「ストレングス・スポッティング」ってなんだ? ー強みを見極める能力を測る方法ー
(本日のお話 3254字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は1件のコーチング。
その他、2件のアポイント。
また現在進めている長期プロジェクトの企画など。
*
さて、本日のお話です。
本日も引き続き
「強み」のお話をお届けできればと思います。
(一体いつまで続くのか、、、
はい、私もわかりません笑。)
今日のお話は
「強みを見極める能力」
がテーマでございます。
これまた、なかなか面白い内容でございました。
それでは早速参りましょう!
タイトルは
【「ストレングス・スポッティング」ってなんだ? ー強みを見極める能力を測る方法ー】
それでは、どうぞ。
■「久しぶりに会った同僚の
”強み”を見つけろ、と言われても難しい」
少し前にとある企業様で行わせていただいた
ストレングス・ファインダーの研修の
参加者からのご感想。
(ちょっとドキっとしました(汗))
一方、別の参加者からは
「強みをお互いに承認することで
自分に自信が得られた。
職場でもやりたいです!」
というコメントもありました。
(ほっとするのは、
こちらのコメントのほうが
圧倒的多数であったことでしょうか)
さて、
どちらのコメントも
その方にとっての感じたこと。
ゆえに、その方にとっての真実です。
ゆえに、
前者が悪くて、後者が良い!
とかそういうことは
特に思いません。
(ちょっとドキッとしましたけど。←しつこい)
■この時に私が興味深く思ったのが
”どちらも同じ時間、
同じ研修を受けた上での感想である”
ということです。
当たり前の話ではありますが
「強みに着目しよう」
と同じテーマをお渡ししても
そのお題に対して
「肯定的」にとらえる傾向がある人と
「否定的」にとらえる傾向がある人
が、わかれるものです。
それには、性格や価値観、
組織文化、あるいは年齢によって
影響があると思われます。
■なんとなく
「強みに対してのスタンス」も違いがある、、、
でも具体的にそれがなにかは
よくわからないぞ、、、?
そこで今日のお話に繋がるのですが、
ある論文において、
1)「強みを見極める能力」を測る尺度の開発
(ストレングス・スポッティング尺度)
2)「他の特性(性格や知識)」との相関を調査
したという研究がございました。
論文のタイトルは
『コーチングにおける強み発見(ストレングス・スポッティング):
概念化とストレングス・スポッティング尺度の開発』
原題:
Linley, P. Alex, Nicky Garcea, Jonathan Hill, Gurpal Minhas, Emma Trenier, and Janet Willars.(2010).
”Strengthspotting in Coaching: Conceptualisation and Development of the Strengthspotting Scale.”
International Coaching Psychology Review 5 (2): 165–76.
というものです。
これが、なかなか面白く、
なるほどなあ、、と納得させられました。
■まず、
「ストレングス・スポッティング」ってなんぞや?
というお話ですが、
その定義は、
「自分自身や他者の強みを見極めること」
(Linley et al. 2010b)
とされています。
そして、心理療法やコーチングにおいて
重要なスキルである、とされています。
コーチングも上司に
必要なスキルとも言われるようになっているので、
ある意味、「強みを見極めるのも」上司の部下育成の能力の一つ、
と捉えることもできそうです。
ドラッカーも「強みを着目せよ」と言っていますし。
■では
「強みを見極める能力」とは、
具体的にどのようなものを指すのか?
