「アカデミック・プラクティショナー」に憧れた日。 ~『人材開発・組織開発コンサルティング』/第二章 人と組織の課題解決を読んで~
(本日のお話 4344字/読了時間5分)
■おはようございます。紀藤です。
引き続き、宮崎に来ております。
おじいちゃんのお見舞いなど。
*
さて、本日のお話です。
今日も引き続き、
人材開発・組織開発の「日本初の教科書」である
『人材開発・組織開発コンサルティング 人と組織の「課題解決」入門』
(中原淳/著)
を題材に、まとめと感想を
記述していきたいと思います。
本日は”第二章 人と組織の課題解決”です。
それでは早速まいりましょう!
タイトルは
【「アカデミック・プラクティショナー」に憧れた日。
~『人材開発・組織開発コンサルティング』
第二章 人と組織の課題解決を読んで~】
それでは、どうぞ。
■2020年の秋。
立教大学大学院 経営学研究科
リーダーシップ開発コースの説明会に参加した際に
『アカデミック・プラクティショナー』
という言葉を初めて聞きました。
聞いた率直な感想は
横文字でなんかカッコいい!でした
(頭悪そう・・・笑)
その時の説明では
「アカデミック・プラクティショナー」とは
”片手に「科学知」、片手に「臨床知」を持って
現場の課題解決に向き合うことができる人物”
そんな表現をされていたように思います。
しかし、
人と組織づくりに関する「科学知」なんて
何があるのか全く知りませんでしたし、
どう勉強すればいいかわかりませんでした。
■とはいえ、当時も私は
クライアント企業の課題を考えて
提案をしている仕事をしていました。
そこでは
ビジネスパーソンとして
人に納得してもらえるような、
・As is(現状の姿)
↓
・To be(ありたい姿)
を、いろいろと考え
企画書に落とし込み、
問題を列挙して対応する解決策を提示する、
などは行ってはいました。
、、、しかし、
その問題の捉え方や解決策について
「科学知(理論)」などを活かしていたか、
というと、そうは思えません。
また、問題や課題を紐解く解像度も、
”主観のみ”に依存しており
いまよりももっともっと荒かった、
と言わざるを得ません。
■しかし、そんな私のように、
”「現状の姿」と「ありたい姿」を書き出して、
「課題解決」をいくつか書いてみる」
という基本フレームだけで
課題解決に向き合いつつ、
そこから先に、どのように
人と組織の課題を深掘りすればよいかわからない、、、
そんな人事の方やコンサルタントの方も、
決して少なくないのでは
、、、とも思うのです。
(私もまだまだ勉強中で
偉そうなことは全く言えませんが)
■さて、そんな前置きの上で
本書の
「第二章 人と組織の課題解決」
についてお伝えしたいと思います。
本章ではいわゆる
”課題解決”というよく使われる言葉
同時に、その深い意味を
海賊度高く理解できていないであろう言葉の意味を、
丁寧に紐解いていきます。
そして、特に
「人と組織における課題解決」
について、どのように考えればよいのか?という
思考の補助線を明確に示してくれます。
変わりやすい「人」、
掴みどころがない「人」、
常に変わっていく「組織」。
ぐにょぐにょ、うねうねする
人と組織の課題に対して
”我々が実現しうる説得力があり、
妥当な「課題解決」のお作法”
とは一体どのようなものなのかを、
「科学知」と「臨床知」
というキーワードから、
道筋を示してくれている章となります。
■、、、ということで、
早速本章について
ポイントをまとめてみたいと思います。
以下、著書の言葉をおかりしつつ、
一部抜粋しながら、記載しております。
(ここから)
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【第2章 人と組織の課題解決 のまとめ】
<1,そもそも課題解決とは何か?>
◯課題解決の基本的な考え方
・課題解決の基盤は「現状(As is)」「理想(To be)」、
そのギャップである「問題(Problem)」である。
そして、そのギャップを埋めるためのいくつかの要因が「課題」である。
・まず課題解決において取り組むべきことは、
この「課題」を思いつく限り全て挙げ、並べることである。
次に、この課題に対して、
どのような「解決策」が考えられるかを検討する。
(いわゆるMECEに考える)
・何を「課題と「解決策を決める上でのポイントは、
1,実現可能性
2,コスト・投資・時間
3,期待できる効果 である。
一定の労力・コストで最大限のインパクトを期待できるものを選ぶこと。
◯実世界における課題解決
・しかし、実世界では「現状(As is)」「理想(To be)」も
常に変わりうるものである。
・また、人と組織に関わる問題は、つかみどころなく、
”現状と理想がそもそも見えない”という
定義がしづらい「不良定義問題」場合が多い。
・この中で”課題と解決策を「仮決め」して実行していく”。
これが実世界の課題解決のイメージである
*
<2,人と組織のコンサルティング>
◯クライアントのための課題解決
・そのように「課題」も「解決策」も移ろいやすく
定義がしづらい中で、とても重要なことが
「クライアントのための課題解決」であることだ。
・コンサルタントが一方的に考え、行うものではなく
課題を持つクライアントに”寄り添い”、
クライアントと”ともに”課題解決を行う。
そしてクライアントが”自ら解決できるよう支援”する。
・「(クライアントという)宛先」のないラブレターは
意味を持たない。
◯科学的な知見は「魔法の杖」ではない
・人材開発・組織開発コンサルティングとは
「人と組織にまつわる科学知・臨床知」を有するコンサルタントが
専門性を発揮し、クライアントの課題を解決することである。
・しかし、「科学知」の信頼性はどれほどあるのか?
