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3412号 2023年6月27日

「強みの活用」は「エンゲージメント」にほんとうに影響を与えるのか? ー南アフリカにおける実証研究からの答えー

(本日のお話 2655字/読了時間4分)

■こんにちは。紀藤です。

さて、本日のお話です。

今日も「強みの活用」について
ある論文をご紹介できればと思います。

テーマは

「強みの活用とエンゲージメントの関係」

について。

南アフリカの401名を対象に行った
横断的実験の結果から、
興味深いことがわかりました。

(結論からお伝えすると、
”関係がある”というオチです)

それではまいりましょう!

タイトルは

【「強みの活用」は「エンゲージメント」にほんとうに影響を与えるのか?
ー南アフリカにおける実証研究からの答えー】

それでは、どうぞ。

■私ごとですが、

米Gallupの
ストレングス・ファインダーの
コーチの資格を保有しております。

そしてそのプログラムの
売り文句(?)として

「強みを活かすと、
エンゲージメントが高まる」

と聞いた話をお伝えしています。

■ただ、スミマセン。。。

それもGallupの研修で聞いたので
個人的に納得をしつつ
右から左に流して伝えていましたが、

実は、ちょっと気になっていたわけです。

「これ、ほんとなの・・・?」

と。

疑り深く考えてみると、
実際のところ、

”どのような研究結果を元に、
「強みの活用がエンゲージメントを高める」
といえるのか?

はブラックボックスでした。

ちょっと調べてみたのですが、
Gallup社関連では開示されていないようでした(汗)

■こりゃいかん!

ということで、少し
Google Scholarから探してみると、
あった!ありました!!

そう、

「強みとエンゲージメントの関係」

について調べた、実証研究(定量的に調べた調査)
の論文を発見したのでした、、、!

(多分、皆さまはそうではないと思いますが、
勝手にテンションが上っております)

その内容が説得力があるものでしたので、
今日はそのお話をご紹介したい、

というお話でございます。

■さて、前置きがやたら長くなりましたが

論文のタイトルは

『職務資源、組織的・個人的強みの活用、
ワーク・エンゲージメントの構造モデル』

原題:
Botha, Cheri, and Karina Mostert.(2014).
“A Structural Model of Job Resources, Organisational and Individual Strengths Use and Work Engagement.”
SA Journal of Industrial Psychology

です。

■では、どんな内容なのでしょうか?

一言でいうと、

”南アフリカの従業員401名に対して
強みの活用がワークエンゲージメントが
どのようなに影響しているのかを検証する”

という研究です。

まず、この研究では
研究者がある疑問を持ちました。

・「強みの活用」は
ポジティブ心理学の範疇のテーマである。

・そこでは”強みの活用が幸福度の向上につながる”
などのテーマが中心である。

・しかし、よくよく見てみると、
”組織という文脈で強みを持つことが有益な結果になる”
という研究は意外と少ない。

・じゃあ、調べてみようぜ!

ということでスタートしました。
(こんなノリではないと思いますが)

■そして、

組織が求める結果、すなわち
「パフォーマンスや生産性」等に
影響を与えるとされる要素、

『ワーク・エンゲージメント』
(活力・熱意・没頭)

を軸に、強みの活用との関連を、
調べようじゃあないか、

と話を進めていきました。

■さて、具体的にどのような研究を行ったのでしょうか?

論文では
以下のような仮説と、
モデルを作成しました。

簡単にまとめてみます。

(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

<論文の概要>

◯研究の目的

・強みの活用(組織と個人レベル)が
ワーク・エンゲージメントにどのように影響するかを実証的に検討する

◯研究の対象

・南アフリカで働く401名

◯調査方法

1)以下の調査項目を測定し、それぞれの相関を測定した。

a,経歴的な特徴(年齢、性別、母国語、人種、教育レベル、世帯状況、役職、勤務年数など)

b,仕事の資源(自律性、同僚との関係、上司との関係、情報の5つ)

c,強みの活用に対する組織的支援(7項目)

d,強みの活用に対する主体的行動(8項目)

e,ワーク・エンゲージメント(4項目)

2)ワーク・エンゲージメントを従属変数とし、
他項目を独立変数として関係を調べた

◯研究の仮説

・仮説1:仕事の資源(心理的・物理的リソース)が高いと
ワーク・エンゲージメントが高まる(正の相関を持つ)

・仮説2:強みの活用に対する組織的支援を従業員が認識すると
ワーク・エンゲージメントが高まる(正の相関を持つ)

・仮説3:強みの活用に対する個人の主体的行動が高いと
ワーク・エンゲージメントが高まる(正の相関を持つ)

◯研究の結果

・仮説2,3が支持された。

(=強みの活用に対する組織的支援の認知が高いと、
ワーク・エンゲージメントを高い/仮説2)

(=強みの活用に対する個人の主体的行動が高いと
ワーク・エンゲージメントが高い/仮説3)

※Botha, Cheri, and Karina Mostert.(2014).
『職務資源、組織的・個人的強みの活用、ワーク・エンゲージメントの構造モデル』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)

とのこと。

■ふむふむ、なるほど。

来ました。

・「強みの活用を組織が支援する」ことと
ワーク・エンゲージメントが高まる

・「強みの活用に対して、個人が主体的に行動をする」と
ワーク・エンゲージメントが高まる

他の研究でも支持されているとのことですが
(Linley and Harrington 2006)

「強みの活用は
エンゲージメントを高めるための
一つの戦略として活用できる」

と言えそうです。

■ちなみに、
ちょっとだけ理論的な補足ですが

このモデルでは、

「知覚された組織的支援」
(Perceived Organizatinal Support/POS)

なる理論が根底にあるようです。

組織的支援とは

”従業員が、
自分の組織が自分の貢献を評価し、
自分の幸福を気にかけてくれているという信念”
(Eisenbergerら、1986)

とされています。

(つまり、会社が自分たちの幸せを
気にかけてくれているな、と思えること)

そして、

”組織的支援を従業員が感じると
組織の目標達成への行動が強化される”

とする研究があります。

そして、強みの活用への支援も、
この組織的支援の一つと考えることができる、

としています。



加えて、
「強みの活用への組織的支援」は

従業員のワーク・エンゲージメントに
プラスの影響を与えるとされる

「職務資源」
(上司や同僚の関係、自律性、情報など)

の一つとしても考えられる

ともしています。

ゆえに、理論的に考えても、

強みの活用とワーク・エンゲージメントは
繋がっているよね、

ということがいいたかった、というお話。

■いずれにせよ、

「強みの活用を組織が支援してくれると感じる」
「強みの活用を個人が主体的に行動している」

「ワーク・エンゲージメントが高まる」

という研究結果は大いに参考になりそう。

個人的に私も

ストレングス・ファインダーを活用して
チームビルディングなど行っておりますが、
その有用性を一つ支持してくれるようで
なんだか嬉しくなりました。

(はい、独り言です)

■ということで本日は

「強みの活用とエンゲージメントの関係のお話」

でございました。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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