コンサルタントがクライアントと出会い、 そして、信頼関係を築くために抑えるべきポイントとは? ~『人材開発・組織開発コンサルティング』 第五章 人と組織の課題解決の7つのステップ(ステップ1 出会う)を読んで~
(本日のお話 6533字/読了時間8分)
■こんにちは。紀藤です。
引き続き、宮崎に来ております。
夏祭りシーズン、久しぶりの街の賑やかさで、
ちょっとだけ気持ちが高揚しております。
また昨日は終日、外部人事パートナーとして
関わらせて頂いている皆様へのコーチング&コンサルティングなど。
*
さて、本日のお話です。
今日も引き続き、
人材開発・組織開発の「日本初の教科書」である、
『人材開発・組織開発コンサルティング 人と組織の「課題解決」入門』
(中原淳/著)
を題材に、まとめと感想を
記述していきたいと思います。
本日は
”第5章 人と組織の課題解決の7つのステップ
(ステップ1 出会う)”
です。
それでは、早速まいりましょう!
タイトルは、
【コンサルタントがクライアントと出会い、
そして、信頼関係を築くために抑えるべきポイントとは?
~『人材開発・組織開発コンサルティング』
第5章 人と組織の課題解決の7つのステップ(ステップ1 出会う) を読んで~】
それでは、どうぞ。
■今から10年以上前のお話。
(今日も思い出話から・・・)
私(紀藤)が、
『7つの習慣』のフランクリン・コヴィー社で
コンサルタント(営業)を始めて2年目くらいの頃。
ある印象的な人事の方との出会いがありました。
手痛い記憶として、、、です。(汗)
■それは、会社が主催した
研修プログラムの説明会に人事の方が参加され、
後日フォローということで
アポイントをとった時の話でした。
「より詳しい情報提供や事例など、
ぜひご紹介させてください」
そんな内容をメールで送り、
日時を決めて、水天宮前の先方のオフィスに
訪問することになりました。
■先方のオフィスに訪問し、
入り口の受付コールを鳴らします。
名刺交換を済ませた後、
世間話的な会話を含めて
少し和やかな空気を作った上で、
いわゆる「ヒアリング」から入ろうと思いました。
研修プログラムのような
無形の商材の場合、
急に研修プログラムのことを
淡々と喋り始めたとしたら、
99%、その商談失敗するものです
「先方の人材課題・組織課題を聞き、
それらを解決できるイメージを持っていただける」
からこそ、商談は前に進むわけです。
無形で、成果物もイメージできない商材ですから
なおさら、そう。
ゆえに、アイスブレイクもそこそこに、
このように伝えました。
「、、、と簡単に
私どものことを紹介させていただきましたが、
できる限り貴社の状況にあったお役に立つ情報を
お渡しできればと思っております。
つきましては、貴社のご状況などお伺いできますでしょうか?」
すると、先方の人事の方は
口を固く結んで、このように返答されました。
「いえ、私からはお話しません。
あなたから情報をください。
そういうお話だったと思います」
■、、、!!
そのパターンは初めてだ、、、!
大いに焦りました。
その口ぶりからも、
完全に先方担当者は警戒モード、、、。
空気がじめついたように、
じっとりと重たくなり、
焦る心を押させられないまま
あれやこれやお話することになったのですが
当然ながら、全く刺さりません。
そして、アポイント終了(滝汗)
■、、、結局、
信頼関係も築けず、
ヒアリングもできず、
よって課題も見つからず、
その方とご縁が深まることは
ありませんでした。。。
という昔話。
■さて、
こんな思い出話をしてしまったのも、
今日ご紹介したいお話に関わるから、
でございます。
人材開発・組織開発については
その価値を届ける「クライアント」がいます。
そして、どのような形であれ
”クライアント出会う瞬間”
から、物語は始まるのです。
人材開発・組織開発は、
本書でも語られているように、
”クライアントとコンサルタントが
共に探求していく”
というスタンスが求められます。
どちらか片方だけではなく、
クライアントもコンサルタントも双方が影響し合いますが
「コンサルタントがクライアントに、
いかに信頼してもらうか」
は極めて重要な要素であることに
例外はありません。
■先の私の例でいえば、
(先方のご担当者がややこだわりが
強めであった可能性もゼロではないとはいえ)
私が出会った瞬間から
”色々と相談に乗ってもらいたい、
という信頼を獲得できなかった”
というのが一番の要因だと
振り返って思うのです。
■、、、では果たして、
私(紀藤)はどのように「出会い」、
そして信頼を気づくことができたのだろうか、、、?
