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3771号 2024年6月21日

発達とは「視野獲得のプロセス」である

(本日のお話 2453字/読了時間6分)

■こんにちは。紀藤です。

先日、久しぶりにとある勉強会に参加いたしました。

それは『リーダーシップに出会う瞬間』という著作の勉強会です。

成人発達理論を物語風にして描いた著作で、著者の有冬さんがお越しになられて、
書籍を読んだ上で一歩踏み込んだディープなお話をしていただけるという、たいへん希少な場でございました。

こちらの書籍、5年前に発行されてから、現在10刷。
口コミなどで多くの方に広がり続けている名著です。大変おすすめです。

さて、今日はその勉強会からの学びを、皆様に共有させていただければと思います。

それでは早速まいりましょう!

■成人発達理論とは

まず成人発達理論とは、成人してからも知性や意識が発達していくという理論です。ハーバード大教育大学院でロバート・キーガン博士が提唱しました。
著書『なぜ人と組織は変われないのか』では、成人発達理論が詳しく述べられてます。(入門書は『なぜ部下とうまく行かないのか』(加藤洋平/著)がわかりやすくおすすめです)

○水平的成長と垂直的成長

発達理論では、人の成長には水平的成長と垂直的発達の2軸があるとされています。
「水平的成長」は、知識やスキルの成長です。本を読んだり、勉強をすることなどで、新しい知識やスキルを獲得することを意味します。
「垂直的成長」は、知性や意識などの内面の成長です。知識やスキルに比べて、内面的なものなのでわかりづらいかもしれませんが、考え方や見方が変わって、人への接し方が変わる、寛容になる、思考が柔軟になるなどの変化があれば、垂直的な成長があったと言えます。

○成人発達理論の5段階

次に、成人発達理論のコアの概念で、発達の5段階の話があります。

「具体的思考段階」「道具主義的段階」「他者依存段階」「自己主導段階」「相互発達段階」の5つです。

以下簡単に解説します。

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<具体的思考段階>:
成人発達理論の最初の段階で、幼少期の子どもの段階のイメージです。言葉は理解できますが、「形がない概念的なもの」を理解するのは難しい状態です。

<道具主義的段階>:
自己中心的な発達段階です。他者を自己の欲求を満たすための手段・道具のように扱うことが特徴です。弱肉強食、自分のエゴ(欲求)を通そうとする力強さがあります。

<他者依存段階>:
他者の気持ちを推察する力を獲得することで、他者や組織に意思決定や判断を任せる段階です。コミュニティを大切にし、自分が所属する集団や組織に従属することを選びます。
意思決定に関する価値観や基準を自分で持っていないことが多く、周囲の指示や状況を待ってから行動・思考する事が多いです。
(1990年の調査では、成人の75~80%がこの段階にある、となったそうです)

<自己主導段階>:
自分自身の価値観や判断基準で、意思決定をし、行動します。自己の独自の価値観を求め、自分のコアから出てくる思いから動こうとします。
自分の考えを言語化したり、自己を信頼し、自分の信念にもとった言動をします。自分の信念に対して対立する人にも、自分の考えをもとに、議論することができます。

<相互発達段階>:
自分の価値観を持ちながらも、全体感持ちながら、自分を捉えることができます。より広い視野を持つため、自己に固執することなく、自分自身を俯瞰的な視点で捉えて、周囲を尊重することができます。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

■勉強会からの学び

さてそんな著書の内容を理解した上でも「とはいっても成人発達理論ってなんなんだ?」「これどうやって使うのか?」ということで、湧き上がる様々な疑問があります。
その中で著者の有冬さんや参加者の方とのお話から、印象的だったものがありましたので、いくつかご紹介したいと思います。
(私の解釈が間違っているかもしれませんので、ご参考程度にどうぞ)

○発達段階は「良い悪い」ではない

まず印象的だったのが、発達段階は「良い悪いではない」と述べていたことです。なので、著書では第一段階・第二段階などと数字をつけていません。数字をつけると優劣に感じてしまうためです。

そもそも、人には遺伝、生育環境を含めて個人差があります。それぞれがそれぞれの人生の旅路を、その時々で歩んでいるわけです。
当たり前ですが、幼子が大人よりスゴイとスゴくなど評価できるはずもなく、「ただその人が今、その段階にいる」という事実があるだけです。

幼子の自分の欲求を貫こうとする姿は生命力に溢れたものですし、組織の中でコミュニティの価値観に従って動くことを良しとする人がいるからこそ、社会は安定します。なので「あの人は他者依存段階だからね」などと評価・判断するのは、望ましい使い方とは言えないようです。

発達段階が次の段階にいくかどうかは「神のみぞ知る」というような表現がありましたが、他者が強制力を持って動かせるものでもない、と述べていました。本人の準備が、何かのきっかけで整った時に、次の段階へ向かう葛藤などが起こるようです。

○発達は「視野獲得のプロセス」である

また上記にも関連しますが、興味深かったのが「発達とは、あくまでも視野獲得のプロセスである」と言われていたところです。

色んな視点(自分の思考、他者の思考、社会的なつながり、時間を超えた繋がりなど)を広く捉えることができるようになっていくのが「発達」なのですが、これだけでは自他ともにポジティブな結果につながるかどうかはわかりません。

たとえば、「発達(視点の広さ)」は進んでいても、「シャドウ」と呼ばれる、人への恨みつらみなどが未消化のままであれば、視点の広さを人と自分のために役立てることができず、いわゆる”ダークサイドに堕ちる”こともありうるようです。
ゆえに、「発達段階は良い悪いではない」という話もつながってくる、と改めて言えるようです。

まとめ
成人発達理論に関する書籍はいくつか読みましたが、その道の専門家のお話は、説得力も、奥行きもあり、書籍を読むだけでは浮かばなかった疑問や視点も得ることができました。

同時に、キーワードで出ていた「シャドウ」なるものの存在をどう解釈すればよいのか、とても気になるところでしたので、このあたりの考えももっと知りたいと思った次第です。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!

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