研修をやったことがない大学生に「研修設計とファシリテーション講座」を実施して思ったこと
(本日のお話 3256字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
お盆も終盤ですね。
そんな中ですが、先日は大学生向けにある勉強会を実施させていただきました。
今日はそのお話をお伝えできればと思います。
*
「研修ファシリテーションについて、ゼミ生に教えてもらえませんか?」
3週間前、大学院でお世話になった先生から、突然メッセンジャーにてご連絡をいただきました。
尊敬している先生からのご依頼、お断りする理由もありません。
また「何かを教える」という機会は何より自分の学びになります。
よって「はい、よろこんで!」と居酒屋仕込みの高速リターンをお返ししました。
研修設計も日常的に行いますし、年間100日くらいは研修を実施しています。しかし思えば、「研修設計やファシリテーション」については、誰かに”教える”なんてことは、今までやってきていませんでした。
よって、正直、結構不安・・・。
とはいえ時間はめぐり、先日2時間のレクチャー&個別相談の実施が無事終了しました(たぶん)。先生は良かったですよ、と言っていただきましたが、個人的な感想としては「研修設計やファシリテーションについて、自分はまだまだ知らないと痛感した」というのが本音でした。
今日はそんな体験からの学びを、皆様に共有させていただきたく思います。
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<目次>
・「研修設計」のおすすめ本
・「研修ファシリテーション」のおすすめ本
・悩ましき「何をどこまで伝えるか問題」
・「ケースバイケースだよね」とはいいたくないけれど
・まとめ
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■「研修設計」のおすすめ本
研修企画・設計も、ありがたいことに様々な書籍がまとめてくれています。私もそれらの本やセミナーから学んできました。
ちなみに私が、主に参考にしているのは2冊です。
1つ目が、ボブパイク氏の『研修デザインハンドブック』というもの。
参加者が主体的に参加してくれるためのノウハウが詰まっている、グローバルで15万人への講師育成プログラムを書籍化したもの。たいへんわかりやすく、活用しやすいです。
あえて難点を言えば、「リビジット」など日本語にはなかなか訳しづらいものが掲載されていることでしょうか。
2つ目が、中原淳先生の『研修開発入門』です。
企業研修の入り口から出口まで網羅されている、研修講師のお家にはぜひ一冊置いておきたい著書。
研修企画する際の、経営・人事・現場のニーズを確認することから始まり、研修設計に際してどのようにタイムテーブルを組むのか、オープニングをどうするのか、研修評価の考え方やアンケートの作り方など、網羅されています。
外部講師と社内講師の比較や人材開発にまつわる理論まで網羅されており、研修開発については最高の一冊と思っています。
その他にも、大学院で研修を設計する際に参考図書として学んだ『看護のためのファシリテーション』なども参考にしながら、私は研修を企画・設計している、という現状です。
そして学生さんには、そこから「研修企画のためのワークシート」「研修設計のタイムテーブル表」をお送りして、学部の皆さんに考えてきていただきました。
■「研修ファシリテーション」のおすすめ本
次に、研修のファシリテーションです。
「ファシリテーション」と一口に言っても、「会議のファシリテーション」「研修のファシリテーション」など、意味が若干違っています。
ファシリテーションの役割として「進行・調整・介助」の3つがある、という話もありますが、”その場を円滑かつ効果的にサポートするのがファシリテーション”というのは共通しているようです。
よって「研修ファシリテーション」とすると、以下のような具体的な行動が含まれるようです。
・参加者との関係づくり
・アクティビティのわかりやすい説明
・アクティビティの時間調整と巻き込み
・参加者への「問いかけ」
・参加者との対話における振る舞い(受け止め・承認など)
・学びに集中できる環境づくり(会場設営・小道具など)
またその他にも、難しい参加者にどう対応するのか、難しい場面でどうするか、なども含まれ、実に多岐にわたります。
これらのことについては、ボブパイク氏の『研修ファシリテーションハンドブック』に色々書かれています。
■悩ましき「何をどこまで伝えるか問題」
さて、そのようにいくつか主要なポイントは先人が言葉にされています。
読むと「そうそう!これめっちゃ大事なんですよねー」と共感するところも多々ある。ただ難しいのが、
”研修設計やファシリテーションを「研修をやったことがない学生さん」にどう伝えるのか?”
