その質問紙、本当に使えるの? ー「強み活用の組織的支援の認識尺度」の妥当性を確かめた論文ー
(本日のお話 3255字/読了時間5分)
■おはようございます。紀藤です。
さて、本日のお話です。
昨日のメルマガにて
「強みの活用はエンゲージメントに
影響を与えている」
という内容のお話をいたしました。
※詳しくは昨日のメルマガより↓↓
「強みの活用」は「エンゲージメント」にほんとうに影響を与えるのか? ー南アフリカにおける実証研究からの答えー
https://1lejend.com/b/detail/HSfoIRnMfw/4531936/
この論文に関連した内容で、
これまた興味深い論文を発見しましたので
本日はその内容、
そこからの学びと気づきを
ご共有させていただければと思います。
それでは、早速まいりましょう!
タイトルは
【その質問紙、本当に使えるの? ー「強み活用の組織的支援の認識尺度」の妥当性を確かめた論文ー】
それでは、どうぞ。
■冒頭から話が飛ぶようで、
最初にお詫びいたします。。。
先日、アニメ、
『鬼滅の刃 刀鍛冶の里編』が
完結いたしましたね。
(知らんがな、、、という方すみません)
私、好きすぎて
漫画も全巻持っております。
(どうでもいいですね)
*
さて、『鬼滅の刃』では、
しばしば物語の端々に、
「繋がり」
というメッセージが含まれています
”一つの目的”
(=鬼の始祖を倒す)
のために、
鬼狩り(侍?)たちが
命朽ち果てようとも、
次の世代に想いを繋いでいく、、、
その物語はアニメという枠を越えて、
”過去の人達が残してくれたもの”
に想いを馳せるきっかけを
与えてくれて、実に感動します。
■さて、あらゆる”私たちの今”は、
誰かの過去の取り組みの上に
成り立っているわけです。
、、、そしてそれは、
「研究の世界」でも同じようです。
論文検索ができる
「Google Scholar」のトップページには、
”Stand on the Shoulers of Giants"
(巨人の方に乗れ)
とありますが、
過去様々な研究を、
その人生をかけて行ってきた知見が
論文として誰もがわかるように残されており、
過去から今、今から未来へと
続く人が更に発展させ、
役に立てていくことへの願いが
その一文に託されているようにも思えます。
■、、、、と、
なんだか壮大な話のような
表現になってしまいましたが、
そんなことを思わせてくれる
論文に出会いました、、、
ということがいいたかっただけです。
(はい、ようやく
今日の本題に入ってまいります)
■何の話かというと、
先日ご紹介した論文、
『職務資源、組織的・個人的強みの活用、
ワーク・エンゲージメントの構造モデル』
Botha, Cheri, and Karina Mostert.(2014).
では、
南アフリカの401名の従業員に対して、
強みの活用のワーク・エンゲージメントの影響を調べて
”影響があることがわかった”
としたお話をしました。
これは、個人的には
とても素晴らしい論文だと思っており、
これと出会いたかった!と思う者の一つでした。
、、、しかし、この論文も、
あらゆる先人の肩から
当然ながら成り立っています。
その一つが、
従属変数(成果変数)として設定した
とても有名なエンゲージメントの尺度、
「ワーク・エンゲージメント」や
(ユトレヒト・ワークエンゲージメント尺度)
「職務資源」「知覚された組織支援」などの
理論やモデルらです。
■そして、この論文の独自性を
形作っている大きな尺度の一つが
「強みの活用度合い」との関連を調べるための
『強みの活用に対する組織的支援の認識』
(Perceived Organizatinal Support for Strength Use=POSSU)
という8項目の尺度の利用でした。
この「POSSU」と「ワーク・エンゲージメント」の
相関を見ることで、
”強みの活用はワーク・エンゲージメントに影響あり”
という結論に至っている、
というのが先日の論文の話です。
■ちなみに、この論文は
「2014年」
に発表されています。
しかし、その前年の2013年に
同じく南アフリカの銀行業界を調べた論文で
こんなものが発表されていました。
それが
『強み活用に対する組織的支援の認識:
銀行業界における新しい尺度の要因妥当性と信頼性』
原題
Keenan, Elzette M., and Karina Mostert.(2013).
”Perceived Organizational Support for Strengths Use: The Factorial Validity and Reliability of a New Scale in the Banking Industry.”