このことについて、
強みの専門家6名が、
1)「強みを見極める能力」を測る尺度の開発
(ストレングス・スポッティング尺度)
をし、検証をして、
実際に使えるようにしました。
具体的にどんな項目なのでしょうか。
早速見てみたいと思います。
(ここから)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【「強みを見極める能力(ストレングス・スポッティング)」の尺度】
<能力(Ability):人の強みを見つけるのが得意か>
・私は、人の長所を簡単に見極めることができる。
・私は、人の長所を見つけるのが得意だ。
・私にとって、人の長所を見つけるのは簡単だ。
・私は、人の長所を見つける能力がある。
<感情(Emotion):ストレングス・スポッティングに対する感情的な反応>
・人の長所を見つけると、本当にうれしい。
・人の長所に気がつくと、とても気分がいい。
・人の強みを見つける手助けをすることで、深い充実感を得ることができる。
・人の強みを見つけると幸せな気分になる
<頻度(Frequency):ストレングス・スポッティングを実践する頻度>
・私は、いつも人の強みに気づいている。
・私は、どこにいても、何をしていても、人の長所に気づく。
・私は、いつも人の長所について話していることに気づく。
・私は、さまざまな場面で、人の強みを見つけ出している自分に気づく。
<動機(Motivation):他者の強みを特定する意欲が、どの程度あるか>
・他人の長所に目を向けるべきだと思う
・私にとって、人の長所や得意なことに注目することはとても重要だ。
・私には、他人の長所を見つけ、伸ばす責任があると思う。
・私にとって、人々が自分の強みを理解するのを助けることは、非常に重要なことだ
<適用(Application):実際に誰かの強みを特定したときに、何をするか>
・私は、この1カ月間、友人や同僚に、新しい仕事で自分の強みを試してみることを提案した。
・私は、強みの活用や開発について、頻繁に人に提案している
・私は。いつもどの仕事に誰が最適か、その理由は何かを知っているようだ。
・私は、私の強みの洞察は、その人が最高の仕事をするのに役立つので、みんなに感謝される
※Linley, P. Alex, Nicky Garcea, Jonathan Hill, Gurpal Minhas, Emma Trenier, and Janet Willars.(2010).
”Strengthspotting in Coaching: Conceptualisation and Development of the Strengthspotting Scale.”
より引用し、著者にて翻訳
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(ここまで)
とのこと。
■なるほど。
「強みを見極める能力」を
・能力
・感情
・頻度
・動機
・適用
などの枠組みで測定すると
人により違いが明らかになりそうです。
はい、イメージがわきます。
例えば、
「強みに基づいた組織風土を作ろう」としたら
こうした尺度を用いて、
全体スコアが上昇していくような目標を立て、
トレーニングする、
というように使うことができそうです。
■一方、論文の2つ目のテーマにも
関連するのですが、気になることがあります。
それは、
「じゃあ、この
ストレングス・スポッティングのスコア、
どうすれば上がるのさ?」
という話。
残念ながら、この鍛え方については
この論文では具体的に記述がないのですが、
そのヒントとなる調査は
実施されていました。
それが
2)「他の特性(性格や知識)」との相関を調査
です。
結論を申し上げると、
”「強みを見極める能力」と
正の有意な相関がある要素(性格特性や知識)”
として、以下の5つが挙げられました。
(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
<「強みを見極める能力」と正の相関がある要素>
・「外向性」
・「協調性」
・「楽観性」
・「ポジティブ感情」
・「強みの知識」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)
また、若干ではありますが、
・年齢(年齢が高いほど強みを見極める能力が高い)
という傾向もありました。
■なるほど、これまた興味深い結果です。
わかったことは、
「強みを見極める能力」は
ビックファイブなどに含まれる
”性格特性”が影響している、こと。
ゆえに、これを大きく変えるのは、
正直、なかなか難しそうです。
、、、ただ、希望が持てるのが
ストレングス・スポッティングに相関するものに、
『「強みの知識」が含まれている』
ことです。
「強みの知識」とは
「自分の強みをどれくらい知っているか」などで
構成される8項目の尺度(Govindji and Linley, 2007)で
測定することができます。
そして「強みの知識」は
ストレングス・スポッティングの
「能力、感情、動機、頻度」の4尺度に
と正の相関がある、、、
という結果になっています。
■「強み」について、
まず、自分自身の理解も深めること。
(強みの知識を増やす)
すると、
自分にも、他者に対しても、
強みを見極める能力が高まる。
(ストレングス・スポッティングの向上)
こうしたことも、
期待ができるのかもしれません。
ゆえに、「強みにも基づいた文化づくり」を
目指すのであれば
”まず立場が上の人から
自分自身の強みを理解していく”
ことが大切なのだろうな、
そんな事を考えさせられた研究でございました。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
本日も皆さまにとって、素晴らしい1日となりますように。
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<本日の名言>
人が何かを成し遂げるのは、強みによってのみである。
弱みはいくら強化しても平凡になることさえ疑わしい。
強みに集中し、卓越した成果をあげよ。
P.F.ドラッカー
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