書籍『Character Strengths Interventions』を読み解く #14 ~「強みについてのよくある質問」(Appendix)~
(本日のお話 2756字/読了時間5分)
■こんにちは。紀藤です。
本日も強みシリーズ「書籍『Character Strengths Interventions』を読み解く」をお届けいたします。
さて、今回は、巻末のAppendix(付録)にある「強みについてのよくある質問」についてご紹介したいと思います。
強みについてのワークショップを行っていると、よく貰う質問がありますが、それらについて本書において丁寧に説明がされており、大変参考になりました。
ということで、早速見てまいりましょう!
■Q、強みは、国や文化を超えて、普遍なものか?
答えは「YES」です。
ペンシルバニア大学において、55名の研究者によって、「性格的強み」の概念が抽出され、一定の基準(強みを満たす10の基準)を設けて「VIAの24の強み」に絞られました。
2000年初頭では、まず30カ国以上のデータから「性格的強みの偏在性」が支持され(Peterson, 2004)、数年後には50カ国以上における「性格的強みの普遍性」に関するデータ(Park et al, 2006)が公表されました。
さらに、Robert Biswas-Diener(2006)らによって、VIA分類を用いた異文化研究を実施し、VIA分類をの強みの普遍性を裏付けて、これらの特性が西洋文化的な現象以上のものであることを示しました。(具体的には、ケニアのマサイ族、グリーンランド北部のイヌイット、アメリカの大学生の3つの文化に注目し、これらの文化圏における性格的強みの存在、重要性、望ましさを調べたところ、3つの文化において高い一致率を示した、という内容です)
ちなみに、現在、VIAの調査は35以上の言語に翻訳されており、様々言語で受検をすることが可能です。
■Q、VIAのテストは何歳から受検が可能なのか?
8歳から受検が可能です。
VIAの青少年調査(VIA Youth)があり、8~17歳を対象としたテストとなっています。このYouth版尺度の開発も、心理学的な背景と、大規模な調査を行い、その信頼性と妥当性が証明されました(因子分析によると24の強みは4つの因子に分けられることがわかりました)。
ちなみに、VIAのテストは当初240問あり、24の強みそれぞれについて10の質問項目がありましたが、現在は120問と各5問ずつに短縮されています。こちらは更に厳密で科学的な基準を満たした追加版がVIAサイトで、無料で受検可能とされています。
※現在は「VIA 成人版(adult)」と「VIA青少年版( Youth)」が選べる仕様になっています。(VIA 成人版も2014年5月時点で受験したものでは96問となっており、だいぶ受けやすくなりました)
■Q、VIAのテスト結果は気分に影響されるのか?
結論からいえば「No」です。
気分に対して、テスト結果が大幅な影響を与える事は考えづらい、とされています。
「気分」とは「状態(ポジティブな感情や動揺した感情など、一過性の状態)」に似た概念です。しかし、「性格」は「特性(時間や環境の変化に対しても永続的で安定した特性)」と同義です。そして、VIAは「性格」を調査するテストとなっています。
もちろん、機嫌が悪かったり、ストレスが多い日であったりすると、その「状態」がテストの回答に影響を及ぼすように感じられるかもしれません。しかし、「性格とは私達は何者か?を示すもの」であり、良い日も悪い日も、常に性格は自分と共にあるものです。(例えば、希望や好奇心が高い人は、良い日も悪い日も、基本的にはそれを携えている)よって、結果は同じよういなる可能性が高いとなります。
実際に、VIAサーベイは、良好なテスト反復信頼性を持つ(=1人の人が複数回繰り返した時に、結果の精度や再現性が高く、信頼性がある)ことがわかっています。
■Q、VIAの結果は経年変化しますか?
結論からすれば答えは「NO」となります。
VIAサーベイ自体の信頼性は、長期間にわたって再現可能なものである、とされています。気分が落ち込んでいても、2年間たっていても、一貫した結果が得られるものです。 もっと極端に言えば、トラウマになるような出来事があったり、結婚したり、子供が生まれたり、軍隊に入っても、強みが変わることはないのです。
ちなみに、補足ですが「強みが変わることがない」というのは、トップ5がボトム5に入れ替わったり、その逆になるという変化はない、ということです。(逆にいえばトップ10の強みがシャッフルされることはよくあることです)
■Q、性格的な強みは生まれつきのもの(遺伝)か、それとも育ちによるものか?
結論からいえば「遺伝」と「育ち」どちらも重要で影響がある、と考えられています。
まず遺伝の影響を検討する際に、336人の双子を調査して、24の性格の強みの遺伝を調べたところ、24の強みのほとんどについて有意な遺伝的な影響を発見した、という研究があります。つまりこれは、強みの遺伝的な影響を示しているものとなります。そして同時に、研究者等は「性格の強さを説明する上で環境が果たす役割もある」ことも見つけたのでした。
遺伝か?環境か?どちらの影響が強かを聞くのは、長方形の縦と横、どちらが長いか?を質問するようなものです。大事なのは、どちらの影響が大きいかよりも、どちらも影響があるという考えをしたほうが適切です。
■Q、「特徴的な強み(上位の強み)」か「下位の強み」どちらを伸ばしたほうがよいのか?
結論としては、どちらか一方にだけ注目する、という考えをしないほうがよいとされています。
理由は2つです。まず1つは、それぞれのクライアントの状況によって、重要なものが異なるから。そして2つ目が、特徴的な強みに注目する場合も、下位の強みに注目して伸ばす場合も、どちらのアプローチも有益であることが研究でわかっているからです。
一方、基本的には「人は自分の得意なことに取り組むほうが楽しく、活力が湧く」ものです。そういう意味では、特徴的な強みに焦点を当てたほうが、より有利な要因が多いことも事実です。有利な要因とは、「肯定的な強化により自己効力感が高くなる」「特徴的な強みは活力を感じるため、介入の定着率が高くなる可能性がある」などです。
よって、まとめると、「上位と下位の強みどちらに注目しても効果はあるが、特徴的な強み(上位の強み)に注目したほうが得られるメリットは大きい(可能性が高い)」と言えそうです。
■Q、「下位の強み」は「弱み」なのか?
これも極めて一般的な質問ですが、「下位の強みは弱みを表しているものではない」です。
明確に言えることは「下位に現れた強みは、自分の24の強みの中で、相対して下位にある”強み”である」ということです。大事なのは、誰の中にも、24の強みがある、ということです(たとえば、「自律心」が最下位だったとしても、歯を磨き、シャワーを浴びるなどある程度の自律的な行動を誰もがしているはず)。
私達は幅広く使っている強みがあり、その状況に応じて、上位の強みを使うときもあれば、中位の強み、また下位の強みを使うこともあります。
まとめると、以下のようになります。
・VIAのテストは、強みだけを測定するものである。そしてその強みは、全てあなたの中にある強みの能力である。
・下位の強みが気になる場合、あなたはその強みがあまり使えていないと感じているのかもしれません。もしそうであれば、それをもっと使う方法や、もっと高める方法について検討することもできる
■まとめ
本日はAppendixから、強みについてのよくある質問をまとめてみました。
これらの質問は、ストレングス・ファインダーでも全く同じことを聞かれますが、Gallup社の見解も同じようなものであったと認識しています。
こうやってFAQをまとめると、強みに対しての疑問も解消され、信頼性も高まる気がしますね。VIAが様々な研究を公開していることのメリットを感じたパートでした。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!
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