このヒントがこれからご紹介する、
【第5章 人と組織の課題解決の7つのステップ
(ステップ1 出会う)】
に、非常にわかりやすく、
体系立ててまとめられており、感動いたしました。
、、、ということで、
前置きがだいぶ長くなりましたが
以下、本章のポイントをまとめてみます。
(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【第5章 人と組織の課題解決の7つのステップ】
<1,体系的かつ戦略的な課題解決プロセス>
1)「勘と経験と度胸(KKD)」からの脱却
・20年ほど前まで、人材開発も組織開発も、
今よりもずっと経験者の「KKD(勘・経験・度胸)」の支配する場当たり的なものであった。
・たとえば、「若手の文書作成能力が低いと事業部の長が言っているので、論理的思考力の研修を取り入れよう」というように。
2)人材開発・組織開発コンサルティングのプロセス
・ビジネスの場はカオス(混沌)である。
多くの人材課題・組織課題が日々生まれ、人材開発で解決できる課題、組織開発でき明都できる課題が渾然一体と混じり合い、複雑に絡み合っている。
そして、それは「どちらの課題なのか」も最初から認識できていない。
・本書では、多くの人に人材開発・組織開発の課題解決に取り組んでもらえるように、できる限り体系化し、形式知化していくことを目指している。
<2,7つのステップの全体像>
・1,出会う(プロジェクト開始、契約書締結の前からはじまる。「いかに出会うか」を学ぶ)
・2,合意をつくる(いかに信頼関係を取り結び、プロジェクトのキックオフを行っていくか」を学ぶ)
・3,データを集める(何を課題とするかが、課題解決の質を決める。組織内外を調べて、定性的/定量的なデータを収集・分析する)
・4,フィードバックをする(実際の課題解決に入る前に、コンサルタントが収集したデータを用いながら、クライアントに組織の現状を通知し、解決策を提案する。必要なメンバーを集めてフィードバックミーティングを開催する)
・5,実践する(組織の現状にあった施策を実施し、経営にインパクトを残す)
・6,評価する(やりっぱなしではなく、実践の持続可能性と質の向上を検討する)
・7,別れる(コンサルタントとクライアントはいつか別れなければならない運命を持つ。クライアントが独り立ちして、自ら独力で、実践/実務をう思考できる環境をつくること)
ーーーーーーーーー
【ステップ1 出会う】
<1、コンサルタントとクライアントの出会い>
1)内部コンサルタントと外部コンサルタント
[1]内部コンサルタントとは
・定義:「人材開発・組織開発の科学知・臨床知を活かして、自組織のメンバーに寄り添いながら、彼らが抱える人材課題・組織課題を解決できるように支援して行く人」のこと。
・例:人事部、経営企画などのスタッフ部門、また事業部に所属する事業部人事(HRBP)、自分のチームを良くしたいと思うリーダーや管理職など
・強み:「企業の内部に自らが存在している」こと。それによって、生々しい情報=「現場粘着性情報」を自らの五感や従業員へのヒアリングで収集できる。
また、組織の内部にいるため、自組織のメンバーの継続的なフォローを行える
・弱み:自組織を相対的に理解したり、客観的に把握することが難しい。また、社内の政治やしがらみに縛られることも。
[2]外部コンサルタントとは
・定義:内部コンサルタントとは対象的に「組織の外部に、自らの身体を置き、外部の専門家・プロフェッショナルの立場で、クライアントの組織内の課題解決を行う人」のこと
・例:人事コンサルタント、研修講師、人材開発コンサルタント、組織開発コンサルタントなど様々な呼称を持つ。
(免許や資格がないため、名乗ってしまえば明日から「コンサルタント」である。よってコンサルタントも玉石混交であるため注意が必要)
(ちなみに海外では、これらの人材開発・組織開発コンサルタントは主に大学院で修士号・博士号が持った人がつく専門職である。
日本ではこれまではこの領域にそうした学位は求められなかったが、今後はそれ相応の専門性を持つことが求められるであろう)
・強み:組織の外部にいるため、権力関係やしがらみからある程度は自由になれる。よって、率直にフィードバックができる、というメリットがある。
