メールマガジン バックナンバー

3621号 2024年1月24日

ストレングスベースの「チーム開発」の理論とやり方 ~書籍『ストレングスベースのリーダーシップコーチング』(11)

(本日のお話 5116字/読了時間5分)

■こんにちは。紀藤です。

引き続き、沖縄に来ております。
また、昨日は2件のアポイント。



さて、本日のお話です。

本日も前回に引き続き「ストレングスベースのリーダーシップ・コーチング」をテーマにした書籍を紹介いたします。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<今回ご紹介の文献>
『Strength-Based Leadership Coaching in Organizations:An Evidence-Based Guide to Positive Leadership Development』
(組織におけるストレングス・ベースのリーダーシップ・コーチング:ポジティブなリーダーシップ開発のためのエビデンスに基づくガイド)_第9章より
Doug MacKie (2016)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

■ストレングス・ベース・アプローチによるチーム開発

今回は、「チーム開発」に対するストレングスベースのアプローチに役立つ理論モデルが数多く存在しています。この章ではチーム開発を指導する上で有効なアセスメントや診断法を紹介しています。ということで、早速みてまいりましょう!

***

■チーム開発の「理論的な視点」

「チーム」と一言でいうのは簡単です。しかし、「チーム」はそれぞれ違っています。10のチームがあれば、10の形があります。

曰く、”チームモデルに関する最近のレビュー(Salas,Cokke and Rosen,2008)はチームとチームパフォーマンスに関する130以上のモデルを発見した”とのこと。

つまり、チームにもめっちゃ色んな考えがある、ということです(雑でスミマセン)。形成して間もないチームもあれば、数年間共に歩んできたチームもある。あるいは、リーダーがぐいぐい引っ張っていくチームもあれば、平等的で皆でリーダーシップを分散しているチームもある。あるいは、一つの目標に対して全力で向かっていくベンチャー気質のチームもあれば、行うべき仕事をルールに従って行う官僚的なチームもあるでしょう。

すると、それぞれのチーム対してどういったアプローチが適切なのかも変わってきます。では、そんな流動的なチーム開発、一体どうすれば良いのさ?ということで、これまでの研究で語られているものを統合し「チーム開発のための3つの視点」を活用してチームの現状を理解しましょう、と著者は述べています。

その3つとは、以下のものです。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【チーム開発のための3つの視点】
1,チームの構成要素(役割・人材・方向性など)を見る
2,チームの発展段階(非構造化グループから高業績チームへの発展段階)を見る
3,チームのリーダーシップ要件(どんなリーダーシップが発揮されているか)を見る
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

以下、詳しくみてまいりましょう。

◯1,「チームの構成要素」を見る

まず、高いパフォーマンスを発揮するチームに必要な構成要素として、以下の3つの実現条件が記載されています。
この3つの実現条件について、どの程度実現できているのかを見ることが、チームを診断する上でポイントになるようです。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【高いパフォーマンスを発揮するチームの3つの実現条件】
(1)境界
・「役割が十分に分化」されている
・ある程度の「相互依存関係」がある
・長期にわたって「メンバーが安定」しているチームである

(2)適切な人材・必要なスキルと「コンピテンシー」がある
・誠実さなどの「人格」的側面がある
・人や状況について複雑な判断を下す「概念的な能力」がある

(3)説得力のある方向性
・共通の目的のもとにチームを結びつける使命感がある
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

◯2,「チームの発展段階」を見る

次に、「チームの発展段階」についてです。チームにもできたてホヤホヤのチームもあれば、安定感がある熟年夫婦的な的チームもあります。

そのチームの発展段階の見極める方法として、『タックマンモデル』(1965)と呼ばれる、チーム開発の4段階モデルが紹介されています。

このモデルは、チームは「形成期」→「混乱期」→「規範期」→「機能機」の4つの段階を経る(そして解散にいたる)というチームの発展についてモデル化したものです。

ちなみに、「発展段階における必要な介入の違い」についても述べられています。各発展段階において、必要な介入も変わってくる可能性がある、とのこと。

例えば、発展段階の「初期」では”取引的なレベルに焦点を当てる”のがよい(=タスク・役割・目標・関係性の対立の解消)、段階が進んでチーム内の信頼が深まり、共有する目的が説得力のあるものになった発展段階の「後期」では、”リーダーシップ行動の変容に焦点を当てる”のが良い(=チームパフォーマンスと満足度を高める)とのこと。

