ジョブ・クラフティングを継続させる4つの支援 ~読書レビュー『ジョブ・クラフティング』#5~
(本日のお話 2514文字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日と本日は、大学院の仲間との
「ジョブ・クラフティング研修」の実施サポートでした。
実に充実した時間で、私自身、多くの学びがありました。
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さて、本日のお話です。
ジョブ・クラフティング(以下、一部「JC」と表記)の初の研究書『ジョブ・クラフティング』について、本日も読書レビューをお届けいたします。
本日は「第5章 ジョブ・クラフティングを続けるための周囲の支援」からの学びです。
ここからは「第2部 ジョブ・クラフティングの実践と課題」と、より実践的な章になってきており、現場で活用できそうなお話も出てまいります。
ということで、早速中身を見てまいりましょう!
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<目次>
ジョブ・クラフティングに対する2つの疑問
ジョブ・クラフティングを継続させるもの
ジョブ・クラフティングの負の影響
まとめと個人的感想
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■ジョブ・クラフティングに対する2つの疑問
さて、ジョブ・クラフティングは「個人が自ら仕事にひとさじ加える行動」として、”個人”が”自ら”という点に、概念の重要な部分が含まれています。
一方、「個人だけ」なのか?というと、そういうわけでもありません。
「ジョブ・クラフティングを続けるための周囲の支援」もその行動の発生と、継続に重要です。ということで本章では、以下2点の問題を提示しています。
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まず1つ目は、「継続するための支援」とは何か?です。
たとえば、「ジョブ・クラフティングはあなたから始めるんだからね。よろしく頼むよ!じゃ!」で完全に”個人任せ”だったとしたら、どうか。
その場合、JCの実施や継続にポジティブな影響があるかというと、疑問符が浮かびます。本人が大事なのは当然。でも「組織や上司からの支援があったほうがジョブ・クラフティングも継続する可能性が高まる」と考えられるのは、至極当然のように思えます。
そして2つ目が、「ジョブ・クラフティングがもたらすネガティブな影響」とは何か?です。
何事もやりすぎると、ネガティブな影響が発生するものです。ジョブ・クラフティングも全面的に良いものなのか? と考えると、別の視点から見ると負の側面も考えられそうです。
ということで、上記2点を、製薬・IT・ファシリティマネジメントの3社において、本人ならびのその上司や同僚、人事にインタビューを行い、質的調査を行ったのでした。
■ジョブ・クラフティングを継続させるもの
さて、インタビュー調査によって、どのようなことがわかったのでしょうか?
まず、「ジョブ・クラフティングを継続させるものは4つに分類することができることがわかった」と述べています。以下、紹介いたします。
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<ジョブ・クラフティングを起こし、続けるための4つの支援>
(1)機会提供(JCを起こす支援)
・社内FA制度や社内公募制度など。クラフター(ジョブ・クラフティングをする人のこと)の知識を活用できるような部署への異動、あるいは小規模でそのような部署がない場合は特別なポストの新設などが挙げられる。
(2)能力開発(JCを起こす支援)
・外部の研究会や勉強会、学会や研修への参加を業務とみなす、あるいは金銭的な補助を企業や上司が積極的に行うなど。目の前の業務や営業成績の達成を重視しつつも、長期的な成長のために知見を広めることを支援していた。
(3)共有支援(JCを起こす支援&JCを続ける支援)
・クラフターが能動的にアウトプットすることを支援し、その場を提供すること。(例:実務に活かす場を設ける、プロジェクトで学んだことを実践し、発表する場を設ける、など)
(4)方向づけ支援(JCを続ける支援)
・従業員が持ち込んでくる新しい知識や情報の活用について、もう少し公式的にやりとりし、相互にフィードバックを行うという取り組み。(例:半年に1回の合宿で、半期の方向性などを共有し、個人個人が何ができるかを共有する、上司ー部下の定期的な方向合わせ、1on1など)
P109-113
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なるほど、「JCを起こす支援」「JCを続ける支援」と2分類することで、よりJCの周囲の支援のために何が必要なのか明確になりますね、。
■ジョブ・クラフティングの負の影響
次に、インタビューからわかったことで「ジョブ・クラフティングが「過剰」となり、負の影響をもたらす3つのケースがある」と述べています。
これは、クラフター(ジョブ・クラフティングを行う人)の上司や同僚から見て、どのような副作用があると感じるのか、をまとめた内容となります。
以下、ご紹介いたします。
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<ジョブ・クラフティングが負の影響を生む3つのパターン>
(1)こだわり「すぎ」がやりすぎを生む
・こだわりを仕事に盛り込むことを通じて熱心に働くことが多く、高い成果に結びつくことが多い反面、こだわりが「過剰」になると、副作用を生じさせる場合がある。(例:やると決めたら時間を惜しまないので、過重労働になる)
(2)偏り「すぎ」が成長を阻む
・自身が保持している価値観や強みを上手に仕事に反映させていくことに長けている人が多い。ある程度までは仕事の意味を感じやすい状況を作り出すことに結びつくが、あまり自分の価値観や好き嫌いを反映させすぎると、周囲から適正でない、と捉えられるようになる可能性がある。(例:統計やロジカルシンキングが好きで、情緒的なものを軽視してしまう)
(3)抱え込み「すぎ」が適応を阻む
・こだわりを上手に仕事に反映させることができるため、プレイヤーとして優秀である事が多い。しかし、マネジャーに抜擢されたり、後輩を指導する立場に移行する際に上手く行かないケースもあった。(例:結局自分がやってしまい、頼られて若手が育たない)
P114-115
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なるほど、過ぎたるは及ばざるが如し・・・までは行かずとも、何事も過剰はよろしくないようです。
■まとめと個人的感想
インタビュー調査を元にした内容であり、「ジョブ・クラフティングがワークエンゲージメントを高める」みたいな、数字では見えない行間が見えたように思います。そして、ここまで、文献調査など、学術的な章が多かったので、定性調査が実践知を深めることを感じさせられる章でした。
そして、ジョブ・クラフティングという名の「◯◯すぎ」というのは、確かに、ありそうだ・・・と非常に納得しました。何事も適正が重要です。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!
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