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3330号 2023年4月6日

「人生満足度」を測る5つの質問 ー論文「人生満足度尺度(Satisfaction With Life Scale)」ー

(本日のお話 3000字/読了時間3分)

■おはようございます。紀藤です。

昨日はエグゼクティブコーチングの実施、
また1件のアポイントなど。



さて、本日のお話です。

現在、ウェルビーイング(幸福度)という
キーワードが注目されていますが、

それにも関連する(と思われる)尺度で

『人生満足度尺度』
(Satisfaction With Life Scale)

なるものがあります。

今日はその尺度とまつわる論文、
そこからの学びと気づきについて、
皆様にご共有させていただければと思います。

それでは早速まいりましょう!

タイトルは、

【「人生満足度」を測る5つの質問 ー論文「人生満足度尺度(Satisfaction With Life Scale)」ー】

それでは、どうぞ。

■コーチングを始めるとき、

「調子はどうですか?」

と、挨拶代わりのように
始めることがあります。

この行為は、

『クリアリング』

と言うそうです。
(知らなかった・・・)

コーチングの本題に入る前に、
”胸の内を語ってもらう”ことで、

クライントが気がかりなこと、
感情などを広く理解する上で
有効な手段とされています。

■やはり人は

「全人的な存在」
(=身体、精神、人格、社会的立場など
あらゆる側面を持つ)

です。

たとえ仕事のことを
メインのテーマとして話していても、

その方には、

家族のこと、健康のこと、
人間関係のこと、仕事上の責任、

様々な要素で構成されており
すべてをトータルして「その人」です。

ゆえに、

「その人の調子を、全般的に見る」

という行為は、

上司と部下の1on1でも有効であるし、
活用できるスキルの一つかと思います。

■さて、そんな前置きを踏まえて、

『人生満足度尺度』
(Satisfaction With Life Scale:SWLS)

なる尺度をご紹介したいと思います。

テーマは、

「人生全般に関して
どの程度うまくいっているのか?」

を問う尺度です。

先の話を受けて言うならば

「人生全般、調子はどう?」

を問う尺度と言えるかもです。

■この尺度は、

Diener, E., R. A. Emmons, R. J. Larsen, and S. Griffin.(1985).
“The Satisfaction With Life Scale.”
Journal of Personality Assessment 49 (1): 71–75.

の論文の中で紹介されました。

概要は、

・主観的幸福感とは、
「ポジティブ感情」「ネガティブ感情」「生活満足」の
3つでできている(Andraws&Withey, 1976)

・その中で生活満足(Life satisfaction)の測定を
することを目的として開発

・「現在の状況にどれくらい満足しているか」という
主観的な判断を問うものである

・その尺度を開発することを目指した

という内容です。

大学生176人と、
平均年齢75歳の高齢者を
被験者として尺度を開発し、

各項目の類似性を元に尺度を編成
2ヶ月間の同一被験者への相関を確認するなどで
信頼性が確認した、

と述べられています。

■では、具体的にどのような尺度なのか?

以下の5つの質問になります。

(ここから)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【人生満足度尺度(SWLS)_5つの問い】

以下の問いについて、

1:全く当てはまらない~7:非常によく当てはまるの
リッカート7件法で確認をする。

**

1_ほとんどの面で、私の人生は私の理想に近い

2_私の人生は、とても素晴らしい状態だ。

3_私は自分の人生に満足している。

4_私はこれまで、自分の人生に求める大切なものを得てきた。

5_もう一度人生をやり直せるとしても、ほとんど何も変えないだろう。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(ここまで)

なるほど。

人生満足度についてど真ん中の質問を
投げかけられている気がしますね。

■ここで、ちなみに興味深いのが、
SWLSの平均点です。

このSWLSの平均点は
「23.5点」と論文で紹介されています。

1~7点で5つの質問に答えるので、
最低は5点(全部1)
最高は35点(全部7)。

平均23.5点なので
各項目に「5:少し当てはまる」
と答えている人が多いとも読みかえられそうです。

ゆえに、

「人生にまあまあ満足している」

という人が多い、
と言えるのかもしれません。

■では、この事実を
どんな風に活用できるのか?

