「強みの活用」は「エンゲージメント」にほんとうに影響を与えるのか? ー南アフリカにおける実証研究からの答えー
(本日のお話 2655字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
さて、本日のお話です。
今日も「強みの活用」について
ある論文をご紹介できればと思います。
テーマは
「強みの活用とエンゲージメントの関係」
について。
南アフリカの401名を対象に行った
横断的実験の結果から、
興味深いことがわかりました。
(結論からお伝えすると、
”関係がある”というオチです)
それではまいりましょう!
タイトルは
【「強みの活用」は「エンゲージメント」にほんとうに影響を与えるのか?
ー南アフリカにおける実証研究からの答えー】
それでは、どうぞ。
■私ごとですが、
米Gallupの
ストレングス・ファインダーの
コーチの資格を保有しております。
そしてそのプログラムの
売り文句(?)として
「強みを活かすと、
エンゲージメントが高まる」
と聞いた話をお伝えしています。
■ただ、スミマセン。。。
それもGallupの研修で聞いたので
個人的に納得をしつつ
右から左に流して伝えていましたが、
実は、ちょっと気になっていたわけです。
「これ、ほんとなの・・・?」
と。
疑り深く考えてみると、
実際のところ、
”どのような研究結果を元に、
「強みの活用がエンゲージメントを高める」
といえるのか?
はブラックボックスでした。
ちょっと調べてみたのですが、
Gallup社関連では開示されていないようでした(汗)
■こりゃいかん!
ということで、少し
Google Scholarから探してみると、
あった!ありました!!
そう、
「強みとエンゲージメントの関係」
について調べた、実証研究(定量的に調べた調査)
の論文を発見したのでした、、、!
(多分、皆さまはそうではないと思いますが、
勝手にテンションが上っております)
その内容が説得力があるものでしたので、
今日はそのお話をご紹介したい、
というお話でございます。
■さて、前置きがやたら長くなりましたが
論文のタイトルは
『職務資源、組織的・個人的強みの活用、
ワーク・エンゲージメントの構造モデル』
原題:
Botha, Cheri, and Karina Mostert.(2014).
“A Structural Model of Job Resources, Organisational and Individual Strengths Use and Work Engagement.”
SA Journal of Industrial Psychology
です。
■では、どんな内容なのでしょうか?
一言でいうと、
”南アフリカの従業員401名に対して
強みの活用がワークエンゲージメントが
どのようなに影響しているのかを検証する”
という研究です。
まず、この研究では
研究者がある疑問を持ちました。
・「強みの活用」は
ポジティブ心理学の範疇のテーマである。
・そこでは”強みの活用が幸福度の向上につながる”
などのテーマが中心である。
・しかし、よくよく見てみると、
”組織という文脈で強みを持つことが有益な結果になる”
という研究は意外と少ない。
・じゃあ、調べてみようぜ!
ということでスタートしました。
(こんなノリではないと思いますが)
■そして、
組織が求める結果、すなわち
「パフォーマンスや生産性」等に
影響を与えるとされる要素、
『ワーク・エンゲージメント』
(活力・熱意・没頭)
を軸に、強みの活用との関連を、
調べようじゃあないか、
と話を進めていきました。
■さて、具体的にどのような研究を行ったのでしょうか?
論文では
以下のような仮説と、
モデルを作成しました。
簡単にまとめてみます。
(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
<論文の概要>
◯研究の目的
・強みの活用(組織と個人レベル)が
ワーク・エンゲージメントにどのように影響するかを実証的に検討する
◯研究の対象
・南アフリカで働く401名
◯調査方法
1)以下の調査項目を測定し、それぞれの相関を測定した。
a,経歴的な特徴(年齢、性別、母国語、人種、教育レベル、世帯状況、役職、勤務年数など)
b,仕事の資源(自律性、同僚との関係、上司との関係、情報の5つ)
c,強みの活用に対する組織的支援(7項目)
d,強みの活用に対する主体的行動(8項目)
e,ワーク・エンゲージメント(4項目)
2)ワーク・エンゲージメントを従属変数とし、
他項目を独立変数として関係を調べた
◯研究の仮説
・仮説1:仕事の資源(心理的・物理的リソース)が高いと
ワーク・エンゲージメントが高まる(正の相関を持つ)
・仮説2:強みの活用に対する組織的支援を従業員が認識すると
ワーク・エンゲージメントが高まる(正の相関を持つ)
・仮説3:強みの活用に対する個人の主体的行動が高いと
ワーク・エンゲージメントが高まる(正の相関を持つ)
◯研究の結果
・仮説2,3が支持された。
(=強みの活用に対する組織的支援の認知が高いと、
ワーク・エンゲージメントを高い/仮説2)
(=強みの活用に対する個人の主体的行動が高いと
ワーク・エンゲージメントが高い/仮説3)
※Botha, Cheri, and Karina Mostert.(2014).
『職務資源、組織的・個人的強みの活用、ワーク・エンゲージメントの構造モデル』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)
とのこと。
■ふむふむ、なるほど。
来ました。
・「強みの活用を組織が支援する」ことと
ワーク・エンゲージメントが高まる
・「強みの活用に対して、個人が主体的に行動をする」と
ワーク・エンゲージメントが高まる
他の研究でも支持されているとのことですが
(Linley and Harrington 2006)
「強みの活用は
エンゲージメントを高めるための
一つの戦略として活用できる」
と言えそうです。
■ちなみに、
ちょっとだけ理論的な補足ですが
このモデルでは、
「知覚された組織的支援」
(Perceived Organizatinal Support/POS)
なる理論が根底にあるようです。
組織的支援とは
”従業員が、
自分の組織が自分の貢献を評価し、
自分の幸福を気にかけてくれているという信念”
(Eisenbergerら、1986)
とされています。
(つまり、会社が自分たちの幸せを
気にかけてくれているな、と思えること)
そして、
”組織的支援を従業員が感じると
組織の目標達成への行動が強化される”
とする研究があります。
そして、強みの活用への支援も、
この組織的支援の一つと考えることができる、
としています。
*
加えて、
「強みの活用への組織的支援」は
従業員のワーク・エンゲージメントに
プラスの影響を与えるとされる
「職務資源」
(上司や同僚の関係、自律性、情報など)
の一つとしても考えられる
ともしています。
ゆえに、理論的に考えても、
強みの活用とワーク・エンゲージメントは
繋がっているよね、
ということがいいたかった、というお話。
■いずれにせよ、
「強みの活用を組織が支援してくれると感じる」
「強みの活用を個人が主体的に行動している」
↓
「ワーク・エンゲージメントが高まる」
という研究結果は大いに参考になりそう。
個人的に私も
ストレングス・ファインダーを活用して
チームビルディングなど行っておりますが、
その有用性を一つ支持してくれるようで
なんだか嬉しくなりました。
(はい、独り言です)
■ということで本日は
「強みの活用とエンゲージメントの関係のお話」
でございました。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。