigehiro, Ed Diener, and Richard E. Lucas. (2009).
“The Optimum Level of Well-Being: Can People Be Too Happy?” In The Science of Well-Being: The Collected Works of Ed Diener, edited by Ed Diener, 175–200. Dordrecht: Springer Netherlands.
なるもの。
ポジティブ心理学における研究ですが、
この論文のテーマは、
「幸福度が高いことが必ずしもよいのか?
必ずしもそうとはいえないのではないか?」
という問いを探究した内容となります。
実に納得させられる内容でしたので
本日はこの論文からの学びを、
皆様にご共有をさせていただければと思います。
それでは早速まいりましょう!
タイトルは
【「人生めっちゃ満足」より「まあ満足」のほうが収入が高い
ーウェルビーイングの研究論文よりー】
それでは、どうぞ。
■近年、
「ウェルビーイング」
という言葉が
注目されるようになってきました。
”ウェルビーイング=持続的な幸福”
とも訳されることがあります。
企業にとって
長時間労働やストレスチェックなど
従業員の健康や生活の質も問題視されていますし、
利益だけ追求するのではなく、
従業員のウェルビーイング(幸福)を考えていくことも
大事なのではないか、、、
そんな世の中の流れもあり
企業でもウェルビーイングを促進する取り組みが
進んでいる(ところもある)ようです。
■また、ちょっと大きな話ですが
”「幸福」になりたいか?”
と問われて、
否定する人は、おそらく
あまりいないと思われます。
やっぱり、できれば
「幸せ」でいるほうが
不幸よりはずっとよいでしょう。
*
曰く、アリストテレスは、
「幸福が人生の究極の目的である」
といい、
その他の願望(例えば、金銭、健康、評判、友情)などは
幸福を含めた高い目標を達成するための
道具的な目標にすぎない、
ともいわれます。
そりゃ、
不快より、快のほうがよいし、
不幸より、幸せのほうがよいです。
こうした感覚は、
アリストテレスが述べるように
多くの人にとって共通の認識とも思えます。
■、、、ですが、
”本当に「最高に幸せ」なのが
常によいのか?”
と考えてみると、
ちょっと疑問も湧きそうです。
本人がいいっていうんだから、
いいんじゃね?
といえばそれまでですが、
社会には別の指標もありますし、
個人ではなく、組織としてみた時に
「幸福であること」のデメリットも
あるのではないか、という話。
■例えば、こんな研究があります。
・ポジティブな気分は
「認知能力の低下」と関連している
・ポジティブな気分の参加者は
ネガティブな気分の参加者よりも
「相関の推定課題」で悪い結果を示した
・ポジティブな気分の参加者は
「人物認識課題」において
ニュートラルな気分条件の参加者よりも
頻繁にステレオタイプを使用することが示された
などなど。
あるいは別の研究では、
・明るい気分の子供は、死亡リスクが高い
・ポジティブの比率が高すぎると
パフォーマンスが最適でなくなる
などもあります。
ポジティブであることは
「パフォーマンス」
「リスク」
「特定の課題」
等の観点から見た時に、
必ずしも良いとは言えない結果も
示されているようです。
■そんな背景もあり、
本論文では、
こんな調査をしたのでした。
概要としては、
以下の5つの領域
・収入
・教育レベル
・政治参加
・ボランティア活動
・交際状況
において、
”「人生全体における満足度の高さ」
(1:非常に不満 ~10:非常に満足 で評価。
すなわち幸福度の高さと言える)”
がどのように影響を与えているのか”
を調べたという研究です。
■結論からすると、
”・収入
・教育
・政治参加のレベルが最も高かったのは、
(人税全体における満足度が)
『中程度の人(10段階中 8または9)』であった”
とのこと。
■なるほど、、、、
「(人生全体について)
めちゃくちゃ満足している」
よりも
「まあ満足している」
ほうが、こと
収入や教育、政治参加においては
プラスの影響があるのですね。
この論文によると
「満たされないものがあったほうが
努力するエネルギー源となる」
と推察しています。
(例えば、”政治参加”も、
現状に不満があるから参加すし、
不満がなければ参加しない傾向がある)
■アリストテレスが言うように、
「人生の究極の目的が幸せ」
であるならば、
今に非常に満足しているなら
それでいいじゃん、
とも言えるのかもしれません。
、、、しかし、
ちょっとくらい
不満なところがあったほうが
努力をする原動力にもなります。
そしてその結果、
自分や周りが可能性を発揮する
エネルギーになるのであれば
実はそのほうが、
短期的な幸福感を得る以上に
中長期的に様々な経験や機会を得て
総合的に得るものが大きくなる、
といえるのかもしれません。
また、そういう観点があれば
必ずしも「幸せでなければならない」という
強迫観念に振り回されなくても良い、
とも言えるのかもしれません。
■私も、自分なりに
色々やってみても、いつも
「人生全体の満足度は”8”(よくて9)」
くらいでございます(汗)
いつも「まだまだ感」が拭えないのですが
それゆえに新しい挑戦をしようと思えて、
そして新しい世界を見るきっかけに
なっているとも思えますし、
一部のチャレンジが身近な誰かと共鳴して、
勇気づけるという他者への貢献にも
つながっているようにも思います。
■ということで、
こうした観点も知っておくと、
「ウェルビーイング」
という言葉に、やたらと
振り回されずにもすむし、
より広い概念で
”幸せであること”に
向き合うことができるのかもしれない、
そんなことを思った次第です。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の名言>
ハゲ頭の向こうには、若者が想像しているよりも
多くの至福がある。
ローガン・スミス
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