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3793号 2024年7月13日

おすすめの一冊『やり抜く自分に変わる 超習慣力――悪習を断ち切り、良い習慣を身につける科学的メソッド』

(本日のお話 3443字/読了時間5分)

■こんにちは。紀藤です。

今日は、『習慣』をキーワードにした一冊について、ご紹介いたします。それでは早速まいりましょう!

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<ご紹介の一冊>

『やり抜く自分に変わる 超習慣力――悪習を断ち切り、良い習慣を身につける科学的メソッド』

ウェンディ・ウッド (著)/ダイヤモンド社
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■本書の特徴

人が「本を読む」において、いくつかの動機がある、なんて話を聞いたことがあります。リラックスしたい、刺激がほしい、感動したい、笑いたい、知りたい、学びたい、変わりたい、、、。 それらを全部的に整理することはここでは行いませんが、この本を通じて得られることを1つ挙げるならば、「習慣化の科学について網羅的に知ることができる一冊」といえそうです。

調べて驚きましたが、Amazonでは、「習慣」で検索すると、40,000件以上出てきて、さらに「超習慣術」と具体的に絞っても86件見つかりました。

超習慣術ありすぎだな・・・ということですが、それくらい習慣化というのは多くの人にとって興味があるテーマということになるのでしょう。

その中で、本書は、『GRID やり抜く』や『影響力の武器』など、学術的な根拠も示しつつ、多くの示唆を与えるベストセラー本の著者達が、「習慣化の科学について、今わかっていることをまとめた本」ということで絶賛している一冊とのことでした。

本書の紹介について、以下引用いたします。

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一流の研究者たちが大絶賛!
習慣の科学」第一人者が明かす、最も確実で信頼できる習慣メソッド! ダイエット、節約、勉強、禁煙…。目標達成が「できる人と挫折する人」の差は、意志の力ではなかった!
科学に基づいた行動をすれば、効率的にいい習慣が身につく!
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■本書の魅力的なポイント
さて、本書のポイントとして個人的に感じたことを、以下お伝えしたいと思います。

◯大学教授による、圧倒的エビデンスに基づいた内容

この著者は何者なんだ?と思うほど、習慣に関する歴史や、実験を、学説を、これでもか!というほど紹介をしています。よって、科学的な根拠を求める方にとっては、「知りたい」という欲求を十二分に満たしてくれます。

ゆえに、逆を言えば、「自分は、習慣化苦手なんです。何すればいいか手っ取り早く教えて」というHow toをわかりやすく知りたい人には向いていない、とも言えるかもしれません。

・そもそも習慣とは何か?・習慣とはどのようなメカニズムで生まれるのか?・そのためのプロセスは何が、どこまでわかっているのか?

そうした事実ベースで理解をすることで、自分の状況を分析し、実践を活用するという「読み解き&実践への落とし込み」をすることで、効果を発揮する著書とも言えるかもしれない、と思いました。

◯本書の目次

以下、本書の章立てと、コンテンツを引用させていただきます。データを中心にした構造であることが、見て取れるのではないかな、と思います。

(ここから)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
Part1 習慣とはなにか

■第1章 習慣と意志の力
「強い意志」を持つ人だけが成功するのか/「決断」は重労働/
「顕在意識」と「潜在意識」/自分を変えるためには「習慣」が必要/
ダイエット成功者でもリバウンドする理由/「習慣」は人生を変える

■第2章 無意識の習慣に目を向ける
習慣は無意識に行われるのか/習慣と性格の驚くべき関係/
人は「意識的」であることを重要視する/選挙の投票さえ習慣が支配する/
生死にもかかわる無意識下の習慣/創作も習慣力で花開く

■第3章 習慣の本質
「認知革命」がもたらした変化/認知革命の弊害/
意識と脳の解明/習慣の意外な性質/習慣の正体
繰り返しで意識を変える/状況、繰り返し、報酬
人間の重要な「手続き記憶」/決断すべきことに集中できる/
ベテラン消防隊長は習慣で命を救う

■第4章 習慣に知識は必要か
認識の変化は行動につながるのか/食べることは習慣になりやすい/
習慣形成時の脳の働き/習慣形成の神経的なメカニズム/
状況によって人の行動は変わる/意識的な行動は人を消耗させる/
ストループテスト

■第5章 習慣と自制心
自制の本質/自分の自制レベルを測る/自制心の高い人と欲求の関係/
成功には素晴らしい習慣がつきもの/行動を「自動化」する力/
ビル・ゲイツの習慣/ゲームを使った「欲求」の実験/
決断を迫られたとき、習慣が崩れる/「自分を制する」の本当の意味

 

Part2 習慣を形成する3つの要素
■第6章 「状況」をつくる
知識と意志は禁煙の手助けにならない/禁煙に失敗した本当の理由/
状況は行動を左右する/宣伝は「摩擦」を減らしている/
「近さ」は人の行動を左右する/仲良くなるにも近さが重要/
他者から受ける影響/「内省錯覚」の危険/人は状況が生む影響に気づかない

