今週の一冊『子どもが育つ条件: 家族心理学から考える』
(本日のお話 2033字/読了時間2分)
■こんにちは。紀藤です。
さて、毎週日曜日は、
お勧めの一冊をご紹介する
「今週の一冊」のコーナー。
今週の一冊は
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『子どもが育つ条件: 家族心理学から考える』
柏木 惠子 (著)/岩波新書
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です。
■今から15年前の
2008年に出版されたこの書籍。
15年前といえど
そこに書かれている内容は、
不登校、引きこもり、
家庭内の暴力、
育児のジェンダーギャップや
子育て信仰(3歳までは母親が育てるべき)
、、、などなど
今なお継続している、
あるいは明確には言われずとも、
どこか影響を与えている問題について、
発達心理学と家族心理学の研究結果を元に、
「子育て」に関する事実を
伝えているという内容です。
■書籍で書かれていることは、
多岐にわたりますが、まず、
「育児不安」
により出生率が低下し続けている、
という事実から始まります。
・父親不在の育児の現状、
・育児による自己資源を巡る葛藤
・母親という役割のみのアイデンティティについての不満
などが列挙されています。
これは15年たった今も、
多少は改善された感はありますが、
まだまだ道半ばであると
感じざるを得ないことばかりです。
そして、なぜそのようなことが
起こってしまうのか?
という構造的な問題についても
歴史や文化を含めて解き明かしていきます。
■そんな中で、
特に現実問題として
子育てに大きな影響を与えるとする
・世話をする父親群/世話をしない父親群で
自分自身の役割認識の変化
・子供の問題行動の背景にある、
両親の関係性の問題
など、
言われなければ気づけない
間接的だけれども
極めて重要な家庭内の要因を
先行研究とデータを元に説明がされており、
「そこは意識していなかった、、、」と
気付かされる内容となっています。
■なんとなく感じている、
しかし意識は明確にしていないこと。
たとえば、
・文化的な背景による根強い考え
「母性神話」(母親が育て上げるべき)など
・多産多死から少子少死になってきて
「少子良育戦略」となった社会背景、
・家電製品を始めとした技術の発達で
より一人に対して手厚く見る事が可能になり、
それが嵩じて「過剰な育児」にもなってしまう可能性
なども丁寧に言語化されています。
■個人的に刺さったのは、
「夫婦に入り込んでいる
ジェンダー観の影響」
でした。
例えば、
・家庭内のコミュニケーションにおける
「共感・相談事」は、妻→夫が多い、
・家庭内のコミュニケーションにおける
「威圧・回避・無視」などは、夫→妻が多い
などは、
社会的なジェンダー観の影響を
家庭内の夫婦が内在化している結果である、
と指摘をしています。
しかし、そうすると
妻サイドから見ると、
”「家庭内の共感」などのケアは私が行っている。
一方、夫からはそのような行為がない。
それは、妻にとって悲しく、失望である”
という話がありましたが、
まさに私も実際、
家庭内でそういう話を妻からクレーム(!)を
受けたことがあった、
という事実を思い出して、
反省をしたのでした。
■しかし、言い訳をすると
これは、
『社会が家庭に侵入する』
(フランスの社会学者
ジャック・ドンズローの言葉)
と言われる現象とも考えられるそうです。
例えば、上述の
”家電製品が便利になって
以前よりも子供に目をかける時間が増えた”
というのも社会が否応なしに
家庭に侵入してきた例です。
あるいは、文化的に、
”俺が食わせている”
妻子のために働く男性ジェンダー観
も、
今では前時代的だとしても、
そうやって育ってきた人は
無意識に社会文化が
内在化されてしまっている可能性があります。
これも、社会が家庭に侵入して来た例、
ともいえるのです。
(ちなみに
「誰のおかげで飯を食えると思ってるんだ!」は
今ではDVに一種になる表現だそうです)
■こうしてみると、
”家庭内をケアする(共感する等)は
妻がするもの”
と意識していないけど、
何処かで思っていることに対して、
”入り込んでいた考え”あるいは
”入り込まれていた考え”を
自分が自覚する一つの契機になると思えます。
■本書の中では、
『予防心理学』
という考えがが紹介されています。
これは、
・育児不安や、
・親の役割認識の誤解、
・夫婦のコミュニケーション不全が、
どのように子育てに影響を与えるのか、
などの研究成果を知ることで、
・そうした知見を活かして、
より望ましい行動を取りやすくなる、
とするものです。
無意識に入り込んでいる
内在化された考え。
「子育てとはこういうもの」
について、
様々な研究と知見を知ることで、
より望ましい結果に近づけることができます。
■本書を読みながら、
私も一人の親として、
「なんとなくこうしたほうが良い/悪い
と思っていた言動の答え合わせができた」
(ような気がする)
と感じたのでした。
■曰く、
「育児は育自」
などというそうですが、
先人の知見を大事にしつつ、
自分も育てていきたいものだ、
私もこうした事を実践できるよう
自戒を込めて関わっていきたいものだな、
そんなことを思った次第です。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<今週の一冊>
『子どもが育つ条件: 家族心理学から考える』
柏木 惠子 (著)/岩波新書
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