ポジティブ心理学の「ショットガン効果」~幸福度を高める3つのエクササイズ~
(本日のお話 3453字/読了時間5分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日はクリスマス・イブでしたね。
皆様はいかがお過ごしでしたでしょうか。
その他15キロのランニングの後、お腹をすかせてから
家族でケーキと焼肉(チキンではない)をいただいた週末でした。
(猛烈に太ってそうです汗)
そしてあっという間に年末。
季節が秒で過ぎ去ることを感じるこの頃です。
*
さて、本日のお話です。
今日も引き続き「強み論文」のご紹介です。
2005年のポジティブ心理学の比較的初期の論文です。
強みの活用や感謝など、5つのエクササイズを実施し、それが幸福度や抑うつにどのような影響を与えるのかを半年間に亘って調査をした、興味深い論文となっています。
ということで、早速見てまいりましょう!
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<今回の論文>
『ポジティブ心理学の進歩:介入の実証的検証』
Seligman, Martin E. P., Tracy A. Steen, Nansook Park, and Christopher Peterson. (2005). “Positive Psychology Progress: Empirical Validation of Interventions.” The American Psychologist 60 (5): 410–21.
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■30秒でわかる論文のポイント
・本論文は、ポジティブ心理学の有効性を検証するものである。具体的には、ポジティブ心理学の介入が、幸福度と抑うつにどのような影響を与えるのかを調べた。
・成人577名に対し5つのエクササイズを割り当てた。エクササイズの内容は、1)感謝の訪問、2)人生でよかったこと3つ、3)最高に輝いていた時の自分、4)強みを新たな方法で活用する、5)強みの特定である。
・そして各エクセサイズの実験群にて、介入前~介入6ヶ月後まで定期的に幸福度と抑うつの変化を調べた。その結果、3つの介入(上記1,2,4)が幸福度と抑うつに影響を与えることがわかった。
・なお、これらの介入は単発ではなく、複数を組み合わせる「ショットガン効果」を狙うことが有効だと思われる。
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■ポジティブ心理学が登場して5年目の話
「ポジティブ心理学」とは”人間の力強さや生きがい、最高の自己を引き出すための心の状態を研究する”ということで、2000年に生まれた新しい学問です。
それまでの心理学は、マイナスから元に戻す”治療”的な色合いが強かったところ、人間の可能性を追求しようということでセリグマン博士が提唱し、急速に市民権を得てきました。
そして、今回ご紹介の論文はその発足から5年経った2005年に、どのような進捗がポジティブ心理学の研究において見られたのかをまとめた論文になります。
それから時間も経っている今であれば、研究はもっと進んでいるでしょう。
しかし読んでみると、「なるほどなあ」と納得してしまう内容が多分に含まれており、また、今の研究へのバトンが渡されていると感じます。
では、どんなことがこの論文に書かれているのでしょうか。
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■本研究の内容
この論文では、インターネットで募集をした577名に対して行った実験と、その定量的な結果を示しています。具体的な内容としては、以下の通りです。
<調査概要>
◯調査する内容
1,「幸福度」
・スティーン幸福指数という新しい尺度(20項目)を開発
・3種類の幸福な生活(楽しい生活、夢中になれる生活、意義のある生活)を測定した。
2,「抑うつ度」
・CES-D症状調査(Radloff, 1977)を用いた
◯研究の参加者
・成人577名
(男性42%、女性58%。白人が77%、年齢は2/3(64%)が35~54歳。
学歴は39%が四年制大学の学位、27%が大学院の学位を持っていた。
参加者の約3/4が所得水準を「平均」以上であった))
ポジティブ心理学の5つのエクササイズの実践
そして上記の参加者を、6つのグループにわけました。プラセボ対照群(1グループ)+ポジティブ心理学介入の5つのエクササイズ(5グループ)にわけて、以下のエクササイズを行ったのでした。
<プラセボ対照群>
【初期の記憶】:参加者は、1週間毎晩、初期の記憶について書くよう求められた。
<実験群(介入群)>
【1,感謝の訪問】:参加者は1週間、親切にしてもらったが、きちんとお礼を伝えたことのない人に感謝の手紙を書き、直接届けることを行った。
【2,人生でよかったこと3つ】:参加者は1週間毎晩、毎日よかったこと3つとその原因を書き出すよう求められた。さらに、それぞれの良いことの原因説明も求められた。
【3, 最高に輝いていたときの自分】:参加者は、自分が最高に輝いていたときのことを書き、そのストーリーの中で示された個人の強みを振り返るよう求められた。参加者は、1週間毎日1回、自分のストーリーを見直し、そこで明らかになった自分の強みを振り返るように言われた。
【4,特徴的な強みを新たな方法で活用する】:ウェブサイトから自分の性格の強みの測定を入手し、上位5つの強み(「特徴的な強み」)について個別のフィードバックを受けるよう求められた。その後、1週間毎日、これらの強みのうち1つを新しい方法で使うよう求められた。
【5, 特徴的な強みの特定】:この練習は、先ほどの練習4を、短くしたもので、特徴的な強みを新しい方法で使うようにという指示はなかった。参加者はアンケートに答え、自分の最高の強みを5つ挙げ、次の1週間はその強みをより頻繁に使うよう指示された。
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■結果
では、上記のエクササイズを行った結果わかったこととは、一体どのようなことだったのでしょうか。
結論としては、「5つ中、3つのエクササイズが効果があった」となりました。以下まとめてみます。
・2つのエクササイズ(【人生でよかったこと3つ】【特徴的な強みを新たな方法で活用する】)は、6ヶ月間幸福感を高め、抑うつ症状を減少させた。
・1つのエクササイズ(【感謝の訪問】)は、1ヶ月間、大きく幸福感を高め、抑うつ症状の減少させた。
また、全体としてプラセボ対照群を含めて、「テスト直後」により幸福度が高く、より抑うつ度が低い傾向がありました。プラセボ対照群のワーク内容(初期の記憶を思い出す)も幸福度は一時的に高まりましたが、一週間後とそれ以降はベースラインに戻る結果となりました。
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■まとめ
◯継続してこそ意味がある
さて、この実験は後日談(?)があるようでした。実験では参加者に対して「指定されたことを1週間行うように」と伝えていました。しかし、6ヶ月の終了時に聞くわけです。「ほんとに1週間だけやりましたか?」と。
すると、自主的に継続している人も存在しており、データをとってみると、実践を継続することが幸福度スコアに優位な影響を表していたことがわかった、とのこと。つまり、続けていた参加者が最も幸福度が高かった、と言う結果になったそうです。
◯「ショットガン効果」を狙え
また、ポジティブ心理学に関わる先駆者たちは、複数のエクササイズを重ねて行う「ショットガン介入」によって幸福度が高まることを示しました。
今回のエクササイズは1グループ1エクササイズでしたが、これを複数重ねて実施すると、相乗効果によって、より効果を発揮することが期待できるだろう、としています。
たとえば、「感謝の訪問」などは、1ヶ月間の効果は非常に高いため、スターターとしてはよいかもしれないですし、6ヶ月間で徐々に高まっていく「人生のよいこと3つ」「特徴的な強みを新しい方法で活用する」などは、日々の習慣として組み込むとよいのかもしれません。
ということで、本日の研究は「ポジティブ心理学(強みの活用を含む)」の介入が、幸福度と抑うつに影響を与える、というお話でございました。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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