「プロアクティブ行動」とは何か ー『若年就業者の組織適応』より #5~
(本日のお話 2560字/読了時間5分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は3件のアポイント。
その他、企画書の作成などでした。
妻がコロナから復活し、ようやく仕事に集中できるようになりました。
こうしたサポートがあり、仕事ができているんだなあ、とありがたく思った次第。
家族は、持ちつ持たれつ、ですね。
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さて、本日のお話です。
先日より著書『若年就業者の組織適応』からの学びをお届けしております。
今日は、「第9章 プロアクティブ行動」からの学びをご共有いたします。
さて、若年就業者自らが組織に対して働きかける行動が「プロアクティブ行動」と呼びますが、それらの行動が組織適応にどのような影響を与えているのかを256名の若手社員に調査した内容となっており、実に説得力がある(そして役に立つ)内容でございました。
それでは、早速内容を見てまいりましょう!
■プロアクティブ行動とは
組織社会化研究(いわゆる、組織に馴染むプロセスの研究)では、「若年就業者は環境から影響を受ける受動的な存在」として捉えられていました。
しかし、言われてみればですが、新入社員などの若年就業者も自ら周りに働きかけるという主体的な存在でもあります。そのような主体的な行動として研究されてきたのが「プロアクティブ行動」です。
ちなみにその定義は、「プロアクティブ行動」とは、”個人が自分自身や環境に影響を及ぼすような先見的な行動であり、未来志向で変革思考の行動”(Grant & Ashford, 2008)とされています。
様々な研究者がいて、プロアクティブ行動の種類として、キャリアや政治的知識を含めるものもあれば、ポジティブフレーミング(ポジティブに捉える)等、研究者の見解により少しずつ異なっています。「合意された特定の行動はない」というのがプロアクティブ行動研究の現状のようです。
その中で、本章においての「プロアクティブ行動」は、Ashford & Black(1996)を参考に、「革新行動」「ネットワーク活用行動」「フィードバック探索行動」「積極的問題解決行動」の4つとし、その上で実証研究を行っています。
■若年層256名への実証研究
本章では、入社2~7年目の若年ホワイトカラー256名に対して調査を行いました。以下具体的な調査内容と、そこからわかったことは、以下のとおりでした。
○プロアクティブ行動の設問項目
まず、独立変数としてての「プロアクティブ行動」(「革新行動」「ネットワーク活用行動」「フィードバック探索行動」「積極的問題解決行動」)について、探索的因子分析、確証的因子分析を行いました。その結果、4因子8項目の質問項目となりました。
(繰り返しになりますが、「プロアクティブ行動」は合意された特定の行動ではないため、”本章におけるプロアクティブ行動”となります)
○プロアクティブ行動が「組織適応」に及ぼす影響
そして、実際にこの「プロアクティブ行動」が、若年者の「組織適応」とどのような関係があるのか、を調べました。
(ちなみに「組織適応」とは、「職業的社会化」「文化的社会化」「情緒的コミットメント」「仕事のやりがい」「離職意思」という5つの次元で本書において説明されています。詳しくは以下記事をご参照ください)
そして調査結果を分析したところ、以下のことがわかったのでした。
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・「革新行動」は、「職業的社会化」と「仕事のやりがい」に有意な正の影響を及ぼし、離職意思に有意な負の影響を及ぼしていた。
・「ネットワーク活用行動」は、「文化的社会化」と「情緒的コミットメント」に有意な正の影響を及ぼしていた。
・「フィードバック探索行動」は、「職業的社会化」と「情緒的コミットメント」と「仕事のやりがい」に有意な正の影響を及ぼしていた。
・「積極的問題解決行動」は、「職業的社会化」と「文化的社会化」に有意な正の影響を及ぼしていた。
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まとめると、「革新行動」は主に仕事面への影響を、「ネットワーク活用行動」は主に人間関係面への影響を、「フィードバック探索行動」は、仕事面と人間関係へとは幅広く影響があり、「積極的問題解決行動」は仕事と組織文化の適応へ繋がっていました。
これらのことから、仕事面での懸念がある場合は革新行動を、人間関係面であればネットワーク活用行動、というように「若年層それぞれの課題を考慮し、どの種類のプロアクティブ行動に注目すると効果があるかを検討・実行すること役に立つ」と言えそうです。
○勤務年数とプロアクティブ行動の関連
また確かに言われてみればと思いましたが、「勤務年数」が長くなるほど「プロアクティブ行動」を行う人が増える傾向にありました。特に2年目、3年目は、4年目以降に比べてプロアクティブ行動を行う人が少ない結果となりました。
これらのことから「勤務年数が短い個人は、プロアクティブ行動をとり難い」ということが言えるようです。
また、その他の調査では、「高プロアクティブ行動型」の人は組織適応において「理想的タイプ(5つの組織適応が高い水準である)」が多い傾向があり、「高離職タイプ」「仕事課題タイプ(職業社会化や仕事のやりがいが低い)」人は少ない傾向がありました。
逆に「低プロアクティブ行動型」の人は組織適応において「理想的タイプ」は少なく、「仕事課題タイプ」が多い傾向がありました。
これらのことから、「高プロアクティブ行動型」の人のほうが、離職リスクも少なく、仕事へ課題を感じることも少なく、組織適応も総じて望ましい状態であることがわかりました。
■まとめと感想
概念として「プロアクティブ行動が組織適応(組織社会化)に影響を与える」ということは理解していましたが、このように日本における256名の若年就業者を対象にした実証研究の結果を見ると、その内容がリアルに感じられることができた章でした。
本章の最後でも、「企業がこれらの結果を理解し、若年就業者にプロアクティブ行動を教育し、人事と職場がそれらの行動を促せるように支援することが重要」と書かれていましたが、まさにそのように思います。
新入社員の人が、これらの結果を見たら、「なるほど、プロアクティブ行動をやると、仕事のやりがいも高まるし、人間関係もよくなるのか! なら「フィードバック探索行動」もやろっかな」と思えそうな気がします(そう願いたい・・・!)。
そして、それこそが「科学知を実践知につなげる」ということでしょう。
私自身、科学知と実践知の媒介者として、大いにこれらの知見を活用させていただこうと思った次第です。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!
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