あるいは、新しいチームは「動機づけ的な介入(チームビルディング)」から恩恵を受ける可能性があり、確立されたチームは「コンサルティングや教育のインプットを必要とする」という指摘もある(Hackman and Wageman,2005)そうです。

チームの発展段階に合わせた介入が必要なのですね。

◯3,チームの「リーダーシップ要件」を見る

次に、チームにおけるリーダーシップについてです。意外にも、チームにおけるリーダーシップについて書かれた文献は比較的少ないそう。

その中でも、「変革型リーダーシップ」については、チームの有効性を高めるために適切であるとしています。一方、相互接続性、統合、一貫性へのさらなる焦点を見逃している可能性がある(Marks,Zaccaro,Mathieu,2020)ため、この変革型リーダーシップモデルだけでも説明ができないため注意が必要とのこと。

いずれにせよ重要なことは、「チームワークを促進し、分散型リーダーシップの活用を最大化するチームの集団行動を促すこと」「個人の強みを集団で活用することで、一個人が提供する以上の相乗効果が得られるようにリーダーシップを発揮すること」が重要なリーダーシップ要件になるようです。

まだ、ここは研究の半ばのようですね。

***

■「チーム開発」のステップとは

では、上記の話を踏まえて、ストレングスベースのチーム開発をどのように行えばよいのでしょうか?以下、チーム開発の”基本”としてのステップ、次に、チーム開発の”強みをベースとした”アプローチについて、まとめてみたいと思います。まずはチーム開発の”基本”ステップについてみていきましょう。

◯【基本編】チーム開発のステップ

では、ここまでの「チームの構造」や「チームの発展段階」などの理論的な視点を踏まえて、チーム開発はどのように行えばよいのか?

この2つのアプローチは、排他的なものではなく上手く組合わされている(Hawkins,2011)とのことで、チーム開発のモデルを以下のように示しています。

(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【(基本)チーム開発のステップ】

STEP1:チームの「目的の明確化」
・誰がこのチームに依頼し、何を提供しなければならないのか
・このチームはどんな提供価値をもたらすか

STEP2:成功のためのビジョンを形成する「目標」「役割」を明確にする
・チームの内部において明確にすること

STEP3:チームの「カルチャーや人間関係のダイナミクス」に注意を払う
・それらはチームの「目的」をサポートするようにする

STEP4:「外部からフィードバック」を受ける
・ステークホルダーを巻き込み、繋がることで実現に向けて順調に進んでいるという実感が必要である
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)

とのこと。

これは個人的な感想ですが、上記ステップは、組織開発コンサルタントのベックハード氏が提唱したチームビルディングのモデルである、

『GRPIモデル』
(Goal:目標→Roles:役割→Process(手順)→Interection(関係性)の淳で抑えることがポイント)

にも共通するものを感じました。

あるいは『チームワーキング』(著:中原淳、田中聡)による

チームに「求められる3つの行動原理」である
Goal Holding(ゴール・ホールディング) : 目標を握り続ける
Task Working (タスク・ワーキング) : 動きながら課題を探し続ける
Feedbacking (フィードバッキング) : 相互にフィードバックし続ける

にも共通する要素があると感じました。
これは、「強み」関係なく、高業績チームを目指すために必要な視点です

◯【強み活用編】チーム開発のステップ

次に、ストレングスベースの、つまり強みを活用したチーム開発の考え方について、紹介されていた要素をお伝えしたいと思います。ポイントは3つです。

1)ポジティブな「チーム評価」を考える
強みの活用のためには”チームメンバーが仲間の強みや開発分野を知る”必要がり、そしてお互いの強みの開示のためには、信頼とリーダーシップが必要である

