研修の値段は、どうやって決まるのか
(本日のお話 2542字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
先日にて5日連続の終日研修が終わりました。
週末は、管理職問題について登壇の機会をいただき、続いてプロアクティブ行動研修、リーダーシップ&マネジメント研修などなど。いずれも新しいチャレンジが含まれており、私自身、多くの気づきをいただいた時間でした。改めて機会をいただきました皆様、そして参加者の皆様に感謝!でございます。
さて、本日のお話です。
ある経営者の方が「値付けは経営である」という稲盛和夫氏の言葉をよく引用して話をされていました。
その話を聞くたびに、小さいながらも会社を経営している者として「本当にその通りだよな」と思うと同時に、「値付けって本当に難しいよな」とも思うのでした。
今日はあんまりおおっぴらには語られない、(特に研修業界の)値付けの話について、書いてみたいと思います。
それでは、まいりましょう!
■値段という、曖昧なもの
先日こんな話を聞きました。ある人が、テーマパーク(U◯J)のチケットを予約した時、ファストパス的なものを家族分買ったら、合計20万近くになったとのこと。元々そんなにするとは予測しておらず、「ハア?!」と腰を抜かした、という話です。
いわゆる「ダイナミックプライシング」というやつで、需要と供給のバランスで、高い時期とそうでない時期がある、というものですね。どうやら、その方は「入場側の需要がめちゃくちゃ高い時期に買ってしまった」ようです。
一般的に、価格というのは伸び縮みするもので、同じサービスでも非常に流動的になるようです(私も、歯科矯正のインビザラインをやりましたが、それも150万くらいするのもあれば、60万くらいでできるのもあって何が違うんだ?!と不思議に思います)
■「研修の値段」はどうやって決まるのか
さて、研修業界も、値段の幅が非常に広いことで有名な業界でもあります。同じ1日の研修でも、数万円~数百万円まで、実に幅広いです。
あるいは、業界や、土地によっても変わってくることもあります。たとえば「地方と都市の価格設定の違い」というものがあります。実際の話しですが、ある地方の会社に半年間の理念浸透のプログラム(介入4回+フォローアップ)を行ったとき約100万円だったのに対し、同じ内容を大企業で行うと500万円になる、という事が起こります。
あるいは、有名な経営コンサルタントが話をすると2時間で300万円、弟子的な人が話をすると2時間50万円、ということもあります。顧客が何に価値を感じるのか、また顧客がどれくらいの予算を適性と思っているかによって、大きく変わってくるものです。
なんとも掴みどころがないようですが、これが実態にように思われます。
■値付けの代表的な3つの方法
さて、そんな難しい価格設定ですが、マーケティングの理論の中で、代表的な3つの方法があるとされています。『知っておきたい「価格戦略」 顧客が満足、利益上げる値付けノウハウ』日経XTREND記事より、以下引用いたします。
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<代表的な価格設定方法の3つ>
(1)原価志向型(原価に一定の利幅を確保する「マークアップ方式」など)
(2)需要志向型(顧客がどの程度の金額を支払うかの基準を調査して決める「知覚価値価格設定法」など)
(3)競合志向型(競合企業の価格に基づいて設定する「現行レート価格設定法」など)
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00938/00009/
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つまり、先ほどの「地方と都市の研修価格の差」でいえば、(2)需要志向型の価格戦略となり、価格の違いが生まれているといえそうです。
■研修の価格設定の話
さて、私がいる研修業界で、弊社も価格設定をするわけですが、このような流動的な中ですので、どのあたりに自分の価格を設定するかは、実に悩ましいのです。
駆け出し個人事業主では1日10万円で研修をします、ということもあります。
あるいは、クライアントが中小企業やNPO法人などでは(2)需要志向型でいけば、なかなか高い金額を提案するのは厳しいこともあるかもしれません。
一方、大企業のエグゼクティブ向けリーダーシッププログラムですと500万円/1名というのもありますし、1つのプログラムを全社に浸透させる上で、数千万円以上かけていくことも珍しくないことも。(私も実際に前職ではそのような提案をしていました)
そんな中で、こと研修業界において、どのように研修の価格を設定するか?を考えたときに、重要だと感じているのは、「自分の価値提供の軸を決める」ことでした。
私なりの軸というのは
(1)顧客をどの層を中心とするか
(2)自分が提供できる価値をどの程度と考えるか
の2つの観点です。
具体的にいえば、「(1)顧客をどの層を中心とするか」においては、「人材・組織開発に投資しようと思っている会社であること」を軸にしています。
そして「(2)自分が提供できる価値をどの程度と考えるか」については、大手の研修会社以上の価値を、個別事情に併せてカスタマイズし、しかもそこよりは価格は安い(費用対効果が高い)ことを狙って提案をさせていただています(少なくともそんなつもりです)。
■まとめ
「値決めは経営である」。その言葉の真髄を理解できているとは甚だ思えませんが、それでも、「誰を顧客にして、何を価値として提供するのか」を決めなければ、全ての活動がブレてしまうことは感じます。
同じ提案でも、その都度どこかだけが高く、どこかだけが安いなどと見積もりのたびに迷えば、売上目標や営業の方法もブレて、価値提供にも集中できなくなってしまうのでしょう。
・講演として話すパターン
・パッケージ化された人材開発系の研修
・オリジナルで作成するカスタマイズ研修
・伴走するプロジェクト型の組織開発
・プログラムの開発のみの案件
などなど、それぞれ必要な準備や工数、労力も変わってきます、
自分が提供している価値は何か。それは、どの程度の価格で提供されるべきものか。そして何より、顧客にとって喜んでもらえるもの品質と価格のバランスか。
自社と顧客、それぞれのWin-Winを真剣に考えていくこと。長期・継続的に発展し、貢献する上でも、とても重要なことなのだろう、そんなことを思います。
様々な案件が増えてきて、提供価値のパターンが増えてきている中で、改めて腰を据えて考える必要があるな、そんなことを思っている次第です。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!
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