ということです。
社会人を相手に1.5時間の尺のワークショップを設計することも決まっている。何をどこまで伝えるべきか、、、などは非常に悩ましいものです。
たとえば、「難しい参加者への対応方法」なんて伝えても、「?」となりそう。「質問の受け答え方法」などを伝えても、まだ設計段階の学生さんには、フィットしない気もする。。。
あれもこれも伝えても意味不明になるでしょうし、学生さんも、プログラムの作成も途中の中で、一体どこまで、何を伝えられるのか。何を伝えるべきなのか・・・。わからない中で考えて、結果的に
「アクティビティの説明の伝え方のポイント」「研修前や中でのファシリテーションのポイント」など、最小限のものにフォーカスをしてお伝えし、あとは個別相談会で対応することにしたのでした。
■「ケースバイケース」とはいいたくないけれど
オンラインで、皆様の様子が何とも見えづらい中でしたが、レクチャーは一応終えます。班ごとに10分くらいでも受けていた個別相談会へと移ります。
すると、色々と質問をいただきました。
たとえば、
「このワークが受けなさそうで心配。どうすればよいか?」
「オープニングのつかみでいいアイデアはないか?」
「事前の目的はどの程度の深さまで明かすとよいのだろうか?」
「アクションプランはどの粒度までやるとよいか?」
「どのアクティビティを短くできそうか?」
・・・などなど。
そして思います。「むずい」・・・と。
何かしら答えたいとは思い、頭をひねるのですが、ほとんどの質問が、なんとも難しい。主観ではこうしたほうがいい気もするけど、好みの問題も気もする。「やってみないとわからない」「ケースバイケースです」という答えばかりが浮かびます。
いつも研修をやっていても、一つのワークをつくるのは「産みの苦しみがある」と思います。自分でも機能するかわからない。だからメンバーで話し合って、シミュレーションをする。そしてリハーサルをして感触を確かめる。
何度も色んな人に実践して、「こういうリアクションになるんだ」と肌で確かめる。それでしか「効果的なワーク」の自信など得られないと、私は思っているからです。
ただ、「やってみないとわかりません」「場数です」といったら、私は何のために個別相談会をやっているのか、となります。なので、冷たい汗が滲みながら、自分なりになんとかお伝えする中で、
「ああ、答えってないんだな」
「大人も悩みながらやってるんだな」
と、本筋の疑問の回答にはなっていなさそうですが、それらのことは伝わったのではないかと、思うのでした。
そして、その2時間を通じて、自分自身が、研修設計・ファシリテーションにおける様々なパターンを経験しきれいてない、そして持論にもできていないことに気づき、まだまだこの道のりの遠さに、目を細めるのでした。
■まとめ
今回の機会を通じて思ったことは2つです。
1つ目は、「教えると、自分が一番学びになる」こと。
これは、もう口に出して言うまでもないほどの、真理です。
だから、こうした機会は本当に感謝しかありません。
2つ目は、「いかに自分がわかっていないのかがわかった」こと。
研修を年間100回やったとて、実は同じようなパターンを繰り返していたようにも思います。
様々なパターンを経験し、振り返りと改善をすることで、経験が教訓となり、持論となっていきます。しかし、私はまだまだその道に至るための経験と振り返りが足りていない、まだまだできることがある、と感じました。
1つ1つの研修にも妥協はしていないつもりですが、とはいえ伸びしろも大いに感じる時間でした。いずれにせよ、学生の皆さんの研修実施にとって、プラスになっていることを願うばかりです。
改めて、T先生、ゼミ生の皆さま、素晴らしい機会をありがとうございました!良い研修実施ができますよう、応援しております。
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