今週の一冊『体験格差』
(本日のお話 3154字/読了時間6分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は、家族で「浅草はなやしき」に行ってきました。
持ち込みOKとのことで、コンビニでおにぎりを買ってピクニック気分でいきました。
浅草周辺も外国人の方が非常に多く、お店も外国人向けになっており「訪日観光客こんなに増えてるんだ」と驚きました。
また夜は、大学院のランニング部の開催。
初めての夜&懇親会セットでしたが、合計30名ほど集まり、大変な賑わいでした。
みなさんが楽しそうな雰囲気で、嬉しい時間でした。
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さて、本日のお話です。
毎週日曜日は最近読んだ本の中から、おすすめの本をご紹介させていただく「今週の一冊」のコーナー。
今回ご紹介の一冊はこちらです。
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『体験格差』
今井悠介 (著) /講談社現代新書
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■体験格差とは
「生まれ」によって、個人が得られるチャンスが変わってくる。
以前話題にもなっていましたが、「東大生の親の40%超は年収が1000万円以上」という話もあります。経済的余裕があるから、高度な教育を提供できる、そして高度な教育により高所得が期待され、世代を超えて格差は再生産される、みたいな話です。
その他にも格差を生み出す要因はあるようですが(知性の遺伝など)、「親が子どもに提供できる機会」によって、子どもが影響を受けることは一つの事実のようです。そして、その中で本書で注目したのは「体験格差」というものです。
私達の住む日本には、休日の旅行やキャンプ、放課後のピアノ教室やサッカー教室など、子どもの成長に影響を与え得る多種多様な経験を「したいと思えば自由にできる(させてもらえる)を子どもたち」と、「したいと思ってもできない(させてもらえない)子どもたち」がいて、そこには大きな格差がある。このことを「体験格差」、と著者はいいました。
■体験は子どもに必要なもの
日本では、家族旅行やキャンプなどのレジャー活動や、水泳や書道などの文化的な活動は、「子どもが”ただ”大きくなる」上では必須なものではないと捉えられているのかもしれない、と述べます。
イギリスの調査では、「1週間以上の旅行」も「水泳」も「趣味やレジャー活動」も、70%以上の回答者が「子どもたちにとって必要なもの」と答えています。
対して日本は、それぞれ「一泊以上の旅行(30%)」「スポーツや音楽活動への参加(22%)と、比較すると日本は「体験は子どもたちにとって必要不可欠なものという期待値が小さい」とも考えられるデータも紹介されていました。
そして、これらの体験の有無は「社会情動的スキル」という非認知能力(忍耐力や自尊心、社交性など)に影響を与えることがわかっています。社会的情動スキルとは以下のようなものとされています。
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<社会的情動スキル(Social and Emotional Skills)とは>
(a)一貫した思考・感情・行動のパターンに発現し
(b)学校教育またはインフォーマルな学習によって発達させることができ、
(c)個人の一生を通じて、社会・経済的成果に重要な影響を与えるような個人の能力
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とされており、社会的情動スキルの例として、「目標を達成する力」「他者と協働する力」「情動を制御する力」「高い注意力」「柔軟性」「課題に対する粘り強さ(忍耐力)」「学習に対する自主性」などとされています。
そしてこれら能力を見てみれば、”個人の一生を通じて、社会・経済的成果に重要な影響を与える”という研究結果が出るのも、決して不思議なことではないでしょう。
そんな社会的・経済的成果にも影響を与えうる「体験」に格差があり、そして”たまたま”、”生まれによって”、体験を得られる子どもとそうではない子どもが存在し、世代を超えて再生産されているというのは、社会において向き合うべき課題と感じさせられます。
■体験格差の実態とは
本書では「体験」を2つに分けました。1つが、「放課後体験」(定期的なスポーツ・運動、文化芸術活動)と「休日の体験(単発の自然体験、社会体験、文化的体験)」です。
