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3441号 2023年7月26日

「アカデミック・プラクティショナー」に憧れた日。 ~『人材開発・組織開発コンサルティング』/第二章 人と組織の課題解決を読んで~

(本日のお話 4344字/読了時間5分)

■おはようございます。紀藤です。

引き続き、宮崎に来ております。
おじいちゃんのお見舞いなど。



さて、本日のお話です。

今日も引き続き、
人材開発・組織開発の「日本初の教科書」である

『人材開発・組織開発コンサルティング 人と組織の「課題解決」入門』
(中原淳/著)


を題材に、まとめと感想を
記述していきたいと思います。

本日は”第二章 人と組織の課題解決”です。
それでは早速まいりましょう!

タイトルは

【「アカデミック・プラクティショナー」に憧れた日。

~『人材開発・組織開発コンサルティング』
第二章 人と組織の課題解決を読んで~】

それでは、どうぞ。

■2020年の秋。

立教大学大学院 経営学研究科
リーダーシップ開発コースの説明会に参加した際に

『アカデミック・プラクティショナー』

という言葉を初めて聞きました。

聞いた率直な感想は
横文字でなんかカッコいい!でした
(頭悪そう・・・笑)

その時の説明では
「アカデミック・プラクティショナー」とは

”片手に「科学知」、片手に「臨床知」を持って
現場の課題解決に向き合うことができる人物”

そんな表現をされていたように思います。

しかし、

人と組織づくりに関する「科学知」なんて
何があるのか全く知りませんでしたし、
どう勉強すればいいかわかりませんでした。

■とはいえ、当時も私は

クライアント企業の課題を考えて
提案をしている仕事をしていました。

そこでは
ビジネスパーソンとして
人に納得してもらえるような、

・As is(現状の姿)

・To be(ありたい姿)

を、いろいろと考え
企画書に落とし込み、
問題を列挙して対応する解決策を提示する、

などは行ってはいました。

、、、しかし、

その問題の捉え方や解決策について
「科学知(理論)」などを活かしていたか、
というと、そうは思えません。

また、問題や課題を紐解く解像度も、
”主観のみ”に依存しており
いまよりももっともっと荒かった、

と言わざるを得ません。

■しかし、そんな私のように、

”「現状の姿」と「ありたい姿」を書き出して、
「課題解決」をいくつか書いてみる」

という基本フレームだけで
課題解決に向き合いつつ、

そこから先に、どのように
人と組織の課題を深掘りすればよいかわからない、、、

そんな人事の方やコンサルタントの方も、
決して少なくないのでは

、、、とも思うのです。

(私もまだまだ勉強中で
偉そうなことは全く言えませんが)

■さて、そんな前置きの上で

本書の

「第二章 人と組織の課題解決」

についてお伝えしたいと思います。

本章ではいわゆる

”課題解決”というよく使われる言葉

同時に、その深い意味を
海賊度高く理解できていないであろう言葉の意味を、

丁寧に紐解いていきます。

そして、特に

「人と組織における課題解決」

について、どのように考えればよいのか?という
思考の補助線を明確に示してくれます。

変わりやすい「人」、
掴みどころがない「人」、
常に変わっていく「組織」。

ぐにょぐにょ、うねうねする
人と組織の課題に対して

”我々が実現しうる説得力があり、
妥当な「課題解決」のお作法”

とは一体どのようなものなのかを、

「科学知」と「臨床知」

というキーワードから、
道筋を示してくれている章となります。

■、、、ということで、

早速本章について
ポイントをまとめてみたいと思います。

以下、著書の言葉をおかりしつつ、
一部抜粋しながら、記載しております。

(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【第2章 人と組織の課題解決 のまとめ】

<1,そもそも課題解決とは何か?>

◯課題解決の基本的な考え方

・課題解決の基盤は「現状(As is)」「理想(To be)」、
そのギャップである「問題(Problem)」である。
そして、そのギャップを埋めるためのいくつかの要因が「課題」である。

・まず課題解決において取り組むべきことは、
この「課題」を思いつく限り全て挙げ、並べることである。
次に、この課題に対して、
どのような「解決策」が考えられるかを検討する。
(いわゆるMECEに考える)

・何を「課題と「解決策を決める上でのポイントは、
1,実現可能性
2,コスト・投資・時間
3,期待できる効果 である。
一定の労力・コストで最大限のインパクトを期待できるものを選ぶこと。

◯実世界における課題解決

・しかし、実世界では「現状(As is)」「理想(To be)」も
常に変わりうるものである。

・また、人と組織に関わる問題は、つかみどころなく、
”現状と理想がそもそも見えない”という
定義がしづらい「不良定義問題」場合が多い。

・この中で”課題と解決策を「仮決め」して実行していく”。
これが実世界の課題解決のイメージである



<2,人と組織のコンサルティング>

◯クライアントのための課題解決

・そのように「課題」も「解決策」も移ろいやすく
定義がしづらい中で、とても重要なことが
「クライアントのための課題解決」であることだ。

・コンサルタントが一方的に考え、行うものではなく
課題を持つクライアントに”寄り添い”、
クライアントと”ともに”課題解決を行う。
そしてクライアントが”自ら解決できるよう支援”する。