「科学知」とは、以下の特徴を持つ。
1,客観性(主観ではない)
2,論理主義(現象を言葉によって表現し、説明する)
3,普遍主義(基本的に他の場所に適用可能)
・、、、ただし、ここに落とし穴がある。
「人材開発・組織開発では科学知では対応でいない部分が多分にある」ことだ。
その理由の一端は、こうした研究の多くが米国で行われていること。
研究対象者は、米国のMBAの学生だったり、軍人であることも多い。
そこで得られた原理・原則が日本企業でそのまま当てはまるかと言うと、
ある程度は利用可能かもしれない。しかし当てはまらない事も出てくる。
・すなわち、「人・組織の領域では、原理・原則を得られても、
その精度はあまり高くない(よくて3割くらい)」と言える。
・科学知で説明できる、この3割を
良いと思うか、大したことがないと思うか。これは人によるだろう。
ただ著者は「科学知が3割手助けをしてくれるなら、
おそらく課題解決において派手ゴケは避けられるはず」と考える。
◯「科学知」と「臨床知」を組み合わせる
・上記のように科学知には限界がある。
全てが科学で説明がつかない状況で、
「私たちが何に、どのように向き合うか」は
クライアントとコンサルタントが考えるしかない。
・そこで必要なのが「臨床の知」である。
臨床知は以下の3つの特徴を持つ。
1,シンボリズム(立場によって様々な意味を持つ)
2,コスモロジー(世界のあらゆる場は固有の場でそれぞれ違う)
3,パフォーマンス(わたしが、自ら能動的に環境に働きかけ、行動を行う「知」である)
・つまり、色々な「わたし」がいる「固有の場」で、
それぞれ固有の意味や環境、出会いを通じて、
”その場”にフィットする科学知の助けを借りながら、
”その場”にフィットする実践を私が組み上げることが、臨床の知である。
・科学知に忠実に行ったとしても、
経営状況、経営者の考え方、管理者の状況、職場の状況、
メンバーの思い、様々なものが影響するため、原理・原則どおりにはいかない。
科学で解決できるのが「3割」であるならば
残りの「7割」がコンサルタントの手と足でクライアントに関わり、
探索をしていくしかない。
◯アカデミック・プラクティショナーというあり方
・人と組織に関するアカデミックな「科学知」を持ちながら
実践的な「臨床知」を発揮し、
経営と現場にインパクトを与えることができる「アカデミック・プラクティショナー」である。
・アカデミック・プラクティショナーは、
野生を生き抜くために、「科学知」を片手に持ち、先人の肩の上から現場を見つめる。
同時に「ひとりの人間」として現場の人々と向き合い、語り合い、関わることである。
・必要なのは、「科学知」と「臨床知」を共に抱きしめること。
現場の人々と、「ともにいる覚悟」である。
※参考・引用:
『人材開発・組織開発コンサルティング 人と組織の「課題解決」入門』(中原淳/著)
P48~P73
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(ここまで)
■いやはや、、、
なんだかまとめながら
勝手に感動してしまいました。
そして、私事ながら
この大学院で学べたことも、
本当に良かったな、と噛み締めてしまいました。
(はい、独り言です)
■なにかの授業で中原先生が、
「科学知はよくて3割くらいの説明力である。
だって、人の心ってわからないじゃないですか」
と言っていた記憶があります。
自然科学など
物理的な世界を研究するものでは
それは99%くらいの再現性が求められるそう。
でも、人文科学
すなわち、社会学や心理学、人間の経験など
主観的な現象を科学しようとする場合、
よくて30%くらいである、
というのはなんだか納得できます。
そもそも「科学」は
検証可能なものを扱いますが、
多次元宇宙や、人の心など、
完全に科学で説明がつかないことも
ままあることが実際ですし、
そうした領域に「科学」が
貢献できることは一部なのかもしれません。
しかし、
「科学知」の限界を認めつつも
「科学知」として先人の知見から
最大限に学ぶという知性を持ちつつ、
科学地を抱きしめながら、
それらを武器として活用する。
■その上で、非合理な7割、
説明がつかない「臨床」については
主役は「実際の現場」であり
課題は「クライアント」にあることを
”現場とともにいる覚悟”
を持ちつつ、
専門家として向き合うこと。
そうした
「科学知」と「臨床知」の融合こそが
人と組織という定義が難しい問題を支援する
「アカデミックプラクティショナー」である。
このことに改めて、
そうありたいという思いを新たにすると共に、
当時、その言葉になんとなくのカッコよさと
憧れを感じた説明会のあの時を思い出した章でもありました。
そして改めて、
立教大学大学院 経営学研究科リーダーシップ開発コース(LDC)、
素晴らしい大学院だな、としみじみ思った章でした(笑)
(本当に、おすすめです)
ということで、また明日、
”第3章 人材開発の理論と実践”
へと続けたいと思います
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の名言>
たとえ自分ではどんなに気に入っている仮説でも、
それに反する事実が明らかになれば、すぐにその仮説を捨てられるよう、
常に心を自由にしておく努力を重ねてきた。
チャールズ・ダーウィン(イギリスの自然学者)
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