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3762号 2024年6月12日

アンケートは鍵盤楽器、インタビューは弦楽器!? ~定量調査と定性調査の違い~

(本日のお話 2254字/読了時間4分)

■こんにちは。紀藤です

昨日火曜日は、立教大学ビジネスリーダーシップの授業でした。
その後、1件のアポイント。
半年間の人材開発・組織開発プロジェクトの振り返りでした。
そして、その後は懇親会でございました。
(皆様、ありがとうございました!実に楽しい時間でした)



さて、本日のお話です。

先日の振り返りの準備を行う上で、定量調査と定性調査について、その特徴などを考えておりました。そしてはたと思うこと、気づくことがありましたので、
今日は少しマニアックかもしれませんが、人材開発・組織開発における「定量調査と定性調査の違い」について、個人的所感も含めて書いてみたいと思います。

■定量調査のほうが信頼性は高い・・・のか?

「定量調査のほうが信頼性は高いというのは、自然科学の視点である」

先日、ふとしたきっかけで大学の先生から頂いたフィードバックです。

はて、定量調査のほうが信頼性は高い・・・のか?

正直これまでは私は、「定量調査のほうが信頼性が高い」と思っていました。「相関係数が0.75です」とか、「スコアが0.67ポイント上がった」などと数字でバンッと示すと有無を言わさぬ力強さがあると感じていました。 論文を読んでいても、やはり数字は説得力がありますし「ランダム化比較実験」なんて調査結果から、◯◯の結果がわかった、なんていうと、それだけで信じてしまいそうになります。

一方、「定性調査(インタビュー)」などは。「インタビュワーとの関係で話される言葉も変わりそうだし、分析するうえでの解釈も多分に入りそうであるため、「定量調査に比べて、定性調査は信頼性が低い」と思っていたのでした。

そんな最中、先日頂いた大学の先生から頂いたのが冒頭のフィードバックで「定量調査のほうが信頼性が高いというのは、自然科学の視点である」なるコメントでした。

加えて「定量調査は、Nは大きいが浅い。定性調査は、Nは小さいが深い。どちらが信頼性が高い・低いという見方ではないもの」と補足いただき、たしかに、自分は定量調査に重きをおいている(苦手だから特にスゴい・重要だと思ってしまう)という自分自身のバイアスを感じたのでした。

■数字では見えないものがある

さて、そのような話を踏まえて、先日のお話です。

とある企業の部署に、6ヶ月ほどの人材開発・組織開発の介入を行わせていただきました。事前事後で、組織サーベイを行い、「ミッション、組織文化、処遇への満足度、心理的契約、職務特性、上司からの支援、職場の関係性、心理的安全性、ワークエンゲージメント、強み」などのデータをリッカート5件法で取得し、比較調査を行いました。

スコアに変化がある項目もあれば、目立った変化がない項目もありましたが、そのスコアの変化があまり見られないところでも、コメントをみると影響があるように見られるところもありました。

たとえば、「強み」についても、「強みの注目」「強みの活用感」「強み活用に対する知覚された組織支援」などの12項目を聞いて見た結果をみると、実は”さほど変化がない”(むしろ半年後、マイナスになった課もある)という現状でした。

つまり、定量的なデータでいえば、事前平均「4(そう思う)」→事後平均「4(そう思う)」と結果は変わっていなかった、というイメージです。

しかし、実際に関わられた方の「コメント」を見てみると、また違ったものが見えてくるわけです。たとえば、こんな感じです(回答は言い方を編集しています)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
・各メンバーの強みと目標を理解することで、より効果的なチーム構成が可能になり、強みを最大限に活かすことができた。
・以前は弱みに注目し、その対策を考えていたが、この研修を通じて強みを活かす方向にシフトできた。
・自分の強みと弱みをより明確に認識できた。これまで漠然と感じていたものが明確になり、新しいメンバーとして、効果的なコミュニケーションや行動の仕方を理解することができた。
・お互いの強みを認め合うことで、雰囲気が良くなり、よりハッピーで生産的な環境が生まれた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

こう見てみると、「事前4で、事後も4」というスコアで、殆ど結果が変わっていないように見えても、「数字では見えない何かしらの変化がある」ということを感じずにはいられません。

■鍵盤楽器と弦楽器の違い

量的研究は鍵盤楽器(ピアノなど)で、質的研究は弦楽器(バイオリン)みたいなものだ、という話を調査法の授業で聞いたことがあります。

どういうことかというと、ピアノは、ドレミと音階が明確にわかれていますね。一方、バイオリンは、ドレミと音階が明確にわかれておらず、ドとレの間も地続きです。
実際は音は周波数ですので、「ド」の中でも幅がありますが、鍵盤楽器はその仕様上「ドはド」でしかありません(ドが規定のドになるために調律が必要になるのですが)。

これを調査で考えると、量的研究(アンケートのデータ)の視点でみれば「4(そう思う)」は「4(そう思う)」でしかなく、変化がありません。しかし、実際はおなじ「4(そう思う)」でも、その数字で表せない細かいものが存在している。

その周波数の違いを見に行くのが「質的研究」(インタビュー等)になります。そこでは同じ「4」でも、数字でみえないどんな変化が合ったのかを見に行くプロセスを重視します(と私は理解している)。

そして、その両面が重要であることを、今回のプロジェクトの振り返りで、実に納得をしたのでした。

■まとめ

「この研修、何に役立ったの?」「何が変わったの?」と聞かれることは、人材開発・組織開発の宿命に思います。

その中で、「数字」ももちろん重視しつつ、「物語(数字で表せないもの)」の両方を見ることで、説得力がある結果の振り返りもできるのだろう、そんなことを思った次第です。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!

(※本記事の量的研究、質的研究については、専門家の方から言えばツッコミが多い話かと思いますので、個人的な見解も含む、ということでご了承いただけますと幸いです)

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