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3593号 2023年12月27日

職場の強み開発の介入プログラムの3ステップとその効果

(本日のお話 4321字/読了時間7分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は3件のアポイント。
また夜は前職の友人ご夫妻とのお食事会でした。

絶賛挑戦中の方のお話を聞くと、
自分もまだまだ頑張らねば!と刺激になりました。
(Dさん、Mさんありがとうございました)



本記事にお越しいただき、ありがとうございます。

また本日は「職場における強みに基づく介入プログラムの開発とその効果」について検証をした論文となります。

この論文の魅力は、”職場における強みの介入プログラムについて、詳しく説明されていること”です。読んでいただくと、「このプロセスは職場で使えそう!」という感覚を持っていただけるのではないかと思います。

ということで、早速みていきましょう。

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<今回の論文>
『ウェルビーイングとパフォーマンスの促進:職場における強みの開発を通して:介入プログラムの結果』
Dubreuil, Philippe, Jacques Forest, Nicolas Gillet, Claude Fernet, Anaïs Thibault-Landry, Laurence Crevier-Braud, and Sarah Girouard. (2016). “Facilitating Well-Being and Performance through the Development of Strengths at Work: Results from an Intervention Program.” International Journal of Applied Positive Psychology 1 (1): 1–19.
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■30秒でわかる本論文のポイント

・この研究では、職場における強み開発の介入プログラムを開発し、事前ー事後テストを用いて、その効果を評価するものである。
・強み開発の介入プログラムは、主要な3ステップ((1)発見、(2)統合、(3)行動)が構成された。
・この強み開発の介入プログラムをカナダ78名の成人に実施したところ、介入後、参加者の「強みの活用」と「幸福感」が増加した。
・また「強みの活用」が高まったと答えた参加者は「調和のとれた情熱」と「仕事のパフォーマンス」も高まった。

***

■強み開発の介入プログラムがよくわからない問題

強みのこれまでの研究で、その効果が示されてきました。最初はギャラップ社の『ストレングス・ファインダー』、次にセリグマン博士らの『VIAーIS』、そして応用ポジティブ心理学センター(CAPP)の『Strength Profile』などの主要な3学派が中心となり、強みの活用と幸福感の増加、抑うつの減少、エンゲージメントの向上などが明らかにされてきています。

しかし、本論文(2016年時点)にて、このような議題を投げかけています。

”職場におけて、強み開発の介入を提案し、テストしたものはわずかである。また、我々の知る限り、介入で使用したプロトコル(手順)を正確に記述したものは2つしかない”

なるほど・・・。強みが様々な効果があるのはわかったとして、「強み開発の介入プログラムの手順はどのようなものか?」また「その介入プログラムは効果を発揮するのか?」ここについて明らかにしようじゃあないか、ということですね。

***

■研究の全体像

では、具体的にどのようなことを行ったのでしょうか。

まず介入方法ですが、これまでの研究を調べたところ、強み開発の介入プログラムは、一般的に3つのステップ((1)発見、(2)統合、(3)行動)を踏んでいたため、これを踏まえてプログラムを構成しました。

◯目的と仮説

今回の研究の目的は「強みに基づく介入プログラムの検証と、それらがもたらす効果を評価すること」です。研究の仮説として、強みの介入プログラムを通じて、「強みの知識」「強みの活用」が高まり、そして、「幸福感(ウェルビーイング)」「仕事のパフォーマンス」、加えて「調和のとれた情熱」「主観的活力」「集中力」が増加する、としました。

◯参加者と調査項目

参加者は78名。(カナダのケベック州にあるリハビリテーションセンターで働く医療部門の市職員で、性別は女性が93%で、年齢は21%が30歳未満、48%が30~45歳、26%が46~55歳、5%が56歳以上でした)

調査項目は、以下の7つです。

1)強みの知識(Govindi and Linley, 2007)(8項目)
2)強みの活用(Forest et al)(14項目)
3)ウェルビーイング(Satisfaction with Life Scale)(5項目)
4)仕事のパフォーマンス(役割内行動)(7項目)
5)調和のとれた情熱(Vallerand and Houlfort, 2003)(6項目)
6)主観的活力(Ryan and Fredrick, 1997)(7項目)
7)集中力(Flow State Scale, Forest et al, 2005)(3項目)

***

■強み開発の介入プログラムの3ステップ

さて、本研究のイチオシのポイントが、強み開発の介入プログラムが、他論文と比べて詳細に記述されていることです。介入プログラムは3ステップです。

大まかにいえば、最初のステップ「(1)発見」では、 参加者は強みのアセスメントツールを使って自分の強みを特定しました。次に「(2)統合」では、参加者は自分の強みを振り返り、仲間と話し合い、強みの探求をしました。そして最後の「(3)行動」では、自分の強みを職場でもっと活用する方法を考え、同僚と話し合ったのでした。