・弱み:組織内でしか得られない情報にアクセスすることができない。また研修・ワークショップ参加者の継続的な支援を行うことも難しい傾向がある
*
2)受動的な出会いと能動的な出会い
・受動的な出会い:
コンサルタントがクライアント、またはクライアントに繋がる人から「相談を持ちかけられる」パターン。
- 内部コンサルタントであれば、事業部のマネジャーや経営層などから相談を持ち帰られて「出会う」ケースが多い。
- 外部コンサルタントの場合、顧客からの紹介で「相談に乗ってほしい」と連絡が入って「出会う」という状況が多い
- クライアントがいなければコンサルティングは成立しないため、「一つひとつの仕事を、どれだけ丁寧に行い、貢献できたかどうか」がコンサルタントの将来を決める。
『仕事こそが「次の仕事」をつくる』。
・能動的な出会い:
自ら動いてクライアントに出会うパターン。
- 内部コンサルタントであれば、事業部の長に話を聞くなどして、人や組織の困り事がないかをヒアリングしていく中で、問題を抱えた職場や管理職に遭遇するといったケースが考えられる。
- 外部コンサルタントであれば、顧客に自身のことを知って貰う必要があるため、SNSなどの情報発信、セミナーや勉強会の開催、事例集の作成などで、自分をPRする必要があるだろう。
*
<2,信頼関係(ラポール)を形成する>
1)人材開発・組織開発は「形がなく、効果が見えにくい」
・様々な出会い方があるが、とくに初期は、コンサルタントとクライアントの間の「信頼をいかに形成するか」が極めて重要である。
・なぜならば、人材開発・組織開発が「物理的な形のない商品・サービス」だからである。加えて「効果がすぐに現れない(遅効性効果)」ものでもあるからだ。
・よって、クライアントの立場からすれば、形もなく、効果もどれほど得られるかわからないものに、お金や時間を投資しなくてはならない。
よって、コンサルタントに全幅の信頼を置いていない場合には、そもそも仕事は依頼されない。
・人材開発・組織開発コンサルティングとは、コンサルタントとクライアントが「ともにある」活動であり、「ともに成し遂げる」活動である。
よって、「信頼関係」が最も重要である。
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2)2種類の信頼とステータスマネジメント
・課題解決に資するために、どのように信頼関係(ラポール)を築けばよいのか。
・まず「信頼」とはなにか?を考える
- 学術的な「信頼」:不確実な状況下において、相手に対してポジティブな期待を持てることと、そこにリスクが生じないだろうと期待できること
-「認知的信頼」:有能さ・知識を基盤にした信頼。基盤になるのは、コンサルタントの専門性や経験、知識など。人並み以上の経験、専門家ならではの「ものの見方(視座)」を示すことが大事である。
「感情的信頼」:人間関係による信頼、という感情的な部分での信頼。相手に対する共感、共に成し遂げたいという意欲を持てるかどうかが基盤となる。誠実である事が何より大事。この人は「現場や自分たちの仕事に共感してくれるだろうか」「この人と一緒に仕事をしていくことは可能だろうか」という感情的信頼を獲得しなければ、優秀なコンサルタントでも現場の課題解決はできない。
- コンサルタントは、自分に対する「認知的信頼」を高め、他方で「感情的信頼」を獲得していくことが求められる。
・そのために必要なのが、『ステータスマネジメント』である。
-「ステータス」とは:「人々の間に存在する、社会的かつ相対的な上下関係」のこと。
- コンサルタントは、認知的信頼を獲得するために、専門家としての高いステータスを、相手に対して自己提示する必要に迫られる。
- 一方、コンサルタントは、クライアントと共に課題解決にあたる信頼できるパートナーとなるべく、ある場面では相手と比較して自らのステータスを低くして話したりもする。
-このように、コンサルタントは、ステータスを上下させながら(=ステータスマネジメントをしながら)、認知的信頼や感情的信頼を獲得していかなければならない。