そして、小学生以下の児童がいる世帯に対して、年収と体験の有無をデータ調査を行い、その結果を分析しました。
その結果、「世帯年収が300万円未満の家庭は、世帯年収が600万円以上の家庭に比べて、「体験ゼロ」の子どもが2.6倍いる」ということがわかりました。
「体験をさせてあげられなかった理由」は「1位 保護者の経済的理由」であり、「2位 保護者の時間的理由(送迎、付き添い)」となりました。
その他、そもそも「親自身が子どものときに体験をしていなかった」というのも影響があったり、また「放課後の活動」のほうが定期的な出費になるためより体験をさせづらくなるという事実もわかりました。
あるいは、「世帯年400万円あっても、夫が外国籍で工場勤務、子どもが5人いる」というケースでは、実質子どもに体験をさせる機会はほぼ提供できない、というインタビュー調査の結果わかったこともありました。
また、この世帯の保護者は主にシングルマザーの方が多く含まれていることもわかりました。
■本書の構成
本書の構成は、、「第一部 体験格差の実態」において、体験格差の問題提起と、その実態調査を含めた現実を定量調査として2000人以上の保護者に対する質問紙調査の結果を分析することで、全体の傾向を数字とデータで示しています。
「第二部 それぞれの体験格差」では、インタビューで、保護者の「体験をさせられない現実」がどういう状況なのかを丁寧に調査をされています。
子どもの送り迎えの問題、子どもが親の状況を察して「やりたい」と言わない現実、、、そうした一つ一つの物語を理解することを通じて、読者が肌感覚を持って何が起きているのかを感じさせられます。
そして「第三部 体験格差に抗う」では、これらの体験格差を是正するための5つの提案として、NPO法人チャンス・フォー・チルドレンの代表である著者から、具体的な方策を示しています。
■読んでみた思ったこと
子を持つ親として、「生まれ」による格差がある現実は、考えさせられました。そして我が身を振り返っても、こうした「差」は見えていなかったことに気付かされました。
この本を読んだ後に、妻と話をしました。以前、妻から(家庭の金銭的事情により)「そもそも大学に進学するという選択はなかった」という話を聞いたことがあったからです。
妻に聞きます。「小さい頃、体験する機会ってあった?たとえば旅行とか。」。するとこう答えが帰ってきました。「家族旅行は年1回もないし、飛行機は30歳くらいまで乗ったことはないし、海外旅行は当然行ったことはなし、習い事もピアノは一応習っていたけど、それくらい」といっていました。
妻の両親は自営業であったため、バブル崩壊後は、かなり家計的にも厳しい状況が続いていたそう。相対的貧困とは言わずとも、体験の機会は、私に比べて少ないことが伺えました。
少なくとも、自分は塾にも行かせてもらったし、進研ゼミもやらせてもらえたし、水泳も習っていました。大学にも行かせてもらえました。でも、願ってもできない人がいるというのは、自分がラッキーだった、といえばそれまでですが、そんなガチャで決まる社会になっていることは、寂しいことだと感じさせられました。
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もう一つ、ある保育園を経営している方が、こういう事を言っていました。その方は、実は昔は「企業研修の会社を経営」していたのですが、その後「保育園の経営に事業を変えた」という経験を持たれている方です。
曰く、「大人になって、どうしても”やる気スイッチ”がつかない人がいた。というより、その種の人には”やる気スイッチ”そのものがないように見えた」とのこと。
そしてその理由を遡ると、「子どもの頃からの経験」があって、だからこそ幼少期の経験などで、子どもが体験をさせるチャンスを生み出さなければダメだとおもって、幼児教育に関わる経営を始めた、といっていました。そしてその方も、「できるだけたくさんの経験をさせること」が大事であるといっていました。
体験格差。この四文字に含まれる重みを感じさせられた書籍でした。自分の子ども以外に、どれだけの社会の課題も含めて、自分が貢献できるかは自信がないのですが、それでも多くの方に読んでいただき、知っていただきたい、そんなことを思った次第です。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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