以下、詳細の内容を引用します。

(1)発見(Discovery)

最初のステップ(発見)は、強み評価ツール(私たちの場合はVIA-Survey;Peterson and Seligman 2004)を使って参加者の強みを特定することであり、その後、参加者に自分の結果をさらに振り返るように求める短い質問に答えてもらった。これらの質問の目的は、結果についてのより深い考察を促すことであった。これは、次の段階への下準備として機能する。

◯質問例:
・「自分の結果についてどう思いますか?」
・「自分自身について既に知っていたことはどのようなことですか?それをどのように確認できましたか?」
・「何か驚きましたか? それはなぜですか?」など

(2)統合(Integration)

第2段階(統合)では、2週間後に参加者とのグループミーティングが行われた。このグループミーティングでは過去、現在、未来における自分の強みに関連するさまざまな質問に個別に答えるよう求められた。
◯質問例:
・「あなたがしたことの中で、特に誇りに思うことを思い返してみてください。最近行った決断、個人的な達成、決心して立ち向かったことなどでもかまいません。この状況にはどのような強みが関係していますか?」
・「どのような状況で、あなたは職場で”最高の状態”だと言えますか? このような状況では、どのような強みが関係していますか?」など

これらの質問は、参加者が自分の強みの本質をよりよく理解し、それが日常生活にどのように反映され、仕事での成功にどのように寄与しているかを理解するのに役立つようにデザインされている。その後、参加者は自分の答えについて小グループで話し合うことになった。この共有プロセスは、強みの検証、承認、支持にさらに貢献した。

(3)行動(Action)

最後のこのステップでは、参加者はファシリテーターから、職場での強み開発に関するさまざまな質問に答えるよう求められた。参加者はその答えをを同僚と共有し、互いの強みを職場でよりよく活かす機会について話し合うよう促された。
◯質問の例:
・「あなたの仕事で活用されていない強みはありますか?」
・「同僚や上司に自分の強みを知ってもらうために何ができますか?」
・「自分の強みをさらに伸ばすために、どのような新しいスキルや知識を学べますか?あなたが読むことのできる本、受講することのできる講座、フォローすることのできるメンターはいますか?」
・「そのために必要な最初のステップは何ですか? など)

上記のプログラムを行い、ファシリテーターより、引き続き職場で活用し続けるように促され、終了をしました。

***

■介入プログラムの結果

そして、介入後(3か月後)に、7つの調査項目について介入前後の比較(t検定)を行いました。その結果わかったことがありました。

◯わかったこと1:「強みの活用」と「人生満足度」が高まった

さて、強み開発の介入プログラムの介入前(T1)と介入後(T2)で比較をしたところ、「強みの活用」と「人生満足度」の2つが統計的に有意に増加したことがわかりました。(一方、強みの知識、役割内行動=仕事のパフォーマンス、調和の取れた情熱、主観的活力、集中力については差がありませんでした)

◯わかったこと2:「強みの活用」が増加すると、「調和のとれた情熱」も増加する

また更に分析を深めてみました。内容としては、78名の参加者を、介入前-介入後の結果から3グループに分けたのでした。分け方はグループ1:強みの活用が減少した群グループ2:強みの活用が平均的に増加した群グループ3:強みの活用が大幅に増加した群の3つです。そして、グループごとに、「調和のとれた情熱」の介入前後の結果と照らし合わせてみました。

すると、グループ1(強みの活用が減少した群)は、調和のとれた情熱も現象しており、グループ2(強みの活用が平均的に増加した群)は、調和のとれた情熱はほぼかわらず、グループ3(強みの活用が大幅に増加した群)は、調和のとれた情熱が大幅に高まっていることがわかまりました。

すなわち、「強みの活用」は「調和のとれた情熱」に影響を与えることが示唆されました。
***

■まとめ

個人的に、一番この論文で勉強になったのが「強み開発の介入プログラム」において、どのような質問をファシリテーターが投げかけているのか?という具体的な例があったこと、そして、それをシンプルな3つのステップとして整理されたことでした。

このレベルであれば、職場でも活用しやすくなると思いますし、またその結果、「強みの活用」が高まったこと、またそれに伴って「調和のとれた情熱」にも影響があったことは、現場での実践に役立つ貴重な知見であると感じます。

また興味深いのが強み開発の介入プログラムによって、「『強みの知識』は変わらなかったが、『強みの活用』は高まった」という点でしょうか。実際に自分の強みはわかっていたけど、なかなか活用する機会がなかった、それを介入の機会によって活用することができた、というのも、こうした介入の効果として注目したいことだな、と思いました。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!

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よろしければぜひご覧ください。
<noteの記事はこちら>

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<今日の名言>

日の光を借りて照る大いなる月たらんよりは、
自ら光を放つ小さな灯火たれ。

森鴎外
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