先生の強みと「教える自信」の関係
(本日のお話 3157字/読了時間5分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は大学院の仲間とのランニング部の開催で、
21kmのランニングでした。
その後家族にて、「地下鉄博物館」へ。
長野フルマラソンまであと27日。
*
さて、本日のお話です。
本日も「強み論文」をご紹介したいと思います。
本日のテーマは「教師の強みと自己効力感の関係」についてです。
性格的強みは、教育の効果に影響を及ぼす可能性があるとされており、その要因がいくつも発見されています。じゃあ、実際に関係はあるのだろうか?ということで、韓国において111名の方を対象に調査をしたのでした。
そして、その結果、いくつかの性格的強みが、教師自己効力感(Teacher Efficacy)と有意に影響していることがわかったのでした。
ということで、早速内容をみてまいりましょう!
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<今回ご紹介の論文>
『韓国人特別支援教育教師における性格的強みと個人的教授効力感との関係』
. YJ Lim, M. N. Kim. International journal of special education (2014). “Relation of Character Strengths to Personal Teaching Efficacy in Korean Special Education Teachers.” International journal of special education 2014. https://eric.ed.gov/?id=EJ1029003.
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■教師の自己効力感とは
自己効力感(Bandura, 1997)とは、”ある行動を自分は遂行することができると自分の可能性を認識していること”、を指します。
”短期的・具体的な個々の課題や状況に影響を及ぼす自己効力感”もあれば、”長期的・一般的化した日常場面における行動に及ぼす自己効力感(=一般性自己効力感”というものもあります。
言われてみればそうですが、「自分はスポーツはできる自信あります!、でも、それ以外は全然自信ないです。。。」という場合は、スポーツに関する自己効力感は高いけれど、そして一般性自己効力感は低い、となるかもしれません。
要はシチュエーションによって、自己効力感の感じやすさも変わるよね、ということです。
◯教師効力感の2つの次元
さて、その中で本論文では「教師の効力感(Teacher Efficacy)」という概念を紹介しています。これは「生徒の学習に影響を与えることができると教師が信じることであり、たとえ生徒が困難であったり、やる気がなかったりしても、生徒の学習に影響を与えることができる」と定義されています(Guskey & Passaro, 1994)。
ちなみに「教師の効力感(Teacher Efficacy)」は二次元的であり、1つ目の次元が「個人的教授効力感(PTE:Personal Teaching Efficay)」で、”生徒に変化をもたらすことができるという教師の信念”とされ、も2つ目の次元が「一般的教授効力感(GTE:General Teaching Efficay)」とされています(Coladarci & Breton, 1997)。
◯個人的教授効力感に影響を与える3つの要因
そして、この「教師の効力感」のうちの一つの次元「個人的教授効力感(PTE)」に影響を与える要因は、以下の3つのカテゴリーに分類されることがわかりました。
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(a)環境的・文脈的要素:
(学校レベル、学校構造、教師の所属、管理者や学校指導者からのサポート不足、管理者の離職など)
(b)年齢、性別、経験年数などの人口統計学的要因
(c)教師の特性:
外向性は学級経営を予測し、良心性は 指導戦略や生徒の参画を予測する
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そして、「(c)教師の特性」に注目してみると、「性格的強み(Character Strengths)」はどうやら影響を与えているようです。
というのも、「性格的強み」は”自然に生まれ、本物であると感じられ、内発的に使おうとする気にさせ、活力を与えるような既存の資質が含まれ、それによって健全な結果が得られる確立が高まる(Linley, 2008; Peterson&Seligman, 2004)とのことで、まさにこの「(c)教師の特性」に大きく関わる重要な焦点と言えそうである、このことに本論文は注目しました。
◯教師効力感の先行研究
また過去の先行研究によると、性格的強みが、「個人的教授効力感(PTE)」に影響を与える可能性のある性格特性の1つであると関連する証拠で示されています(Chan, 2009など)。他にも
・中国の教師のサンプルでは、『熱意・希望・感謝・人間性』の強みが主観的幸福と強固に相関していた(Chan, 2009)。
・スロベニアの教師のサンプルでも、『希望・熱意・感謝・愛情・好奇心』が人生の満足度と高い相関を示していた(Gradisek, 2012)。
という結果になりました。どうやら何かしら影響はありそうな匂いがしますね。
■研究の全体像
◯本研究の目的
本研究では、韓国の特別支援教育の教員における「性格的強み」と「個人的教授効力感(PTE)」との関連を明らかにすることを目的としています。
◯研究方法
●参加者:111名
・男性27名、女性84名、年齢は23~59歳、平均年齢33.1歳
・韓国の特別支援教育の教員
●評価項目:
以下の2つの尺度について調査を行った。
(1)「Character Strengths Test」(CST;Kwon et al., 2010)
:VIA分類にある24の性格の強みそれぞれを、どの程度指示しているかを測定するための4段階リッカート式240項目の自己報告式質問票
(2)「教師の効力感」
:特殊教育者用の韓国版教師効力感尺度-個人(K-TES-P;Coladarci&Breton, 1997)を使用した。
◯分析
統計分析として、相関分析を各測定項目の間で計算した。
また性別、年齢、就労年数をコントロールした上で、「性格的強み」が「個人的教授効力感(PTE)」を予測するかを評価するために、階層回帰分析を行った。第1段階で、年齢・性別・勤続年数を入力し、第二段階で性格的強みの4因子を追加した。
■結果
◯わかったこと1:性格的強みと「個人的教授効力感」は相関があった
結果を見ると、性格的強みの4因子と有意な相関がありました。
中程度の相関があったものは「対人的な強み」「自制的な強み」「知的な強み」で、小さな相関があったものは「神学的な強み」でした。
◯わかったこと2:「対人的な強み」と「自制的な強み」が特に「個人教授効力感」への影響が高かった
次に、階層回帰分析を行ったところ、最も関連があった強みは「対人関係の強み」と「自制的な強み」であることがわかりました。この2つの強みが高いと認識している教師は、低い教師に比べて、生徒に変化をもたらす自分の能力を信じる傾向があることが示されました。
■まとめと個人的感想
「教師の自己効力感」というものがあるんだな、という発見がまず興味深いものでした。そして、こうした概念と「性格的強み」の関連を調べるというのも、面白いアプローチだと感じます。引用数が43の論文でしたが、(特に特別支援における)教育に関わる人の効力感を高めるために、どのようなアプローチをすればよいのかを示唆する研究になっていると言えそうです。
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