おすすめの一冊『シン・人事の大研究――人事パーソンの学びとキャリアを科学する』
(本日のお話 2633文字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
毎週日曜日はおすすめの一冊をご紹介するコーナー。本日ご紹介の一冊はこちらです。
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今週の一冊
『シン・人事の大研究――人事パーソンの学びとキャリアを科学する』
田中 聡 (著), 中原 淳 (著), 『日本の人事部』編集部 (著)
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人事部門で働く1500名以上の方に調査をし、「人事パーソンの仕事論」「学び論」「キャリア論」について論じている著書です。
人事は日本に約30万人いるとのことですが、特に人事に関連する仕事をされている方、またキャリアにおいて人事を志す方には、大変参考になる内容が、データ分析とインタビューで明らかにされています。
それでは、本書からポイントを見ていきたいと思います。
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<目次>
序章:これからは「人事」の時代
第1章:人事パーソンの仕事論
人事の具体的な10の機能
人事の4つの役割
人事の課題の3つの特徴
第2章:人事パーソンの学び論
人事パーソンが学ぶべき3つの領域
第3章:人事パーソンのキャリア論
まとめ
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■序章:これからは「人事」の時代
序章では、「人材の強化」など「人」にまつわる問題が現在も、そして3年後、5年後も最大の経営課題として取り上げられている事実を述べています。
そんな中では人事がかつては「会社を陰で支えている黒子役」だったかもしれない中で、「人事が主役の時代」と言っても過言ではないのでは、と人事の仕事の重要性について触れています。
特に、人事の仕事に生じている3つの質的変化として、
1)課題解決型人事
2)テクノロジーへの対応
3)データに基づいた人事
が取り上げられていることが述べられていました。
一方、そのような重要な立ち位置に人事がなってきているものの、「人事の教育は後回し」、たとえば、1on1を事業部には推奨しておきながら、人事ではやっていないとか、自分自身がキャリアについて考える事ができていない、、、などの事実もあるようです。
よって、本章では人事パーソンの「仕事論」「学び論」「キャリア論」として、データ結果を元に論じていきます。
■第1章:人事パーソンの仕事論
まず人事パーソンの仕事論についてですが、「人事の仕事」と一言でいっても、実に様々な仕事があります。
◯人事の具体的な10の機能
その中で、人事の代表的な機能としては10種類にまとめられるとのことで、以下のように紹介されていました。
1) 採用、2)育成・キャリア開発、3)異動・配置、4)制度・企画、5)給与・評価、6)労務・組合関連・福利厚生、7)人事データ管理・分析、8)ダイバーシティ&インクルージョン、9)組織開発・従業員調査・組織活性化・風土改革、10)健康経営・メンタルヘルス
2)
とのことです。なるほど、言われてみればですが、実に様々ありますね。
◯人事の4つの役割
そして、人事には様々な「役割」があることが知られています。
ミシガン大学教授、デイビッド・ウルリッチが提唱した「戦略人事」のフレームワークが有名です。
まず、人事のコア機能である「管理エキスパート」をスタートとして、1990~2000年代には「戦略パートナー」へ、そして2010年代には従業員の声に耳を傾ける「従業員チャンピオン」としての役割も強まりました。
そして、現在では自社のパーパスの見直しなども含めた「変革エージェント」としての役割が求められるようになっています。これらをまとめたものが、4象限のマトリクスとして知られています。
◯人事の課題の3つの特徴
そして現在の「人事パーソンの仕事論」の中では、3つの仕事の特徴として、以下の3つの特徴がある、とのことでした。
1)「新規課題沼」(新しい課題がどんどんでてくる)
2)「エンドレスワーク」(成果が見えづらく、数年がかりの仕事も多い。そのため仕事に終わりがないように感じる。加えて始めたものはやめる事ができない傾向)
3)「社内ぼっち」(オープンにできない人事情報を扱う、現場から理解されないなど)
とはいえ、「人事は他の職種に比べてエンゲージメントも高い傾向」もあり、また「人事パーソンの8割が仕事を天職と感じている」というデータも紹介されていました。
大変なこともあるけれども、魅力的な仕事が人事、といえるのかもしれませんね。
■第2章:人事パーソンの学び論
第2章では、人事パーソンが身につける「学び」について取り上げられています。これは非常に頷いてしまうのですが、「学びを促す人事パーソンが、学んでいるか?」と問われた時に、意外と自信を持って首を縦に触れない方も、実は少なくないのでは、、、ということです。
やはり人事パーソンたるもの、「自らも学び続ける存在」でなければなりません。
◯人事パーソンが学ぶべき3つの領域
では具体的にどのような学びが必要なのか? 以下3つが挙げられていました。
1)経営・事業の理解
2)組織・人の理解
3)社会・法の理解
そして、「専門性」を磨く上で、理論と経験の往還をすること、かつ、専門性とは固定的で変わらないものではなく、常にアップデートし続けていく必要があることも、納得だな、、、と感じました。
特に、ジョブ・クラフティング、フィードバックシーキング、1on1などを積極的に行っている人事パーソンは、ハイパフォーマーであることも高い傾向があったとのことで、学びの重要性を改めて感じます。
(私も「経営」「法」などについて、まだまだ不勉強なので、勉強しないとな・・・と読みながら思ってきました)
■第3章:人事パーソンのキャリア論
そして最後の第3章は「キャリア」です。
人事パーソンのキャリア充実度(パフォーマンスと幸福度)、キャリアの中で、若手のときに1)若手期(20-34歳)に下降していき、2)中堅期(35-44歳)で上昇気流にのり、3)ベテラン期(45歳以降)で低下していく傾向が見られるそうです。それぞれ、起こりがちな停滞感の理由と、その対策も述べられています。
それぞれ本書においては、起こりがちな停滞感の理由と、その対策も述べられています。人事でキャリアを築いていく方には、大変参考になると思いましたし、それ以外でも同様のことが言えるのだろう、と思いました。
■まとめ
私は「人事パーソン」ではなく、外部支援者として人事の方のサポートをしています。読みながら、関わらせていただいている人事パーソンの方々の顔が浮かぶような著書でした。
人事はこれからどんどん求められていく仕事だと思います。
一方、どのように専門性を磨けばよいのか、どのようにキャリアを考えればよいのか、、、これまでそれらの道筋は、見えづらいところがあったと思います。
しかし、本書において人事パーソンの「仕事論」「学び論」「キャリア論」と、1500名以上の人事パーソンの調査と、これからの企業を取り巻く環境と、理論的な知見を組み合わせることで、地球の歩き方のような「人事の歩き方」のような本だと感じました。
ぜひ人事に関わる方にはおすすめしたい一冊と感じた次第です。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!
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