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3644号 2024年2月16日

強みを活かす組織開発の手法「アプリシエイティブ・インクワイアリ」を解説します

(本日のお話 2456字/読了時間4分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は終日、ストレングス・ファインダー研修の実施。
また1件のアポイントでした。

「強み」について発見していく中で、
お互いが自信や相互尊重を得ていくプロセスは、
本当に楽しく、ワクワクするものだと感じます。

こうしたプロセスをもっと多くの人に体験していただきたいな、
そんなことを思った1日でした。
(ご参加いただきました皆様、ありがとうございました!)



さて、本日のお話です。

本日は、個人や組織の強みを活かす組織開発「アプリシエイティブ・インクワイアリ」についてご紹介いたします。

1980年代、組織開発の発展に寄与した、とても代表的な手法です。ということで、早速その内容をみてまいりましょう!

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<本日の参考文献>
中原淳、中村和彦(2018)『組織開発の探求』,ダイヤモンド社
香取一昭、大川恒(2018)『ホールシステム・アプローチ 1000人以上でもとことん話し合える方法』,日本経済新聞出版社
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■アプリシエイティブ・インクワイアリ(AI)とは
アプリシエイティブ・インクワイアリ(AI)とは1980年代に登場した、組織開発の手法の一つです。直訳すると「Appeciative(真価を認める)」+「Inquiry(探求)」です。通称「AI」と言いますが、ChatGPTは関係ありません(そりゃそうだ。つまらなくてスミマセン)

「組織の強みや潜在力を見える化し、未来のあり方や方法を協働的に探求するプロセス」とされ、これまでの”足りない部分埋める”というアプローチではなく、組織の持っている強みや潜在力にフォーカスをしよう!というアプローチです。

このアプローチは、社会構成主義(言葉によって世界が作られる:Word create World)という考えに立脚しています。言葉は現実を作り出す力を持ちます。

あまりポジティブな例ではないですが、アルハラ(アルコールハラスメント)とかマタハラなどの言葉が登場することで、それまでは存在していなかった問題が作られるイメージが「言葉によって世界が作られる」という一例かもしれません。(最近はリスハラ=リストラハラスメントとかもあるとか、もうよくわかりません…)

AIはその逆張りで、組織が本来持っている強み、活力を与えているもの(ポジティブコア)が何かを”対話によって”探求し、それを元にした理想的な未来を”対話によって”創造をしていくことを通じて、新たな現実を生み出していこう!というアプローチになります。
ポイントは「対話をすることで現実を作る」ということです。

■AIの「4Dモデル」
では、具体的にどのように「AI」を進めていくのでしょうか? それが「4Dモデル」と呼ばれるステップになります。

まず、最初は4Dモデルの前に「肯定的なテーマを選定すること」から始まります。ポジティブな問いにより、ポジティブな思想が生まれます。
AIのプロセスでは、ネガティブな表現で課題を表すのではなく、あくまで”ポジティブな表現で言い表す”ことがポイントとなります。

では、以下、続く「4Dモデル」のポイントを「目的」「行うこと」「ポイント」の3点から、解説します。

(1)Discovery(強みの発見)
●目的:強みの発見(ポジティブコア)を発見する
●行うこと:AIインタビューを行います。二人一組などになってお互いの成功体験、強みや大切にしている価値観についてインタビューを行います。AIインタビューで出たストーリーをチームで共有します。
●ポイント:普段意識していないような事まで探求できているか?

(2)Dream(可能性を思い描く)
●目的:強みが最大発揮されたときの理想の未来をイメージする
●行うこと:強み(ポジティブコア)が発揮された際の、理想的な状態について、参加者で対話を行い、理想の未来を描きます。それらを寸劇や絵などで表現します。
●ポイント:制約に縛られていないか?/創造力と想像力を十分に発揮できているか?

(3)Design(実現方法を考える)
●目的:実現方法を考える
●行うこと:参加者で「挑戦的な宣言文」を作ります。組織が理想とする状態を実現するために、どうありたいか、何をしたいかといった具体的な事が記述されたものとなります。
●ポイント:実現するためには少し努力か?/本当にそうなってほしいか?
ワクワクしているか?/既に実現しているかのような印象で書かれているか?/革新的で協力的な行動を促進しているか?/継続的な学びが求められるものか?

(4)Destiny(変化の取り組みを持続する)
●目的:変革の取り組みを、日常的な活動として継続させる
●行うこと:アクションプランを実行するだけでなく、定期的な成功体験や学びを共有します。
●ポイント:AIの取り組みから生み出されたエネルギーは持続できているか?/日常のシステムの中に浸透ができているか?

■AIで期待される効果
では、AIによってどのような効果が期待されるのでしょうか?
先行研究では、以下のようなことが述べられています。

<AIによる効果>
・参加メンバーの前向きな思考パターンへの変容や相互の賞賛を促す。
・参加者の強みや資源、 相互の尊敬を促進し、協力関係や高いレベルの信頼と希望を抱くものに変化させた。
・コミュニティ内の新しいつながりが構築された。
・AI を学習の場で教育ツールとして用いることで、対話, チーム構築、協力体制の構築、ビジョン共有を促進させた。
・組織からの離脱傾向が下がる傾向があった。
(引用:appreciative Inquiryの実現と可能性)

などなど。特に関係性や前向きさなどの効果が特徴のようです。

■まとめ
私もこの手法をワークショップとして実践していますが、理想的な未来を思い描くことの力強さを、毎度のことながら感じさせられます。
先行研究でも、チーム構築や、相互の尊敬など、「前向きさ」と「チームビルディング」という効果が印象的です。まさに「強みに注目した組織開発」といえるかと思います。

一方、盛り上がりがあるからこそ、施策を継続するには、一過性に終わらせないことがポイントです。アクションプランを現実のものとして落とし込むプロセスや「行ったこと・できたことをお互いに認め合う振り返りの機会」なども大切になってきます。組織開発のプロセスとは、一過性のものではなく継続してこそ、なのです。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!

※本日のメルマガは「note」にも、図表付きでより詳しく掲載しています。
よろしければぜひご覧ください。

<noteの記事はこちら>

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<本日の名言>

開発するモノによっては、袋小路を出られない場合がある。
しかし、それは常識の枠だけで考えているためである場合が多い。

安藤百福
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