人が変われない本当の理由とは? -「免疫マップ」から考える-
(本日のお話 2053文字/読了時間2分)
■こんにちは。紀藤です。
人材開発・組織開発関連で、比較的有名なモデルとして『免疫マップ』というものがあります。
これは成人発達理論で有名な、ハーバード大学教育学大学院のロバート・キーガン教授、レイヒー氏らによって『なぜ人と組織は変われないのか』の中で提唱しているモデルです。
今日はこちらの本から、「免疫マップ」に関する気づきを記述させていただければと思います。それではまいりましょう!
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<目次>
「免疫マップ」とは
変わるために「固定観念」を認識しよう
知性を高めるのは「葛藤」である
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■「免疫マップ」とは
人は「望ましい行動がわかっていても、行動を変えられない」ことがしばしばあります。わかっちゃいるけど、できない・・・。このときに、その人の内側で何が起こっているかを説明したものが、『免疫マップ』です。
要は、掲げている「改善目標」に対してブレーキとなっている「裏の目標」があり、それが改善目標を阻んでいる
「1.改善目標」「2.阻害行動」「3.裏の目標」「4.強力な固定観念」という4つの構成で表され、それらを並べた表で免疫マップは示され、それが「人が変われない本当の理由」を示しています。
わかりやすくするために、『なぜ人と組織は変われないのか』で示されている、あるマネジャー・デーヴィッドの例を紹介します。
まず彼は、「1.改善目標」として、「マネジャーとして重要課題に集中的に時間を使う」(そのために、権限委譲を行う、部下に望む結果をはっきり示す、異なるアプローチを認める)などを掲げました。
しかし「2.阻害行動」として、「すぐに新しいことに手を出して仕事を増やす」「大量の仕事を抱えて、家庭、趣味、睡眠などを犠牲にする」「力を貸してほしいと頼めない」などが起こっていました。
この阻害行動の「3,裏の目標」としては、「他人に依存せず、万能でありたい」「チャンスを逃したくない、遅れを取りたくない」「自己犠牲の精神の持ち主でありたい」などがあったのでした。
そして裏の目標を支える「4.強固な固定観念」として、「他の人に頼ったり、多くのことを上手に実行できなかったりすれば、自尊心を失う」「課題をやり遂げなければ価値ある人材ではない」「自分を最優先にして行動すれば、薄っぺらいー自分が大嫌いなタイプのー人間になってしまう」などがある、という形です。
■変わるためには「自らの固定観念」を認識する
では、これらの免疫マップを含めて、人が変わるにはどうすればよいのでしょうか? そのための一つのステップが、
「自分の中にある『強力な固定観念』」を認識すること」
だと述べられています。
なぜなら、自分の何が「改善目標に対してブレーキになっているか」を認識しなければ、そのブレーキを緩めることも、コントロールすることもできないからです。
補足をしておくと「裏の目標」や「強力な固定観念」それ自体が悪いものではありません。今の自分の結果を支える重要な信念であることあります(なので「免疫」と呼ぶのです)。実際、例のデーヴィットの場合も、ハイパフォーマーとして活躍していました。
しかし、その「免疫」が別の場面で、足かせになることがある、ということです。
たとえば、マネジャーとして部下の成長に責任を持つ」ことになったとき、個人で成果を出す「職人であるべきという信念」は手放さなければジレンマに陥ることがあるわけです。
そのときは、個人で成果を出し、自らも率先して動く「職人であるべきという信念」の機能を、立ち止まって考え直す必要がある、と言えるでしょう。
そして、それには本書の著者キーガン氏が述べている「知性の発達(成人発達理論)も関連してくるのです。つまり、「自分だけ」という視点から「全体のため」という視点への変化です。
■知性を高めるのは「葛藤」である
「人間の知性を高めるために必要なのは『適度な葛藤』である」(P76)と本書で述べられていました。
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<人間の知性が高まるために必要なこと>
挫折、ジレンマ、苦境、私的な問題に悩まされ続けること。
それにより自分が現在持っているアプローチの限界を思い知らされること。
その葛藤から逃れたり、重圧を和らげたりもできない状況に身を置くこと。
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とのこと。こうしたときに、人は自分を変化させる必要性に迫られ、そして変わっていくことになるそうです。
そのときに、『免疫マップ』は、現状の自分を分析するために役立ちます。
そして、何がブレーキになっているのかを自覚することができます。
逆にいえば、人は変わりたくない生き物とも言えるので、必要に迫られないとなかなかその「強力な固定観念」を手放すことは難しい、、、とも言えるのかもしれません。それでも、まずそれを見つめることで、「本当にその固定観念は正しいもの(自分や周りにとって有益なもの)ものなのか、吟味することもできるのでしょう。
再読でしたが、改めて発見がある良書でした。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!
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