SA Journal of Industrial Psychology
という論文です。
■そう、タイトルを見て頂くとわかりますが、
『強み活用に対する組織的支援の認識』
(Perceived Organizational Support for Strengths Use)
の尺度の元ネタと思われます。
内容は、
”新しいPOSSU尺度の妥当性と信頼性を明らかにし、
POSSUが独立した職務資源であるかを確立すること”
を目的としてなされた研究です。
■本論文の内容は、
以下のような話です。
簡単に概要をまとめます。
(やや専門的なので、さらさらっと、
雰囲気だけ見ていただければと思います)
(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
<論文まとめ『強み活用に対する組織的支援の認識:
銀行業界における新しい尺度の要因妥当性と信頼性』>
◯はじめに:
「強み活用に対する組織的支援の認識尺度(POSSU)」は、
従業員が自分の強みを職場で活用することを
組織がどの程度支援していると認識しているかを判定する尺度である。
◯研究目的:
POSSU尺度の妥当性と信頼性を明らかにすることを目的とした。
◯研究の動機:
個人の強みを特定し説明することを目的とした機器や研究はある。
しかし、従業員が職場で自分の強みが組織で活用されていると
認識しているかどうかを測定する手段はない。
◯研究デザイン・アプローチ:
著者らは、銀行部門で働く従業員(N=165)の利用可能サンプルを用い、横断的フィールド調査を行った。
探索的因子分析を用いて要因妥当性を検証し、POSSUが独立した職務資源であるかどうかを確立した。
回帰分析を行い、POSSUが結果の有意な予測因子であるかどうかを検証した。
◯主な結果:
その結果、強い項目負荷(α=0.97)を持つ明確な1因子モデルが示された。
他の資源を含めると5因子モデル(POSSU/上司のサポート/自律性/情報/職場への参加)となり、
すべての項目が想定される因子に負荷された。
POSSUは、職務資源と欠乏に基づくアプローチを統制した後、
バーンアウトとエンゲージメントの有意な予測因子であった
※「強み活用に対する組織的支援の認識」尺度(8項目)
1,この組織は私の強みを活かしてくれる
2,この組織は、私の長所に最も適した方法で仕事をすることを可能にしてくれる。
3,この組織は、私が得意とすることをする機会を与えてくれる
4,この組織は私の才能を発揮させてくれる
5,この組織は、私の強みが私の職務に合致していることを保証する。
6,この組織は私の才能を最大限に生かしてくれる
7,この組織は私の長所を生かしている
8,この組織は、私が得意とすることに焦点を当てている
◯実践的/管理的意義:
有効で信頼性の高いPOSSU尺度は、組織における従業員の強みの活用に関する認識を高め、
その影響力と価値を判断するのに役立つ可能性がある
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)
とのこと。
■つまり、この論文では
「”強み活用の組織からの支援の認識”を
測るために役立つ質問は、本当に妥当なのか?」
(他の職務資源の尺度(上司のサポートなど)と、かぶったりしてない??)
を調査し、ツールとしての
信頼度を高めたわけです。
そうすることで、
「なんとなく作った質問票」
ではなく、
信頼に値する質問票になります。
それは今後の研究において、
組織の文脈において、
”強みの活用と成果のつながりを
より明確にするために役立つ”
と未来に繋がっていくものになります。
■そして、お伝えしたように
このPOSSUの尺度は
先日ご紹介した論文、
「強みの活用の
ワーク・エンゲージメントへの影響」
で活用され、また新たな研究結果を
生み出すことへと繋がりました。
■、、、と、
最初の鬼滅の刃から
だいぶ話が飛躍して戻ってきましたが
先人が積み上げてくれた知見が
”繋がれていく”ことに
小さな驚きと感謝が芽生えた論文でした。
(と感じるのは、私だけかもですが)
こうして、また一つの知見を得て、
実際の現場でも活用していく。。。
日本でもこうした調査が
実証研究として形にできたら、
「強みの活用」と「組織の成果」が
日本の文脈でも見える化できたら、
今の日本の組織づくりのアプローチにも
より説得力がある、新たな視点が加わるのだろう、
そんなことを感じます。
私もこうした知見を活用しながら、
役立っていきたいものだ、、、
先日見た「鬼滅の刃」(刀鍛冶編 最終回)と
重ねながら、そんなことを感じた次第です。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
本日も皆さまにとって、素晴らしい1日となりますように。
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<本日の名言>
効果だと?影響だと?役に立つかだと?
人間は自分のなすべきことをなせばよいのだ。
仕事の成果は、自分以外の人が気にかけることだ。
トーマス・カーライル
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