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3833号 2024年8月23日

「自己が高揚する」と「本当の自分らしい感覚」が高まる?! ~5つの実証研究からわかったこと~

(本日のお話 2651字/読了時間4分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は10kmのランニングでした。
暑いと、1.5倍くらいきつくなりますが、
汗をかいた後は本当に気持ち良いです。
ご飯も美味しくて、幸せ。



さて、先日は「オーセンティティティ(真正性、本当の自分らしさ)」について論文からの学びをお伝えいたしました。

前回のお話では、自己肯定感が高いとき(=自己高揚:Self Enhancement)に、「本当の自分らしさ」を感じやすいという、自己認識やバイアスから生まれる傾向についてお伝えいたしました。(詳しくは以下)
https://note.com/courage_sapuri/n/n32c729c1b474

これらのものは、「本物の自分らしい感覚は、自己高揚から生まれる自分である」という”予備的な証拠”を示したものでしたが、実際に本当はどうなのだろうか? について、論文の後半では、5つの研究から紐解いています。

ということで、内容を見てまいりましょう!

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<今回ご紹介の論文>
『真正なる自分は、自己高揚する自己である:オーセンティシティの自己高揚フレームワーク』
原題:Guenther, Corey L., Yiyue Zhang, and Constantine Sedikides. 2024. “The Authentic Self Is the Self-Enhancing Self: A Self-Enhancement Framework of Authenticity.” Personality & Social Psychology Bulletin 50 (8): 1182–96.
――――――――――――――――――――――――――――――

<目次>
本論文の概要
自己高揚(Self-Enhancement)とは
5つの実証研究
研究1:「自己評価とナルシシズム」と真正性の関係
研究2:「日記調査」による翌日の真正性への影響
研究3:「高評価のフィードバック」が真正性に与える影響
研究4:「自己高揚」が「真正性」と「人生の意味」に与える影響
研究5: 「真正性」が「自己高揚」「人生の意味「に与える影響
まとめ

■本論文の概要

・これまでの研究から「真正性(≒本当の自分らしさ)」は幸福度や自尊心と相関するものとして研究がされてきた。
・「真正なる自己(Authentic Self)」を自分自身がどう感じるかは、自己認識の気まぐれや、自己評価バイアスなどの影響を受けるものである。
・これまでの研究では、自己高揚(自己をポジティブに認識するとき)に、真正性を感じやすいという予備的証拠が上げられた、
・本研究では、自己高揚(Self-Enhancement)と真正なる自己(Authentic Self)が双方向に関係しているという枠組みを提案した。
・具体的には、5つの実証研究を通じてこの仮説を検証し、「自己高揚」が一貫して「真正なる自己」を向上させることを確認した。

というものです。

■自己高揚(Self-Enhancement)とは

まず、前回も出てきた「自己高揚」という概念ですが、以下のように説明がされています。

「自己高揚」とは、自己評価を行う際の「自己動機」の一つの種類です。
人は「自分をある程度肯定的に捉えたい」と思うものですが(広く自尊感情や自己肯定感と呼ぶ)が、この自尊感情を維持し、高めようとすることを「自己高揚動機」と呼びます。

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<自己高揚(自己評価を維持・向上させる)の特徴的な傾向>
(1)ポジティブな自己イメージの保持: 自分をポジティブに捉えようとする傾向があり、自信や自己肯定感の維持に繋がります。
(2)自己奉仕バイアス: 成功を自分の能力や努力に帰属し、失敗を外部要因に帰属する傾向があります。
(3)比較による自己高揚: 他者との比較において、自分をより優れていると認識することで自己評価を高めます。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

さて、こうした「自己高揚」が「真正なる自己」につながるということですね。さて、では具体的にどのような実験を行ったのでしょうか。

■5つの実証研究
具体的な研究内容を、以下まとめます。

◯研究1:「自己評価とナルシシズム」と真正性の関係
・対象者: Creighton大学の学部生185名
・調査内容: 自己高揚と真正性がどのように関連するかを調査しました。具体的には、「平均より優れている」という自己評価(BTAE)とナルシシズム(NPI-16)を測定し、これらが真正性尺度(AI-3)とどの程度関連するかを分析しました。
・結果:BTAEスコアと真正性全体は、強い正の関連が見られました。またナルシシズムスコアも、真正性全体およびいくつかの尺度(例:客観的な自己評価)と正の相関を示しました。

◯研究2:「日記調査」による翌日の真正性への影響
・対象者: Creighton大学の学部生121名
・調査内容: 7日間にわたって日記調査を実施し、自己高揚(BTAE尺度)と日々の真正性(Southampton Authenticity Scale)がどのように関連するかを測定しました。
・結果:1日の自己高揚が翌日の真正性に影響を与えることを確認しました。

◯研究3:「高評価のフィードバック」が真正性に与える影響
・対象者: Creighton大学の学部生275名
・調査内容: 参加者に性格テストの結果として高評価または低評価のフィードバックを提供し、そのフィードバックが真正性に与える影響を調査しました。
・結果:”重要視される特性”に対する「高評価のフィードバック」が真正性を高めることを発見しました。

◯研究4:「自己高揚」が「真正性」と「人生の意味」に与える影響
・対象者: Prolificで募集したアメリカの成人360名
・調査内容: 参加者に過去または未来の自分に関する「ポジティブな自己反映(自己高揚)」または「ネガティブな自己反映(自己卑下)」を行わせ、その後の「真正性」と「人生の意味(Meaning in Life, MIL)」への影響を測定しました。
・結果:自己高揚が真正性を高め、その結果として「人生の意味」が増すことが確認されました。

◯研究5: 「真正性」が「自己高揚」「人生の意味「に与える影響
・対象者: Prolificで募集したアメリカの成人442名
・調査内容: 参加者に真正性を感じた経験、非真正的な経験、または中立的な経験を思い出させ、その後の自己高揚、MIL、および心理的充実感(Thriving)を評価しました。
・結果:真正性を感じた場合、自己高揚が強まり、その結果としてMILと充実感が高まることが確認されました。

■まとめ
色々な角度から、様々な尺度を活用して、「自己高揚」と「真正性」の関係を調べた、興味深い論文でした。

「自己高揚」は心理学の用語であり、その上位概念には「自己動機」があり、さらにその上位概念には「自己評価」があるようで、経営から心理学の方に広がっている感覚があります。
人間の営みを知るには、こうした心理学の基本的な事も理解する必要があるんだなあ、と感じた次第です。勉強になりました。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!

※本日のメルマガは「note」にも、図表付きでより詳しく掲載しています。よろしければぜひご覧ください。

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