・「(クライアントという)宛先」のないラブレターは
意味を持たない。

◯科学的な知見は「魔法の杖」ではない

・人材開発・組織開発コンサルティングとは
「人と組織にまつわる科学知・臨床知」を有するコンサルタントが
専門性を発揮し、クライアントの課題を解決することである。

・しかし、「科学知」の信頼性はどれほどあるのか?
「科学知」とは、以下の特徴を持つ。
1,客観性(主観ではない)
2,論理主義(現象を言葉によって表現し、説明する)
3,普遍主義(基本的に他の場所に適用可能)

・、、、ただし、ここに落とし穴がある。
「人材開発・組織開発では科学知では対応でいない部分が多分にある」ことだ。

その理由の一端は、こうした研究の多くが米国で行われていること。
研究対象者は、米国のMBAの学生だったり、軍人であることも多い。

そこで得られた原理・原則が日本企業でそのまま当てはまるかと言うと、
ある程度は利用可能かもしれない。しかし当てはまらない事も出てくる。

・すなわち、「人・組織の領域では、原理・原則を得られても、
その精度はあまり高くない(よくて3割くらい)」と言える。

・科学知で説明できる、この3割を
良いと思うか、大したことがないと思うか。これは人によるだろう。

ただ著者は「科学知が3割手助けをしてくれるなら、
おそらく課題解決において派手ゴケは避けられるはず」と考える。

◯「科学知」と「臨床知」を組み合わせる

・上記のように科学知には限界がある。
全てが科学で説明がつかない状況で、
「私たちが何に、どのように向き合うか」は
クライアントとコンサルタントが考えるしかない。

・そこで必要なのが「臨床の知」である。
臨床知は以下の3つの特徴を持つ。
1,シンボリズム(立場によって様々な意味を持つ)
2,コスモロジー(世界のあらゆる場は固有の場でそれぞれ違う)
3,パフォーマンス(わたしが、自ら能動的に環境に働きかけ、行動を行う「知」である)

・つまり、色々な「わたし」がいる「固有の場」で、
それぞれ固有の意味や環境、出会いを通じて、
”その場”にフィットする科学知の助けを借りながら、
”その場”にフィットする実践を私が組み上げることが、臨床の知である。

・科学知に忠実に行ったとしても、
経営状況、経営者の考え方、管理者の状況、職場の状況、
メンバーの思い、様々なものが影響するため、原理・原則どおりにはいかない。

科学で解決できるのが「3割」であるならば
残りの「7割」がコンサルタントの手と足でクライアントに関わり、
探索をしていくしかない。

◯アカデミック・プラクティショナーというあり方

・人と組織に関するアカデミックな「科学知」を持ちながら
実践的な「臨床知」を発揮し、
経営と現場にインパクトを与えることができる「アカデミック・プラクティショナー」である。

・アカデミック・プラクティショナーは、
野生を生き抜くために、「科学知」を片手に持ち、先人の肩の上から現場を見つめる。
同時に「ひとりの人間」として現場の人々と向き合い、語り合い、関わることである。

・必要なのは、「科学知」と「臨床知」を共に抱きしめること。
現場の人々と、「ともにいる覚悟」である。

※参考・引用:
『人材開発・組織開発コンサルティング 人と組織の「課題解決」入門』(中原淳/著)
P48~P73
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)

■いやはや、、、

なんだかまとめながら
勝手に感動してしまいました。

そして、私事ながら
この大学院で学べたことも、
本当に良かったな、と噛み締めてしまいました。
(はい、独り言です)

■なにかの授業で中原先生が、

「科学知はよくて3割くらいの説明力である。
だって、人の心ってわからないじゃないですか」

と言っていた記憶があります。

自然科学など
物理的な世界を研究するものでは
それは99%くらいの再現性が求められるそう。

でも、人文科学
すなわち、社会学や心理学、人間の経験など
主観的な現象を科学しようとする場合、
よくて30%くらいである、

というのはなんだか納得できます。

そもそも「科学」は
検証可能なものを扱いますが、

多次元宇宙や、人の心など、
完全に科学で説明がつかないことも
ままあることが実際ですし、

そうした領域に「科学」が
貢献できることは一部なのかもしれません。

しかし、

「科学知」の限界を認めつつも

「科学知」として先人の知見から
最大限に学ぶという知性を持ちつつ、

科学地を抱きしめながら、
それらを武器として活用する。

■その上で、非合理な7割、
説明がつかない「臨床」については

主役は「実際の現場」であり
課題は「クライアント」にあることを

”現場とともにいる覚悟”

を持ちつつ、
専門家として向き合うこと。

そうした

「科学知」と「臨床知」の融合こそが
人と組織という定義が難しい問題を支援する
「アカデミックプラクティショナー」である。

このことに改めて、

そうありたいという思いを新たにすると共に、

当時、その言葉になんとなくのカッコよさと
憧れを感じた説明会のあの時を思い出した章でもありました。

そして改めて、
立教大学大学院 経営学研究科リーダーシップ開発コース(LDC)、
素晴らしい大学院だな、としみじみ思った章でした(笑)
(本当に、おすすめです)

ということで、また明日、

”第3章 人材開発の理論と実践”

へと続けたいと思います

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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<本日の名言>

たとえ自分ではどんなに気に入っている仮説でも、
それに反する事実が明らかになれば、すぐにその仮説を捨てられるよう、
常に心を自由にしておく努力を重ねてきた。

チャールズ・ダーウィン(イギリスの自然学者)
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