見つけました…!「強みの活用とワークエンゲージメント」の関連を調査した論文
(本日のお話 2652字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は2件のアポイント。
その他、研修プログラムの開発・準備など。
また、夜は10kmのランニングでした。
*
さて、本日のお話です。
本日は「強みの活用とワークエンゲージメント」に関する、
非常に興味深い論文が見つかりましたので、
その内容について皆様にご共有させていただければと思います。
(個人的に、コレを探していた・・・!という
「大ヒット論文」でございます)
それでは早速まいりましょう!
タイトルは
【見つけました…!「強みの活用とワークエンゲージメント」の関連を調査した論文】
それではどうぞ。
■「強みの活用」に関する先行研究では
ポジティブ心理学の文脈で語られる事が多いです。
そのため、
・ウェルビーイング(幸福感)
・ストレス
・自尊心
などに影響を与えることは、
これまでの論文で明らかにされてきました。
一方、こと「組織行動」に関して
「強みの活用」がどのように作用するかについては、
まだまだ知見が少ないようです。
■その中で、今日ご紹介する論文、
『強みの活用とワークエンゲージメント:週間日記研究』
原題:
Woerkom, Marianne van, Wido Oerlemans, and Arnold B. Bakker.(2016).
”Strengths Use and Work Engagement: A Weekly Diary Study.”
European Journal of Work and Organizational Psychology 25 (3): 384–97.
では、
まさに組織行動において
パフォーマンスに影響を与える、
・ワークエンゲージメント
・プロアクティブ行動
・自己効力感
に対して、「強みの活用」が
どのような影響を与えるのかについて、
定量調査で切り込んでいった論文となります。
(ありそうで見つけられていない論文だったので
個人的に「キタコレ!」と思いました。笑)
■さて、ではどのような内容なのか?
以下、論文のポイントを
まとめてみたいと思います。
(ここから)
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【論文まとめ『強みの活用とワークエンゲージメント:週間日記研究』】
Woerkom, Marianne van, Wido Oerlemans, and Arnold B. Bakker(2016).
<論文の概要>
・本研究では、「強みの活用に対する組織の支援」が、
週ごとのワークエンゲージメントと、プロアクティブ行動に与える影響を調査した。
・研究参加者は65人の土木技術者である。この参加者に対して
-「強みの活用に対する組織の支援」に関する一般的な質問票と
- 連続5週間の仕事における「強みの活用」「自己効力感」「ワークエンゲージメント」「プロアクティブ行動」
に関する量的な日記形式の質問票を毎週記入した。
・分析の結果、以下のことがわかった。
- 週ごとの「強みの活用」は、週ごとの「自己効力感」を介して、
週ごとの「ワークエゲージメント」と「プロアクティブ行動」に正の相関があった。
・本研究の結果から、組織は従業員に得意なことを活用する機会を与えることで、
従業員が強みをより頻繁に活用できるように支援できる事を示した。
*
<仮説>
仮説1:週ごとの「強みの活用に対する組織の支援」は、週ごとの「強み活用」と正の相関がある
仮説2a:週ごとの「強みの活用」は、週ごとの「ワークエンゲージメント」と正の相関がある
仮説2b:週ごとの「強みの活用」は、週ごとの「ワークエンゲージメント」と正の相関があり、その相関は週ごとの「自己効力感」によって媒介される
仮説3:週ごとの「強みの活用」は、週ごとの「自己効力感」と「ワークエンゲージメント」を通じて、週ごとの「プラクティブ行動」に正の相関がある。
*
<調査方法>
◯研究の参加者
・オランダにおける、43の異なる組織(エンジニアリング会社、建築会社など)に勤務する65人の土木技術者
・研修対象者は手挙げ式で募った(リンクトイン経由)。
・サンプルの平均年齢は29歳。55.4%が高等教育を修了、44.6%が口頭専門教育を修了していた。
◯実施方法
・参加者は、毎週金曜日に送られる
「強みの活用」「自己効力感」「ワークエンゲージメント」「プロアクティブ行動」に関してアンケートを回答した。
・合計5週間で連続して回答を記録する。
そうすることで、週単位での個人の感情を正確、認識して報告できると考えた。
◯研究にした尺度
・「強み活用の支援」 8項目
(General strengths use support/Keenan and Mostert,2013)
・「週レベルの強みの活用」(新たに開発)4項目
・「職業的自己効力感」 3項目
(Occupational self-efficacy/Schyns and Von Collani,2002)
・「ワークエンゲージメント」 3項目
(ユトレヒトワークエンゲージメント/Schaufeli et al, 2006)
・「プロアクティブ行動」 3項目
(personal initiative scale /Frese et al.,1997)
◯分析方法
・マルチレベルモデリングアプローチを使用
(個人間効果と、個人内効果を分けて分析する方法)
*
<結果>
・仮説1~3のすべてが支持された。
*
<ディスカッション>
・仕事は強みを発揮する重要な機会を提供する一方で、職場でのその活用についての研究は限られている(Seligman, 2002)
これは、残念な現状である。
・しかし本研究で、強みの活用は技術活動の充足を超え、パフォーマンス要件を満たすのに寄与することがわかった。
また、組織の強み活用支援が週次の強み活用と正関係し、これが週次の自己効力感を介して、作業へのエンゲージメントと主体的行動と正関係していることを明らかにした。
・これまでのポジティブ心理学介入の効果について
「強みテストの実施」や「強みのフィードバック」「毎日異なる強みを用いる1週間の短期介入」が
強みの使用を刺激することを示唆しているが、これらの効果は時間とともに減少する可能性がある。
・しかし、「強み活用組織的支援の知覚(POS)」は長期的な効果を持つ可能性が示されている。
今後の研究では、職場での強み活用を指示する実験デザインの採用を試みるべきである。
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(ここまで)
とのこと。
■この論文で注目したい点は、
まさに<ディスカッション>で述べられていた
「強みの活用って、
会社にとってなんかいいことあるの?」
という点に、切り込んだところだと思います。
・強みのフィードバックや
・強みにフォーカスした面談(フィードフォワードインタビュー)
で信頼感が高まることは先行研究で示されていましたが
・「強みの活用」が、
個人の自己効力感やプロアクティブ行動、ワークエンゲージメントに
影響を与えると示したこと
・また短期的な施策だけではなく
「週ごとの”強みの活用に関する知覚された組織支援」があることが
ポイントであると示したことは、
「強みの活用」を短期的なイベントではなく
ポジティブフィードバックや1on1などの組織の文化に
組み込んでいくことが重要であると、
示唆する内容でもあると感じます。
■こうした研究が、
日本でももっと活用して、
どのような介入や取り組みが
”強み活用に関する知覚した組織支援”に
役立つのかを掘り下げることで
「強み」というものがもっと市民権を得ていくのではなかろうか、
そんな事を感じさせられた次第です。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の名言>
いくつかの芸を月並みにこなすより、
一芸に秀でるほうがよい。
コプリニウス
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