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3403号 2023年6月18日

今週の一冊『子どもが育つ条件: 家族心理学から考える』

(本日のお話 2033字/読了時間2分)

■こんにちは。紀藤です。

さて、毎週日曜日は、

お勧めの一冊をご紹介する
「今週の一冊」のコーナー。

今週の一冊は

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『子どもが育つ条件: 家族心理学から考える』

柏木 惠子 (著)/岩波新書


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です。

■今から15年前の
2008年に出版されたこの書籍。

15年前といえど
そこに書かれている内容は、

不登校、引きこもり、
家庭内の暴力、

育児のジェンダーギャップや
子育て信仰(3歳までは母親が育てるべき)

、、、などなど

今なお継続している、
あるいは明確には言われずとも、
どこか影響を与えている問題について、

発達心理学と家族心理学の研究結果を元に、
「子育て」に関する事実を
伝えているという内容です。

■書籍で書かれていることは、
多岐にわたりますが、まず、

「育児不安」

により出生率が低下し続けている、
という事実から始まります。

・父親不在の育児の現状、

・育児による自己資源を巡る葛藤

・母親という役割のみのアイデンティティについての不満

などが列挙されています。

これは15年たった今も、
多少は改善された感はありますが、

まだまだ道半ばであると
感じざるを得ないことばかりです。

そして、なぜそのようなことが
起こってしまうのか?

という構造的な問題についても
歴史や文化を含めて解き明かしていきます。

■そんな中で、

特に現実問題として
子育てに大きな影響を与えるとする

・世話をする父親群/世話をしない父親群で
自分自身の役割認識の変化

・子供の問題行動の背景にある、
両親の関係性の問題

など、

言われなければ気づけない
間接的だけれども
極めて重要な家庭内の要因を

先行研究とデータを元に説明がされており、
「そこは意識していなかった、、、」と
気付かされる内容となっています。

■なんとなく感じている、
しかし意識は明確にしていないこと。

たとえば、

・文化的な背景による根強い考え
「母性神話」(母親が育て上げるべき)など

・多産多死から少子少死になってきて
「少子良育戦略」となった社会背景、

・家電製品を始めとした技術の発達で
より一人に対して手厚く見る事が可能になり、
それが嵩じて「過剰な育児」にもなってしまう可能性

なども丁寧に言語化されています。

■個人的に刺さったのは、

「夫婦に入り込んでいる
ジェンダー観の影響」

でした。

例えば、

・家庭内のコミュニケーションにおける
「共感・相談事」は、妻→夫が多い、

・家庭内のコミュニケーションにおける
「威圧・回避・無視」などは、夫→妻が多い

などは、

社会的なジェンダー観の影響を
家庭内の夫婦が内在化している結果である、

と指摘をしています。

しかし、そうすると
妻サイドから見ると、

”「家庭内の共感」などのケアは私が行っている。
一方、夫からはそのような行為がない。
それは、妻にとって悲しく、失望である”

という話がありましたが、

まさに私も実際、
家庭内でそういう話を妻からクレーム(!)を
受けたことがあった、

という事実を思い出して、
反省をしたのでした。

■しかし、言い訳をすると
これは、

『社会が家庭に侵入する』

(フランスの社会学者
ジャック・ドンズローの言葉)

と言われる現象とも考えられるそうです。

例えば、上述の

”家電製品が便利になって
以前よりも子供に目をかける時間が増えた”

というのも社会が否応なしに
家庭に侵入してきた例です。

あるいは、文化的に、

”俺が食わせている”
妻子のために働く男性ジェンダー観

も、

今では前時代的だとしても、
そうやって育ってきた人は

無意識に社会文化が
内在化されてしまっている可能性があります。

これも、社会が家庭に侵入して来た例、
ともいえるのです。

(ちなみに
「誰のおかげで飯を食えると思ってるんだ!」は
今ではDVに一種になる表現だそうです)

■こうしてみると、

”家庭内をケアする(共感する等)は
妻がするもの”

と意識していないけど、
何処かで思っていることに対して、

”入り込んでいた考え”あるいは
”入り込まれていた考え”を

自分が自覚する一つの契機になると思えます。

■本書の中では、

『予防心理学』

という考えがが紹介されています。

これは、

・育児不安や、
・親の役割認識の誤解、
・夫婦のコミュニケーション不全が、
どのように子育てに影響を与えるのか、
などの研究成果を知ることで、

・そうした知見を活かして、
より望ましい行動を取りやすくなる、

とするものです。

無意識に入り込んでいる
内在化された考え。

「子育てとはこういうもの」

について、

様々な研究と知見を知ることで、
より望ましい結果に近づけることができます。

■本書を読みながら、

私も一人の親として、

「なんとなくこうしたほうが良い/悪い
と思っていた言動の答え合わせができた」
(ような気がする)

と感じたのでした。

■曰く、

「育児は育自」

などというそうですが、

先人の知見を大事にしつつ、
自分も育てていきたいものだ、

私もこうした事を実践できるよう
自戒を込めて関わっていきたいものだな、

そんなことを思った次第です。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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<今週の一冊>
『子どもが育つ条件: 家族心理学から考える』

柏木 惠子 (著)/岩波新書

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