この事を考えた時に

「コーチングや1on1に使う」

という視点があります。

「まあまあ満足している」というのは、

言い換えれば
「更に伸ばせると満足することがある」

とも言えます。

さらなる満足を本人が望んでいるかどうかは、
人それぞれであり、強制することはできません。

もちろん「まあまあ満足」は
足るを知るとも言えるかもしれませんし、
いい悪いの色はないと思うのことです。

しかし、ある見方では

「まあまあで満足する
(しかないと思っている)
(べきと無意識で言い聞かせている)」

のであれば、

可能性を追求してみるのも
その人の幸福度を高める一つの選択肢になりうる、

とも思うわけです。

■そんなことを踏まえて

人生満足度尺度を問うた上で
以下のような質問をフォローアップとして行うことが、
有用であると紹介されていました。

以下、引用させていただきます。

(ここから)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【人生満足度尺度(SWLS)を探究する問い】

1_ほとんどの面で、私の人生は私の理想に近い

・あなたの理想とは、どんなものですか?
・今の人生で理想に近いのは、どの部分ですか?
・あなたの理想は、これまでどんな風に変化してきましたか?
・更に理想の人生に近づけるには、どんな事ができると思いますか?

2_私の人生は、とても素晴らしい状態だ。

・あなたの人生で、うまくいっているのはどの部分ですか?
・それほどうまくくいっていない部分はどこですか?
・あなたにとって、バランスのとれた人生とはどのようなものですか?
・今の素晴らしい状態が実現できた要因はなんでしょうか?

3_私は自分の人生に満足している。

・人生で一番満足している部分はどこですか?
・人生のどの領域でもう少し成長したいと思いますか?
・周りの人は、あなたの人生についてどう評価すると思いますか?
・今の状況をこのまま味わいたいと思う気持ちと、更によい状態を目指して変えたいと思う気持ちはどのくらいありますか?

4_私はこれまで、自分の人生に求める大切なものを得てきた。

・得てきたものの中で、最も価値があると思うのは何ですか?
・まだこれから達成したいと思うことは何ですか?
・人生の中で望むものを得られたのは、誰のおかげが大きかったと思いますか?
・それらを望んだのはどういう理由からでしたか?

5_もう一度人生をやり直せるとしても、ほとんど何も変えないだろう。

・人生における悔いを減らすため、今何を変えることができますか?
・過去の過ちから、どんな重要な教訓を得ましたか?
・現在の判断プロセスに、過去の悔いがどのように影響していますか?
・後悔と、進んでリスクを取ろうとすることの間には、どんな関係があると思いますか?

※ロバート・ビスワス=ディーナー (2016),『ポジティブ・コーチングの教科書』
P141-142より引用
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(ここまで)

■うーん、いい質問です。

たくさんあると
なんとなく眺めてしまいますが、

一つ一つを自分に問うてみると、
けっこう、深いです。

私も書きながら、考えながら

・自分が満足しているところ
・まだまだだと思うところ
・感謝をしたいところ
・そして過去の過ち

について、

今感じていることが
言語化された感覚がしました。

そしてそこには自らの
「願いや不安」が見え隠れして、
そこに自らの伸びしろも感じます。

■この論文自体は1985年と
今よりも40年ほど前の論文です。

主観的幸福感や、満足度についても
今はもっと研究が進んでいると思います。

ただ、尺度と探究の質問として、
振り返り考えさせられるものとして有用だな、

と感じたので、

もしよろしければ
ぜひご自身でも考えていただけると
使えることもあるかと思います。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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<本日の名言>

人生で最も大切なことは、
はるか彼方にあるものを見ようとすることではなく、
目の前にはっきり見えるものをきちんと実行することだ。

トーマス・カーライル
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