シニア雇用は「4つの視点」から考えるとわかりやすい
(本日のお話 2513字/読了時間3分)
■おはようございます。紀藤です。
昨日は2件のアポイント。
また3月まで通っていた立教大学に
学生証の返還と学位記をもらいにいきました。
桜が舞い散る中で入学式をやっており、
春というのは、始まりであり終わりだなあ、
と少し寂しくも感じた1日でした。
次の学びを探索しつつ、
まずは私の領域で貢献できるように
始めていきたいと思います。
*
さて、本日のお話です。
昨日は、
シニアのジョブ・クラフティングに対して
お話をさせていただきました。
最近この話題について、
人事の方からお話をいただくことも増えており、
多くの企業でも注目しているテーマなのだろう、
と感じています。
本日もこのテーマについて
掘り下げてお伝えできればと思います。
それでは早速まいりましょう!
タイトルは
【シニア雇用は「4つの視点」から考えるとわかりやすい】
それでは、どうぞ。
■「シニア雇用」。
このカテゴリは、
”外国人労働者とならんで
「マイノリティー労働者」と位置づけられている現状がある”
(藤本,2019)
そうです。
シニアは、マイノリティー労働者、
という定義なのですね。。
■しかしながら、
厚生労働省の発表の
2021年の統計データでは
「シニアの労働者割合」は
男性27.5%、女性が16.9%で
全体の21%を占めているそう。
また「シニアの労働者数」は
男性が325万人、女性が194万人で、
合計で約520万人となっています。
”全体の21%”というと
マイノリティというには少し多い気もします。
■そしてお察しの通り、
これからの推移はシニア労働者は
ますます増えます。
5年後(2026年)になると
男性が30.0%、女性が19.2%となり、
全体の約24%を占めるとされます。
また10年後(2031年)では、
更にシニアの雇用は拡大され、
男性が32.3%、女性が21.0%となり、
全体の約26%を占めると予測されています。
ここまで来ると全体の30%近くです。
もうマイノリティとはいえませんね。
■このような流れの中にある
「シニア雇用」
ですが、
一言でシニア雇用といっても、
色々な切り口があるようです。
■例えば、上記の
「シニアの労働者割合」
がどうこう、というのはマクロの視点です。
こうした大きなデータは、
”労働力としてのシニア雇用”
として議論され
領域としては「経済学」になるようです。
社会保障費を補填するために
シニアの人も元気で活躍してもらわないと、、、
「経済のサステナビリティとしての
シニア雇用」
という議論がここに紐付きます。
■また、別の視点から
もう少し組織に近づいてみると、
「シニアが活躍している限り
若手が活躍できない」
という議論もあります。
これは役職定年などの制度に
絡んでくるお話になります。
■さらに、もっとミクロに、
個人に近づくと、
「定年による転機」
というテーマも出てきます。
これは、役職定年による、
自分がこれまで所属していた組織から
距離をとることになった、
「株式会社〇〇の課長」という
自らを定義していた所属組織や肩書が外れた、
その結果、
自らのアイデンティティに変化が生じ、
”自分は何者か”ということの再定義と探索が始まる、
そして人生は続く、、、
というような話です。
こうすると「心理学」の領域となってきます。
■と書いてみると、
「シニア雇用に関すること」
でも、
・「組織」の視点から見るのか
・「個人」の視点から見るのか
あるいは、
・「経済学」の視点から見るのか
・「心理学」の視点から見るのか
によって、
議題となる事柄が変わってきます。
そして、
・どのような領域が、
「シニア雇用」にはあるのか?
・(関わっている人事・経営としての自分たちは)
どの領域を主に知っておく必要があるか?
を理解することは、
この領域に関わる人にとって
役に立つ知識になると思われます。
■このことについて
「シニア雇用の視点」について、
先日の読書勉強会で取り扱った
『シニアと職場をつなぐ: ジョブ・クラフティングの実践』
岸田 泰則 (著)
https://amzn.asia/d/9r5KiY1
では、「4つの視点」として
まとめられていました。
わかりやすく、なるほどなあ、
と思いましたので、
以下、ご紹介させていただきます。
(ここから)
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【シニア雇用に関する「4つの視点」】
<「組織」からの視点>
●経済学
*シニア雇用と若年者雇用の代替・保管の議論
(=シニアと若年者の仕事の奪い合いが「ある」とする議論。
シニアへの賃金過払いの議論など)
*経済のサステナビリティとしてのシニア雇用
(=社会保障制度の持続可能性)
●経営学
*シニア雇用推進企業の存在:ソーシャルビジネス
*ワークシェアリングとしてのシニア雇用
*シニアの人材育成投資不在の問題
(=教育投資の対象となっていないとする研究もあり)
<「個人」からの視点>
●経営学
*下りるキャリアの視点
(=役割を手放していくこと)
*「第一線で働く能力」と「現役世代の力になる能力」
*シニアの役割設定に資するジョブ・クラフティング
(=役割を縮小することでモチベーション維持を測る)
●心理学
*定年を転機(トランジション)と捉える視点
(=定年=終点ではなく、キャリアの転機と考える視点がある)
*世代継承性の視点
(=「経験や知識を後進に継承しよう」とする発達理論がある)
*SOCモデルなどの補償プロセス
(S:選択、O:最適化、C:補償)
*「創造的あきらめ」などのレジリエンス
※引用・参考
『シニアと職場をつなぐ: ジョブ・クラフティングの実践』
岸田 泰則 (著) P45、 図2-3 より
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)
■こうしてみてみると、
”シニアの活躍”
という観点で、
何を考えるべきなのかが
見えてくるように感じます。
「経営学」では、
組織としては、シニアの雇用を推進するための
仕事の創出や、人材育成投資も
考える必要がありそうですし、
個人としては、変わる役割を
モチベーションを維持する形で捉える工夫
(ジョブ・クラフティング)も必要になりそうです。
もっと引いてみて、
キャリアとしての転機を考える施策や
レジリエンスについても考えるという方策も、
必要になる、という見方もありそう。
■色々あるよね、ということで
こうして分類すると
何に取り組むべきなのかが見える化されて
とても勉強になるな、と感じました。
今後、ますます注目されそうなテーマですね。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の名言>
人間は金銭を相手に暮らすのではない。人間の相手はつねに人間だ。
アレキサンドル・プーシキン
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