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3)コンサルティングの3つのモード
・コンサルタントとクライアントが作り出す関係には、3つのモードがある。
[1]専門家モード
- 「コンサルタントがクライアントに対して、役立ちそうな専門的な知識や情報・サービスを一方的に提供する」というモード。
- 認知的信頼に重きが置かれている支援スタイル。ステータスの非対称性が特徴。ステータスは「コンサルタント>クライアント」といえる。
[2]医師ー患者モード
- 「コンサルタントが、専門知識や診断機器を備えた医師のように、あたかも患者であるクライアントを診察して診断名をつけ、処方箋を出す」ような支援のモードである
- 専門家と同じく、認知的信頼に重きが置かれている支援スタイル。ただし、昨今の医師は感情的な共感も求められる。
[3]プロセス・コンサルテーション・モード
- 「コンサルタントがクライアントの話に共感を示し、それらを傾聴していきながら、クライアントが自ら現状抱えている課題に気づき、それを定義し、変革に向けた行動を決めていくプロセスを支援する」モード。
- コンサルタントとクライアントのステータスの非対称性は最も少なくなる。このモードを確立するには、「感情的信頼」の確立がまず重要になる。
・エドガー・シャインは、プロセス・コンサルテーションを主張している。
その背景には「人にできるのは、人間システムが自らを助けようとするのを支援することだけだ」という考えがあるから。
*
4)ステータスのジレンマをマネージ(やりくり)する
・コンサルタントは、クライアントの前で「ステータスのジレンマ」に置かれることがよくある。
・ジレンマの本質は「コンサルタントが有している専門性」を求められる一方、同じくらいなとから「寄り添ってほしい」といわれるところにある。
この2つのメッセージを受け取り、ジレンマを生きることが求められる。
※参考・引用:
『人材開発・組織開発コンサルティング 人と組織の「課題解決」入門』(中原淳/著)
P163~P189
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)
■なるほど、、、。
大変、勉強になります。。。
冒頭の私の例を
本章に照らし合わせて考えるならば、
”外部コンサルタントとして
「能動的な出会い」において不足があった”
と言わざるを得ません。
特に、課題は
「認知的信頼」(自社のことをわざわざ語るに足る視点の提供ができなかった)、
「感情的信頼」(色々と相談に乗ってもらえそうという関係を気づけなかった)
という両面で
自分が未熟だったのだろうな、
とも振り返り思ったのでした。
その他でも、クライアントから
信頼が獲得できなかった手痛い事例が、
上記の体系立ての中でいくつも思い浮かんで胸が痛いです(汗)
■内部コンサルタントであれ
外部コンサルタントであれ、
人材開発・組織開発コンサルタントとして
課題解決に臨もうとする人は、
「クライアントと出会い、
信頼を獲得する」
ことが求められます。
そして、そのためには
人材開発・組織開発の領域において、専門知を獲得し、
勉強をし続けることが求められます。
同時に、共に伴走をしていく、
人として向き合っていくという誠実さが
求められるのだ、、、
そんな大事なことを
改めて考えさせられる章でした。
■ということで、次回は
「ステップ2 合意をつくる」
を紐解いて行きたいと思います。
改めて、ですが、
上記のまとめは本書の内容のごく一部です。
ぜひぜひ、本書をおすすめさせていただきたいと思います。
コラムも濃厚でとても勉強になります。
↓↓
『人材開発・組織開発コンサルティング 人と組織の「課題解決」入門』
(中原淳/著)
https://amzn.asia/d/0Mkjxwt
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の名言>
相互信頼と相互扶助にて、
偉大なる行為はなされ、偉大なる発見がなさる。
ホメロス – 紀元前8世紀末の詩人
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