2)ポジティブな「チーム編成」を考える
ハックマンが示した3つのチームの構造に、ポジティブな要素があるかを検討しようとのことでした。
・境界の概念:「これは本当のチームなのか?」を問う。
・適切な人材:「チームには適切な人材がいるのか?」を問う
・説得力のある方向性:「チームメンバーにとって、魅力的で、やりがいがあり、目的意識の高い方向性があるか?」を問う

3)ポジティブな「チームリーダー」について考えるまた、ポジティブなリーダーシップは、チームの明確な方向性が説得力を持つために、「変革型リーダーシップ」の『他者を鼓舞する要素』が明らかに必要になる

なお、ポジティブなリーダーシップは、「ピープルフォーカス」である。

曰く、タスク焦点のリーダーシップ行動と、ピープル焦点のリーダーシップ行動の両方が、チームパフォーマンスの成果の分散のかなりの部分を説明できたとしています(Burke et al 2006)。研究によると「タスクフォーカスリーダーシップ」 は、・取引型リーダーシップの要素を含む、目標達成に焦点を当てた構造を開始・チームの有効性の11%、チームの生産性の4%を説明・チーム学習は予測しない

「ピープルフォーカスリーダーシップ」は・変革型リーダーシップの要素(個人への配慮/権限委譲やコーチングによるフォロワーのエンパワーメント/ポジティブな動機づけなど)を含む。・チーム学習の31%を予測

という特徴を持ちました。以上のことから、結論として「ピープル>タスク」というリーダーシップのほうが、ストレングスベースのチーム開発に必要であると言えます。

4)ポジティブな「チームプロセス」について考える業績とチームプロセスの関連を示唆するある研究があります。内容は以下のようなものでした。

・業績チームのポジティブ比率に関する実験が、大手情報処理企業の上級60ビジネスユニットに対して行われました(Losada and Heaphy,2004)
・チームは、収益性、顧客評価、360°データなどの客観的な成果指標に基づいて、高業績・中業績・低業績に分けられました。
・高業績チーム15チーム、中業績チーム26チーム、低業績チーム19チームが「チーム内の会話の質」について評価されました。
・具体的には会話の質が、「ポジティブか/ネガティブか」、「自分中心か/他者中心か」「質問か/主張か」という3つの観点です。
・結果、高業績チームは、1)自分と他者どちらもバランスよく中心にしている、2)質問と主張のバランスが取れている、3)ポジティブな内容の発言が多い、ことがわかりました。

(補足)ちなみに、この比率は色々と議論があり、現在は「ポジティブ:ネガティブ=3:1」くらいが業績に繋がりやすい会話の質の割合である、ということになっているようです。

***

■まとめと結論

チーム開発のプロセスについて理論的背景を踏まえつつ、著者が考えるストレングスアプローチを含めており、興味深い内容でした。

ただ、強みに基づいたチーム開発といっても、基本は高業績チームの基本的なチーム開発のプロセスと同じようなものになるように感じました。

私なりにまとると、

【チーム開発の要素(基本編)】
1,目的(ビジョン)・目標を握る
2,役割・手順の明確化
3,関係性や文化に注意を払う
4,フィードバックを外部から&内部にて行う

がまずは必要であり、その上で、

【チーム開発の要素(強み編)】
1,お互いの強みを理解し、共有し合う
2,変革型リーダーシップの要素を含めて、他者をエンパワーメントする
3,チームプロセスでポジティブ比率を高める

という点を抑えておけば、チームが前向きかつ協力的になり、適切なチーム開発介入として、長期的にチームの能力を向上させることができるのだろう、と思いました。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!

※本日のメルマガは「note」にも、図表付きでより詳しく掲載しています。
よろしければぜひご覧ください。

<noteの記事はこちら>

=========================
<本日の名言>

すべての始まりは偉大なアイデアとチームワークだ

Garrett Camp、カナダの起業家
==========================

365日日刊。学びと挑戦をするみなさまに、背中を押すメルマガお届け中。

  • 人材育成に関する情報
  • 参考になる本のご紹介
  • 人事交流会などのイベント案内

メルマガを登録する

キーワードから探す
カテゴリーから探す
配信月から探す