■第7章 「繰り返し」の絶大な力
脳に習慣を刻む/何回繰り返せばいいのか/
習慣形成のスピードアップ法/新しい習慣VS古い習慣
頭に浮かぶスピードが速いと行動も速くなる/
「繰り返す」と意志の力は不要になる

■第8章 脳が喜ぶ「報酬」を与える
報酬の設定/ドーパミンの重要な効果
報酬の効果を大きくする方法/「外在的な報酬」とは
ダイエットと報酬の関係/「不確かな報酬」の意外な効果
時間が空いても報酬の力は続く/脳が喜ぶ報酬で習慣を構築する

■第9章 最後の決め手は「一貫性」
自分の世界の一貫性を保つ/タイミングが重要
「他者の存在」も合図となる/習慣を発動させる合図の特徴
合図の確立は習慣形成の近道/一貫性と安定性がもたらすメリット
すでにある習慣を合図にする/

■第10章 習慣で日々の生活をコントロールする
摩擦を減らす/摩擦は自ら制御できるのか
自制心が高い人の状況の選び方/意志力に頼らない生き方
習慣とマインドフルネス

 

Part3 習慣がもたらす大きなチャンス
■第11章 習慣が壊れたときこそチャンス
習慣の断絶/「慣れ」は諸刃の剣/最大の断絶は「引っ越し」
断絶はささいなことで起こる/断絶の負の側面/
良い習慣は守り、悪習は断ち切る/驚異的な状況の力/
アスリートの移籍とパフォーマンスの変化

■第12章 習慣が持つ特別な耐性
ストレスと習慣の関係/「注意散漫」がもたらすデメリット/
習慣で生産性を高める

■第13章 習慣で幸せになろう
「単純な接触」が好意を生む/人は見慣れたものを好む/
ルーティンは自己肯定感を生む

■第14章 望む習慣が身につく社会
社会の環境を整える/健康な州・不健康な州を分かつもの/
健康は環境に左右される/「地理的効果」の影響/政策で問題を解決する
実践 頻繁にスマートフォンを見ないようにするには
おわりに

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(ここまで)

■面白かった点・学びになった点

以下、本書の中で特に印象に残った点、学びになった点についてご紹介いたします。

◯習慣化の鍵は「摩擦を減らす」こと

まず、著者が1つだけこの著書から覚えておいてほしいとして、述べているキーワードが「摩擦」でした。 習慣化をするは「摩擦を減らす」ことです。「摩擦」とは「やりやすさ・やりづらさ」のことです。

たとえば、「水を飲む」を習慣にしたければ、あらゆるところに水のペットボトルをおいて、手に取りやすくする(=摩擦を減らす)ことで、習慣化はされやすくなります。

一方、お菓子などの間食を減らしたいのであれば、「そもそも家にお菓子をおかない」ことで手に取りづらくする(=摩擦を増やす)わけです。こうすると、間食してしまうという悪習慣を遠ざけることができます。

これを、「他者(仲間づくり)」「環境(やりやすさを設計する)」「行為(ついでに行う仕組みにする)」などで、設計をしていくことがポイントです。

なお、ある実験によると、日常の行為の中で習慣的にやっている行動は「43%」であることがわかりました(1日の中で無作為にアラームがなった瞬間にやっている行動を書き出すと、大体43%位が無意識の行動だった)。

◯「習慣化」が目標に駆逐された歴史

もう1つ面白かったのが、「習慣の歴史」の話でした。著者のウェンディ・ウッド氏、南カリフォルニア大学の心理学部の教授であり、学習理論にも詳しい方です。

そこでは、条件づけの実験(バーを押すと餌が出るラットの実験)や、認知心理学の歴史なども振り返りつつ、「習慣」というキーワードがどんな歴史を辿ったのかを振り返ります。

そうすると「認知心理学」という意識して行動したことに重点をおく流れから、「目標」をいうキーワードがぐっと伸びることになりました。そして、そのかわりに「習慣」という無意識行動に関する研究や注目は、鳴りを潜めた歴史があったようです。

ただ、「目標立てて行動する意志力」も大事だけど、「無意識で行っている習慣」が成果に大きな影響を与えているよね、ということで、また2000年後半頃から急激に注目され、今に至っているということがわかります。

■まとめと個人的感想

「習慣の科学」ということで、骨太な一冊ですが、Amazonでの評価についていえば、そこまで高くないようでした。
理由を想像したときに、もしかすると「習慣化」について興味を持つ人のニーズとして、「習慣の科学を学術的に知りたい」よりも「何をすれば習慣化できるか教えてほしい」という思いがあったのかもしれないな、などと推察いたしました。
そういう意味では、やや濃厚すぎる(?)ということもあるのかもしれない、と本を出すということの難しさも感じた次第です。いずれにせよ、勉強になる一冊でした。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!

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